淫行条例(いんこうじょうれい)は、日本の地方自治体の定める青少年保護育成条例の中にある、青少年(既婚者を除く18歳未満の男女)との「淫行」「みだらな性行為」「わいせつな行為」「みだらな性交」また「前項の行為(=「淫行」など)を教え・見せる行為」などを規制する条文(淫行処罰規定)の通称である(正式な名称ではない)。 条例の種別においては、「淫行」の処罰を条例に委任する法令の規定がないため、自主条例の位置づけとなる。また、法令は淫行条例制定の主体を特に都道府県に限定していないため、都道府県条例が存在しない場合、それに代わって市町村が淫行条例を制定することも可能である。最高裁判所の判例によると、淫行条例により規制される「淫行」とは以下のことである。ただし当事者双方が「『真摯な交際関係』の上で性行為があった」と考えていても、「淫行」に当たると判断され逮捕されるケースもある。このような場合、青少年の親権者が告発し、それに基づき逮捕されるケースが多い。2016年3月31日時点の警視庁ホームページでは「淫行」処罰規定に以下の除外条件が記載されている。「なお、婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある場合は除かれます。」違反行為について親告罪としている淫行条例は2006年現在存在しない。2005年の時点では、兵庫県青少年愛護条例のみがこれを親告罪としていた。また淫行条例の多くは「淫行の行為者が青少年であった場合には罰則を適用しない」としているが、これは「罰則が適用されない」だけであり、青少年同士の「淫行」でも条例違反(違法)と見なされることに変わりはなく、補導などの対象になる。例えば東京都青少年の健全な育成に関する条例30条では、「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない」と、違反だが罰しないと明言している。違反対象ではないとはしていない。多くの自治体で、最高刑を地方自治法14条の許す限度の上限である懲役2年に定めている。淫行条例と、児童福祉法第34条1項6号「何人も、次に掲げる行為をしてはならない。…児童に淫行をさせる行為」との規定との線引きが曖昧になっており、「児童に淫行をさせる行為」は「児童をして自分自身と淫行させる行為」つまり「児童と淫行する行為」を含むことがある。なお、児童福祉法に言う児童も青少年と同じ18歳未満の男女を意味する。東京高等裁判所の判例によると児童福祉法による淫行させる行為とは以下のことである。つまりその自治体の淫行条例が限定的である場合、その自治体の淫行条例では検挙されない行為もこの規定で検挙されることがある。この規定は後述する「長野県児童福祉法違反事件」で判例の解釈が大幅に変わって上記のように解されることが多くなった。それ以前は、「自分以外の第三者と児童を淫行をさせる行為」のみが基本的に対象であった。また、児童福祉法の淫行罪は、少年法第37条の削除により地方裁判所の管轄となったが、加害者が少年(20歳未満)であった場合は家庭裁判所に係属することで定着している。また、条例違反か児童福祉法違反かを問わず、児童淫行の加害少年(20歳未満)に関しては、少年法第61条の規定により実名報道は制限される。福岡県青少年保護育成条例違反被告事件の最高裁判決においては、3名の裁判官(伊藤正己判事・谷口正孝判事・島谷六郎判事)が「福岡県の淫行処罰規定は違憲であり、被告人は無罪である」という趣旨の反対意見(少数意見)を述べている。たとえば谷口正孝判事(当時)は、「青少年の中でもたとえば16歳以上である年長者(民法で女子は16歳以上で婚姻が認められている)について両者の自由意思に基づく性的行為の一切を罰則を以て禁止することは、公権力を以てこれらの者の性的自由に対し不当な干渉を加えるものであって、とうてい適正な規定とはいえない」としている。また女子の場合、婚姻可能年齢との矛盾も抱えている。学説上は、個人のプライバシーを侵害しかねず恣意的に解釈される、罪刑法定主義に反するなどの批判的な意見や、政府・国会が立法を懈怠して、その責任を地方自治体に丸投げし、条例制定権に委ねた結果、法定刑や構成要件に不均衡が生じていることや、地方自治法第14条第2項の罰則が限定的であり、厳罰化に対応できない点などの制度的欠陥から、国(政府)による法規制を求める意見もある。また、児童の権利と保護に関する世界的な流れや性交同意年齢に関する国際的な動向にも反し、それに反してもこうした規制を行う日本独自の理由もない、捜査の過程で「淫行」の相手方である青少年に与える著しい精神的ダメージについてほとんど考慮されていない、親告罪になっていないなどといったという批判が主流である。また、本来淫行条例は条文の構成要件としては限定されなかったケースがほとんどであるものの、主に児童買春を処罰する目的で制定されたのであって、児童買春法が制定された以上は不要であるという意見や、児童福祉法の淫行処罰規定を全ての児童淫行事件に適用すればよく、その場合においては法律が優先されるため条例は不要であるという意見もある。なお、日本弁護士連合会は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案」及び「刑法の一部を改定する法律案に対する意見書」(1998年5月1日)において、「親・教師などによる対償を伴わない性的虐待」を処罰するための法整備をすみやかに行い、淫行処罰規定は全面的に廃止する必要があるとしている。この意見書は、エクパットのサイトで見ることができる。マサチューセッツ州では16歳未満との性行為を制限するものが存在する。もちろん、性行為に関する年齢制限すなわち性交同意年齢(=性的同意年齢=合意年齢=承諾年齢)は存在する。この性交同意年齢が、性行為に関する実質的理解が可能か否かを基準の中心にして設定されているのに対し、淫行条例の多くは性行為に関する実質的理解ができても「みだらな」ものは違法であるという基準に基づいて設置されていると考えられる。この条例に違反した者が16歳未満だった場合は対象か、または違反した者が16歳以上だった場合に処罰されているかは定かではない。これらは全て国家法(政府による法規制)であり、条例という形で地方自治体に立法責任を押し付けていない点で、日本と異なる。各条例の名称や制定年月日は青少年保護育成条例参照。2006年3月24日に18歳未満の少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある性行為を補導の対象とする、「奈良県少年補導に関する条例(平成18年奈良県条例57号)」が奈良県議会で自民・公明などの賛成多数で可決・成立した。本条例には、性的自由を著しく制限するものであるの意見もあり、日本弁護士連合会も反対の立場をとっている。
出典:wikipedia
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