1993年のF1世界選手権は、FIAフォーミュラー1世界選手権の第44回大会である。1993年3月14日に南アフリカ共和国で開幕し、11月7日にオーストラリアで開催される最終戦まで、全16戦で争われた。1993年の選手権は、ウィリアムズ・ルノーのアラン・プロストが、休養明けから4度目にして最後のチャンピオンを獲得。この年7勝をマークし、予選では生涯33回中の1/3以上となる13回のPPを獲得した。その決定は、引退を表明した直後のエストリルでのことだった。ランク2位は、長年プロストのライバルとされてきたマクラーレン・フォードのアイルトン・セナ。前半戦の雨などもあって5勝を記録、予想外の活躍を見せたがシーズンを通しては苦戦、一時はデイモン・ヒルにもポイントで逆転されていた。コンストラクターズ部門ではドライバーズチャンピオン(プロスト)とランク3位(ヒル)を獲得したウィリアムズが、2位のマクラーレンに2倍近い差を付けタイトルを獲得。2年連続のダブルタイトルとなった。3位のベネトンは結果的に順位こそ変わらなかったものの、実質的にマクラーレンを上回る速さを得ていた。4位のフェラーリはこの年も低迷し、3年連続の未勝利となった。プロストの他、リカルド・パトレーゼやデレック・ワーウィック、ティエリー・ブーツェンといったベテランがこの年をもってF1を去る。一方でルーベンス・バリチェロが20歳、ルカ・バドエル、ペドロ・ラミーが21歳でデビューし、世代交代が進みつつあった。また、CARTチャンピオンのマイケル・アンドレッティが開幕戦で、全日本F3000選手権で活躍していたエディ・アーバインが日本GPにてデビューを果たしている。1年の休養から復帰となるプロストだったが、テストでは好調。パートナーには、前年よりテストドライバーを務めていたヒルが昇格。一方、ウィリアムズ入りの適わなかったセナは、前年より1993年シーズンの休養を仄めかしており、その動向が注目されていた(結局、開幕直前のマクラーレンのテストに参加後、シーズン前半は1戦ごとの契約で参戦、シーズン後半にはレギュラー契約を結び、全戦に出走することとなった)。マクラーレンはセナの動向のほか、マイケル・アンドレッティの鳴り物入りでの参戦も注目を集めた。マイケルは1978年のF1チャンピオンであるマリオ・アンドレッティの息子であり、1991年にはCARTでチャンピオンを獲得するなど母国アメリカでは成功を収めたレーサーだった。この年より、鈴鹿サーキットで行われた日本GPの他に大分県のオートポリスでアジアグランプリが行われる予定だったが、バブル崩壊によりサーキット運営会社が倒産する事態に陥った事もあり、日本で2つのグランプリが開催されるのは翌年のパシフィックグランプリまで待たなければならなかった。この年より参戦することになったザウバーチームが、テストでフェラーリ、ベネトンを上回るタイムを記録。こちらも注目を集めた。2年連続の開幕戦となった南アフリカGPでは、予選でプロストが1989年第7戦フランスGP以来のPPを獲得、1戦ごとの契約ながらマクラーレンでの出走を決めたセナが予選2位となり、1991年第11戦ベルギーGP以来の2人によるフロントローとなった。決勝ではプロストはスタートに失敗、セナ、ベネトンのミハエル・シューマッハ、そしてプロストのオーダーでレースは進んだ。プロストはシューマッハを攻略後、抵抗するセナを24周目に抜き、その後はトップを独走。セナはアクティブサスのトラブルでペースダウン、一時シューマッハにも抜かれるがピットで再逆転し2位に復帰。シューマッハが追走の中でスピンを喫しリタイヤすると、以後は淡々と単独2位を走行した。終盤はスコールに見舞われるが、プロストは最終的にセナに70秒以上の差を付け、復帰初戦を飾った。3位にはリジェのマーク・ブランデル、4位にはミナルディのクリスチャン・フィッティパルディ、5位には新鋭チーム・ザウバーのJ.J.レートとなり、各々が自身2度目の入賞となった。チェッカーを受けたのはこの5台のみ、終盤にストップした6位・フェラーリのゲルハルト・ベルガー、7位・フットワークのデレック・ワーウィックを含めても完走7台、3位以下は周回遅れというサバイバルレースとなった。ブラジルGPでも、予選でプロストが2戦連続でPP、ヒルが2位となり、ウィリアムズ勢がフロントローを独占した。引き続きスポット契約となった地元のセナは、2秒以上遅れたタイムで予選3位となった。