ユーロ圏(ユーロけん, En:eurozone, またはeuro area)とは、欧州連合に加盟し、ユーロを導入している諸国で形成される経済圏。ユーロゾーン、などともいう。ユーロ圏において通貨政策を担うのは欧州中央銀行である。なお、少数の欧州連合非加盟国がユーロを独自に導入しているが、それらの国々は欧州中央銀行に代表を送ることができず、通貨政策は統一されていないので、通常はユーロ圏に含めない。1998年、11の加盟国がインフレーション率、政府財政水準、為替相場の状況、長期金利などの収斂基準を満たし、1999年1月1日にユーロの導入が正式に開始されて、ユーロ圏が誕生した。2000年にはギリシャが基準を満たし、2001年1月1日にユーロに移行した。2002年1月1日より実際の硬貨や紙幣の発行・流通が開始された。2006年にはスロベニアが基準を満たして、2007年1月1日よりユーロ圏入りを果たした。さらに2008年1月1日にはキプロスとマルタで、2009年1月1日にはスロバキアで、2011年1月1日にはエストニアで、2014年1月1日にはラトビアで、2015年1月1日にはリトアニアでもユーロが導入され、バルト三国もユーロ圏となった。これによりユーロ圏は以下の計19か国、人口3億2600万人を擁する経済圏となっている。ただし「除外」の欄に国旗等で示した地域では、別の通貨が流通しているので、ユーロ圏には含まれない。欧州連合加盟国の特別領域の中には、欧州連合の領域には含まれないが、ユーロが使われている地域がいくつかある。なおこのうちアクロティリおよびデケリアは非ユーロ圏の加盟国イギリスの主権基地領域だが、隣接するキプロスのユーロが流通している(キプロス島内に位置するがキプロス領でもキプロスが主張する領土でもない)。欧州連合域内の財政政策の調整に関する主な手段は、欧州連合の全加盟国を対象とし、中でもユーロ圏16か国についてはとくに言及をしている総合経済政策ガイドラインに規定されている。このガイドラインは拘束力を持たないが、経済構造が連携しているということを考慮して、加盟国間での政策調整を企図している。通貨の相互保証と安定性のために、ユーロ圏諸国は安定・成長協定を尊重しなければならず、この協定は赤字額や国債発行に上限を設け、違反に対しての制裁規定を定めている。協定ではもともとユーロ圏各国に対して毎年の赤字額の上限を GDP の 3% と設定し、この額を超過した国には罰則金を科すとしていた。2005年、ポルトガル、ドイツ、フランスがこの制限を破ったが、欧州連合理事会は罰則金を科さないという決定を下した。この結果、より柔軟性を持ち、赤字額の基準を加盟国の経済情勢やそのほかの要因を考慮することを含む改定が採択された。、、 は欧州連合に加盟していないのでユーロ圏ではないが、ユーロ圏諸国と同様にユーロを使用している。これらの国ではかつて、ユーロに切り替えられた通貨を使用しており、バチカンとサンマリノではイタリア・リラと固定されていた通貨(バチカン・リラ、サンマリノ・リラ)を、モナコではフランス・フランと 1:1 で固定されていたモネガスク・フランをそれぞれ使用していた。これらの諸国は、欧州連合と直接ではないが、サンマリノとバチカンはイタリアと、モナコはフランスとそれぞれ通貨協定を締結した上でユーロを使用している。各協定は欧州委員会および欧州理事会において承認を受けている。協定では、これらの3か国は毎年一定の量のユーロ硬貨について、ユーロ圏諸国同様、それぞれ独自のデザインを施して発行することができる。これらの3か国が発行した硬貨はユーロ圏の各国で有効であり、また逆にユーロ圏各国の硬貨もこれらの3か国で通用する。ただし実際には、鋳造は自国では行わず、モナコのユーロ硬貨はフランスで、バチカンとサンマリノのユーロ硬貨はイタリアでそれぞれ鋳造されている。、独自のユーロ紙幣は発行できず、ユーロ圏諸国で作成された紙幣を使用することになる。ただし紙幣のデザインはユーロ圏全体で共通である。アンドラは正式な通貨を持っておらず、そのため独自のユーロ硬貨を有していなかった。