ヴァーストゥ・シャーストラ(サンスクリット:वास्तुशास्त्र, 英語:Vastu Shasta、Vaastu Shastra)は、古代インドで成立した思想・学問。古代インド発祥のものとしては、ヨーガが主に心身の調整・統一を図る修行法など、アーユルヴェーダが医学・健康法などとして知られているが、ヴァーストゥ・シャーストラには、現代の思想・学問に相当するものとして建築環境工学、都市工学、心理学、脳科学などがある。インドでは住居や寺院の立地、間取り、インテリアの配置などを決定するため伝統的に用いられてきた。いわゆる北枕の否定といった日常の行動についてもルールがある。欧米諸国や日本においては、単に「ヴァーストゥ(ツ)」「ヴァストゥ(ツ)」「ワースツ」、あるいは日本では「インド風水」と称される場合も多い。「ヴァーストゥ」とは、サンスクリット語で狭義には「建築物」や「住居」を意味し、広義には「生命力」や「環境」などをも包含した概念を指す。気の流れと調和しようとする点で中国の風水思想と近いが、立地や建物の間取りの方位など実践面で大きな違いがある。「シャーストラ」は「(~を扱う)思想・学問」を意味する。中国の風水より歴史は長く、その起源ではないかとの見方もあるが、はっきりとはしていない。紀元前2500年頃から繁栄したインダス文明最大級の都市遺跡モヘンジョダロ(現パキスタン領)や、インド文化の影響を強く受けていたカンボジアのアンコールワットといった世界遺産も、ヴァーストゥ・シャーストラの原則に沿っている。原典はヴェーダであるが、ヴァーストゥ・シャーストラ自体はヴェーダの成立以前から広く用いられていた。これは古い時代から口承されてきたものが、後の時代にヴェーダとして編纂されたからである。ヴァーストゥ・シャーストラの思想によると、自然は地(ブーミ भूमि)、水(ジャラ जल)、火(アグニ अग्नि)、風(=空気:ヴァーユ वायु)、空 (:アーカーシャ आकाश)という五つの要素(五大)で構成され、自然状態ではそれらのバランスが取れているとされる。他方、人工的なものはそのバランスが崩され副作用を起こすため、ヴァーストゥ・シャーストラでバランスを取る必要があると考えられている。なお、五大という考え方自体は古代インド思想であり、のちに仏教の思想体系に取り込まれ、仏教思想として日本を含む東アジア一帯に広まっている。身近な例としては、主に供養塔・墓塔として使われている五輪塔がある。この五つの要素は直接、大地、水、炎、空気、空と関係するだけでなく、以下のエネルギーにも相当する。地:安定性を表すエネルギー水:流動性、冷性を表すエネルギー火:熱性や反応を表すエネルギー風:軽快さ、運ぶ働きを表すエネルギー空:空虚さ、空間性を表すエネルギー自然界や人工物同様、人間の身体や気分、そして出来事も、これらの組み合わせでできており、五つのエネルギーとして表現される。例えば、体温は火のエネルギー、物流は風のエネルギーとして表される。また、憂鬱は火のエネルギーの増大として、冷静さは地のエネルギーの安定性として、落ち着きのなさは風のエネルギーの性質として表現される。五大要素の調和・バランスによって、正の調和は良いエネルギーを、不調和は悪いエネルギーをもたらすとされる。ヴァーストゥ・シャーストラでは、直接人間に影響を及ぼす土地や家の五大のバランスを扱う。インド本国においては近代以降、ヒンドゥー寺院建築などに細々と伝えられるのみで衰退していたが、近年の欧米諸国での注目が逆輸入される形で再び隆盛してきている。最近では、世界有数の大富豪といわれるリライアンス・グループのムケシュ・アンバニ会長が、ヴァーストゥ・シャーストラに基づいた、総工費約2000億円ともいわれる自宅を建設していることでも話題になった。日系企業では自動車大手のスズキの子会社が、ヴァーストゥ・シャーストラを同社工場で取り入れたことが明らかになっており、悪化中だった同社の業績は急回復した。米国でも、急増するインド系市民を核に、一般層や企業にも広がりつつあり、マイクロソフト、ボーイング、インテル、オラクル等も、一部の社屋の設計にヴァーストゥ・シャーストラを取り入れたと言われている。また、日本の研究者の中には、ヴァーストゥ・シャーストラの朝の日光を特に重視する考え方などについて、概日リズム睡眠障害や情動障害などに一定の効果があるとされる光療法と同様の効果や、過度の紫外線による影響を予防する効果(日中に比べ朝は紫外線が弱い)を、北枕を否定し南枕を肯定する考え方について、快眠や安眠をもたらす効果(血圧、心拍数、血清コルチゾールの値が低くなる)を指摘する者もいる。
出典:wikipedia
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