マビノギ四枝( - しし)は、マビノギオンの中で最も有名な四つの物語である。「マビノギ」という言葉はもともとこれらの四篇を指すものであり、それぞれの物語はマビノギという一つの作品の「枝(branch:分岐・支流という意味もある)」と呼ばれる。マビノギオンの中で最も神話的価値がある物語は、ひとりの作者(話者)によって作られたマビノギ四枝(写本でのタイトルはThe Mabinogi)である。それぞれの主人公の名前がサブタイトルになっているのは近代の翻訳上の慣習であり、写本での原題とは異なる。四枝のサブタイトルとその概要は次の通り。四枝に共通してプレデリというキャラクターが登場するが、彼が特に中心人物として扱われているというわけではない。このことから、マビノギの原典は元々プレデリの生涯にまつわる伝説の一部であったが、後世追記されるに伴い、追記された内容のほうが物語の主流になったのではないかと推測することもできる。もっとも、実際にプレデリの伝説が主であったのか、逆にプレデリのほうが、異なる起源の物語をつなぐ存在として後から取り入れられたのかは不明である。四つの話とも、それぞれ"thus ends this branch of the Mabinogi"(マビノギのこの枝はここでお終い)という定型句で終わっており、これが「マビノギ四枝」の名前の由来となっている。第一枝では、ダヴェドの王子プイスが黄泉の国アンヌン("Annwn")の支配者アラウン("Arawn")と領地を交換するいきさつから始まる。その後プイスはアラウンの敵ハヴガンを葬り、帰還の際に美しき乙女リアンノン("Rhiannon")と出会う。リアンノンは誰にも追いつけないだく足の馬に乗っていた。プイスはリアンノンの婚約者グワウル("Gwawl")を決して満たされない魔法の袋に閉じこめて、リアンノンとの婚約にこぎつけた。プイスの軍勢は、グワウルが袋に閉じこめられている間にグワウルの領土を攻め滅ぼした。リアンノンはプイスの子供を産んだが、子供が生まれた後、ある夜に子供は姿を消した。リアンノンは子供を殺した罪に問われ、罰として客を背負って運ぶことを強要された。実際には子供は怪物に連れ去られており、テイルノン("Teyrnon")と彼の妻に救出されていた。子供は金髪のグウィリと名付けられ、のちにプイスの面影があらわれるまで、テイルノンの元で育てられていた。テイルノンはグウィリをプイスの元へ帰し、リアンノンは罰から解放された。プイスの元に戻ったグウリはプレデリと名を改めた。第二枝はブリテンの王ベンディゲイドブラン("Bendigeidfran"、祝福されし者ブランの意)の妹ブランウェンと、アイルランド王マソルッフ("Matholwch")との結婚を扱う。ブランウェンの種違い(父違い)の兄弟であるエヴニシエン("Efnisien")は結婚について説明がなかったことを怒り、マソルッフの馬を斬り殺して彼を侮辱する。だがベンディゲイドブランは作法に則り、新しい馬と宝をマソルッフに償いとして贈った。その中には死者を復活させることができる魔法の大釜もあった。マソルッフがアイルランドに帰還したのち、ふたりの間には子供が生まれ、グウェルン("Gwern")と名付けられた。アイルランドの人々は一度はブランウェンを歓迎したものの、マソルッフが受けた侮辱に再度不満を言いだした。助言を受けたマソルッフの命令でブランウェンはキッチンに閉じこめられ毎日殴られていた。ブランウェンはホシムクドリを手なずけてベンディゲイドブランに手紙を送り、ベンディゲイドブランはマソルッフに戦争を仕掛けた。ベンディゲイドブランの軍隊はアイリッシュ海を船で渡ったが、ベンディゲイドブラン自身はその巨体で歩いて渡った。アイルランドは和平を提示して、ベンディゲイドブランを歓待する大きな屋敷が造られた。中には小麦粉を包んだ100の袋があったが、実際には武装した兵士がその中に潜んでいた。エヴニシエンは計略を疑い、屋敷を調査して袋詰めの兵士の頭をたたき割り、皆殺しにした。その後歓待を受けたエヴニシエンはこれを侮辱と取ってグウェルンを火に放り込み、戦闘がはじまった。アイルランド軍は死者を復活させる大釜を使っていることに気づいたエヴニシエンは、自らの命を犠牲に、霊の中に隠れて大釜を破壊した。戦いの結果、プレデリ、マナウィダン、ベンディゲイドブランを含む七人のウェールズ人のみが生き延びた。だがベンディゲイドブランは毒の槍で致命的な傷を負っていた。ベンディゲイドブランはみずからの首を切ってブリテンに持ち帰るように命令した。