かつてはフランス・フランやスペイン・ペセタを事実上の法定通貨として使用していた。アンドラはスペインやフランスとは特段の通貨協定を締結していないが、欧州連合はアンドラでのユーロの公式な地位に関して交渉を行っている。アンドラ政府によると、2006年にはアンドラ独自のユーロ硬貨を鋳造するはずであったが、2007年1月の時点では実現していなかった。。2016年1月現在、the Royal Spanish Mintより2014年発行のアンドラ独自デザインのユーロ硬貨が鋳造されている。、 でもユーロが流通しているが、公式の通貨協定によるものではない。同様にモンテネグロとコソボは、かつてはドイツマルクを事実上の通貨としていたが、現在はユーロを導入している。ただし欧州連合は両国・地域でユーロを使用することを明確に認める正式な協定を結んでいない。コソボは主に政治的理由からセルビア・ディナールを廃し、ユーロを使用している。以下の9箇国は欧州連合に加盟しているが、ユーロを導入していない。デンマークとイギリスは欧州連合条約における例外規定の対象となっている。両国は政府決定、あるいは議会の議決または国民投票を実施することとされており、これらなしではユーロの導入を求められることはない。スウェーデンにはこのような例外規定がなく、規定上は将来のある時点でユーロ導入が義務付けられている。しかし欧州連合側は、スウェーデンに対してユーロ導入を強制する意図はないということを明らかにしている。2004年以降に加盟した国(デンマーク、イギリス、スウェーデン以外の8か国が含まれる)は、収斂基準を満たせばただちにユーロを導入することとされている。このような新規加盟国に関して、単一通貨は加盟のさいの条件の一部 (part of the package) となっており、イギリスとデンマーク以外は例外が認められることはない。2004年以降に加盟した国のうちすでにキプロス、マルタ、スロベニア、スロバキア、エストニアはユーロに切り替えられているが、残る7か国の経済通貨統合の第3段階への移行とユーロ導入の日程はいずれも2010年から2014年のあいだと見込まれていた。チェコの移行は2010年1月1日に設定されていたが、経済情勢のため実現は不可能になり、新たな日程は設定されていない。ハンガリーも2010年の目標日程が断念され、新たな予定は設定されていない。2006年5月16日、欧州委員会はスロベニアに対して新たなユーロ圏国になるよう求め、2007年1月1日にユーロに切り替えた。経済通貨統合の体制に完全に移行する能力を示すことは「優良な加盟国」の必須条件のひとつである。欧州中央銀行と欧州委員会は2年ごとに報告書を作成し、そこで非ユーロ圏の加盟国の経済やその他の状況の分析をまとめ、ユーロ圏入りの適正を報告している。2004年加盟の10か国を含めた報告書が2004年10月に初めて作成された。しかし、欧州中央銀行制度のなかで最も重要な位置づけをされているドイツ連邦銀行はユーロ圏の急激な拡大を批判している。2004年5月1日、この日に欧州連合に新規加盟した国の10の中央銀行は欧州為替相場メカニズム (EMR-II) に組み込まれることが決定した。現在、EMR-II の対象となっているのは、以下の1国である。2000年9月28日、デンマークにおいてユーロ導入の是非を問う国民投票が実施され、53.2% が反対という結果になった。近年の1か月ごとに実施される調査では、ユーロ導入を希望する割合が過半数を超えている。2007年、デンマーク議会は欧州連合条約上の4つの例外規定について、まず一部または全部の例外規定について国民投票を実施し、続いてユーロ導入の是非を問う投票を実施することの検討を開始した。その後行われた選挙で与党が勝利し、ユーロ導入に向けて必要な措置を行っていることを明らかにした。デンマークにおいてユーロが導入された場合のグリーンランドとフェロー諸島の対応は見通しが立っていない。両地域はデンマークの自治領であるが、欧州連合の領域とはなっていない。