気管支動脈塞栓術(ききかんしどうみゃくそくせんじゅつ)は、BAE (Bronchial artery embolization) と略称される、喀血に対する治療法である。カテーテルを用いて出血源である気管支動脈などを塞栓(ゼラチンスポンジ・polyvinyl alcoholなどの粒子状塞栓物質、NBCAなどの液状塞栓物質、金属コイル等によって詰める)することにより止血するカテーテルインターベンションの1種である。気管支動脈が肺動脈に異常吻合(気管支動脈ー肺動脈シャント)を形成していることにより喀血が起こるとされており、出血源である気管支動脈を詰めてしまえば喀血は起きなくなるというのがこの治療法の基本コンセプトである。緊急止血目的と、大量喀血後の再発予防目的の両者が治療適応となる。実際には気管支動脈以外の動脈(non-bronchial systemic artery) も、肺動脈とシャントを形成して出血責任血管となっていることも多く、これらも塞栓対象とすることが近年一般的に行われるようになっており、気管支動脈塞栓術という治療名称と乖離が生じてきてはいる。こうした気管支動脈以外への動脈に治療対象を広げていることや、CTアンギオの発達、コイルやマイクロカテーテルなど使用デバイスの進歩、治療戦略の進化などの複合的背景により、治療成績が飛躍的に向上している。対象とする患者背景により成績が大きく左右されるが、一部の high volume centerでは90%程度の無喀血生存率を報告している。脳や心臓においては血管が詰まると脳梗塞や心筋梗塞を発症することになるが、気管支動脈を塞栓しても気管支粘膜壊死や肺梗塞を起こさない理由は、肺循環が気管支動脈と肺動脈の二重支配になっており、気管支動脈の血流がなくなっても肺動脈からわずかな血流が保たれるためであると考えられている。なお肺動脈から直接出血する場合もまれにあり、これに対してはこの治療法は無効であり肺動脈の塞栓が必要である。喀血が気管支動脈ー肺動脈シャント機序によって説明できるのはおよそ95%程度とされている。気管支拡張症・特発性喀血症・肺結核後遺症・非結核性抗酸菌症・肺アスペルギルス症など、ほとんどの疾患の喀血治療に有効である。2ミリ弱の太さのカテーテルを、足の付け根または手首の動脈から挿入し、気管支動脈(通常は1mm程度であるが、喀血患者では拡張していることがほとんどである)にその先端を挿入する。造影剤を注入し、喀血に関与した血管である所見(拡張・蛇行・肺動脈へのシャントなど)が確認されれば、カテーテルの中に、さらに細いマイクロカテーテル(0.8mm程度)を通し、気管支動脈の中に進め、適切な部位で塞栓物質を注入・留置し塞栓する。出血の原因となっている血管を塞栓し、体循環の高圧系から肺循環の低圧系へと減圧することで止血をする方法である。局所麻酔で実施され、所要時間は1時間から3時間程度である。かつては再喀血率が高いと考えられていたが、治療技術や治療デバイスの向上により、一時的止血のみならず永久的な止血が可能となってきている。実施可能施設が少なく、また症例数や治療成績などについての施設間格差が大きい。呼吸器科と放射線科が共にある施設で実施されていることが多い。有効率が高い疾患は特発性喀血症と気管支拡張症である。肺結核後遺症や肺アスペルギルス症は超選択的気管支動脈塞栓術の有効性が低く、かつてはこの治療法の対象外(適応外)とも考えられていたが、近年60%以上の止血率が報告されている。再喀血があれば基本的には何度でも再施行が可能である。かつては前脊髄動脈を塞栓してしまうことによる脊髄虚血に起因する下半身麻痺が稀だが重大な合併症知られていたが、これはマイクロカテーテルを使用せずに造影カテーテルから直接塞栓物質を留置する旧来の方法によるものと考えられ、同軸マイクロカテーテルを使用した方法が普及することにより激減している。この他にカテーテルによる血管損傷(内膜損傷・大動脈解離・気管支動脈穿孔・縦隔血腫など)や、脳梗塞(特に小脳梗塞)などが稀な合併症として報告されている。 喀血を伴う疾患の発生メカニズムとその対処(解説/特集)Author:石川秀雄(岸和田盈進会病院), 長坂行雄Source:THE LUNG-perspectives(0919-5742)19巻4号 Page466-471(2011.11)Author:石川秀雄(岸和田盈進会病院), 蛇澤晶Source:日本気管食道科学会 専門医通信 第43号 Page1-11(2011.12)Author : 石川 秀雄(岸和田盈進会病院 喀血・肺循環センター) Source :肺MAC症診療Up to Date 非結核性抗酸菌症のすべて(南江堂) Author:石川 秀雄(国立病院機構近畿中央胸部疾患セ 循環器科), 木村 剛, 大家 晃子, 神谷 敦, 井上 義一, 鈴木 克洋, 審良 正則, 林 清二, 河原 正明, 岡田 全司, 木村 謙太郎, 井内 敬二, 坂谷 光則Source: 日本呼吸器学会雑誌 (1343-3490)42巻8号 Page730-736(2004.08)Okuda K, Masuda K, Kawashima M, Ando T, Koyama K, Ohshima N, Tamura A, Nagai H, Akagawa S, Matsui H, Ohta K. Center for Respiratory diseases, National Hospital Organization Tokyo National Hospital, Tokyo, JapanRespir Investig. 2016 Jan;54(1):50-8. doi: 10.1016/j.resinv.2015.08.004. Epub 2015 Oct 23.
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