楕円フィルタ()またはカウアーフィルタ()は、通過帯域と除去帯域で等リップル性(equiripple)を示すフィルタ回路の一種。各帯域のリップル量は個別に調整可能で、リップルの値が同じ同一次数の他のフィルタと比較すると、通過帯域から除去帯域への利得の変化が最も素早い。逆に通過帯域と除去帯域のリップルの個別調整をせず、成分変動に影響されないフィルタとして設計することもある。除去帯域のリップルをほぼゼロにしたものを第一種チェビシェフフィルタと呼ぶ。通過帯域のリップルをほぼゼロにしたものを第二種チェビシェフフィルタと呼ぶ。両方のリップルをゼロにしたフィルタはバターワースフィルタとなる。ローパス楕円フィルタの利得を各周波数 ω の関数として表すと次のようになる。ここで R は"n"次楕円有理関数(チェビシェフ有理関数)、formula_1 は遮断周波数、formula_2 はリップル係数、formula_3 は選択係数である。リップル係数の値で通過帯域のリップルが決まり、リップル係数と選択係数の組み合わせで除去帯域のリップルが決まる。通過帯域では、楕円有理関数はゼロと単位元の間で変化する。したがって通過帯域の利得は1と formula_4 の間で変化する。除去帯域では、楕円有理関数は無限大と以下の識別係数 formula_5 の間で変化する。したがって、除去帯域の利得は0と formula_6 の間で変化する。formula_7 の極限で楕円有理関数はチェビシェフ多項式となるので、フィルタとしてはリップル係数 ε の第一種チェビシェフフィルタとなる。バターワースフィルタはチェビシェフフィルタの極限形式なので、formula_7、formula_9、formula_10 の極限で formula_11 となるようにすると、バターワースフィルタになる。formula_7、formula_10、formula_14 の極限で formula_15 かつ formula_16 となるようにすれば、第二種チェビシェフフィルタとなり、その利得はとなる。楕円フィルタの利得の零点は楕円有理関数の極と一致する。楕円フィルタの利得の極は、第一種チェビシェフフィルタの利得の極とほぼ同じ手法で導出できる。単純化するため、遮断周波数を単位元にする。楕円フィルタの利得の極 formula_17 は利得の分母がゼロとなる点である。複素周波数 formula_18 を使うと、次が成り立つ場合である。formula_19 と定義し(cd() はヤコビの楕円コサイン関数)、楕円有理関数を定義を使うと、次の式が得られる。ここで formula_20 かつ formula_21 である。これを "w" について解くととなる。cd()の逆関数の複数の値は、整数インデックス "m" を使うと明示される。したがって楕円利得関数の極は次のようになる。チェビシェフ多項式と同様、これも明示的な複素形式で表現できる。ここで formula_22 は formula_23 および formula_3 の関数で、formula_25 は楕円有理関数の零点である。formula_22 を全ての "n" について表現するには、ヤコビの楕円函数を使う手法があり、三次程度までなら代数的に表せる。一次および二次は次の通り。formula_27ここでである。formula_28 の代数的表現はこれらよりもやや複雑である。楕円有理関数の入れ子特性を利用して formula_22 のより高次な式を構築できる。ここで formula_30 である。一般に楕円フィルタの特性は、通過帯域のリップル値、除去帯域のリップル値、遮断の急峻度などで表される。それによって使用可能なフィルタ次数の最小値が決定される。また設計時に考慮すべきこととして、電子部品の特性値が利得関数にどの程度影響するかという問題がある。これは伝達関数の極のQ値に反比例する。極のQ値は以下のように定義される。そしてこれは、利得関数上の極の影響度合いを表す。楕円フィルタでは、次数を固定してリップル係数と選択係数を変化させると、伝達関数の全ての極のQ値を同時に最小化する組み合わせが存在する。これにより部品の特性のばらつきに最も影響されないフィルタが得られるが、通過帯域と除去帯域のリップルを個別に設定することはできなくなる。このようなフィルタの次数を上げていくと、両帯域のリップルが減少していき、遮断率が高くなる。最小Q値楕円フィルタでリップルも最小化しようとすると、最小Q値でないフィルタよりも次数を高くする必要がある。利得の絶対値を複素周波数平面にプロットすると、前節の図と似たような図が得られるが、極は楕円ではなく真円上に並ぶ。下図は楕円フィルタと他のフィルタの利得を示したものである。いずれも五次のフィルタである。楕円フィルタは他のフィルタよりも急峻だが、全帯域にリップルが生じている。
出典:wikipedia
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