決勝でもプロストがスタートから独走、セナはスタートでヒルをかわしたものの、12周目には抜かれ3位に戻り、シューマッハにも背後につかれる苦しい展開となった。更には、イエローフラッグ無視を理由に10秒ストップのペナルティを受けることとなり、一旦4位にまで後退した。しかし、その直後から雨が降り始め、セナはここで早めのタイヤ交換を行う作戦に出、これが当たる結果となった。雨脚が激しくなる中、まずその後ピットインしたシューマッハを再逆転し3位に復帰。一方、タイヤ交換の遅れたプロストは、前方でスピンした周回遅れのフィッティパルディに接触しリタイヤした。豪雨によるクラッシュ多発の中、F1史上初めてセーフティーカーが入り、40秒以上あったヒルとセナの差は無くなっていった。セーフティーカー解除の後、もう雨は降らないと踏んだセナは再び早いタイミングで、スリックタイヤに交換、直後の41周目にピットアウトしたばかりのヒルを抜き首位を奪取、そのままシーズン初勝利を飾った。シューマッハは、後半にペナルティにより一旦順位を落とすが、追い上げ3位でフィニッシュした。4位にはそのシューマッハに激しい抵抗を見せたロータスのジョニー・ハーバート、5位には連続入賞のブランデル。ロータスは6位にもアレッサンドロ・ザナルディが入り、ダブル入賞となった。ここで勝利により、セナがプロストを逆転しランキングトップとなった。イギリスのドニントン・パークでのF1初開催となったヨーロッパGPでも、プロストが予選でPPを獲得、2位ヒル、3位シューマッハとなり、セナは予選4位となった。雨の決勝では、セナはスタート直後にザウバーのカール・ヴェンドリンガーにも先行され、5位まで順位を下げた。しかしその後、シューマッハ、ヴェンドリンガー、ヒル、プロストを次々に抜いていき、オープニングラップだけでトップに浮上。タイヤ交換で20秒近くかかり後退する場面もあったが、その後のピット作業で再度トップに立ち、シーズン2勝目を挙げた。ウィリアムズ勢はタイヤ交換を行いすぎたことが裏目に出、ヒルはセナから1分以上離された2位、エンジンストールにも見舞われたプロストは3位ながら周回遅れという結果に終わった。4位は2戦連続でハーバート、5位は今季初完走のベネトンのリカルド・パトレーゼ。ミナルディのファブリツィオ・バルバッツァが6位に入り、自身初入賞となった。ジョーダンのルーキー、ルーベンス・バリチェロは一時2位まで浮上、注目を浴びたが結局リタイヤに終わった。サンマリノGPも予選は前戦同様、プロスト、ヒル、シューマッハ、セナの順となった。スタート直前に雨が降るが、今回はすぐに止んだ。スタートでは、ヒルとセナが好スタートを見せ、プロストは3位に後退。この時点ではまだ路面が濡れていたが、雨が再び降ることもなかった為に、どんどんと乾いていった。プロストは11周目にはセナ、ヒルを一気に抜き首位に浮上。そのまま独走でシーズン2勝目を挙げ、前2戦での汚名を返上した。開幕戦同様にこのレースもサバイバルレースとなり、ヒル、セナは共にリタイヤ。2位にシューマッハ、3位はリジェのマーティン・ブランドル、4位にレート、5位はラルースのフィリップ・アリオー。6位に2戦連続でバルバッツァ。鈴木亜久里は最後尾9位ながら、シーズン初完走を果たした。スペインGPでも、プロストは予選でPPを獲得。決勝ではスタートでヒルが先行するが、11周目に抜き返し首位に返り咲いた。抜かれた後もプロストに張り付き、仕掛ける場面も見せたヒルだが、終盤にエンジントラブルでリタイヤした。これにより2位に浮上したセナを、終盤3位のシューマッハが激しく追走するが、周回遅れのザナルディの撒いたオイルに乗りコースアウトし、逆転はならなかった。4位パトレーゼ、5位に初完走となるアンドレッティ、6位には開幕以来の入賞であるベルガーとなった。ランキングでは、プロストがセナを逆転し、開幕以来のランキングトップとなった。モナコGPでも、プロストが予選でPPを獲得し、シューマッハが2位、セナが3位となった。決勝ではプロストがトップを守るも、フライングでペナルティを取られ、そのストップの際にストールを起こし、大きく後退。代わってトップを独走していたシューマッハも、33周目に油圧トラブルでストップ。フリー走行・予選でクラッシュするなど、不調の中にいたセナが、終わってみればシーズン3勝目、グラハム・ヒルの記録を更新するモナコ6勝目を挙げた。