ハミルトン形式の解析力学において、正準変換(せいじゅんへんかん、)とは、正準変数を新たなハミルトンの運動方程式を満たす新しい正準変数に写す変数変換。正準変換の下では、正準変数である一般化座標と一般化運動量は互いに混ざり合うことができ、等価な役割を果たす。また、正準変換はポアソン括弧を不変に保つ性質を持つ。幾何学的な観点からは、相空間をシンプレクティック多様体として見做した場合、基本 2形式を保つシンプレクティック同相写像に対応する。ハミルトン力学では、一般化座標と対応する一般化運動量の組からなる、正準変数 が独立な変数となる。相空間上の運動は、正準変数と時間の関数であるハミルトニアンを用いて、ハミルトンの運動方程式によって記述される。但し、ドット記号は時間微分を表す。ここで、正準変数と時間の関数である新たな変数が新たな正準変数となるとき、すなわち、新たなハミルトニアンが存在して、が成り立つとき、を正準変換という。正準変換の下では、一般化座標と一般化運動量は互いに混ざり合い、等価な役割を果たす。正準変換を構成する標準的な手法は、母関数を用いる手法である。ハミルトンの運動方程式は、作用の変分を最小にするというハミルトンの原理から導かれる。したがって、新旧の正準変数とハミルトニアンの間にはという関係式が成り立つ。但し、は新旧の正準変数と時間の任意の関数である。特に、の中から独立な変数として二つを選び、を定めた場合、両辺の独立な変数に対する微分を考えることで、、を定めることができる 。この場合、関数を与えることで、正準変換が定まることから、を正準変数の母関数と呼ぶ。二つの独立な変数の選び方に応じて、四つのタイプの母関数が存在する。独立な変数としてを選んだ場合、はタイプ1の母関数と呼ばれる。このとき、新旧の正準変数とハミルトニアンの間に以下の関係が成り立つ。タイプ1の母関数に対し、ルジャンドル変換を施せば、独立な変数としてを選んだ場合であるタイプ2の母関数が得られる。このとき、新旧の正準変数とハミルトニアンの間に以下の関係が成り立つ。タイプ1の母関数に対し、ルジャンドル変換を施せば、独立な変数としてを選んだ場合であるタイプ3の母関数が得られる。このとき、新旧の正準変数とハミルトニアンの間に以下の関係が成り立つ。タイプ2の母関数に対し、ルジャンドル変換を施せば、独立な変数としてを選んだ場合であるタイプ3の母関数が得られる。このとき、新旧の正準変数とハミルトニアンの間に以下の関係が成り立つ。正準変換の最も簡単な例は、恒等変換、である。この場合、新たなハミルトニアンはと不変である。この正準変換の母関数はであり、この場合、新旧の正準変数の間にはの関係が満たされている。任意の系において、一般化座標と一般化運動量の符号を込めた交換は正準変換である。この場合、新たなハミルトニアンはと不変である。この正準変換の母関数はであり、この場合、新旧の正準変数の間にはの関係が満たされている。質量、角振動数の一次元調和振動子では、ハミルトニアンはで与えられる。母関数をで与えると、新旧の正準変数の間にはの関係が成り立つ。また、新しいハミルトニアンは、とだけの関数となる。すなわち、は循環座標である。この場合、との時間発展は、と簡単な形で求まる。但し、は任意の定数、は保存量である系のエネルギーである。正準変換に対し、ポアソン括弧は不変に保たれる。すなわち、元の正準変数に対するポアソン括弧を、新しい正準変数に対するポアソン括弧をと表すと、formula_31が成り立つ。逆にポアソン括弧を不変に保つ変数変換は正準変換となる。ポアソン括弧の不変性が成り立つには、が満たされていればよい。但し、はクロネッカーのデルタである。正準変換は次の性質を満たしており、群の構造を持つ。正準変数を微小変化させる微小正準変換の母関数は、恒等変換を与える母関数にを加えたの形で与えられる。但し、は微小定数、 は任意の関数である。このとき、微小変化はとなる。任意の力学量に対し、微小正準変換に対する変化は、ポアソン括弧を用いて、で与えられる。として、ハミルトニアンをとれば、であるから、正準変換はとなる。すなわち、微小時間における時間発展は、ハミルトニアンによる微小正準変換となる。有限時間での時間発展は、微小時間における時間発展を繰り返し合成することで得られる。正準変換の合成も正準変換であるため、の時間発展は、正準変換の特別な例となっている。相空間の体積要素は正準変換の下、不変となる。したがって、相空間のある領域が正準変換により、領域に写されるとすると、が成り立つ。すなわち、領域の体積は正準変換で不変に保たれる。特に、時間発展は正準変換の特別な例であり、領域の時間発展を考えると、リウヴィルの定理が導かれる。新ハミルトニアンが恒等的にゼロ となる正準変換を考えると、ハミルトンの運動方程式はと簡単な形になる。このとき、新たな正準変数は定数となる。このような正準変換を生む母関数として、タイプ2の母関数を選べば、母関数と元のハミルトニアンの間には、という関係式が成り立つ。但し、とであることを用いている。この1階の偏微分方程式をハミルトン-ヤコビ方程式という。
出典:wikipedia
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