ダントロレン(Dantrolene、商品名:ダントリウム)とは筋弛緩薬の一つである。リアノジン受容体を遮断して横行小管から筋小胞体への興奮の伝達過程を遮断することにより筋小胞体からのCaの遊離を抑制し、筋弛緩を引き起こす。全身麻酔で稀に引き起こされる悪性高熱症の治療及び予防の第一選択薬である。悪性症候群、筋痙縮(脳梗塞後、対麻痺、脳性麻痺、多発性硬化症)、2,4-ジニトロフェノール毒性の治療にも用いられる。悪性高熱症に備えて病院には720mg(体重70kgの患者を想定)のダントロレンを備蓄すべきだとする意見が有る。経口薬のみ禁忌が設定されている。注射薬には無い。注射薬の用途は主に救命であり、禁忌を回避して患者が落命する事の無い様にこれらの項目は『慎重投与』に設定されている。但し、過敏症状の出た患者に使用出来ない事は論を俟たない。妊婦に使用した場合の安全性は確立していないので、治療の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すべきである。分娩直前の妊婦に使用して児に筋緊張低下が見られた事が有る。ダントロレンは母乳中に移行するので、授乳を避けるかダントロレンを中止する必要が有る。経口薬、注射薬に共通の重大な副作用に呼吸不全(0.1〜5%未満)、ショック(0.1〜5%未満)、アナフィラキシー(0.1〜5%未満)、イレウス(0.1〜5%未満)が有る他、経口薬の重大な副作用として黄疸(0.1%未満)、肝障害、PIE症候群、胸膜炎が有る。中枢神経系の副作用が特に多く、構音障害、視覚障害、抑鬱、混乱、幻覚、頭痛、不眠、痙攣の増悪・頻発、緊張増加が挙げられる。より頻度の低い副作用には、呼吸抑制、呼吸苦が有る。自動車の運転や機械の操作に差し障る程の鎮静を起こす。消化器系の副作用として、異味、、嘔気、嘔吐、腹部痙攣、下痢が起こる。肝臓に関しては、非症候性の及び/又はビリルビン上昇、そしてより重篤な致死性/非致死性肝炎が挙げられる。肝炎の危険性は、ダントロレン投与期間と投与量に依存的である。悪性高熱症に短期間使用した場合の肝毒性は観察されていない。心膜炎を伴う胸水(経口薬のみ)や、稀に、広範囲の筋痛、背部痛、皮膚の異常、一過性の心血管異常、が見られる事が有る。治療後数日間、筋力低下が生じる。30ヶ月間長期癌原性試験(ラット)及び18ヶ月間慢性毒性試験(ラット)でダントロレンの発癌性が示唆されたが、24ヶ月間長期癌原性試験(マウス)では所見は見られなかった。細菌を用いた復帰突然変異試験(Ames試験)及び哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験の結果は陽性であった。ヒトでのこれらの臨床経験は報告されていない。ダントロレンは骨格筋のリアノジン受容体に結合して興奮収縮連関を抑制し、遊離カルシウム濃度を低下させる。化学的には、ダントロレンはヒダントイン誘導体に属するが、同じヒダントイン誘導体であるフェニトインの様な抗癲癇効果は見られない。 ダントロレンの水への溶解度は低いので使い難い面が有る。21世紀初頭にはダントロレンの水溶性類縁物質であるアズモレンがダントロレンと同じ効能・効果の取得を目指して開発されていた。アズモレンはニトロ基の代わりにブロモ基を持ち、水溶性が30倍高くなっている。ダントロレンは下記の薬物と相互作用する。ダントロレンが最初に学術文献に登場したのは1967年で、幾つかのヒダントイン誘導体が新規筋弛緩薬として提案されたものの一つであった。その後広く研究される様になり、骨格筋への作用の詳細が報告されたのが1973年であった。ダントロレンは1975年に悪性高熱症への有効性が明らかとされる以前から痙縮の治療に多く使用されていた。遺伝的に悪性高熱症を発症し易いブタを用いてハロタンで実験的に発症させた場合、ダントロレンを点滴静脈注射した際の救命率は87.5%(7/8)であった。後にヒトを対象とした大規模多施設臨床試験が実施され、1982年に結果が公表されて有効性が確かめられた。有効性は1993年には疫学的にも確認された。ダントロレンを使い始める前は、悪性高熱症に有効な薬剤はプロカインのみであり、その有効性は動物実験では6割に過ぎなかった。
出典:wikipedia
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