ブリテンに着けば、魔法のかけられた食物を口にしている限りいくらか生き延びることができるからである。だがブランウェンは帰還の途中で悲嘆のあまり死んでしまった。アイルランドには五人の妊婦が生き残り、ふたたびアイルランドに人を増やした。プレデリとマナウィダンはダヴェドに帰還した。プレデリはキグヴァ("Cigfa")と再婚し、マナウィダンはリアンノン(第一枝にも登場したプレデリの母)と結婚した。だがそのとき、魔法の霧がダヴェドに立ちこめて、家畜や従者を四人から引き離してしまった。彼らはダヴェドで狩りをして過ごしたのち、イングランドに渡り、現地の職人が及ばないほど上質の鞍・盾・靴などを作って町から町を渡り歩いた。最終的に彼らはダヴェドに戻り、ふたたび狩りの生活をはじめた。狩りの最中、白い蛇がプレデリとマナウィダンを怪しげな城へと導いた。プレデリはマナウィダンの助言に逆らって城の中へ入ったが、戻ってはこなかった。リアンノンが調べに行くと口が利けなくなったプレデリが大杯にしがみついているのを見つけた。同じ運命がリアンノンにも訪れ、今度は城が消えてしまった。マナウィダンとキグヴァは靴職人として再びイングランドへ渡った。だがふたたび地元民は彼らを追放し、ダヴェドへ戻ることになった。二人は三つの畑に小麦の種を播いたが、最初の畑が収穫前に荒らされてしまった。その次の夜二つ目の畑も荒らされてしまう。マナウィダンが三つ目の畑を見張っていると、鼠の群れが畑を荒らしているのに出くわした。マナウィダンはそのうちの一匹を捕まえて次の日処刑することに決めた。すると、学者と司祭と司教が立て続けに現れて、礼はするから鼠を逃がしてやってはどうかと提案したが、マナウィダンは断った。何をすれば鼠の命を助けてくれるか聞かれ、マナウィダンはプレデリとリアンノンの解放と、ダヴェドにかけられた魔法を解くことを要求した。司教はこれに同意した。というのも鼠の真の姿は彼の妻であったからだ。司教は自分の本当の名前がキル・コイトの息子スィウィト("Llwyd ap Cil Coed")であり、友人であるグワウルへの侮辱に対する復讐としてダヴェドに魔法をかけたことを明かした。プレデリが南ウェールズのダヴェドを支配する一方で、北ウェールズのグウィネッズ("Gwynedd")はマソヌウイの息子マースによって支配されていた。戦時でない限り、マースは乙女に足を支えさせていた。マースの甥ギルヴァエスウィ("Gilfaethwy")は当時足を支える役にあった乙女ゴエウィン("Goewin")に恋をして、弟のグウィディオン("Gwydion")とともにマースを騙してプレデリとの戦争に出向かせ、その隙にゴエウィンへ近づこうとした。グウィディオンは一対一の決闘でプレデリを殺し、ギルヴァエスウィはゴエウィンを手込めにした。マースは事態の償いとしてゴエウィンと結婚し、グウィディオンとギルヴァエスウィは、罰として一つがいの鹿、豚、狼に変えられた。彼らが人間に戻されたのは三年後のことだった。マースの足を支える新しい乙女が必要になり、グウィディオンは妹(姉?)のアランロド("Aranrhod")を推薦した。だがマースが魔法で彼女の純潔を調べると、アランロドはふたりの子供を産んだ。ひとりはディラン・エイル・トン("Dylan Eil Ton")ですぐに海へと去ってしまった。もうひとりはグウィディオンに育てられることになったが、アランロドは、彼女以外の誰もその子に名前と武器を与えられないという誓約("tynged"、アイルランド神話におけるゲッシュと同様のもの)を立てた。だがグウィディオンは策略を用いてアランロドにスェウ・スァウ・ゲフェスと名付けさせ、武器を持たせた。さらにアランロドはどんな人種の妻も持つことがないと誓約を立てたので、グウィディオンとマースは協力して花を美しい女性に変え、ブロダイウェズと名付けて彼の妻とした。ブロダイウェズはグロヌウ("Goronwy")という狩人と恋に落ち、スェウの殺害を計画した。ブロダイウェズはスェウを騙して彼を殺せる方法を聞き出して実行に移すが、グロヌウが決行した際、スェウは傷つきながらも鷲に変身して逃れた。グウィディオンはスェウを見つけて人間に戻し、ブロダイウェズをフクロウに変えた。グロヌウはスェウへ償いを申し出るが、スェウは復讐にこだわった。スェウは、隠れていた岩を貫くほど強く槍を投げつけてグロヌウを殺した。
出典:wikipedia
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