アーベル圏(アーベルけん、)とはアレクサンドル・グロタンディークによって考案された、ホモロジー代数が展開できるよういくつかの公理を満たす圏である。元来、層係数のコホモロジー理論(層コホモロジー)と定数係数のコホモロジー理論は、定義および構成方法がまったくといっていいほど異なるにもかかわらず、理論の構造は酷似していた。そのため両者を統一的な観点から記述するために考案された。しかしながら知られているすべてのコホモロジー理論がアーベル圏上で展開できるわけではない。以下の4条件を満たす圏 C を加法圏という。で定まる射 "r": "X" ⊔ "X" → "X" × "X" が同型である。が零射であるような射 "a": "X" → "X" が存在する。ただし、"X" → "X" × "X" と "X" ⊔ "X" はそれぞれ対角、余対角射である。以下の2条件を満たす加法圏 C をアーベル圏という。アーベル圏では Ab と同様に完全系列や射影的分解が定義される。アーベル圏 B, C および B から C への加法的関手 "F" を考える。このとき B の任意の対象 "b" に対して "b" の入射的分解をから "C" における系列を得ることができる。しかしこの系列は一般には完全にはならない。したがってそのコホモロジーをとることができる。このようにしてひとつの関手 "F" から B から C への番号付いた関手 "R"F" を得ることができる。この関手 "R"F" を "F" の右導来関手と呼ぶ。"X" を位相空間とし "X" の開集合系が張る圏を Top("X") であらわす。このとき Top("X") 上の層全体が成す圏 Sh(X) はアーベル圏である。任意の層 formula_7 に対して切断関手は Sh("X") から可換環の圏 Ring(あるいは加群の圏 "R"-Mod、あるいは集合の圏 Sets)への加法的関手である。したがって上述の導来関手の理論が使えて、コホモロジーが構成できる。アーベル圏はもともと "R"-加群の圏の一般化として定義されたが、実は任意のアーベル圏はある "R"-加群の圏へ忠実、充満かつ完全な埋め込み関手が構成できる。すなわちアーベル圏の理論は "R"-加群の圏の理論に他ならない。またアーベル圏の公理を少し緩めたセミアーベル圏を構成して、その上でコホモロジー理論を展開しようという試みもある。東北ジャーナルにおける論文 においてグロタンディークはアーベル圏 A が満たすべき四つの公理(とその双対)について記している。これらの公理は今日においても広く用いられている。具体的にはおよび、これらの双対公理 AB1) および AB2) は加法圏をアーベル圏とするための公理となっている。具体的には、グロタンディークはさらに AB6) と AB6*) と呼ばれる公理も与えている。
出典:wikipedia
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