ファイトプラズマ(Phytoplasma)とは、植物に寄生し病害を起こす一群の特殊な細菌である。以前はマイコプラズマ様微生物(Mycoplasma-like organism:MLO)と呼ばれた。偏性細胞内寄生性で、植物の師管とある種の昆虫に寄生する。これらの病原体は古くはウイルスと考えられていたが、1967年にマイコプラズマに似た細菌として発見された。ヨコバイやウンカなど師管液を吸う昆虫によって媒介され、これら媒介昆虫の体内でも増殖する。ココヤシやサトウキビなど熱帯の作物の病原体が特に問題となっており、ほかにもイネ萎黄病をはじめ多数の作物の病原体を含む。症状はわずかな黄化から枯死まで多様である。これらの原因としては、師管での増殖により栄養の転流が妨げられること、またストレスにより光合成その他の代謝などが影響を受けることが考えられている。また特徴的な症状として、天狗巣病症状や、花の葉化などの奇形を起こすものも多い。これらについては植物の生長・発生を調節する遺伝子の発現に対する影響によることが明らかにされつつある。中には新たな栽培品種として扱われたものが、実はファイトプラズマによることが明らかになった例(アジサイ、ポインセチアなど)もある。細胞壁を欠く点ではマイコプラズマに似るが、これと違い宿主細胞なしでは培養できない。直径は約0.1ミクロン。細胞膜には内部から分泌される蛋白質が膜タンパク質として多量に存在し、これが媒介昆虫の種類を決めると考えられている。昆虫に感染したファイトプラズマは、血リンパに乗って全身で増殖したのち、唾液腺から出て、吸汁によって再び植物に感染する。植物体内では師管液に乗って全身に広がる。ファイトプラズマのゲノムは非常に小さく、500~1000キロ塩基対前後、遺伝子数も数百個しかない。またGC含量が全生物のゲノムで最も低い(最低で23%)。普通の生物が持つ遺伝子の多くを欠く。例えば、TCA回路、電子伝達系、F型ATP合成酵素、ペントースリン酸経路、アミノ酸・脂肪酸合成経路のほとんどを持っていない。特にATP合成酵素の欠損は生物としてかなり特異なことである。クラミジアやミトコンドリアにみられるATP/ADPトランスロカーゼも発見されておらず、ATPの供給は解糖系に依存している可能性がある。培養できないため、診断にはかつては電子顕微鏡観察や抗生物質の影響を見るしかなかった。しかしその後ELISA法、さらにポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による方法が開発され、PCRを用いて種類の同定もできる。防除には、抵抗性品種の利用や媒介昆虫の防除が行われている。有効な薬剤はあまりなく、抗生物質(テトラサイクリン)も増殖を抑えるだけで殺菌効果はないのであまり利用されない。感染した植物から感染していない部分の組織培養により正常個体を再生することは可能である。ファイトプラズマは、マイコプラズマなどと同じく、テネリクテス門モリクテス綱に属する。ただしマイコプラズマとは離れたグループである。属名"Phytoplasma"は暫定的に用いられているがまだ正式ではない。培養できず、16SrRNAなどの遺伝子配列で比較する方法しかないため、分類はまだ確定的ではない。
出典:wikipedia
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