フェロー諸島では、フェロー諸島のモチーフが印刷されたデンマーク・クローネ紙幣(フェロー・クローネ)が発行されており、グリーンランドでも同様の対応を実施することが計画されている。なお硬貨についてはデンマーク・クローネ硬貨が使用されている。ラトビアはユーロの導入について、2012年までの実現を見込んでいる。当初は2008年1月1日の導入を目標としていたが、インフレーションに関する問題のために延期を余儀なくされた。2014年1月より念願のユーロを導入して現在に至る。リトアニアは本来、2007年1月1日をユーロ使用開始の目標日に設定していたが、インフレーション率が許容限度を超えていたため欧州委員会に拒否された。2006年12月、政府は新たな収斂計画を承認し、その中で政府はできるだけ速やかにユーロ圏入りを果たしたいとしているものの、2007年から2008年にかけてインフレーションが進むと見込まれるため、ユーロ導入は2010年以降が望ましいとしている。2007年1月に発表された世論調査によると、ユーロ導入への反対意見が賛成意見を上回る。2015年1月よりユーロを導入し、これでバルト三国は全てユーロを導入することになった。ブルガリア・レフは1997年以降はドイツマルクと、1999年以降はユーロと為替レートが固定されており、またブルガリアはすでに経済通貨統合参加基準の大部分を満たしている。そのためブルガリアは2007年夏までに ERM-II への参加を計画していたが、高いインフレーション率と経常収支赤字のために延期され、2012年の参加実現を目指すことになっていた。2016年1月現在、ユーロ導入への見通しは立っていない。2004年の欧州連合加盟以降、チェコはマクロ経済の情勢を他の加盟各国にあわせる財政・通貨政策をとってきた。現時点で最も大きな問題は巨額の財政赤字である。元来、チェコは2008年か2009年の ERM-II 入りを目指してきたが、2007年に政府は経済水準を満たす見通しが立たないとして、目標期日を2010年とした。ユーロへの切り替えは早くて2012年になる見込みとなっていた。2016年1月現在、ユーロ導入への日程は見通しが立っていない。ハンガリーはもともとユーロの導入を2010年1月1日に計画していたが、莫大な財政赤字のために断念した。2007年の計画では2008年中頃にロードマップを作成するとして、導入の目標日程を定めていない。現実的には、ハンガリーのユーロ圏入りは財務状況が好転する見通しが立たず、困難であるとされる。現状、毎年の収支の赤字額は GDP の 6% に上り、公債発行額も GDP の 69% に上っている。またその発行増加率もGDP成長率を上回っている。ポーランドは「欧州連合の総合的政策の一環」としてユーロ導入が義務付けられているが、大統領レフ・カチンスキは導入にさいして国民投票を実施したいと述べている。厳密には、ポーランド国民はすでにユーロ導入に賛成を示している。欧州連合加盟の是非を問う国民投票で 77% という多数が賛成票を投じていたが、この投票は同時に経済通貨統合を問うことも含まれていたことになる。欧州委員会委員ホアキン・アルムニアはポーランドに対して、イギリスとデンマークと同様の経済通貨統合の例外規定はないということを確認した。世論調査ではポーランド国民の多数がユーロを自国通貨とすることを望んでいる。2006年5月、ポーランド政府はユーロ導入の目標期日を2012年1月1日に設定した。2016年1月現在、ユーロ導入の期日は未定である。ルーマニア政府は2014年までのユーロ圏入りを計画していることを表明した。また2012年までに ERM-II 基準を達成するとしている。欧州中央銀行総裁は2007年6月に、ルーマニアは多くの課題を抱えており、ERM-II 参加までには長い年月を要するとの見通しを示した。将来のユーロ導入の際に ATM にユーロを使用できるようにしておくため、2005年に新ルーマニア・レイが導入された(1万旧レイを1新レイとするデノミネーション)ときに、新紙幣をユーロ紙幣と同じ形で発行した。