炎上(えんじょう、)とは、不祥事の発覚をきっかけに、非難が殺到する事態または状況を差す。また、このような状態を祭りとも呼ぶ。田代光輝は炎上を「サイト管理者の想定を大幅に超え、非難・批判・誹謗・中傷などのコメントやトラックバックが殺到することである(サイト管理者や利用者が企図したものは「釣り」と呼ばれる)」と定義している。ブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)内の日記は、別途設定をしない限り、誰でもコメント欄にメッセージを残すことができる。ブログ執筆者の言動に反応し、多数の閲覧者がコメントを集中的に寄せる状態を炎上と表現する。この時、コメントにはサイト管理者側の立場に対する賛否の両方が含まれていたとしても、否定的な意見の方をより多く包含するものを炎上とし、応援などの肯定的な投稿だけが殺到するものは普通は炎上とは呼ばない。憲法学者キャス・サンスティーンは、個人がインターネット上で自分自身の欲望の赴くままに振る舞った結果、極端な行動や主張に行き着いてしまうという現象をサイバーカスケードと呼んでおり、炎上もこの現れの一種と言える。国内外に関係なく、炎上と同様の事象が発生している。英語圏では"Flare"と呼ばれ、炎が燃える様子を表す用語が用いられるなど、日本と共通している。弁護士の小倉秀夫は、掲示板上で投稿が殺到することをフレーミング・炎上、ブログ上でコメントが殺到することをコメントスクラムと2つに分類している。外部サイトである掲示板のコメントとブログのコメント欄のコメントを比較すると、前者は批判の対象となっている者が比較的無視しやすいのに対し、後者では私的領域にまで踏み込まれている印象を受けるため、無視するのが心理的に難しいという違いがある。日本では、炎上はブログが一般に認知され始めた2004年頃から発生するようになった。2005年1月頃に朝日新聞の記者のブログが炎上した際、それに言及した山本一郎のブログで「炎上」という語が使用されており、小倉秀夫がコメントスクラムと呼んでいたものが炎上と呼ばれるようになっていった。自身もブログ炎上経験を持つウェブコンサルタントの伊地知晋一によれば、炎上の発生件数は調査方法が確立されていないため、正確には不明であるとしながらも、おおよそ年間60 - 70件程度と述べている。また、炎上の発生から終息までの期間は、2週間から6か月程度であるという。ネット上では炎上中のブログを探して楽しむ「炎上ウォッチャー」と呼ばれる人がおり、炎上中のブログをまとめたウェブサイトも存在する。外部リンクも参照。Twitter上でも失言、なりすましなどに起因する炎上騒ぎが発生している。ただ、Twitter上で特定個人への批判が殺到するような事例は、ブログや掲示板が舞台となる場合と比べると、炎上が起こっているということが閲覧者にとって直感的に把握できない造りになっている。Twitterの仕様上、当事者がつぶやく(記事投稿する)毎に記録が順次積み重ねられ、記録が流れて見つけにくいことが理由とされる。個別に参照するにしても検索機能を逐一利用する必要が生じるため、見方を変えれば炎上を抑制する方向に設計されたアーキテクチャであるとも言える。炎上の発生から激化までの過程には、藤代裕之は、巨大な電子掲示板サイトやニュースサイトなどが一役買っていることが多いとして、これらをミドルメディアと名付けた。前者は、ブログやSNSなどに書き込みが集まる中で大型掲示板に記事を投稿し、さらに多くの人の書き込みがそのブログやSNSなどに集中する。後者は、ブログやSNSなどで起こった小規模な炎上が、ネット上の様々な出来事を紹介する中規模なニュースサイトに掲載されて炎上が加速し、さらに大手メディアで紹介されることにより炎上の被害が拡大していく。例えばJ-CASTニュースは、ネット上の炎上事件を積極的に取り上げることから「炎上メディア」と呼ばれることがある。この他、探偵ファイル・ガジェット通信・Narinari.com・トレビアンニュースといったニュースサイトや各種まとめサイトなどで、炎上の話題が取り上げられる。この両者が複合して極めて大きな炎上に至る場合や、発火点がブログなどの書き込みではなく現実世界でのなんらかの出来事から、大型掲示板やニュースサイトでの報道を経由する場合もある。