ミラージュF1(Mirage F1)はフランスのダッソー社製の戦闘機である。1970年代を代表する戦闘機の一つであり、多くの国で使用されている。(『Mirage』はフランス語で、『幻影』や『蜃気楼』のこと。)ダッソー社が世に送り出した戦闘機ミラージュ・シリーズにおいて唯一、通常の水平尾翼を備えている。1960年代中頃からダッソー社が新世代機のホープと位置付けて自社資金で開発していた単発エンジンの戦闘機であった。しかしながら技術面では50年代の超音速戦闘機と比してさほどの進歩はなく、旧態依然としたものであった。同時期のダッソー社は可変翼やVTOLなどの革新的な新機軸を採用した機体を開発していたものの、価格面から折り合いがつかず、また開発途上であるため、結局の所は保守的な性能の本機が採用された。しかも新機軸を採用した機体の開発はほとんどが頓挫したため、ピンチヒッター的な本機がフランス空軍の主力とならざるを得なかった。ダッソー社製にしては珍しく無尾翼デルタ翼ではなく、通常の後退主翼と尾翼付きの形状となっている。無尾翼形式を採用しなかった理由は、STOL性能の向上のためである。前作ミラージュIIIは、無尾翼形式によりSTOL性に劣り、フランス海軍の艦上戦闘機として採用できないという問題を生じた。その結果、本機はミラージュIIIよりも大幅にSTOL性能を向上させたが、海軍での採用はなかった。武装は、30mm機関砲2門を固定武装とし、空対空ミサイル4発を搭載可能。この他に、通常爆弾または空対艦ミサイルを搭載できる。なお、配備当初は空対空ミサイルが搭載できず、1976年までは武装は機銃のみであった。試作初号機はシュペル・ミラージュの名称で1966年12月23日に初飛行し、1967年5月に飛行試験中に墜落して失われている。1973年よりミラージュF1Cとしてフランス空軍への配備が開始され、12月には最初の飛行隊が編成された。ちょうど同時期には、NATO諸国においてF-104戦闘機の更新が求められており、後継機として輸出を狙ったものの、アメリカのジェネラル・ダイナミクス社製F-16ファイティング・ファルコンと競合した。登場時期では数年の差だったが、旧態依然として新機軸を採用しない本機と、フライ・バイ・ワイヤやCCV設計など新機軸を採用したF-16との性能差は大きく、選定でことごとく敗れ去った。価格面から中東やアフリカ諸国への輸出は好調であり、約500機が輸出された。その後、ダッソー社は、本機において採用されなかった新機軸を積極的に取り入れた新型機としてミラージュ2000を開発した。再び無尾翼デルタ翼形式を採用し、当時の最新技術によって設計のリファインがなされたほか、新型のM53エンジン(A/B推力8,500kg)を搭載してパワーを強化した。続いて、カナード翼を付加したデルタ翼機であるラファールを開発している。そのため、ダッソー社のマッハ2級の実用機において通常の水平尾翼形式を採用した機体としては、本機が唯一の存在となり、前述の通り異端児と評されている。開発国フランスでは2014年6月13日に運用を終了し、7月14日のパリ祭で行われた軍事パレードで最後の飛行を行ったが、海外ではまだ現役で運用されている。ミラージュF1は、保有している国のほとんどで実戦に参加している。南アフリカ空軍機は、ブッシュ戦争において1機がキューバのパイロットの操縦するMiG-23により撃墜され(後日、修復)、またMiG-21と交戦し、少なくとも1機を撃墜している。これとは別個にアンゴラは、MiG-23による数機の撃墜を主張しているが、ほとんどの場合は損傷したものの帰還しており、損失の多くは離着陸の失敗及び機体トラブルであった。当時、短射程のR550マジック及び南アフリカ製のククリ空対空ミサイルしか装備しておらず、主力であったR530系ミサイルが供給されていなかったため、稼働率は低いとはいえ中射程のR-23/R-24を装備したMiG-23に対抗することは困難であった。モロッコ空軍機は西サハラでのポリサリオ戦線との戦闘に投入され、少なくとも3機が地対空ミサイルによって失われた。リビア空軍機は1980年代のチャド内戦への介入で、チャドに基地を置いていたフランス空軍機と同機種同士で交戦した。イラン・イラク戦争ではイラク空軍機が実戦に参加し、イラン空軍機との交戦で数機が撃墜されたが、中射程のシュペル530FミサイルによりF-4と互角の戦闘を行い、数機を撃墜している。1990年のイラクによるクウェート侵攻の際はクウェート空軍機15機がサウジアラビアに逃れ、その際イラク軍のヘリコプター1機を撃墜した。続く湾岸戦争では、イラク空軍機の多くが地上で破壊され、空中でも多国籍軍の機体(主にF-15)に対して、早期警戒管制機の支援を受けての視程外戦闘能力に大差があったこともあり一方的な損害を被った。一部はイランへ逃げ込み、イラン空軍に接収されている。多国籍軍側のミラージュF1(フランス、クウェート、カタール空軍所属機)は、敵味方の識別に失敗して友軍が撃墜してしまう可能性があったため飛行が一時的に中止され、再開されてからは局地的防空や対地攻撃、偵察を行った。エクアドル空軍機は、1995年のセネパ紛争でペルーのSu-22Aと交戦し少なくとも1機を撃墜している。2003年のイラク戦争では、イラク空軍機1機がアメリカ空軍のF-15に撃墜されている。2011年リビア内戦では、リビア空軍機2機が反政府デモ隊への爆撃を拒否しマルタへ亡命した。
出典:wikipedia
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