熱電発電(ねつでんはつでん、)とは、広義にはゼーベック効果による熱電変換素子、アルカリ金属熱電装置(AMTEC)、熱電子発電装置(TIC)、PETE素子などの熱電素子をもちいて熱エネルギーを電力エネルギーに変換する発電法である。狭義にはこの内、ゼーベック効果による熱電素子を用いた発電を意味する。以下主に狭義の熱電発電について説明する。熱電素子は可動部分が存在しないため、長寿命でかつ長期にわたって保守作業を必要としないという特長がある。これは人工衛星の電源として極めて重要な特性であるため、1960年代から米国と旧ソ連により宇宙探査衛星用電源目的のための研究が行われてきた。その結果、自発核分裂で生じたα線粒子の吸収によって発生する熱エネルギーを熱電素子によって電力に変換する原子力電池が実用化され、多くの人工衛星用電源として使用された。現在その用途の多くは太陽電池に置き換えられたが、太陽からの光エネルギーが少なく太陽電池が利用できない木星より外側を探査するパイオニア計画やボイジャー計画、火星で夜間も活動する火星探査機キュリオシティなどの衛星では現在でも使用されている。この人工衛星用に開発された原子力電池は送電線や他の機器を必要としないなどの利点から、かつて灯台など遠隔地での発電装置(放射性同位体熱電気転換器参照の事)として用いられた。また、ランプなどの熱を利用した熱電発電をラジオ用電源として利用されることもあった。しかし、ディーゼルエンジンなどの発電機が故障も少なく安価で入手できるようになるとそれらの用途の熱電発電を置き換え、現在地上での用途は一部の軍用目的以外消滅した。しかし、近年熱電発電は廃熱から電力エネルギーを直接回収する技術として世界的に注目が集まり、日本では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援のもと、何度かのプロジェクトが組まれた。現在、これらの成果をもとに民生及び産業の分野から発生する工場や自動車の排熱、地熱や温泉の熱などの未利用熱エネルギーを電気エネルギーとして利用するための手段として研究開発が進められている。熱電発電はゼーベック効果(ペルティエ効果の逆作用)を利用し、接合点の一方を高熱源、他方を低熱源に接触させて電位差を生じさせて熱エネルギーを電力エネルギーに変換する発電法である。二種類の導体の組み合わせとして、使用される温度範囲によってなどが使い分けられている。これらは高温で酸化される、資源量が少ないなどの課題があるため、より資源量の多い物質や酸化物材料を用いた素子の研究も進められている。また研究レベルでは酸化物材料や量子構造・超格子材料による熱電素子の研究開発が進められている。尚、実際の発電では1個の熱電素子で得られる電圧が小さいため複数の熱電素子を電気的に直列につないで高電圧出力が得られるようにした熱電発電モジュールを用いる。熱電素子の利点についてはNEDOの助成のもと平成14年度~平成18年度に行われた「高効率熱電変換システムの開発」の中間報告書にまとめられている。それによるとそれ以外に等があげられている。熱電素子の課題は「高効率熱電変換システムの開発」の最終報告を受けた事後評価報告書に述べられている。それによると その他として等があげられる。NEDO技術開発機構によると熱電発電の用途として熱源別に下記の物が挙げられている。米国で熱電素子を製造しているHi-Z Tecnology Inc.は上記以外に次の用途を提案している。更に、大阪産業大学は熱電発電を用いた電気自動車を開発した。"MARUZEN物理学大辞典"の熱電気の項には熱電発電の用途として「最良の物質でつくられたものであっても、熱電気系は、効率の低さとそれに伴う単位出力あたりの経費の高さという点で不利である。したがって、熱電気を用いた発電は、この不利な点よりも、サイズの小ささ、駆動部分がないことによる維持費の低さ、無音作動、軽量および長寿命などの利点の方が重要である場合に限って使われる」と総括している。これと"熱電素子の特色"の項であげた熱電素子の特色、課題から現在主に下記の用途に向けた開発が進められている。熱電発電素子の価格目標は1 $/Wと言われている。一方2012年現在の価格は株式会社KELK製品で1250 円/W(1 $ = 80 円として約15.6 $)、アメリカHi-z社のHZ-20型熱電発電素子で6.6 $/Wである。これに関しHi-z社は200万個/年の生産量になれば0.74 $/Wまで下がると試算している。2012年段階で宇宙・軍事目的以外の熱電発電の実用化実績が無いため温室効果ガス(GHG)排出量に関するデータは見られない。一般論として熱電発電の変換効率は火力発電などと比べ低いため、化石燃料を熱源とした場合の温室効果ガス排出量は火力発電よりかなり多いと考えられるが、熱電発電が目標とする用途の多くは廃熱を熱源とした発電であるため、発電段階で新たな温室効果ガスの排出は起こらないと予想される。2012年段階で熱電発電のエネルギーペイバックタイム(EPT)やエネルギー収支比(EPR)の見積に必要な実測データは得られていない。アルカリ金属熱電発電(、AMTEC)は、イオン伝導性があるβ‐アルミナなどの固体電解質膜の両側にイオン(Na+)の濃度差を与えて発電するセルである。両面に電極を取り付けたβ‐アルミナ板を真空密閉した二つの容器で挟み、高温側の容器に液体Naを入れて900~1300 Kに加熱し蒸発させ低温側は容器をNaガスが凝集する400~700 Kの温度とするとβ‐アルミナ板の高温側でNa原子がNaイオンと電子に解離し、イオンはβ‐アルミナ板を透過し低温側に移動する、ここで高温側と低温側の電極をつなぐと高温側から低温側に電子が流れ電力を得ることができる。電子は低温側でイオンと結合し、中性のNa原子となり、更にそれが冷やされて液体となる。この液化したNaは電磁ポンプで高温側容器に戻される。熱電子発電(、TIC)は,高温度に加熱した電極からの熱電子放出を利用して熱エネルギーを電力に直接変換する方法である。1960年代から米国、旧ソ連で宇宙ステーション用の電源や人工衛星の電気推進用電源として研究開発が行われた。高温側熱源としては太陽炉や核燃料が用いられた。日本では東北大学や産業技術総合研究所で研究がなされた。東北大の研究では熱源として太陽炉を用い高温側温度1400~2000 K、低温側600~1000 K で作動したとき、出力電圧0.7~1 V、出力電流密度1~10 A/cm、出力密度1~10 W/cm が報告されている。PETE () は米国スタンフォード大学が開発した光電変換と熱電子発電を組み合わせた発電素子で光電効果と熱電子放出の相乗効果で理論上変換効率60%が得られる。太陽熱発電の一種ディッシュ式太陽熱発電では放物曲面状の鏡を用いて、太陽光を鏡の焦点に集光しそこに設置したスターリングエンジンで発電する装置であるが、このスターリングエンジンの替わりにPETE素子を用いた発電する装置を開発中で、予備的な試算では45%の変換効率になるとの結果が得られた。
出典:wikipedia
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