伊地知晋一によれば炎上が激化すると、抗議はブログ・SNSのコメント欄や掲示板への書き込みに留まらず、多様な方法が見られるとしている。メール、架電(いわゆる電凸)、発展すると関係者への抗議やデモ活動といった事態に至ることもあるとする。その途中、有志がまとめサイトと呼ばれるWiki形式のサイトを立ち上げることがしばしばある。そこでは、炎上に至った事件とその後の経過が整理されて解説されている他、電話やメールなどで抗議する際のテンプレートまで用意されており、まとめサイトが設置されるようになると炎上はかなり深刻な事態に達しているといえる。企業ではなく一般の個人を対象とした炎上であっても、それまでのブログやSNSの日記における様々な日常生活の記述を総合し、住所や勤務先などが集合知的に暴かれてしまうことがある。企業の場合、取引先にまで抗議が及んで営業に支障をきたす場合もある。また、触法行為を自慢するネット上の書き込みによって炎上を誘発してしまった従業員が、それを理由に会社から解雇されるような事例もある。田代光輝は、オールポートとポストマンによる噂の公式のR= i×aを応用し、炎上の広がりを「炎上の広がり∝関心の高さ×状況の曖昧さ」であるとしている。例えば、政治・宗教・スポーツは関心も高く曖昧であるため、炎上しやすいテーマである。特に政策による原発問題、外交(歴史認識や領土問題)などは曖昧な状況が続くために炎上しやすく、炎上が継続しやすいともされる。また、特に「食の衛生」は日本で「関心」が高いテーマである。1つのテーマで炎上が起こるとそのテーマに対して「関心」が高くなるため、類似の事例で炎上トラブルが連鎖する現象が起こるともしている。ブログ炎上の最終的な結果としては、元の状態に戻る場合、コメント欄が廃止されて双方向性は失われ、一方的な情報発信となるがブログ自体は継続する場合、そしてブログ自体が閉鎖してしまう場合の、大きく3つがありうる。炎上を発生させないための最も確実な方法は、ブログはコメント欄、企業のウェブサイトであれば問い合わせフォーム・掲示板といった「炎上が発生しうるような場」を、初めから設定しないことである。コメント欄などを設置する場合でも、炎上につながるような、無礼・不謹慎な発言、犯罪行為の告白、尊大な言動、価値観の押し付けや否定、意見が対立しやすいトピックへの言及などの発言をしないように注意することで、ある程度は炎上を予防することができる。炎上が発生してしまった場合は、まずはじめに実際に自分に非があったと認めるかどうかを判断するべきだと、炎上に関する書籍などでは指摘されている。非を認める場合、早急に誠意のある簡潔な謝罪コメントを発表するのがいいとされる。この時、謝罪文に言い訳や抗議など謝罪以外の要素を含めるとかえって反発を招く可能性があるため、そういったことは書かないほうがよい。脅迫・中傷への対応が必要であれば警察へ通報したり弁護士に相談するなどの対処を淡々と行う。非を認めない場合、断固として批判に対して反論を続けるか無視することとなる。個人のブログであれば炎上後も高い頻度でブログを更新することによって、過去のログまで丹念に調べるような閲覧者を除けば、火種となった記事が閲覧されにくくなるので、そのまま終息する場合もある。サイトやブログを閉鎖してしまうという対処法もあるが、炎上発生直後の閉鎖はかえって事を大きくしてしまう危険性があり、また抗議先がなくなったことにより現地訪問を試みる動きが加速する可能性もある。特にブログなどで炎上の火種となった記事だけを削除するなどの対処は隠蔽行為と解釈されて批判の激化を招きかねず、Googleのキャッシュやウェブ魚拓などから削除したサイトの中身が閲覧できるようにされることがあるとされる。伊地知晋一による分類に沿って考える場合、批判集中型については率直に謝罪するか持論を継続し、議論過熱型は静観し、荒らし型は黙々と削除して対処するのが望ましい、という。山本一郎は炎上したときの具体的な対策について、速やかな消火のためには「かなり早い段階で謝罪する」ことが肝要だという。お詫びの仕方も「お騒がせしてすみません」と、世間を騒がせたこと、関係者に迷惑をかけたことについて全方位に低姿勢で謝罪するほうが良い。