スターリングの近似()またはスターリングの公式()は、階乗、あるいはその拡張の一つであるガンマ関数の漸近近似である。名称は数学者に因む。スターリングの近似は精度に応じていくつかの形がある。応用上よく使われる形の公式は、ランダウの記号を用いて、である。 における次の項は である。故に、次によい近似のはである。(ここで記号 formula_3 は両辺の比が("n" → ∞ のとき) 1 に収束することを意味する。)が成り立ち、従って任意の に対して比 は と の間にある。スターリングの近似は階乗の複素引数への拡張の一つであるガンマ関数 (正の整数 に対し が成り立つ;ボーア・モレルップの定理も参照)に拡張することができ、が成り立つ(ただし )。 のときは収束が遅くなるため、応用上は相補公式などを用いて 程度に制限することが多い。スターリングの公式の厳密な証明にはオイラーの和公式、あるいは鞍点法といった複素解析の技法などを用いられることが多いが、初等的に導くことも可能である。ここでは多少の無理を許すと初等的に導出できることを示す。まず、階乗の対数を積分で近似する。誤差があるから、誤差と定数項の和を log "c" とし、"c" の値は後に求める。 両辺の真数を取るとウォリスの公式の系:に代入すると、formula_13を得る。精度を改善するためにとするととなる。しかしであるからとなるはずである。再び対数を用いる。これを左辺に代入するととなり、両辺の係数を比較して α = , β = , γ = − を得る。結局、を得る。オイラーの乗積表示によるガンマ関数の定義の対数をとりformula_24 にオイラーの和公式を適用すればとなる。右辺の定数を集めてとすればとなり、この主要部をガンマ関数の相補公式に代入して formula_28 とすればとなるがであるからを得る。剰余項についてはとしてである。故にを得る。最初の数項を書き下せばとやり、指数関数のテイラー展開によりとなる。スターリングの公式は鞍点法の好適例とされることが多いが、実際に複素平面全体(負の実数を除く)で漸近近似が成立することを鞍点法によって示すのは困難であるから、ここでは formula_40 を正の実数に限定する。ガンマ関数は formula_41 の置換によりとなるが、formula_40 が十分に大きければ formula_44 の付近が支配的であるからという近似が許され、ガウス積分によりを得る。formula_47 として、近似の誤差はでありであるからを得る。これはを示すに十分である。ただし、実際の誤差は formula_55 であるが、それを鞍点法で示すのは困難である。より正確に記すと、次のようになる。 ここでスターリングの公式は以下の級数(スターリング級数)の近似(初項で打ち切ったもの)である。formula_59 としたとき、省かれた級数はその最初の項とそれ以降が相殺するように漸近していく。これは漸近展開の一例である。以下のような階乗の対数の漸近展開も「スターリング級数」と呼ぶ。この場合、誤差は打ち切った級数の初項と同じ符号で同程度の大きさであることが知られている。すべての正の整数に対して、が成り立つ。ここで Γ はガンマ関数を表す。しかしながら、 formula_62 は、階乗とは異なり、より広く、正でない整数を除いてすべての複素数に対して定義される。それにもかかわらず、スターリングの公式をなお適用することができる。Re "z" > 0 であればが成り立つ。部分積分を繰り返すことで次が得られるここで "B" は "n" 番目のベルヌーイ数である。(無限和は収束しないので、この公式は漸近展開にすぎないことに注意する。)公式はεを正数として |arg "z"| < − ε であるときに絶対値の十分大きい "z" に対して成り立つ。公式の右辺に現れる級数はスターリング級数と呼ばれる。最初の "m" 項が使われるとき誤差項は formula_65 である。対応する近似はのように書ける。この漸近展開のより進んだ応用は Re "z" が定数の複素変数 "z" に対してである。例えば直線 + "it" 上での Im "z" において適用されたスターリングの公式を見よ。スターリングの公式は収束しない級数を伴うので解析的に扱いづらいが、収束しない級数を収束する積分に換えたものとしてビネーの(第二)公式がある。ビネーの公式は、スターリングの級数を形式的に(収束条件を無視して)操作することによっても導かれるが、厳密には対数ガンマ関数の導関数にアベル・プラナの和公式を適用して得られる。formula_70 なら formula_71 は右半平面において正則であるからプラナの和公式により積分してformula_70 ならformula_76 は有界であるからである。スターリングの公式と比較して積分定数を求め真数に直してを得る。なお、ビネーの公式を元にして部分積分を繰り返すとスターリングの級数が得られる。トーマス・ベイズの John Canton への書簡が1763年に王立協会により公表されている。それによると、スターリングの公式は収束級数ではないとされていた。スターリングの公式の収束級数形式を得るには以下を評価する。一つの方法として、階乗冪の逆数の収束級数を使う方法がある。formula_82 としたとき、次のようになる。ここでである。以上から次のようなスターリング級数が得られる。これは、formula_86 のとき収束する。ガンマ関数の(関数電卓などの)計算機向けの近似として次の式がある。これは、次と同等である。これらはスターリングの公式を組み替えて、その結果生じる冪級数と双曲線正弦関数のテイラー展開の間の合致を観察することで得られる。この近似は "z" の実数部が 8 以上のとき、小数点以下 8 桁を超える精度を持つ。2002年、Robert H. Windschitl がリソースの制限された計算機(電卓など)でのそれなりの正確性を持った近似としてこれを示した。Gergő Nemes は 2007年にほぼ同程度の結果を与える近似式を提案した。こちらはより単純である。これは、次と同等である。この公式は最初に次の形でアブラーム・ド・モアブルにより1730年に発見された。スターリングの貢献は定数が formula_92 であることを示したことである。より正確な形式はジャック・ビネが見出した。スターリングの近似の「一次」バージョン formula_93 は、マックス・プランクが1901年の黒体放射の論文で使用した。これは多量の光子や振動子についての黒体放射エネルギーの方程式にリンクしている。この近似は量子論でよく使われ、例えばピーター・デバイとルイ・ド・ブロイも使っている。アルベルト・アインシュタインとサティエンドラ・ボースは違う方式を採用した。非常に大きな "n" について確率分布をグラフに描画してみると、両者はほぼ平行になる。
出典:wikipedia
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