慢性活動性EBウイルス感染症(まんせいかつどうせいEBウイルスかんせんしょう、Chronic Active Epstein-Barr Virus infection:CAEBV)とは、EBウイルス(Epstein-Barr virus) が慢性的に体内で活動、増殖を続ける希な疾患である。本質的には白血球増殖性疾患である。CAEBVは現在有効な治療が確立されておらず、血球貪食症候群を併発したり、最終的に多臓器不全や悪性リンパ腫などを発症することで高い致死率を示す予後不良の疾患である。症例は日本をはじめとする東アジア地域に集中しており、欧米諸国では症例がないため、世界での研究が進んでいない。難治性疾患克服研究事業の対象にされている難病であるが、指定難病ではないため、発見が遅れる傾向にあるという。慢性または反復性の伝染性単核球症様の症状が長期間継続し、抗EBウイルス抗体の異常なパターンを特徴とする疾患であり、発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹も特徴に挙げられる。EBウイルスは大多数の人が感染を経験しているものの、通常は特に問題にはならずに済んでいる。EBウイルスはヒトの唾液の飛沫などを介し、幼少期から思春期にかけて自然に感染が起き、ヒトリンパ球内で増殖するが、体内の免疫機構により処理され、多くの場合 抗体が産生されて制御される。風邪症状や扁桃炎などの経過で数日で治癒し、不顕性感染で終わることが多い。一部の人では初感染時にその免疫反応が強く現れることにより、伝染性単核球症を発病するが、それでも数週の経過で自然治癒するため、問題とはならない。日本人の90%以上がEBウイルスに対する抗体を有しており、検査によって過去に感染をしていたと(つまり既感染パターンと)証明される。非常に希なケースとして、EBウイルスの初感染時(あるいは既感染のヒトにおいても)、免疫制御されていたウイルスが何らかのきっかけから体内で再活性化することで、持続的にリンパ球内に感染を生じて体内での免疫制御が不能となってしまうことがある。それにより、慢性的にウイルスが増殖活動し、重症化するということが起こる。これがCAEBVである。この場合、EBウイルスの標的リンパ球はTリンパ球やNKリンパ球であるとされており、この点がBリンパ球を標的としたEBウイルス感染である伝染性単核球症と異なる。これに関しては、EBウイルスは初感染時あるいは再活性化時にはBリンパ球を標的とするが、その際に一部のウイルスがTリンパ球やNKリンパ球にも感染しているものと想定されており、これがCAEBV発病に関与しているとされるが、なぜ発病する人としない人がいるのか、そのメカニズムについてはまだ不明の点が多い。発病と蚊アレルギーとの関連が指摘されている。NKリンパ球がEBウイルスに感染している人は、蚊にさされた後の皮膚が強くただれたり、潰瘍をきたしたりする(蚊アレルギー)ことが知られ、このような人では将来的に高率に16歳前後にCAEBVやEBウイルス関連性悪性リンパ腫を発病するといわれている。上述のごとく小児期のEBウイルス感染がそのままCAEBV発病につながることが多いため、日本では小児科領域での研究・治療が進んでいる。しかし、生活習慣・環境の変化などから成人期での発病症例が徐々に増えていることは憂慮すべき事態であり、今後は内科領域での研究の進展が待たれる(成人症例は少なく症例蓄積ができないことに加え、高熱やリンパ節腫脹などの典型的症状をきたす症例以外にも、肝炎症状や横断性脊髄炎などの神経障害が前面に出る症例など多彩であることから、多くの症例が原因不明で診断がつかないまま各診療科に回されている可能性がある)。初感染では一過性のリンパ増殖性疾患が伝染性単核球症 (IM:infectious mononucleosis)症状として、発熱、急性咽頭炎、頸部リンパ節腫脹、肝脾腫を呈し1〜3ヶ月で治癒する。成人CAEBVの症状は、3週以上にわたる38.3を超える原因不明の高熱、血球減少による貧血・出血症状、肝脾腫などがある。多くの場合は重篤な症状を呈するため、何らかの形で医療機関を受診し、血球分布の異常や肝障害の存在で発見される。そのほかの代表的な症状・徴候として、脾機能亢進症、発疹、ぶどう膜炎、口腔内潰瘍、唾液腺炎、心筋炎、冠動脈瘤などがある。蚊刺過敏症や種痘様水疱症などの皮膚症状を伴うこともある。激烈な症状をきたさず、慢性的な倦怠感などで現れることもあり、慢性疲労症候群と呼ばれている疾患概念の中にCAEBVの一部が含まれていることも、明らかとなっている。感染リンパ球の髄液中への浸潤から神経障害を経て髄膜炎、脳炎、横断性脊髄炎を呈し、意識障害、痙攣、歩行障害などを呈する症例が報告されている。検査としては血液中のEBウイルスのDNA定量(リアルタイムPCR法)が行われ、EBウイルスの増加を証明する。EBウイルス抗体検査ではEBVCA IgGの異常高値やEBNA陰性などの所見が得られることがあり、診断の参考となるが、特異性は低い。そのほか、末梢血や骨髄液中のリンパ球の増加、血球貪食症候群を呈している症例では血球減少と骨髄中への(単球ではなく)の増生、可溶性IL-2レセプター高値、血清フェリチン高値などが見られる。肝障害症例では肝生検で肝実質へのリンパ球の集積がみられ、これらのリンパ球はEBER-1などの免疫染色でEBウイルス陽性を示す。神経障害症例では、脊髄MRI検査で横断性脊髄炎の所見が見られることがある。治療としては、小児領域においては血球貪食症候群を併発した症例で抗腫瘍薬エトポシドと免疫抑制剤(シクロスポリン)の併用療法が行われ、一定の効果を挙げている。それ以外には悪性リンパ腫に準じた抗腫瘍薬による化学療法などが行われている。成人でも小児領域に準じて同様の治療が行われているが、これらのいずれもが根治的な治療とはいえず、再燃や難治化の局面を迎えて最終的に死の転帰をたどることも多い。2015年現在、最も有効なのは同種造血幹細胞移植(骨髄移植)であるとされるが、成功率は約50 - 70%と低く、数年の間に約半数が死亡する予後の悪い病気である。しかし使用薬剤の進歩により、95%の成功率を出す施設もある。
出典:wikipedia
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