指名委員会等設置会社(しめいいいんかいとうせっちがいしゃ)とは、日本における株式会社の内部組織形態に基づく分類の1つであり、取締役会の中に指名委員会、監査委員会及び報酬委員会を置く株式会社をいう(12号)。平成26年6月27日法律第90号以前の「委員会設置会社」にあたる。指名委員会設置会社は、従来の株式会社とは異なる企業の統治制度(コーポレートガバナンス)を有する。取締役会の中に社外取締役が過半数を占める委員会を設置し、取締役会が経営を監督する一方、業務執行については執行役にゆだね、経営の合理化と適正化を目指す。企業の経営を監督し、意思決定を行う「取締役会」と、実際の業務の執行を行う「執行役」の二つの役割を明確に分離したのは、アメリカで採用されている組織構造のうち最大公約数的な部分を参考にしたものである。なお、いわゆる執行役員制度は会社法に規定された制度ではなく、実際の構造も指名委員会等設置会社とは異なるので、混同しないように注意しなければならない。指名委員会等設置会社に相当する制度は、2003年4月施行の株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)改正により、委員会等設置会社として導入された。当時は、商法特例法上の大会社ないしみなし大会社のみが導入することができ、初年度に導入を決定した企業は36社であった。その後2006年5月施行の会社法において、委員会設置会社に名称を変更して引き継がれた。会社法では、定款に委員会を置く旨の定めを設けることで、その規模を問わず委員会設置会社となることができるよう制度が改められた。その他、業務の適正を確保するための体制(1項ホ)を取締役会が決定することが義務付けられたなど、細かな改正点がある。しかし、委員会設置会社制度には次のような問題点が指摘されていた。2015年5月1日に「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号)が施行されたことに伴い、同日以降は旧来の「委員会設置会社」は「指名委員会等設置会社」となった。また同法施行に伴い「監査等委員会設置会社」が新たに設けられた。指名委員会等設置会社には取締役会と執行役がおかれ、取締役会の中には指名委員会、監査委員会、および報酬委員会がおかれる。その一方で監査役(監査役会)を設置する事はできない(4項)。また常に会計監査人の設置が必要である(327条5項)。公開大会社では、監査役会をおかない場合は、監査等委員会設置会社ないしは指名委員会等設置会社の形態をとることになる()。取締役会の権限は、業務意思決定と、個々の取締役及び執行役による職務執行の監督である()。この点については従来までの取締役会とさほど変わりはない。指名委員会等設置会社における特徴として、取締役は原則として業務の執行をすることはできない(執行役にゆだねられる。)。ただし取締役は執行役を兼任することができ(6項)、アメリカのように取締役会構成員の過半数を社外取締役とする必要はない。取締役会の中には指名委員会、監査委員会、および報酬委員会の3つの委員会を必ず設置しなければならない。別個の委員会(例えば訴訟委員会や顧客対応委員会など)を追加してもよい。ひとつの委員会は3名以上の取締役で構成される(1項)。どの委員会にも属さない取締役をおいても差し支えない。各委員会の決定は拘束力を持ち、委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなければならない点が業務適正化の要となっている。監査委員会を除き、執行役が委員を兼任できる。取締役の任期は、委員会を設置しない会社とは異なり、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなる(1項、3項)。つまり任期は一年と考えてよい。 各委員会は次の役割を持つ()。指名委員会等設置会社には、執行役をおかなければならない(1項)。執行役は、指名委員会等設置会社ではない株式会社における業務執行取締役(1項2号)に、代表執行役は代表取締役に、それぞれ相当する。執行役と取締役は兼任することができ(402条6項)、実際にも兼任している場合が多い。指名委員会等設置会社の株主総会は依然として会社の最高意思決定機関であると考えられているが、その権限は会社法に規定されている事項および定款で定めた事項に原則として限定されることとなった。利益処分案についての承認がその権限から外された。すなわち、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表の計算書類は一定の場合、定時株主総会で承認があったとみなされる()。その代わり、取締役の任期を1年に短縮することで株主総会の取締役会に対する監督機能を維持した。これは、所有と経営の分離の表れとして、株主総会の権限を取締役に対する人事権に集約したのだともいわれる。指名委員会等設置会社は、執行役の権限強化による経営の迅速な実行を可能にするため、あるいはアメリカ企業を親会社にもつ企業が親会社と組織構造を連携させたり、外国人投資家へのアピールを狙って導入され始めたが、2002年から2005年までの東証一部上場企業の時価総額合計の伸び率は30%近いのに対して指名委員会等設置会社のそれはマイナスとなっており、投資家の評価が高いとは言えない状況である。一方、監査役をおく既存の体制をとる会社は、指名委員会等設置会社に移行しなくても経営の効率性が図れる、あるいは移行すると監査機能が形骸化するなどを移行しない理由とするが、それらの会社でも社外取締役や執行役員制度の導入がますます進んでいる。本稿では、指名委員会等設置会社の定めの新設及び廃止の手続き並びに2006年の会社法施行に伴う登記について説明する。委員会非設置会社は定款を変更して指名委員会等設置会社となることができる(1項・3項22号参照)。この場合、監査役・監査役会を置いている場合、廃止しなければならず(4項)、監査役は任期満了により退任する(4項2号)。また、取締役会を置いていない場合、取締役会設置会社となり(327条1項3号)、会計監査人を置いていない場合、会計監査人設置会社となる(327条5項)。