歯科用CAD/CAMシステム(しかようキャドキャムしすてむ)とは、口腔内に装着される修復物や補綴物の設計及び加工に用いられる複数の装置をCADやCAMの技術を用いて統合したシステムのこと。歯科治療の際に口腔内に装着される修復物や補綴物(インレー、部分被覆冠、全部被覆冠、ブリッジ、部分床義歯、全部床義歯、インプラント上部構造など)は、そのほとんどが、手作業により製作されてきた。その製作工程(設計や加工)の一部をコンピュータ制御の機器に置き換える一連のシステム。これにより、作業の効率化がはかられ、品質のバラツキを抑えることが可能となり、また、従来は利用できなかった材料の利用を可能にするといったメリットがある。1985年にスイス・チューリッヒ大学のWerner H. Mörmann教授らのグループが、ドイツ・シーメンス社と共同で開発して世に送り出したCERECシステムが最初と考えられている。当初このシステムでは、う蝕になった歯を部分的に削ったのち、そこに当てはめるセラミックス製のインレーを診療中にその場で製作できる事が特徴で、当時としては極めて先進的なものであった。この点は国としても認めており、当時は国内で厚生労働省の高度先進医療として認められていた。一方、日本国内では、通産省/NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)傘下のプロジェクトとして「次世代オーラルデバイスエンジニアリングシステム」の開発(平成5〜8年)が実施され、(株)ジーシーから発売されたGN-Iシステムに結実している。また、同時期には産学官共同の複数のプロジェクトが進められて幾つかのシステムが世に登場した。これら初期のシステムの多くは、従来のクラウン、ブリッジの製作工程の代替手法として開発が進められた。しかし、1本の歯冠形状が10mm四方程度、歯列全体でみても100mm四方程度のワークエリアに対し、1〜10μ程度の計測・加工精度を要求するのに適した技術は産業界では意外と少なく、当初は満足のいく精度とコストパフォーマンスを確保することが難しかった。このため、しばらくの間は思ったほどには普及が進まなかったが、近年、ジルコニアセラミックスの開発・普及にともない、この材料がCAD/CAMシステムの利用をほぼ必須としていること、コンピュータの性能が向上してパソコンのレベルで3次元の立体を自在に扱えるようになったこと、などにより急速に普及し始めて現在に至っている。計測装置、設計装置、加工装置の3つの部分から構成されるものが多い。計測装置(3Dスキャナー)には、従来通りの印象採得(型取り)を行った後に石膏作業模型を製作し、これを3次元スキャンするタイプのものと、プローブを直接口腔内に装入して切削した歯牙(支台歯)をスキャンするもの(いわゆる光学印象法)とがある。前者の計測装置に利用される技術には、接触式プローブ、非接触レーザースポット、ラインレーザー(光切断)、パターン光(モアレ縞、2値パターン、多値パターン)など様々なものがあるが、後者では大量のデータを瞬時に取得し易いパターン光が用いられることが多い。専用の3次元CADを主体としたもので、個々の歯冠形状の基本データを持ち、それを変形させて支台歯に適合させていく設計手法をとるものが多い。一部のシステムでは、極めて多数の歯の形状データに基づいて、設計すべき空間に最適の歯の形状を自動で提示する機能を搭載したものも登場している。ボールエンドミルを用いて、ミリング(切削)加工により材料を成形するものが多い。システム開発メーカーが自社で個々の加工を請け負う場合は、工場内に大型のマシニングセンタを設置して加工を行うケースも増えている。一方、この方式は、切削加工そのものの特徴を反映して、装置の剛性が高い大型機では極めて高い精度を確保しつつ高速で加工できる反面、卓上の小型の装置では加工時間が長くなり、量産には向かない。また材料の無駄が多いという欠点をもっている。その他、ミリング以外の加工方法として、鋳造用のロストワックスパターンや部分床義歯のメタルフレームの製作用として一部で付加造形/付加製造法(Additive Manufacturing)が導入されている。いわゆる3Dプリンターと呼ばれている装置で、生産効率を上げ易いことから今後利用の伸びが期待される。鋳造用のパターンとして、エンジニアリングワックスやPMMAが用いられる。後者は暫間被覆冠/プロビジョナルレストレーション用としても利用される。また、日本国内においては、2014年にハイブリッドレジンから切削加工で製作する「CAD/CAM冠」が小臼歯に対して保険適用になったことから、複合合成材料であるハイブリッドレジンの需要が急速に高まるとともに、ラボに対するCAD/CAMシステム普及のきっかけになるものと思われる。さらに今後、海外を中心にいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックのひとつであるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの活用が検討されている。コバルトクロム、チタンなどが利用される。前者はメタルボンド(陶材焼付鋳造冠)のメタルフレームや部分床義歯の一部として、後者はクラウン、ブリッジ、インプラントの一部(カスタムアバットメント)などで用いられる場合が多い。従来の歯科用陶材、アルミナス陶材、ジルコニアセラミックスの3種類に大別される。特に、高強度を有するジルコニアセラミックスでは、多くの場合、その高強度ゆえに完全焼結後の切削加工が困難であり、半焼結体の状態で加工が施される。このため、その後の焼結プロセスにおいておよそ20%程度の収縮を生じるが、手作業に拠る製作工程でこの収縮量を補償するのは困難であった。そこで、コンピュータシミュレーションの力を借りて初めてこの問題の解決をみることとなり、ジルコニアセラミックスの普及が歯科用CAD/CAMシステムの世界的普及の大きな要因となっている。日本国内では、健康保険制度の兼ね合いからジルコニアセラミックスの普及は海外ほどには達していないが、原材料となるジルコニアの高純度粉末は日本がその大半を世界に供給していると言われている。2011年の時点で,この分野への参入企業の数は世界的に増加して数多くのシステムが発表あるいは販売されている.その中でも特徴的なのは,従来は歯列石膏模型を計測してCADに取り込んでいたものが,口腔内で直接,光学印象を採得する方式に替わろうとしている点である.歯列石膏模型を計測する手法は今だ主流であるが,既に計測システムの淘汰・統合の動きが始まっている.また,加工機についても,従来は価格や性能からオーバースペックと考えられていたマシニングセンタが歯科専用機としてチューニングされて登場したり,中間加工品であるロストワックスパターンの作製のために,3Dプリンター(付加造形装置)が多く利用されるようになるなどの動きが見られる.下記に主だったシステムの名称を挙げる.
出典:wikipedia
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