フォルヒ(FURCH MUSICAL INSTRUMENT)は、チェコのギターメーカー。ギターリストとしてブルーグラスを演奏していたフランティセク・フォルヒ(Frantisek Furch)が、1981年に自分と数名の友人のためにギターを製作したことからはじまる。当時チェコ・スロバキアという国は、共産主義体制下であり、西側の輸入品のギターは高価で一般人には手の届かないものであった。またギターメーカーとして起業する事自体が違法行為であり、自宅のガレージ程度のごく小規模なスペースで密かに製作・販売していたという。初めて製作したアコースティックギターは、成型の容易さからオベーションのような樹脂製のボウル形状のボディーバックを持っていた。その後は試作と検証を繰り返しながら徐々に品質を高め、プロ・アマ問わず地元プレイヤーの高い評価を得るまでになる。そして1989年から93年にかけての民主化ののちチェコ共和国となり、その93年時点で20名ほどのスタッフを抱えるギターメーカーになっており、本格的に市場へと参入する事となる。以降は隣国ドイツへの輸出開始からヨーロッパ各国への広がりを見せる。日本では2003年より株式会社エム・プロダクト スタジオエムが正規輸入代理店として現在も販売を行っている。主力シリーズである23シリーズを例に挙げると、べっ甲柄のボディーバインディングや、おなじくべっ甲柄のべグボタン（本体はゴールド）など、見た目は華美な装飾はなく落ち着いた雰囲気を持っている。これは伝統的なクラシックギターからデザインを踏襲しているためである。さらに上位機種の25シリーズでは、ボディートップ外周にアバロン貝によるインレイが施され、ネックとヘッドの外周にはバインディングがつく。ヘッドの正面と指板にはインレイが入る。もちろん23シリーズに比べてプレミアム感は高くなるが、それでも派手な印象はなく、あくまでシックなデザインバランスは保たれる。もともと25シリーズは、日本市場向けにスタジオエムが企画した商品であり、実際にそのオーダーの通り製作したフォルヒがそのデザイン性の良さなどを気に入り、日本だけでなくレギュラーラインナップに加える事になったという逸話がある。22シリーズは、ブラックラインというボディーをブラック塗装で包んだ精悍な外観を持つ。スプルースとローズウッドのボディーを採用し、その他の基本的な仕様は23シリーズに準じている。20・21シリーズは、基本構造はそのままに、装飾の簡略化やラインナップを絞ることでコストパフォーマンスを高めたシリーズ。20シリーズはシダーとマホガニーのボディー、21シリーズはスプルースとオバンコールのボディーを共に総単板で採用し、艶消し塗装の外観としている。また、34シリーズは、アメリカン・ヴィンテージギターの手法に倣ったフォルヒ流のギター、というイメージを持つコンサバティブな仕様が特徴。スクエアなヘッドストックや、オープンギヤのペグ、ダイヤモンド＆キャッツアイのポジションマーク、ヘリンボーンとアイボリーのバインディングといった外観となっている。塗装は、一旦艶出しに仕上げられた後、手作業で半分ほど艶を落とし、使い込んだ風合いの外観を醸し出す独特の仕上げを採用している。さらに、同シリーズにのみ OOM（ダブルオーエム）という小型の12フレットジョイントのニューヨーカータイプも存在する。4種類(OM・G・S・D)のボディーサイズが用意され、ラインナップの多くはスプルーストップとシダートップの2種類の表板を選択でき、ローズウッドのサイド・バックとの組み合わせが多い。一部モデルはマホガニーやメイプルも採用している。例として「G23-CRCT」をあげると、最初のアルファベットGがボディーサイズを表し、次の数字2桁がシリーズを表す。ハイフン後のアルファベットはトップ・サイドバック・カッタウェイの有無を表しており、この場合C：シダー R：ローズウッド CT：カッタウェイボディー となる。4種類のボディーサイズが用意され、それぞれの特徴を簡単に説明すると以下の通りである。小柄なボディーのため、ピッキングから音の立ち上がりまでの反応が最も早くダイレクトな演奏感が得られる。またフィンガーピッキング（入力が弱い）でも、ボディー全体を十分に振動させることができ、各弦・各フレットポジションにおいて均一な音量バランスである。指先のコントロールで、サウンドに表情を付けたいというプレイヤーに向いている。OMより幅広・厚めのボディーであり、ドレッドノートと同等のボディーサイズと音量が得られる。一般的にボディーが大型化するほど中低域が強調されたサウンドバランスとなるため、OMに比べ豊かな音量と低音の厚みを感じる。フォルヒのラインナップでは中型のサイズとされ、演奏ジャンルやプレイスタイルを問わずに選ばれ、OMの反応の良さよりもパワーを求めるプレイヤーに向いている。Gよりさらに一回り幅広なジャンボボディー。余裕のサイズを生かした大きくクリアなサウンドが特徴であり、豊かな低音ときらびやかな高音が得られる、いわゆるドンシャリな傾向のキャラクターを持つ。ピックでの演奏においてもよどみなく響かせる事ができ、フィンガーピッキングでも強いタッチでクリアで豊かな音量を求めるプレイヤーに向いている。ドレッドノートは大型ボディーのアコースティックギターでは代表的なスタイルである。特有の下腹に響くような低音が魅力である。ドレッドノートにこだわるプレイヤーは、この低音に魅了されている場合が多い。サイズとしてはGと同程度であるが、Dのほうが低音よりのサウンドとなる。ボディー材のオプションの選択も豊富で、トップ材は通常のシトカスプルースにかわりイングルマンスプルース アディロンダックスプルースが選択可能。サイドバック材はインディアンローズにかわりマダガスカルローズウッド、ココボロ、アフリカンブラックウッド、キルテッドマホガニー、ハワイアンコアなどが選択可能。その他、節目節目において企画されるスペシャルモデルなどが生産本数や生産期間を限定して登場している。内外を問わずプロミュージシャンにも愛用者が多く、日本国内では赤崎郁洋　Dr.K（徳武弘文） 池田聡 中川イサト 井上堯之 中西圭三 岡崎倫典 山本コウタロー 岸部眞明 などが使用している。

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