なお、指名委員会等設置会社となった場合、従前の取締役及び会計参与は任期満了により退任する(4項1号・334条1項)。会計監査人は退任しないので注意が必要である。指名委員会等設置会社においては特別取締役による議決の定めをすることはできない(1項)。また、特例有限会社には委員会を置くことができない(1項)。指名委員会等設置会社の定めの新設は定款変更であるから、株主総会の特別決議によらなければならない(2項11号・)。登記事項は以下のとおりである(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-10(2)ア(イ))。登記記録の具体例については、2006年4月26日民商1110号依命通知第4節第5-6(1)を参照。登記の事由(2項3号)は「登記の事由 指名委員会等設置会社の定めの設定」のように記載する。登記すべき事項(商業登記法17条2項4号)は以下のとおりである。また、以下の事項を記載しなければならない場合がある。登記すべき事項を記録した磁気ディスクを提出する場合、「登記すべき事項 別添FDのとおり」のように記載し、OCR用紙に記載した場合(1993年12月27日民四7783号通達第7-1)、「登記すべき事項 別紙のとおり」のように記載する。添付書面(1961年9月15日民甲2281号回答、一部)は株主総会議事録(・)、取締役会議事録(登記法46条)及び就任を承諾したことを証する書面(登記法54条1項・2項1号)並びに印鑑証明書(2項ないし4項)である(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-10(2)ア(ウ)参照)。通数も記載しなければならない(1961年9月15日民甲2281号回答)。会計参与の重任・就任の場合、登記事項証明書もしくは会計参与が公認会計士又は税理士であることを証する書面も添付しなければならない(登記法54条2項2号・3号)。会計監査人設置会社となった場合については会計監査人設置会社も参照。登録免許税(登記法17条2項6号)は指名委員会等設置会社の定め新設の分が申請1件につき申請1件につき3万円であり(登録免許税法別表第1-24(1)ワ)、各委員等の就任及び取締役等の就任・重任・退任の登記の分が申請1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円)である(同法別表第1-24(1)カ)。なお、監査役設置会社の定めを廃止した場合又は特別取締役による議決の定めを廃止した場合もしくは会計監査人設置会社の定めを新設した場合(複数の場合が混在する場合も同様)、別途申請1件につき3万円を納付しなければならない(同法別表第1-24(1)ネ)。指名委員会等設置会社は定款を変更して委員会非設置会社となることができる(1項・3項22号参照)。この場合、従前の取締役及び会計参与は任期満了により退任する(4項2号・1項)。会計監査人は退任しないので注意が必要である。また、委員会非設置会社となった場合、以下の会社は監査役設置会社となる。指名委員会等設置会社の定めの廃止は定款変更であるから、株主総会の特別決議によらなければならない(2項11号・)。登記事項は以下のとおりである(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-10(2)ウ(イ))。登記記録の具体例については、2006年4月26日民商1110号依命通知第4節第5-6(3)を参照。登記の事由(2項3号)は「登記の事由 指名委員会等設置会社の定めの廃止」のように記載する。登記すべき事項(登記法17条2項4号)は以下のとおりである。また、以下の事項を記載しなければならない場合がある。登記すべき事項を記録した磁気ディスクを提出する場合及びOCR用紙に記載した場合の記載例は新設の場合と同様である。添付書面(1961年9月15日民甲2281号回答、一部)は株主総会議事録(商業登記法46条・54条4項)及び定款変更後の機関設計に応じて必要となる書面である(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-10(2)ウ(ウ))。具体的には、代表取締役の選定に関する書面や会計参与の重任・就任に関する書面などである。通数も記載しなければならない(1961年9月15日民甲2281号回答)。登録免許税(登記法17条2項6号)は指名委員会等設置会社の定め廃止の分が申請1件につき3万円であり(登録免許税法別表第1-24(1)ワ)、各委員等の退任及び取締役等の退任・就任・重任の登記の分が申請1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円)である(同法別表第1-24(1)カ)。なお、監査役設置会社の定めを設定した場合又は特別取締役による議決の定めを設定した場合もしくは会計監査人設置会社の定めを廃止した場合(複数の場合が混在する場合も同様)、別途申請1件につき3万円を納付しなければならない(同法別表第1-24(1)ネ)。変更の登記をする場合、登記官は変更に係る登記事項を抹消する記号を記録しなければならない()。整備法の施行日(2006年5月1日)に存在する株式会社で商法特例法における委員会等設置会社の定款には、取締役会・委員会及び会計監査人を置く旨などの定めがあるものとみなされた(・1項前段・47条)。この場合、委員会等設置会社である旨の登記は登記官の職権により抹消され(商業登記規則等の一部を改正する省令(2006年(平成18年)2月9日法務省令第15号)附則2条1項10号)、委員会設置会社である旨の登記が登記官の職権によりされた(同省令附則2条3項1号ロ)。根拠となる法務省令の番号と登記の日付なども記録された(同省令附則2条4項)。この登記の記録例については2006年4月26日民商1110号依命通知第9節第1-5を参照。
出典:wikipedia
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