そのグラハムの息子・ヒルが2位に入り、初表彰台を記録。3位はこれがシーズン初完走となるフェラーリ、ジャン・アレジ。プロストは激しい追い上げを見せ4位となった。5位にミナルディのクリスチャン・フィッティパルディ、6位にブランドルが入った。この結果、優勝したセナが再びランキングトップとなった。プロストが予選で7連続PPを獲得し、セナが1988年に記録した開幕からのPP記録を更新した。決勝ではまたもヒルが先行するも、5周目にプロストが抜き、そのまま独走で優勝。シューマッハが2位に入り、3位はヒルとなった。4位ベルガー、5位ブランドル、6位ヴェンドリンガー。セナは、予選8位から次々とオーバーテイクを見せ2位まで浮上するが、残り7周でエンジントラブルによりストップし、18位となった。この結果、プロストは再度ランキングトップに戻った。これまで開幕からPPを守り続けてきたプロストの地元で、ヒルが自身初のPPを獲得。2位はプロスト、3・4位にはブランドル、ブランデルのリジェ勢が入り、地元ルノーは予選で1-2-3-4フォーメーションとなった。セナはこのレースでようやく年間契約を結んだが、予選5位に沈んだ。決勝ではヒルがスタートを決め首位を維持するが、タイヤ交換でプロストが逆転。ヒルはその後もプロストに張り付いていったが、チームオーダーが出され、そのままの順でチェッカーを受けた。ウィリアムズにとっては、今季初の1-2フィニッシュとなった。シューマッハがセナとブランドルを抜き、3位に入った。6位はアンドレッティ。母国での6勝目を挙げたプロストは、セナが不調に陥ったこともあり、ランキングで独走体制を築いていくこととなる。ヒルの地元となるイギリスGP予選では、暫定PPにいたヒルを、終了直前にプロストが逆転し前戦での借りを返した。決勝ではヒルがスタートで先行、プロストは予選4位のセナにも抜かれ3位となるが、7周目に粘るセナを追い抜き2位に浮上。ヒルは終盤までトップを維持したが、残り20周足らずというところでエンジントラブルによりストップ、プロストがシーズン5勝目且つ通算50勝目を挙げた。2位にシューマッハ、3位にパトレーゼのベネトン勢が入り、パトレーゼにとってはシーズン初の表彰台となった。セナはゴール直前まで3位を走行していたが、ガス欠で最終ラップにストップし5位に終わった。他の入賞は4位ハーバート、6位ワーウィック。ドイツGPでも、予選でPPを獲得したプロストを、ヒルがスタートで抜き先行する展開となった。スタートを失敗したプロストは、7周目にヒルを抜きトップに返り咲くが、オープニングラップで混乱を避けるべくシケインを通過しなかったことに対し、ペナルティが下り後退した。その後は終盤までレースをリードしたヒルだが、残り3周というところでタイヤがバースト、またしても初優勝はならなかった。優勝はタイヤに負担をかけない走りを見せたプロスト、2位には2度のタイヤ交換で安全策を取った地元のシューマッハが入り、タイヤ面でヒルと明暗を分ける形となった。ブランデルがベルガーとのバトルを制し、開幕戦以来となる3位に入った。4位セナ、5位パトレーゼ、6位ベルガー。シーズン7勝目・通算51勝目を挙げたプロストは、4位に終わったセナに対し27ポイント差を付けた。またこのレースがプロストのF1最終優勝レースとなった。予選でシーズン10度目のPPを獲得したプロストだが、決勝はフォーメーション・ラップでエンストを起こし、最後尾に回されることとなった。2番グリッドのヒルは、不利とされるイン側スタートながら順位を落とすことなく、オープニングラップからトップを独走。これまで何度もトップを走行しながらトラブルに泣いてきたが、今回はそのままチェッカーを受け、悲願の初優勝となった。2位にはパトレーゼ、3位には今季初表彰台となるベルガーが入り、両ベテランが表彰台でルーキーを祝福した。4位ワーウィック、5位ブランドル、6位ヴェンドリンガー。優勝したヒルは、シューマッハを抜きランク3位に浮上、一時2位を走りながらリタイヤしたランク2位のセナは、トップのプロストより、ヒルとのポイント差のほうが近いという状況に陥った。ベルギーGPでも予選はプロストがPPを獲得、ヒルが2位、セナが3位となった。決勝ではプロストがPPから飛び出し、久々に序盤からレースをリード、一方のヒルはセナに先行され3位に落ちた。しかしセナを抜き返したヒルは、中盤にはピットインのタイミングでプロストを逆転、そのまま自身2勝目を挙げた。