旧レイ紙幣はユーロ紙幣に比べてかなり幅が大きかった。2016年1月現在、ルーマニア政府は2019年をユーロ導入の目標期日と定めている。スウェーデンに対しては、いかなる議定書や条約においても特例が設けられていない。しかしスウェーデンは、欧州連合でユーロが導入されても自国では使用しないことを1997年に決定しており、求められていた為替相場の安定基準の達成に努めていなかった。1994年11月13日、スウェーデンでユーロ導入に関する最初の国民投票が実施された。この国民投票は加盟条約の批准を問うものであったが、ユーロ導入はこの加盟条約において欠かせない規定であった。結果 53% が賛成票を投じ、同時にユーロ圏入りが承認された。ところがスウェーデン政府は、共通通貨を導入するか、またその時期についてはスウェーデン議会が決めるということを、1994年8月11日の欧州連合加盟を提唱するさいに一方的に宣言した。その後1997年にスウェーデン議会は、ユーロ導入当初はこれに加わらず、時間を置いて導入することを決めた。ユーロ導入を諮る国民投票が2003年9月14日に実施され、結果、賛成 42.0%、反対 55.9% とユーロ導入を拒否することになった。これを受けて各政党は投票結果を当面の間は守り続けると表明し、ユーロ導入の決定は先送りされた。政府系調査期間の定例調査では、世論はユーロに対して消極的になっている。これとは対照的に欧州連合の調査「ユーロバロメーター」では、ユーロに対する支持が2003年では 41% だったものが、2006年には 51% となっている。スウェーデン元首相ヨーラン・ペーションは在任中の2004年9月に、スウェーデンのユーロ導入は2010年の総選挙まではありえないと述べた。この見方はフレドリック・ラインフェルト政権も共有しており、ユーロ導入に関して消極的な姿勢を見せている。このためスウェーデンにおけるユーロ導入は2015年まではないということがほぼ間違いなく、世論調査でも消極的な態度が見られることを念頭においても、かなり先のことになると見られる。Foretagarna の調査によると、スウェーデン企業の 60% が、ユーロ圏入りしていない今の状況は不利益であると考えている。スウェーデンの企業団体の代表である Anna-Stina Nordmark-Nilsson はスウェーデンのユーロ圏入りを求めている。スウェーデンがユーロを当面導入しないという決定は欧州連合において広く認められている。スウェーデンは1995年に欧州連合に加盟しており、1992年に署名されていた欧州連合条約における例外規定の適用を受ける機会がなかったという事情のためである。しかし1995年にはユーロはまだ存在しておらず(紙幣・硬貨の流通は2002年から、法定通貨としても1999年から有効となっている)、このため欧州委員会はそれまでにスウェーデンのユーロに関する取り組みについて法的強制力を持つ行動をとっていなかった。しかしスウェーデンのような動きをほかの新規加盟国が見せた場合は、これを許容していないにもかかわらず、スウェーデンに対しては許容しているということについて懸念の声が上がっていた。ゴードン・ブラウン政権はユーロ導入に際して3つの承認手続きを行うことに注力している。すなわち、内閣における承認、議会における承認、有権者による住民投票である。しかし政府は住民投票の実施に消極的であるということを考えると、近い将来においてユーロに関する住民投票の実施は現実的ではない。ユーロを欧州の政治的統合に関して不可欠な要素と見ている他のヨーロッパ諸国と違い、イギリスではユーロ圏に参加する利益を主に経済的なものとして見る傾向が強く、イギリスの参加に関する「5つの経済テスト」に基づく評価報告が、当時財務大臣だったブラウンにより2003年6月9日に発表された。政府はユーロ導入に積極的な姿勢を保っているにもかかわらず、5つの経済テストのうち4つが基準を満たしていないとして、報告書ではユーロ導入を認めるべきでないとした。