嘘をついたり、事実はそうでも部下や関係者がやったと釈明するのは「最悪の一手」であり、作品を監修したのは自身であることを認めるべきである。一方で、初手の有力な方法として「徹底的に無視する」ことも採用し得る。この場合は、その件に一切触れない心構えが必要で、炎上の規模の見極めが重要だ。騒ぎが大きくなりすぎると、謝罪が遅れることで取り返しのつかない話になりやすいし、問題が起きて釈明が無ければ関係者の界隈はその誠実さを疑う。鎮火を促す最後の方法は、ネットで騒ぐ連中を次々と訴えること。行き過ぎた、間違った情報を元に話題を炊きつけている人物を特定し、黙々と、徹底的に、すべて訴える。中川淳一郎によると、「ネットの作法」がわからないまま、狭い世界で、身内同士、あるいは、一部のトップクリエーターをありがたがる者が炎上する本人を擁護し、ネットの意見を「素人は黙ってな」的に上から目線でバカにすることは、ネットで更に嫌われ、攻撃の対象になってしまう場合があるという。自分に否があるなら、すぐに謝るという判断が下せるか。逆に相手に間違いがあるなら、訴訟も辞さない強さを持てるか。それができないなら、黙っていた方がいいと諭し、「インターネットを甘く見るな」ということに尽きると強調した。コンピュータ利用教育学会(CIEC、シーク)にて田代光輝は、炎上の発生する原因に注目し、以下のような5種類に分類している。日経デジタルマーケティング記者の小林直樹は、炎上のパターンを以下の6つに分類している。伊地知晋一は、炎上を反社会的な行為の自慢や、非常識・幼稚な主張を行ったりして批判が殺到する「批判集中型」のほか、「議論過熱型」「荒らし」の3種類に分類し、実際にはそれらが複合的に組み合わされて炎上が起こるとしている。ライターの中川淳一郎は、炎上を「義憤型」「いじめ型&失望型」「便乗&祭り型」「不満&怒り吐き出し型」「嫉妬型」「頭を良く見せたい型」の6つに分類している。炎上から派生したネット用語として、以下のようなものがある。北田暁大によれば日本のインターネット上のコミュニティではしばしば、内容そのものよりも形式的な作法や感情の盛り上がりに従ってコミュニケーションを連鎖させていくこと自体を重視する「つながりの社会性」という現象がみられると論じられる。炎上についても、当初は内容面だった対立が次第に語り口などの形式面への批判へスライドしていくという傾向が見られ、この枠組みで捉えることができるといえると論する。2004年から2年間にわたって開催されたised(情報社会の倫理と設計についての学際的研究)の倫理研では、日本ではインターネット・携帯電話などの情報技術の発展が新たな民主主義の可能性や電子公共圏の構築には寄与せず、炎上・コメントスクラムを含むつながりの社会性による無内容コミュニケーションを増幅させるにすぎないのではないか、という問題意識から様々な議論を行っている。伊地知晋一は、大手メディアが取り上げなくとも炎上がきっかけとなって政治家や大企業が公式に謝罪発表するというような事例はインターネットの台頭以前には考えられなかったことであるとし、ネット上で個人が意見を発表して問題点を共有するネットデモクラシーの動きの象徴として炎上を捉えている。評論家の荻上チキは、炎上を含むサイバーカスケード現象について考察する中でイラク日本人人質事件後のネット上でのバッシングや自作自演説の発生の社会的背景などについて考察した。ライターの中川淳一郎は、荻上のこの考察や前述の伊地知晋一について2007年頃まではほぼ同意していた。しかし、自身もネットニュースの編集に携わる中で炎上をウォッチしたり炎上予防に神経をすり減らしたりしているうちに、やがてそれらの意見に疑問を持つようになったと述べており、その背景を分析する立場はとるのは困難であるとしている。2015年には「インターネットを甘く見るな」ということに尽きると強調している。山本一郎は、劇場型の炎上が増えていく中で、炎上する「神輿」一人に問題を叩きつけるだけでなく、問題の原因となったそもそもの仕組みを発掘し「正しく」騒がなければならないと論じ、「炎上が楽しいのはわかるけどやり過ぎないようにね」とコメントしている。
出典:wikipedia
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