『火星シリーズ』(かせいシリーズ)は、アメリカの作家エドガー・ライス・バローズが著した、架空の火星を舞台にしたSF冒険小説のシリーズ。本項では、火星の事物の日本語表記は、最新版である創元SF文庫の合本版による。1912年2月から6月に、ノーマン・ビーン(Norman Bean)のペンネームで連載された『火星の月の下で』(Under the Moons of Mars)が、火星シリーズの始まりである。原題は『デジャー・ソリス、火星のプリンセス』(Dejah Thoris, Princess of Mars)で、バローズが1911年にパルプマガジン「オールストーリー・マガジン」に送り、採用された。それを復題書籍化して1917年に刊行された "A Princess of Mars"(邦題『火星のプリンセス』)を第1巻とし、火星シリーズは全11巻で構成されている。第10巻 "Llana of Gathol"(邦題『火星の古代帝国』)の刊行は1948年だが、最終巻 "John Carter of Mars"(邦題『火星の巨人ジョーグ』)の刊行は1964年である(死後14年が経過)。日本では、1965年から創元推理文庫(現在の創元SF文庫)その他で刊行された。当時から「太陽系で、地球以外に最も生命の存在の可能性が高い」とされていた火星を舞台に、という物語は大ヒットとなり、以後多くの追随作品(惑星冒険もの)を生んだ(さらに、主人公は「生まれも育ちも、年齢も不詳」と自称している)。ロバート・E・ハワードの「英雄コナン」シリーズやリン・カーターの「レムリアのゾンガー」シリーズ等のヒロイック・ファンタジーの祖型と目されることもあるが、それらに特徴的な魔術への傾斜はバローズの諸作にはきわめて希薄であり、随所に「科学」による説明がなされていることも特色のひとつである。バローズはアメリカではターザンの作者として有名だが、日本では、まず火星シリーズの作者として認識されている。これは、ターザンの映画は多く公開されていたものの、作家としては創元推理文庫から本シリーズが刊行されることによって一気に人気が出たためである。「火星」が最初に訳出・出版されたという事情に加えて、創元推理文庫版に付された武部本一郎による美麗なカバー絵、口絵、挿絵が読者の絶賛を博したことによる部分も大きい。武部はその後、金星シリーズ、ターザン・シリーズ、ペルシダー・シリーズなど、殆どのバローズ作品の挿絵を描いている。以下の邦題、および日本での刊行日は創元推理文庫(現・創元SF文庫)版に拠る。第6巻までは、厚木淳による改訳版に差し替えられている。中篇「火星の巨人ジョーグ」"John Carter and the Giant of Mars"はバローズの作品ではなく、息子のジョン・コールマン・バローズが書いたものを、バローズが加筆・修正し、バローズの名義で発表したものである。創元SF文庫では、1999年から2002年にかけて合本版として全4集を発売した。翻訳は、すべて厚木淳による。「木星の骸骨人間」も収録されている。なお、『モンスター13号』は、火星シリーズとは無関係な独立した作品である。上記以外で、シリーズ(3巻以上)として刊行されたものは以下の2種類である。第7巻以降は、講談社版の方が刊行が早い。ジョン・カーターは、火星で家族を得た。火星シリーズの言語では、火星はバルスーム(Barsoom)と呼ばれる。水星、金星、地球、木星は、それぞれラスーム(Rasoom)、コスーム(Cosoom)、ジャスーム(Jasoom)、サスーム(Sasoom)という。火星人はバルスーミン、地球人はジャスーミンとなる。1911年の一般的な火星の知識にしたがって、全土は乾ききり、かろうじて全惑星規模の運河によって灌漑されている世界として描かれている。かつての海底は緋色の苔で覆われ、太古の海岸線に沿って都市の廃墟が並ぶ、滅びかかった世界という設定である。バルスームでは、大気すらほぼ失われており、大気製造工場で光線から合成される大気によって、かろうじてすべての生命が養われている。この滅びの予感は特に第1巻において顕著であり、物語に陰影を与えているが、巻が進むにつれて希薄になっていく。第10巻の『火星の古代帝国』に100万年前の古都の住人が登場、その感慨によって、久しぶりに読者の前に提示される。また、火星は重力が小さく、地球人(ジョン・カーター、ユリシーズ・パクストン)は、ジャンプ力や腕力が(相対的に)増幅されるため、超人的な活躍ができる。「火星人」は大きく分けると2種類になる。