ブラウンは2003年6月に、イギリスのユーロ参加の際の交換レートについて、1ユーロ=約73ペンスであると述べており、このレートは両者の価値が対等なものではないことを示している。なおこの交換レートはイギリスのユーロ圏入りの際の正式なものではない。世論調査ではイギリス市民の大多数がユーロ導入に反対している。その意見としてイギリスの政治的・経済的主体性を失うというものがあり、また別の意見としては、慣れ親しんだポンドから切り替えられるということが考えられないというものもある。このため住民投票の可能性は当面ない。仮にイギリスがユーロ圏入りしたとなると、これにより UKポンドと等価のポンドを使用するポンド地域の法的な扱いにも影響が及ぶ。王室保護領では、マンクス・ポンド(マン島)、ジャージー・ポンド(ジャージー島)、ガーンジー・ポンド(ガーンジー島)、オルダニー・ポンド(オルダニー島)といったポンドスターリングが使用されている。これらはすべて同じ ISO 4217 コード「GBP」が割り当てられている。海外領土の一部では UKポンドと地元通貨の交換レートを 1:1 に固定している。ジブラルタル・ポンド(ジブラルタル)やフォークランド諸島ポンド(フォークランド諸島)、セントヘレナ・ポンド(セントヘレナ島)がそうである。フランスの海外領土もフランスがユーロを導入した際に同様の状況に直面した。フランス・フラン自体を使用していたこれらの地域ではユーロに切り替えられた一方で、一部の海外領土では CFPフランを使用していた。これらはフランス・フランと相場が固定されていたものの、等価ではなかった。実際に、さまざまな歴史的理由のためその貨幣価値はかなり低く、それぞれのフランはフランス本土のフランに換算するとおよそ0.05フラン(5サンチーム)ほどであった。CFAフラン、CFPフランはいまだ存在しているが、フランス・フランの代わりに現在ではユーロと相場が固定されている。この固定相場と海外領土のフランの自由兌換性はフランス国庫からの支出で維持されている。同様の状況はコモロ・フラン(コモロ)にも当てはまり、現在の相場はユーロと固定されている。このためポンド地域においては以下の4つの意見が存在している。ジブラルタルは事情が異なり、イギリスの一部として欧州連合の領域に含まれている。仮にイギリスがユーロを導入していたならば、ジブラルタルに対する例外規定の適用はできなかっただろう。ジブラルタルはイギリスの一部として欧州議会選挙を実施しているため、独自の住民投票の決定に従うか、あくまでもイギリスの一部として、イギリスで行う住民投票の決定に従うかは不透明である。現在、スコットランドと北アイルランドの民間銀行は独自のデザインのポンド紙幣を発行することができ、これらの地域の住民の多くは、独自デザインの紙幣を地域のアイデンティティとして見ている。イギリス政府が既存の欧州連合の法令の適切な緩和について交渉することができなければ、イギリスがユーロを導入してからはこれらの紙幣の発行ができなくなる。現行制度では欧州中央銀行のみが各国中央銀行に対してユーロ紙幣の発行を認めており、すべてのユーロ紙幣はユーロ圏全体で基準が統一されているため、各国内での派生的な紙幣発行は不可能となっている。国内で独自の形態が認められているのはユーロ硬貨のデザインである。ロイヤルミント(王立造幣局)はイギリスのユーロ貨幣に当代の国王の肖像を含めなければならないが、地域ごとにそれぞれのシンボルを含めたデザインのものを発行することができる。アイスランドの外相バルゲルズル・スベリスドッティルは2007年1月15日にインタビューで、欧州連合に加盟はしないもののユーロ導入の是非については検討したいと述べた。スベリスドッティルは、欧州経済領域の小規模な経済圏においては独自の通貨を維持していくのは困難だと考えている。カーボベルデのカーボベルデ・エスクードはかつてポルトガル・エスクードと、ボスニア・ヘルツェゴビナのコンヴェルティビルナ・マルカはドイツマルクと、フランスの旧植民地で使われている CFAフラン、コモロ・フランおよびフランスの太平洋地域の領土で使われている CFPフランはフランス・フランと、それぞれ相場が固定されていたが、現在はユーロと相場が固定されている。