カルパティア山脈のブナ原生林(カルパティアさんみゃくのブナげんせいりん)は、スロバキアとウクライナが共有するユネスコの世界遺産(自然遺産)登録物件。東カルパティア山脈に残るブナの原生林は、ヨーロッパに残るブナ林の中でも樹齢、種類の多様さ、木々の大きさ、範囲の広さなどの点で突出した価値を持つ。2011年にはドイツ中部・北西部にある15箇所のブナ林が追加された。登録対象はウクライナの6箇所とスロバキアの4箇所、ドイツの15箇所の計25箇所である。行政区分上は、ウクライナの登録対象は全てザカルパッチャ地方に含まれており、スロバキアの登録対象は全てプレショフ地方()に含まれている。保護区別に見た場合、ウクライナの対象のうち5箇所は、カルパティア生物圏保護区(the Carpathian Biosphere Reserve)に含まれ、残り1箇所はウズハンスキ国立公園(Uzhanskyi National Park)に属している。スロバキアの4箇所は、ポロニニ国立公園()とその緩衝地域の保護区(Rook国立自然保護区)、およびHavešovà自然保護区とVihorlat景観保護区にそれぞれ含まれている。登録名にも表れているようにブナ科の原生林に覆われているが、標高によってブナ、ヨーロッパナラ、フユナラ()、ヨーロッパモミ()など種類が異なる。ブナ目の樹木としては(ハンノキの一種)、セイヨウシデ()なども見られる。それ以外にも、ノルウェーカエデ()、コブカエデ()、セイヨウボダイジュ、フユボダイジュ()、セイヨウトネリコ()などが生育している。登録範囲の森林には、確認されているだけでも481種の菌類が生息している。他にも、登録範囲内には地衣類、コケ類などが各400種以上ずつ確認されている。維管束植物は1100種以上である。登録対象範囲には、73種の哺乳類が棲息しているが、大型哺乳類には、ヒグマ、ヨーロッパバイソン、オオヤマネコなどのように、第二次世界大戦後に他の地域から移入されたものも含まれている。ほかに、20種の魚類、10種の両生類、8種の爬虫類、101種の鳥類などの棲息が確認されている。元々は「スロバキアの原生林」(Primeval Forests of Slovakia)としてスロバキアが単独申請していた。しかし、2003年の国際自然保護連合(IUCN)の勧告を踏まえて、推薦文書の練り直しが行われ、ウクライナとの共同申請という形で2006年1月に再提出された。2007年の世界遺産委員会で審査され、登録が決定した。その後2011年にはドイツの古代ブナ林が追加登録された。IUCNは、「中央ヨーロッパのブナ原生林」(Primeval Beech Forests of Central Europe, 仮題)といった形での更なる拡大の可能性も示唆している。この基準の適用は、ほとんど手付かずに残されたブナ林の多彩さが、種の変遷を考える上で重要なものとなっている点が評価されたものである。スロバキアとウクライナが提出した推薦書は、顕著な自然美を有するとして基準(7)の適用も求めていた。IUCNはヨーロッパレベルの自然美として優れたものであることは認めたものの、全地球規模での顕著な普遍的価値を認めるには不充分という判断を下した。世界遺産委員会でもこの勧告通り、基準(7)の適用は見送られた。同じく推薦書では、絶滅危惧種の重要な保護地などに適用される基準(10)にも該当するとされていたが、棲息する生物種の稀少性の点で疑問が寄せられ、適用は見送られた。
出典:wikipedia
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