ファカルティ・ディベロプメント (Faculty Development、FD)とは、「大学教員の教育能力を高めるための実践的方法」のことであり、大学の授業改革のための組織的な取り組み方法を指す。ファカルティ=Facultyとは、大学の学部などの教員組織や教員集団を指す。ディベロプメント=developmentとは、能力開発の意である。類似の語に、スタッフ・ディベロプメント (Staff Development、SD)やプロフェッショナル・ディベロプメント (Professional Development、PD)があり、大学教職員および大学組織の職能開発の取り組みとして、広義のファカルティ・ディベロプメントも提唱されている。さらに広範囲の領域を指す教育開発(Educational Development)が、大学開発(Academic Development)とその質を向上させる支援活動を包含する。戦後ベビーブーマーたちが学んだマスプロ教育では、大学の授業は教授の専門領域が一方的に話されるのみであったが、少子高齢化にともなって、大学が学生のニーズに応える教育をする必要に迫られるなかから、さまざまな試みが行われている。当初から「ファカルティ・ディベロプメント」に熱心であるのは、情報システムを構築してきたコンピューターのハードウェア、ソフトウェアの専門家と彼らの利用する業者であり、「ファカルティ・ディベロプメント」の名前を利用して、予算を獲得し、さまざまな「教育支援ツール」を開発してきた。大学の管理サイドからは教育評価のひとつとしての「授業評価システム」を導入し、大学教員の「気づき」を促すというアプローチがある。これは、「評価」を嫌う大学教員の組織的な抵抗があったという歴史があり、多くの大学ではなんらかの抵抗にあったが、アメリカの大学における標準となっていたことから、日本でも2000年以降に定着した。「授業評価システム」は、5点を満点とする減点法であることから、創造的な授業開発が十分に評価されず、学生の期待を上回った授業を提供することに十分な「評価」が行われていないとする教員側の批判がある 。高度職業人教育を目指して設立されることになった専門職大学院には、ロースクール(法科大学院)やビジネススクール(経営大学院)があるが、専門職大学院の設置基準のなかには大学院教員のファカルティ・ディベロプメントを義務づけていることも、この制度の普及が進む追い風となった。アメリカの大学では、学部ごと、また、各学部のなかの業績の高い教員ごとに、「成果主義」にもとづいた報酬体系ができあがっている。たとえば、文学部の教授の給与は、ビジネス・スクールの教授よりも平均賃金が低いのが一般的である。また、顕著な業績をあげた教授をdistinguished professor として処遇を高める制度も確立している。また、教育に優れた教授は学内表彰を受けるといった制度もある。日本の文部科学省は、大学を設置する際に事前に審査する制度から、設置の規制緩和と設置後の外部評価とを組み合わせたシステムに制度を転換してきた。行政官庁による過剰な教育への介入という非難を避けるためと、規制緩和に関する大きな流れがその背景にあった。大学教育の事後評価では、シラバスの整備、授業評価システム、教員の研究成果報告に加えてファカルティ・ディベロップメントへの取り組みが評価されることになった。このために、各大学はこぞってFDセンターなどを設置して、教員の情報交換を開始している。文部科学省は学校教育法の一部を改正する法律(平成17年法律第83号)によって根拠法とし、最初に学校教育法施行規則等の一部を改正する省令(平成18年文部科学省令第11号)によって「大学院設置基準」(昭和49年文部省令第28号)の一部改正を行い、平成19年度に大学院から導入を義務付けた。ついで大学設置基準等の一部を改正する省令(平成19年文部科学省令第22号)によって「大学設置基準」(昭和31年文部省令第28号)の一部改正などにより、大学・短期大学・高等専門学校についても平成20年度に導入した。各大学はFDセンターなどを設立して、1.事例紹介による研究集会、2.授業評価のアンケート調査、3.インターネットのサイトの設定、4.事例集の発行、などを行っている。こうした方法の問題点は、もともと教育熱心な教授がさらに忙しくなり、教育に関心の薄い教授は、あいかわらずの授業を続ける、という状態を回避できていないことにある。eラーニングは、目に見える大学の設備としてパンフレットに掲載するには便利であるために、ファカルティ・ディベロプメントの一つの方法であると解釈され、大学経営陣によって常に一定の投資が行われてきた方法である。しかし、eラーニングと学生の思考力の向上はイコールではない。加えて、大学教員でありながら、こうしたICTの設備利用が苦手な人も当然いる。ハーバード・ビジネススクールでは、講師・助教授・教授の授業風景をビデオで録画し、それを「ファカルティ」メンバーが全員でみて、授業の進行を評価するという仕組みができあがっている。100人を超える大教室の授業は、大学の収益を支える授業形態であるが、学習者への教育効果は低い。ファカルティ・ディベロプメントに関する事例集などは、そうした大教室での「ちょっとした工夫」を集めたものになりがちだが、教員の自己満足という域をでない。抜本的には、少人数クラスにするか、ティーチング・アシスタントをつける、チュートリアル・クラスによって授業内容のフォローアップをする、といった制度の変革が必要になる。ティーチング・アシスタントは大学院博士課程の学生がなることを前提としているために、スチューデント・アシスタントという名称で学部学生を授業補助に使う大学も出ている。下記の参考文献()では「添削」を重視しており、日本の教育のなかで軽視されてきた基本的な教育方法であることに注意を喚起している。また、実践的な方法として、拡張学習の方法を提唱している。合宿、工場見学、インターンシップ、インターゼミナール、社会人に向けたプレゼンテーションなどによって、学生の社会性を増し、論文にまとめて発表の機会を与える方法である。
出典:wikipedia
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