モル質量(モルしつりょう、molar mass)とは物質すなわち元素単体あるいは化合物の単位物質量当たりの質量である。「単位物質量」として1 molを選んだ場合、モル質量は、物質の構成要素(原子、分子、およびイオン、あるいは陽イオンと陰イオンなどから構成される1ユニット)6.02214179(30)×10個分((30)は下2桁の不確かさ)の質量であり、構成要素1個分の質量のアボガドロ定数倍に相当する。これは各純物質がもつ固有の物理的性質である。推奨される量記号は formula_1 である。質量のSI単位はキログラムであり、モル質量のSI単位は kg mol (キログラム毎モル)であるが、化学においては通常、実用面あるいは歴史的経緯により1モル当たりのグラム数で表され、単位は g mol (グラム毎モル)が用いられる。モル質量は分子量、化学式量およびそれを構成する元素の原子量と密接な関係にあり、分子量、化学式量または原子量の数値に単位 g mol をつけたもの(正確には、単位 g mol を乗じたもの)に相当する。単位 Da で表される原子質量単位は厳密には 1 Da = 1 u = 1.660538782(83)×10 kg (CODATA 2006) という原子および分子の質量単位であるが、ときにモル質量の単位として用いられ、1 Da = 1 g/mol と定義されることもあるが厳密な意味では正しくない。モル質量は直接測定されることはほとんどなく、多くの場合、各物質のモル質量は原子量から計算され、しばしば化学物質のカタログや化学物質安全性データシートなどに一覧として示される。化学式量と同様に、モル質量はイオン結晶など構成単位が分子として明確に決められない場合、成分1ユニットの単位物質量当たりの質量となる。物質の質量とモル質量および物質量との間には以下の関係があり、質量と物質量は互いに換算される。元素のモル質量は標準原子量に、モル質量定数 1 g mol をかけることにより得られる。( )内は下の桁の数値の不確かさである。原子量は単位のない無次元数であるがモル質量定数をかけることにより、モル質量は g mol という単位を持ち、計算における次元が整合するようにしている。元素単体の中には分子として存在するものもあり、これらの分子のモル質量は標準原子量に分子中に存在する原子数をかけて得られる分子量に、モル質量定数 1 g mol をかけたものとなる。化合物のモル質量は、構成する元素の標準原子量の総和である分子量あるいは化学式量にモル質量定数 1 g mol をかけることにより得られる。複数の化合物の混合物では平均モル質量が定義される。この平均モル質量は特に、個々の分子についてみればモノマーの重合度の異なるものを含む高分子の分野で用いられる。分子量は厳密には相対分子質量と呼ばれる。これは単位を付けない(単位が1の)無次元量である。分子量は分子の質量を表すもので、原子質量単位(1 u = 1.660538782(83)×10 kg)あるいは Da を基準に表される。一種類の元素が異なる同位体を含む場合、複数の異なる相対分子質量が存在することになり、分子量は対象試料中の相対分子質量の平均で与えられ、それが天秤で測定可能な量の物質を扱うのにより適したものである。モル質量は試料中の同位体比を含んだ原子量から算出されるのに対し、試料中の個々の分子の質量は原子の相対質量から算出される。例えば水のモル質量は18.0153(4) g molであるが、個々の水分子の分子質量は安定同位体のみから構成されるものに限っても、最小のもので18.0105646863(23) u (HO)(小数点以下9桁目に現れる質量欠損は考慮せず)、最大では22.0273640(9) u (HO)に達する。このようにモル質量と個々の相対分子質量は区別するべきであり、質量分析計で直接測定されるものは個々の分子質量であり、その精度は数百万分の一である。これは分子の化学式を定めるのに充分な精度である。モル質量の精度は物質を構成する元素の原子量に依存する。多くの元素の原子量はリチウムを除いて1/10000以下の精度であり、その精度は大抵の化学分析や実験室で用いられる試薬の純度より高い。原子量およびそれに追随するモル質量の精度は、元素の同位体比の精度により決まる。