遠望型衛星追跡艦(えんぼうがたえいせいついせきかん、ユァン‐ワン、Yuanwang)は、中国人民解放軍海軍の運用する衛星追跡艦兼ミサイル追跡艦である。その任務が共通することからいずれも同じ艦名だが、設計が同型というわけではない。中国の弾道ミサイル開発と宇宙開発を成功させるにあたって、中国領外からの長期に渡る精密な観測が必要であることが一つの課題であった。当時孤立状態にあった中国の外交状況では他国に追跡局を設けることは難しく、艦船による観測追跡が行われることになった。その任務は、現地の気象観測から、人工衛星とミサイルの観測、追跡、制御、分析、それらを悪天候にも耐えながら海上で長期に渡って行い、本国に報告することである。そのためには巨大な船体とその姿勢制御システム、数多くの高度な観測装置や通信装置、数百人の技術者を長期間適切に養う広い船室やプールなどの保養設備が要求された。さらに、着水したミサイルを回収し、何らかの事故により急遽地球に帰還して着水するかもしれない宇宙船と宇宙飛行士の救出に備えるのも任務のうちである。運用初期の眼目は特に発射されたミサイルの追跡にあったが、宇宙開発の拡大と技術向上により、現在では宇宙船への指揮までも行うことができる。また、おそらくは他国のミサイルや衛星の追跡も行っていると考えられている。遠望型衛星追跡艦は、全艦が人民解放軍海軍の衛星海上測控部に所属しており、蘇州を定係港としている。ファンネルマークは長らく「赤い星に3本の青い波線」であったが、遠望6号は水色地に衛星海上測控部の英名略称である「CSMTC」が黒字で書かれたものになっており、他の艦も同様に変更されると考えられる。遠望は任務のため太平洋、大西洋、インド洋に広く散らばり、長期に渡って行動する。そのため中国は船上観測において世界でも有数のノウハウを持つ国になったと言われている。中国は宇宙開発のためにアフリカに複数の拠点を持っているが、特に重要な太平洋域には、キリバスのタラワに宇宙観測基地を設けたこともあるが、2003年11月にキリバスが台湾と外交関係を持ったことに反発した中国がキリバスと国交を断行し、その際に宇宙観測基地も撤退したことで太平洋域の観測基地がなくなってしまったため、遠望による船上観測の重要性はあがっている。2008年4月と2011年7月にはデータ中継衛星天鏈1号が打上げられ、神舟7号の運用から使われるようになったため、データ中継衛星、地上局、遠望型衛星追跡艦を組み合わせて宇宙機の追跡運用を行うようになってきている。1960年代半ばから、弾道ミサイル開発のために落下地点となる南太平洋に派遣する追跡艦の構想が練られ、その結果第一世代にあたる遠望1号, 2号が1979年に就役した(進水はそれぞれ1977年8月31日と1978年9月1日)。1980年3月には、ミサイルの実射演習のために、この2隻と補給艦、サルベージ船、さらに護衛のための駆逐艦まで加わって編成された20隻以上の一大観測船団が、南太平洋はフィジー近辺に進出して、5月に行われた東風5号ミサイル試験を待ち構えた。1982年のSLBM巨浪1号の実射も同様に追跡した。また、中国初の静止気象衛星などの衛星打ち上げ時の支援追跡も多く行った。CバンドとSバンドの追跡用レーダーを装備し、HF, ULF, UHF帯での通信が可能。遠望1号, 2号は1986年に海外の商業衛星の打上げ受注に対応するための近代化改造を受け、1996年にもう一度将来の有人宇宙飛行計画のための大改造を施された。これにより搭載機器は3号と同程度の能力にアップグレードされたと考えられている。神舟計画では遠望1号は日本海に展開し、衛星分離のモニタと太陽電池パドルの展開コマンドの送信をサポートした。遠望2号は南太平洋に展開し、初期のパーキング軌道への投入確認を行った。この2隻は2008年の神舟7号の追跡支援を終えた後退役した。遠望1号, 2号の実績からより本格的な衛星追跡能力と、有人宇宙飛行の支援に従事しうる能力を求めて建造された第二世代の衛星追跡艦である。1995年に就役した。神舟計画の重要な役割を担う艦として当初から計画され、極めて高度な機器類を搭載し、多数の技術者が乗船するため「浮かぶ科学の城」と呼ばれた。神舟計画では大気圏再突入時をサポートするために南大西洋のアフリカ沖に展開された。神舟5号の大気圏再突入指令もこの艦から発せられた。格納庫は持たないが、後部にはヘリコプター甲板を装備している。遠望4号は新規建造ではなく、1970年代末に建造されミサイルの再突入体の回収などに使われた海洋調査船向陽紅10号をクレーンや通信マストを撤去して衛星追跡用のレーダーアンテナを設置するなどの改造をして1999年に再就役させたものである。追跡と通信中継が主な役割で、他の艦のようなコマンド送信能力はない。神舟計画では南太平洋に展開し、宇宙船と北京の管制センタの間で映像と音声の中継を担当した。2007年半ばに火災事故を起こしてひどい損傷を受けたため、退役となった。最新鋭の第三世代衛星追跡艦で、「遠望5号」は2007年9月に、「遠望6号」は2008年4月に上海の江南造船所で竣工した。外観は2008年に就役した岱山島級病院船に類似しており、艦体を共有している可能性がある。6号は当初4号の代替とし、改めてこの艦を4号と命名するとの報道があったが、その後6号として竣工した。また、第一世代である1号/2号の代替とも考えられている。USB(unified S-band)追跡レーダー・通信アンテナ、Cバンド追跡レーダー、レーザー測距機器などを装備している。遠望6号は竣工後、同年9月の神舟7号の海上観測が初任務となった。その後、2009年4月29日から5月4日に香港に寄港し、一般市民に公開された。遠望6号は遠望5号とほぼ同型であるが、ミッション管制センターを2つのフロアに装備している。
出典:wikipedia
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