ここでの勝利は、ルノーにとっては通算50勝目、ウィリアムズにとっては通算70勝目となった。2位には6速ギアを失ったプロストをかわしたシューマッハ、3位にはプロストが入った。4位セナ、5位ハーバート、6位パトレーゼ。このGPでは亜久里が予選6位からスタートしたが、ギアボックストラブルでリタイヤし、ポイントは獲得できなかった。ウィリアムズ勢が1・3位に入ったことで、コンストラクターズ・タイトルがここで決定、またプロストはドライバーズ・タイトルに王手をかけた。また、ベネトンがマクラーレンを上回り2位に浮上した。このGPでもPPはプロストとなり、スタート直後に多重事故が起こる混乱も切り抜け、1周目からトップを走行。優勝すればタイトル確定という中で終盤までトップを走行するが、残り6周でエンジントラブルに見舞われストップ。一旦は4位まで転落したヒルが、2位まで追い上げ、終盤に繰り上がりで優勝するという、ドイツGPと立場が逆転したかのような結果となった。2位にはフェラーリのアレジが入り、今シーズンの最高成績をチームの地元で記録。鳴り物入りでの参戦しながら、これまで結果の出ていなかったアンドレッティが3位に入り、初表彰台を記録したが、このGPを最後にF1から去っていった。4位ヴェンドリンガー、5位パトレーゼ、6位にシーズン初入賞のラールスのエリック・コマス。このレースでリタイヤしたセナはランク3位に後退、3連勝したヒルが2位に浮上してきた。プロストがこの年限りでの引退、セナがこの年限りでのマクラーレン離脱をそれぞれ表明。予選ではヒルが自身2度目のPPを獲得、プロストは2位、実戦に復帰したミカ・ハッキネンが、マクラーレン初戦でいきなりセナを上回る予選3位を記録し、注目を浴びた。決勝ではヒルがフォーメーション・ラップでエンストし後方に回され、5番グリッドのアレジがスタートを決めトップを奪った。2位にセナ、3位にハッキネンのオーダーとなり、プロストは4位まで後退することとなったが、セナはトラブルでリタイヤ、アレジとハッキネンもタイヤ交換となり、一旦はトップに立つ。しかしそのタイヤ交換後、早めにタイヤを交換していたシューマッハが逆転。終盤にはプロストが追いつきテール・トゥー・ノーズとなるが、2位でもチャンピオンの決まるプロストは無理をせず、そのままの順位でチェッカーを受けた。プロストが自身4度目のタイトル、シューマッハはシーズン初勝利を得た。ヒルが最後尾から追い上げ3位に入った。タイヤ交換以降精彩を欠いたアレジは結局4位、5位ヴェンドリンガー、6位ブランドル。チャンピオンを決めたばかりのプロストが、予選でシーズン13度目・通算33度目のPPを獲得。モナコGPを最後に、表彰台からすらも遠ざかっていたセナが2位となり、開幕以来のフロントローとなった。セナは決勝前のフリー走行で、自身のグリッドのあるイン側を徹底的に走り込んで埃を祓い、不利とされる側からスタートでトップを奪取。その後ピットインでプロストに逆転を許すが、中盤に降った雨を味方につけ、プロストをコース上で抜き首位に返り咲き、久々に優勝。2位にプロスト、3位にハッキネンが入り、ハッキネンはこれが自身初の表彰台となった。4位はヒル。ジョーダン勢は5位にバリチェロ、6位にはこれがデビュー戦となるエディ・アーバインとなり、ダブル入賞となった。マクラーレン勢が1・3位となったことで、マクラーレンはベネトンを逆転し、コンストラクターズポイントでランキング2位に浮上した。またドライバーズ争いでは、セナが一気にヒルと2ポイント差に詰めた。セナが今シーズン初、1992年第7戦カナダGP以来となるPPを獲得。決勝でもタイヤ交換時以外はトップを譲らず、シーズン5勝/通算41勝目を挙げた。結果的には、これがセナにとって最後の優勝となった。マクラーレンにとっては、フェラーリの持っていた最多記録(当時)を上回る104勝目だった。2位にはこれで引退のプロスト、3位にはヒル。セナとプロストは、パルクフェルメで握手を交わした後、表彰台で再び握手を見せた。4位アレジ、5位ベルガー、6位ブランドル。終盤の2連勝により、セナはランキングを2位で終えることとなり、長年ライバルとされてきたプロストとセナが、上位2位に名を連ねた。また、コンストラクターズランク2位はマクラーレンとなった。
出典:wikipedia
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