対象試料についてより精度の高いモル質量が必要ならば、標準原子量の計算に用いられる標準同位体比とは別に、対象試料のより精度の高い同位体比を定める必要がある。各種測定試料中の同位体比は必ずしも一定ではなく、例えば蒸留された試料ではより軽い同位体が濃縮されることになり、モル質量の不確かさはより顕著になる。実験室では慣例としてモル質量は小数点以下第2位までの数値を採用することが多く、これでも通常要求される精度より充分高い。ただし計算過程の四捨五入に伴う誤差を避ける必要がある。なお、原子量の基となる原子の相対質量は静止して基底状態にある原子間の相互作用のない自由な状態における質量であり、厳密には液体や固体など凝縮相においては蒸発熱や昇華熱に相当する分、さらに分子やその他化合物は結合エネルギーに相当する分だけ質量欠損が生じるが、例えば固体炭素(黒鉛)についてみると、絶対零度における昇華熱が711.20 kJ molであるから、質量欠損は1モル当り 7.9132×10 g に過ぎず、通常の化学実験において問題になることはない。モル質量は通常、原子量から算出されるが、実測せざるを得ない場合もあり実測も可能である。このような測定は質量分析計による原子量あるいは分子量の数値よりはるかに精度は劣るが、原子量を定めてきた歴史上の手段としては関心がもたれる。これらの手法は束一的性質によるもので、測定条件が充分に希薄溶液であると見做すことができ、かつ物質の何らの解離および会合も起こらないという仮定の下によるものである。気体の密度によるモル質量の測定は、一定条件の下で一定体積中に一定数の分子が存在するというアボガドロの法則によるものである。この法則により理想気体の状態方程式が導かれる。ここで formula_2 は気体の圧力、formula_3 は気体の体積、formula_4 は気体の物質量、formula_5 は気体定数、formula_6 は気体の絶対温度である。また気体の密度 formula_8 は気体のモル質量 formula_1 と以下の関係にある。これらの式よりモル質量は気体の密度および絶対温度と以下の関係が成立する。溶液の浸透圧 formula_12 からモル質量を測定することも可能であり、これも気体の状態方程式と同型の式から算出される。ここで formula_13 は溶質の質量でありモル質量は以下の式で算出される。溶質の質量を formula_15 、溶媒の質量を formula_16 とすると質量モル濃度は formula_17 で表され、希薄溶液では formula_18 となるから、モル質量は以下の式で与えられる。溶液の沸点は純溶媒より高く、その沸点上昇 formula_20 は溶液の濃度に比例し、その比例定数であるモル沸点上昇 formula_21 を用いてモル質量は以下の式で表される。ここで formula_22 は溶液に対する溶質の質量分率である。溶質の質量を formula_15 、溶媒の質量を formula_16 とすると質量モル濃度は formula_17 で表され、希薄溶液では formula_18 となるから、モル質量は以下の式で与えられる。モル質量定数(モルしつりょうていすう、molar mass constant)は、記号 formula_29 で表される、モル質量と原子量あるいは分子量、化学式量とを関連付ける物理定数である。原子質量単位 formula_30 にアボガドロ定数 formula_31 をかけたものに相当する。モル質量定数は定義値であり、1×10 kg molである。化学の分野ではモル質量をグラム単位で扱う場合が多いため1 g molとなる。モル質量定数は実験値によるものではなく、モルに基づいて定義されるものであり、静止して基底状態にある自由な C 原子からなる炭素のモル質量は厳密に12 g molとなる。従ってモル質量定数は以下の式で与えられる。ここで formula_33 は C のモル質量、formula_34 は C の相対質量で 12 である。また C 原子の質量は以下の式で表され、キログラム単位で表すと1.99264654(10)×10 kgとなる。
出典:wikipedia
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