地球人型と、それ以外である。地球人型で最も多いのは赤色人であり、それ以外で最も印象に残るのは緑色人である(最初に登場した火星人である事の他に、彼らの一人、タルス・タルカスがジョン・カーターの親友である事、また彼の娘ソラがカーターの友人であり、養育係だった事による)。赤色人や緑色人の成長速度は、地球人と大差ない。反面、長命であり、老化の兆候は、1000歳を過ぎるまで、なかなか表れない。また、決闘や戦争での死を尊ぶ事から、老衰するまで生きることは珍しい。かつてはイサス信仰があり、1000才になるとイス河へ死出の旅に出かけていたが、第2巻でカーターが信仰のからくりを暴いたため、この制限はなくなる。赤色人、緑色人とも卵生であり、緑色人の場合、卵が孵化するまでには5年間かかる。デジャー・ソリスはジョン・カーターの子を生んだが、これが唯一の地球・火星間の混血例である(ただし、ジョン・カーターが生粋の地球人であるかどうかは、彼自身にも判らない)。火星の生物の内、脊椎動物は多肢、もしくは多足である場合が多い。また、哺乳類は一種類しか存在せず、数が少ない、とされる。初期においてはテレパシーによる意思の疎通が重視されていたが、やがて会話に比重が移った。火星人は、ジョン・カーターの心を読むことが出来ない場合がある(カーターからは読める。これが第1巻で火星の命運を左右した)。以下のバルスーム語は、赤色人ら地球人型火星人の他、緑色人も使用する。火星の長さの単位はアドであり、地球のフィートに該当する。1アドは11.694インチ。1ハアド(1火星マイル)は233フィート。1ソファドは1.7インチ。また、1カラドは火星緯度1度。地球では7番目までの光線しか知られていないが、バルスームでは第8光線、第9光線が発見されており、第8光線が実用化している。この光線を使用することで、小型の飛行艇はもちろん、巨大な戦艦まで空に浮かばせることができる。なお、バルスームでは、これらの空中艇・空中戦艦は「空軍(Air force)」ではなく「海軍(navy)」に属していることが、ジョン・カーター(もしくはバローズ)によって強調されている。バルスームの月は2つある。このうち、サリアについては第8巻で登場し、特殊な事象が示されている。本シリーズの主人公ジョン・カーターは、バローズの親戚として設定されている。彼はバローズに遺書と原稿を残しており(第1巻、第2巻)、続巻においては、度々バローズを訪れ、冒険譚を語っている。それ以外にも、グリドリー波による通信で知らされる場合もある。第11巻については不明(2篇とも)。「木星の骸骨人間」には、バローズの「まえがき」に「ジョン・カーターの物語」と明記されているものの、ジョン・カーターが登場する物語でも、パクストンが連絡しているケースもある(第9巻)。スティーヴン・タカクスは、バローズが火星シリーズを著すにあたり、エドウィン・レスター・アーノルドの小説『ガリバー・ジョーンズ中尉とその休暇("Lieutenant Gullivar Jones: His Vacation")』(1905年)の影響を受けていると述べている。ドナルド・A・ウォルハイムとリチャード・A・ルポフは賛同しているが、これには異論もある。ルポフは、火星シリーズの主人公ジョン・カーターの人物像について、同じアーノルドの小説『フェニキア人フラの華麗な冒険("The Wonderful Adventures of Phra the Phoenician")』(1890年)の主人公フラに、その原型が見られるとしている。バローズの火星シリーズに影響を受けた小説は多い。優れたものから単なる模倣に過ぎないものまで、玉石混交である。以下、邦訳のあるものを中心に挙げる(ただし、ほとんどが絶版)。ディズニー/ピクサーが『ファインディング・ニモ』『ウォーリー』のアンドリュー・スタントン監督で『火星のプリンセス』を映画化、『ジョン・カーター』(JOHN CARTER)のタイトルで2012年4月13日に日本公開される。出演は、テイラー・キッチュ、リン・コリンズ、ウィレム・デフォーほか。物語は、妻子を亡くした大富豪のカーターが突然消息を絶ち、残された日記がおいの作家エドガー・ライス・バローズの手に渡るところから始まり、そこにバルスームでの冒険譚が記されていたという、南北戦争から始まる原作とは、設定が異なるものとなっている。
出典:wikipedia
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