2016年7月にIMFの独立監査機関であるIndependent Evaluation Office (IEO)がレポートを公表し、IMFがユーロ構想に関して楽観的で表面だけの分析をしていたことが明らかになった。共通通貨ユーロ導入に先立ち、IMFはユーロの利点を強調する傾向にあった。IMFのスタッフの中にはユーロは本質的に欠陥含みであると警告していたがそれらの声は押さえつけられ、IMF内部での白熱した議論の後にユーロを支持する見解が主流となった。毎度のようにIMFは経常収支赤字膨張によるリスクを過小評価しており、ユーロ圏周辺国への資本流入とその急停止の危険性を無視していた。ユーロ圏内での国際収支統計危機は存在しないものとみなされており、2007年の時点でもIMFはギリシャに関してエクスターナル・ファイナンシングが懸念事項だと考えていなかった。EUとIMFがギリシャへの金銭支援とその交換条件としての緊縮財政政策の強要を行った時にも、ギリシャ経済の先行きについてのIMFの試算には非常に大きなエラーがあった。IMFは財政乗数を0.5としていたが現実にはその5倍だっただろうと考えられている。現実のギリシャのGDPはIMFの予測値よりも25%低い値であり、失業率はIMFの予測値よりもはるかに高い値であった。ノーベル賞経済学者ジェームズ・トービンは、ユーロ圏には金融政策・財政政策共に大きな欠陥があることを指摘する。ユーロ圏の金融政策はECB主導で実施されるが、ECBは物価の安定のみを政策焦点とするために失業への対策が疎かになる。また、ユーロ加盟国はマーストリヒト条約や安定・成長協定に従わなければならず、景気の良し悪しに関わらず各加盟国は財政赤字をGDPの3%以内に抑えなければならない。このため各加盟国は不況の際に十分な拡張的財政政策を行うことができない。ノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツはユーロを悲劇的な過ちと形容した。その共通通貨は、政治統合も行わないまま、そして共通通貨が内包する本質的不備を熟考することもないまま始まった。EU側の人々は、単一通貨USドルを使うアメリカ合衆国という世界第一位の経済大国の成功をみて、それを真似すべきだと述べていた。ユーロが導入された当初にはその共通通貨の問題を指摘する声はあったが、主として米国からの声であった。米国は欧州統合に反対しているわけではなくて、ユーロこそがその欧州統合を弱めるものだと考えていた。なぜならユーロは機能しないだろうからだ。この米国側の意見に対してEU側は、米国人が欧州統合構想を理解していないのだと主張した。また、ユーロを推進していた人々の多くは経済学者ではなかった。独自の金融政策がとれないために、危機に陥ったユーロ圏加盟国は自国通貨を減価させる事もできなければ政策金利を下げる事もできない。拡張型財政政策も採れない。その結果として賃金低下と多くの失業が生じる。そしてこの賃金低下は企業側を喜ばせるものであった。ユーロ自体が新自由主義的な構想だったことは十分に明らかとなっている。EU側はギリシャ危機を利用して、ギリシャへの金融支援と引きかえに構造改革を強要した。EU側はギリシャに対して新鮮なミルクの定義を変えるよう命じた。通常は4日経過したミルクにはラベルがされる必要があるにもかかわらずだ。ドイツやオランダの酪農産業はミルクをギリシャを含めた欧州各国に輸出したいと考えている。ミルクの輸出には時間がかかり、4日以上経過したミルクを新鮮なミルクでないとするギリシャの法律はドイツやオランダの酪農産業にとって不都合だろう。そしてドイツやオランダの輸出攻勢はギリシャの中小企業に痛手を追わせることになる。この例からもユーロ圏では特定の団体だけにアドバンテージが与えられることがわかる。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。