『ロストワールド』は、手塚治虫のSF漫画作品。副題は「前世紀」。本作品には、執筆時期の異なる複数の版が存在する(後述)が、通常「手塚治虫の『ロストワールド』」と言った場合、不二書房から1948年に発売された単行本を指す。この不二書房版は、翌1949年に発売された『メトロポリス』、1951年発売の『来るべき世界』と共に「初期SF三部作」と呼ばれる、手塚治虫初期の代表作である。ただしストーリーや登場キャラクターは、手塚が少年時代から書きためていた習作、俗に「私家版」と言われる作品を踏襲している。その内容は、豊富なSFガジェット、また悲劇的・破局的な終幕など、当時の漫画には見られなかった要素を多々含んでいた。少年時代の手塚が「私家版」冒頭に掲げた「これは漫畫に非ず 小説にも非ず」という一文に、その自負がうかがえる。なお、本作品はアーサー・コナン・ドイルの小説『失われた世界(LOST WORLD)』と直接の関係はない。手塚は「私家版」執筆当時、「ロストワールド」のタイトルだけを知ってこれを拝借したもので、「私家版」ではタイトルを「ROST WORLD」と綴っていたという。「手塚治虫の『ロストワールド』」と称される作品は5本確認されている。これらの作品は大筋において共通するが、細部の描写はそれぞれ微妙に異なっている。手塚治虫の初期漫画作品の中には、『月世界紳士』や、後に『アバンチュール21』として発表された『地底国の怪人』のように、手塚自身によるリメイク作品が幾つか存在するが、『ロストワールド』は、その回数において最たるものである。しかも手塚は、1982年に『私家版ロストワールド』が単行本化された際「また書き改めることがあるかもしれない」とのメッセージを添えており、彼にとって大きな意味を持つ作品であると言えるだろう。前述のとおり、手塚が少年時代に執筆した「私家版」は後に商業出版で単行本化されており、これを「不二書房版」と比較することで作者・手塚治虫の変遷を見ることができる。両版の大きな違いとしては「主人公の年齢(私家版では青年、不二書房版では少年)」「流血シーン(私家版には多く見られる)」「恋愛描写(不二書房版では、義兄妹としての間接的表現にとどまる)」などの点がある。これらの差異を生み出した原因としては、第1にアマチュア少年とプロ漫画家の差、第2に戦中と戦後という執筆された時代から来る「ゆとり」の差、第3には手塚の目指した「大人漫画」と、不二書房版の「子供漫画」の差が挙げられる。たとえば、主人公たる敷島博士を少年とする変更や、直接的な恋愛描写を避ける改訂は第3、私家版の流血シーンや悪役ランプの国籍などは第2に由来するといえる。手塚自身も、流血描写について「当時の殺伐とした雰囲気」の影響を指摘している。太古の地球から分かれて飛び去ったという遊星「ママンゴ星」が500万年ぶりに地球へ接近した。地球と同様の大気や生物層を有し、人類が存在する可能性すらあるというこの星の接近に、科学者をはじめとした全地球人が好奇の目を向ける。少年科学者の敷島健一は、偶然からこのママンゴ星より飛来した隕石を入手し、これに電流を通すことで膨大なエネルギーを得られることを発見した。しかしこの事実ゆえに、博士はこの隕石を求める謎の秘密結社に狙われる。義侠心ゆえにこの事件を請け負った私立探偵ヒゲオヤジ、そして敷島博士に改造されたウサギのミイちゃんは、隕石を狙う結社の怪人たちと知力・体力を駆使した戦いを展開する。ヒゲオヤジらの協力を受けて結社の陰謀を退けた敷島博士は、隕石のエネルギーを動力とする宇宙ロケットを建造し、自らママンゴ星の探検を計画した。ヒゲオヤジやミイちゃん、共同研究者の豚藻博士と彼の作り出した「植物人間」の少女達、さらに特ダネを狙って密航した新聞記者ランプらを載せ、ロケットはママンゴ星に到着する。そこは生物の進化が地球より何百万年も遅れた世界、恐竜や巨大シダ植物が繁栄する「前世紀」の地であった。やがて手柄の横取りを狙う結社の刺客たちと戦いが起き、戦闘や事故でほとんどの人間が命を落とす。敷島博士と植物人間のあやめはママンゴ星に取り残され、ヒゲオヤジは唯一の生存者として地球に帰還する。そして彼は形見となったミイちゃんの長靴を眺めながら、一連の事件を悲しく回想するのだった。この節では、本作品の登場人物について解説する。本作品には「ヒゲオヤジ」「アセチレン・ランプ」など、手塚のスター・システムを代表するキャラクターが多数登場している。不二書房版は手塚のプロ漫画家デビューから少し経った年の発売であり、ほとんどのスターはそれ以前に発売された作品中で「商業デビュー」を果たしていた。しかし「概要」の節ですでに述べたとおり、本作品は少年時代から温められていたもので、その時点から配役はほぼ固定されていた。「私家版」が商業出版上で発売された1982年以降、この「私家版」の出演をもって彼らの「デビュー」とみなす資料もある。また手塚自身による記述でも、これらの経緯に触れることなく「○○は『ロストワールド』でデビューした」としていることがあるので注意が必要である。
出典:wikipedia
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