ホッキョククジラ(北極鯨、学名:"Balaena mysticetus")は、ヒゲクジラ亜目セミクジラ科ホッキョククジラ属に属するクジラ。他のクジラが採餌や繁殖のために移動を行うのと異なり、ホッキョククジラは一生を肥沃な北極海で過ごす。近縁種にセミクジラ属がある。他のセミクジラ科のクジラ同様、ホッキョククジラは、大西洋で16-17世紀頃から捕鯨の対象となり、近代捕鯨により全世界的にも個体数が激減し、1966年に商業捕獲が一時停止(モラトリウム)とされた。北欧(スピッツベルゲン島海域)では、依然として絶滅危惧域を脱してはいないという主張はあるが、科学的根拠はない。ベーリング=チュクチ=ボーフォート海域(BCB)では、科学指導のもとで先住民生存捕鯨 (subsistence whaling)が行われており、この海域では捕鯨前の頭数近くまで達しているとの IWC 意見書 (2005年)が出ている。ベーリング海域や、米・アラスカ州やカナダのエスキモーなどの間で生存捕鯨が再開されている。(#生存捕鯨の節参照)ホッキョククジラの体格はがっしりしていて暗色の体色をしている。全長20mに達し、雌は雄よりも大きくなる。クジラの肉の脂肪層は他のいかなる動物よりも厚く、平均43-50cmに及ぶ。背びれをもたず、強く湾曲した下顎と細い上顎をもつ。髭板の長さは3mを超え、これはヒゲクジラの中でも最も長い。この髭板は水中の小さな獲物を濾し取るために用いられる。このクジラは非常に骨太な頭蓋骨をもち、呼吸する際にこれを使って氷を下から砕いている。イヌイットの狩人達によると、ホッキョククジラはこの方法で60cmの氷の下から浮上することが出来るという。ホッキョククジラは、ヒゲクジラの中で唯一、生涯を北極海およびその周辺で過ごす種である。ベーリング海南西部で冬季を過ごしている様子がアラスカ沖で見かけられる。ホッキョククジラは春になると流氷の開口部を追って北へ移動し、オキアミや動物プランクトンを餌としながらチュクチ海やボーフォート海へ向かう。ホッキョククジラは泳ぐのが遅く、たいていは単独または最大6頭程度の小さな群で移動を行う。ホッキョククジラは社会性で攻撃的ではなく、脅威を感じたときには氷の下に逃げこむ。一度の潜水で40分ほど海面下に潜っていられるものの、ホッキョククジラは深くまで潜水を行うとは考えられていない。このクジラを捕食する生物は人間のほかはシャチのみである。普段は北極から離れることはないが、1966年に大阪湾に迷い込んだ幼獣が捕獲された事もある。ホッキョククジラは高度な発声能力をもち、移動・採餌および集団行動の際のコミュニケーションのために水中音を使用している。長く繰り返される音声を発することもあり、これは求愛の歌であると考えられている。ホッキョククジラの習性としては他に、水上に飛び上がって体を水面に打ちつけるブリーチング、尾びれで水面を打つテール・スラッピング、体を垂直にして水面から顔を出すスパイホッピングなどがある。繁殖行動は一つがいの間、あるいは数頭の雄と1-2頭の雌からなる騒がしい集団内で行われる。繁殖は3月から8月にかけて観察される。繁殖活動は、クジラが10-15歳程度になった頃から行われるようになる。メスは3-4年に一度、13-14ヶ月間の妊娠期間の後に出産する。ホッキョククジラの新生児は全長4.5m、平均体重1,000kgほどで、最初の一年で9mほどに成長する。ホッキョククジラの寿命は、かつては他のクジラと同程度の60-70年ほどと考えられていた。しかし最近の詳細な研究により、少なくとも数頭の個体は150-200年程度生きているという信頼のおける結論が得られた(別の報告によると、90歳の雌がなおも繁殖可能であるという)。その寿命の長さから、ホッキョククジラの雌は更年期障害に陥ると考えられている。大型の動物の観察(幼獣を除く)が、この仮説の支えとなっている。ホッキョククジラは、脂肪を含む肉・鯨油・骨および鯨鬚を目当てに捕鯨の対象とされてきた。ホッキョククジラはセミクジラと近縁で、泳ぎが遅く、死亡した後も水面に浮いているという捕獲に適した特性もセミクジラと共通している。アラスカなどの先住民は古くからその捕獲を行ってきた。欧米による大規模商業捕鯨が行われる以前には、北極地方には50,000頭以上(推定)のホッキョククジラが存在した。商業捕鯨は1611年にスヴァールバル諸島やグリーンランド付近で開始され、各海域の資源を枯渇させると新たな海域に移動した。北太平洋では、商業捕鯨は1800年代半ばに開始され、その後20年間でホッキョククジラの個体数の60%以上が捕獲される結果となった。個体数減少の最大の原因であった欧米による大規模商業捕鯨は現在は中断しているが、米・アラスカ州やカナダでも先住民(イヌピアト系エスキモー族やユピク)に原住民生存捕鯨の許可枠が与えられている。カナダ東岸では、20世紀初頭に姿を消してこの種の捕鯨は途絶えていたが、個体がちらほら目撃されるようになって1996年の1頭を境にヌナブト準州で生存捕鯨が再開されている。ロシアのチュクチ族も、1997年にIWCに働きかけて、当時、年間7回の「ストライク(銛打ち回数)」枠を獲得した。この捕獲(年に25〜40頭程度)は、個体数回復の妨げになるものではないと見られ、アラスカ沖における個体数は、商業捕鯨停止後は増加傾向にある。世界全体での個体数は10,000頭程度で、商業捕鯨以前の 1/5 以下とする意見がある。これはおおよそ正しいとされるが、異説もある。実際の実況推計には、統計に大きな誤差幅や実施年度の時間差などがあり、加えて商業捕鯨前の頭数を再現するにも歴史的背景に不明な点があって、正確な記述は難しい。2008年現在の IUCN 発表では、全世界生息数は公称 10,000 頭超過(保守的な数)であるが、同発表による三大個体群の統計平均推計数を粗合計すれば 20,000 頭超になる。また、IUCN 発表では、捕鯨開始前の推定生息数は 49,000-59,000頭の幅で推計されているが、ここでも絶対確定できる数は 「少なくとも 24,000頭超過」であるという)。バスク人が西大西洋で捕鯨の対象にしていたクジラ種にホッキョククジラが含まれるかなどが不明点であるため、特定が困難とされる。米・カナダでは先住民によるホッキョククジラの生存捕鯨が若干数許されているため、日本捕鯨推進派からは、これは米国の「絶滅の危惧にある種を保護する」捕鯨政策の矛盾点としてとりあげられる事がある(例:「ホッキョククジラの捕獲枠延長に反対する国家は、こうしたアメリカのダブルスタンダードを厳しく批判した」、元水産庁の捕鯨問題担当である小松正之の寄稿)。2000年代に日本のメディアにおいてホッキョククジラを「北極セミクジラ」と、一般視聴者がセミクジラと勘違いを起こしやすい報道をした上で「早急な保護が必要な絶滅危惧種」と婉曲な報道をし、米国の生存捕鯨をダブルスタンダードと印象付け、世論に反映させる事となった。ホッキョククジラはワシントン条約の付属書Iに掲載の「絶滅の恐れのある種」である。IUCNレッドリストにおける分類は以下の通り。
出典:wikipedia
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