いぶき(GOSAT : ゴーサット、Greenhouse gases Observing SATellite)は、環境省、国立環境研究所(NIES)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した温室効果ガス観測技術衛星。地球温暖化の原因とされている二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスの濃度分布を宇宙から観測する。2008年10月15日、愛称が一般公募によって「いぶき」に決定された。2009年1月23日、種子島宇宙センターからH-IIAロケット15号機にて打ち上げられた。同年2月より観測データの取得を開始し、5月には未校正値ながら地球規模での解析結果も発表されている。2号機のGOSAT-2は、2017年度に打ち上げが予定されており、三菱電機が2014年4月に開発着手した。GOSAT-2は、初号機よりも観測精度を向上させる他、雲・エアロソルセンサーへの観測波長域を追加することにより、ブラックカーボンやPM2.5等の微小粒子状物質の監視も可能となる。いぶきは、京都議定書の第一約束期間(2008年~2012年)における地球上の温室効果ガス濃度分布の測定と、長期的な気候変動予測に必要なデータの取得のために開発された。1997年、京都で第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)が開催され、京都議定書が採択された。それを受けて、第一約束期間に日本が行うべき温室効果ガス観測ミッションとして、以下の目標が定められた。また、1992年からは、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により提案された計画である全球気候観測システム(GCOS, Global Climate Observation System)がスタートしている。気候関連問題への対処に必要な情報の取得と、必要とする全ての利用者に得られた情報を確実に提供することを目標としているが、測定ポイントは約319個所(2006年5月時点)と限られているうえに地理的にも偏りがあり、それぞれ異なる機関によって観測されていたため、空間的分解能やデータの連続性に欠けていた。いぶきにより、測定ポイントは地球表面を約180kmのメッシュで区切った約56,000個所へと飛躍的に向上する。また、同一のセンサによる地球全体の観測が可能なため、全地点を同じ尺度で継続的に観測を行うことができる。こうして得られた衛星からのデータと地上での観測データを組み合わせ、シミュレーションモデルにかけることによって、温室効果ガスの濃度分布を高い精度(目標1%)で推計することができる。これにより、京都議定書で定められた期間での二酸化炭素排出量削減量の監視や、温室効果ガスの長期的な変動データを取得して気候変動予測に役立てることができる。TANSO-FTS(TANSO : Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation, FTS : フーリエ変換分光器、Fourier Transform Spectrometer)は、二酸化炭素、および、メタンガスを測定する、いぶきの主センサ。地表面により反射された太陽光(近赤外線)と、地球大気や地表面から放射される光(遠赤外線)のスペクトルをフーリエ分光して観測する。大気中に存在する二酸化炭素とメタンは、特定の波長の光を吸収する性質があるので、大気中を透過してきた光の吸収の度合いにより、光の通り道に存在した二酸化炭素とメタンの量を算出することができる。1.6μm付近や2.0μm付近の二酸化炭素の吸収帯は、地表面付近の情報を多く含む波長帯として重要である。一方、14 μm付近の吸収帯は、主に2kmより高い高度の情報を得るために利用される。短波長赤外バンド1~3(SWIR Band1-3)により二酸化炭素の気柱積算量を測定し、熱赤外バンド4(TIR Band4)により二酸化炭素の鉛直濃度分布を測定する。雲やエアロゾル等の誤差要因のない条件において、測定誤差1%以内を目標にしている。TANSO-CAI(CAI : Cloud and Aerosol Imager)は、TANSO-FTSにて二酸化炭素を測定する際に誤差要因となる、雲の有無の判定やエアロゾル(大気粒子状物質)の測定に用いる画像センサ。いぶきの副センサである。TANSO-FTSで得られた測定データの補正のために用いられる。CAIは、大気と地表面の状態を昼間に画像として観測する。観測データから、FTSの視野を含む広い範囲での雲の有無を判定し、エアロゾルや薄い雲がある場合はその雲の特性やエアロゾルの量などを算出する。これらの情報は、FTSから得られるスペクトルに含まれる雲とエアロゾルの影響を補正することに利用される。いぶきは、以下の3機関による分担・連携体制で開発されている。本衛星は、地球観測衛星みどり(ADEOS)の後継機である、地球環境変動観測ミッション(GCOM)の衛星GCOM-A1として、2000年1月に計画が提案された。GCOM-A1においては、大気科学全般への貢献を目的として、以下の観測機器が搭載される予定であった。しかし、2002年8月に文部科学省宇宙開発委員会の提言や予算上の強い制約により計画の見直しが行われ、ミッションの目的は温室効果ガス観測に絞られた。同年10月、研究開発段階への移行は妥当と判断され、衛星名はGOSATとなった。2003年9月、SOFISセンサでは京都議定書で求められている観測内容には十分でないとされ、代わってTANSO-FTSセンサが開発されることになった。SOFISセンサは、みどりやみどりIIに搭載されたILAS/ILAS-IIセンサの後継機で、太陽光を地球大気で透かして観測するという実績のある観測方式(掩蔽観測)の採用を予定していた。この観測方式は3ヶ月間平均の上層大気の二酸化炭素濃度を非常に高精度に求められるという利点はあるものの、高度5km以下の下層大気の観測や、短期間の変動の観測には不向きだった。上層大気中の二酸化炭素濃度を測定しても、それは長期間攪拌された後の値であるため、地上での排出・吸収量の推定は困難であり、京都議定書への効果的な寄与は出来ないと判断された。対してTANSO-FTSセンサは、太陽光が地球表面や大気に当たって跳ね返ってきた散乱光を観測する方式となっている。新規開発であり、雲やエアロゾルなどで遮られて精度が低下するなどの欠点もあるが、より狭い区域の地表近くの大気の温室効果ガス濃度を測定する事ができる。測定誤差や空間分解能をさらに向上させることにより、京都議定書の第二約束期間以降に求められる観測内容に繋がる技術であることから、この観測方式が採用されることになった。いぶきは、重大な故障が発生しても衛星の基本機能が生き残るための工夫がなされている。JAXAによれば、従来は故障が起きないようにする設計を行っていたが、いぶきでは重要部品を二重化することにより、故障する可能性は上がるが故障しても衛星バスの運用や観測が続行できる可能性がより高くなるように設計されているという。NASAは2002年からAqua衛星を使用して荒い解像度(緯度2度×経度2.5度)でのCO2濃度分布の測定を行っている。またこれよりも解像度の高い観測のため、炭素観測衛星OCO (Orbiting Carbon Observatory、軌道上炭素観測衛星) の運用を計画していた。これはいぶきのTANSO-FTSと同じ観測方式のセンサを搭載し、A-Train(A列車、Aqua-Train)と呼ばれるNASAの他の地球観測衛星隊 (Aqua, PARASOL, CALIPSO, CloudSat, Aura) と同一の軌道をとり、これらの衛星の測定データを総合して二酸化炭素濃度の推定精度を高める予定であった。いぶきと同時期に打ち上げられることから、いぶきとOCOで観測結果を相互校正・検証することが期待されて2009年2月23日に打ち上げられたが、フェアリングの分離に失敗して軌道投入に失敗した。その後、代替機のOCO-2は2014年7月2日にデルタ IIロケットでの打ち上げに成功した。欧州宇宙機関(ESA)は2008年3月、環境観測衛星Envisat上のSCIAMACHY装置によるCO2観測を行い、世界で初めて地域的なCO2濃度の高まりの観測に成功している。このほかに二酸化炭素観測衛星CARBOSATを計画していたが、京都議定書に貢献しうる精度・空間分解能が得られないとして、計画は中断している。
出典:wikipedia
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