


『とある飛空士への恋歌』(とあるひくうしへのこいうた)は、犬村小六による日本のライトノベル。イラストは森沢晴行。小学館ガガガ文庫より、2009年2月から2011年1月にかけて全5巻が刊行された。2008年に刊行された著者の長編小説『とある飛空士への追憶』に続く「飛空士」シリーズ第2作。2014年1月から3月にかけて、トムス・エンタテインメント制作のテレビアニメ版が放送された。また同年2月から2015年9月まで、こじまたけし作画によるコミカライズ版が『週刊少年サンデーS』(小学館)において連載された。航空機が発達した異世界で、世界の姿を解き明かす冒険のために要塞化された空飛ぶ島を舞台に、本来であれば敵として憎み合う立場にあった少年と少女が互いの正体を知らないまま恋に落ち、高校の級友たちと共に、冒険の障害として立ち塞がる敵勢力との戦争を戦っていくという内容。著者によれば、敵対する宿命の男女が惹かれ合っていくという内容は『ロミオとジュリエット』をイメージしていると述べている。物語のプロットは、シリーズ第1作『とある飛空士への追憶』よりも前に書かれていたとされる。『追憶』とは隔絶した地域が舞台となっているものの、共通の世界設定の物語であり、物語の途中からは『追憶』の登場人物も登場する。「飛空士」シリーズ劇中の時系列では、第1作『とある飛空士への追憶』や第3作『とある飛空士への夜想曲』よりも後の年代、第4作『とある飛空士への誓約』よりも前の年代を舞台としたエピソードが中心に描かれているが、本作の第1巻では物語開始より6年前の出来事が回想として詳細に描かれ、また最終巻となる第5巻のラストシーンでは年単位の時間が経過する。本作『恋歌』の最終巻における第1章と終章ではそれぞれ、登場人物たちが第4作『誓約』の舞台となる地域へと旅立つ場面が描かれ、また『誓約』にも本作での主要登場人物が登場しストーリーの結びつきが描かれているが、劇中の時系列では『誓約』の第1巻から第4巻までの前後を、本作『恋歌』第5巻の第1章と終章が挟み込む形となっている。『誓約』の第4巻からは、『恋歌』の登場人物のその後が描かれている。2010年12月17日には最終刊の刊行を前に、ガガガチャンネルにて、小説の第1巻から4巻までの主要な場面に映像と声優による台詞をつけたプロモーションビデオが公開されている。2014年にはテレビアニメ化のほか、漫画化のメディアミックス展開も行われた。小説は登場人物の内面の描写を交えつつの三人称の視点で描かれ、場面によっては主人公以外の人物による視点からの物語も描かれる。主要登場人物には一人の主人公に対して静と動の二人のヒロインが配される、いわゆるダブルヒロインの構成となっている。表題の「恋歌」には二重の意味が与えられ、二人のヒロインの主人公への想いを意味するものとなっている。小説は全5巻の物語となっているが、第1巻では回想が中心となり、主人公の過去やヒロインとの因縁が描かれる。第2巻からは主人公を取り巻く学生たちの学園生活が和やかな雰囲気で描かれるが、第3巻の途中から敵勢力との武力衝突が描かれるようになると作風が一変し、シリアスな展開が訪れる。物語のクライマックスは第4巻の終盤にあり、主人公とヒロインのドラマは第5巻の序盤で終わる構成となっている。物語は敵勢力によって引き裂かれた主人公とヒロインの再会を最後まで描かずに終わるが(詳細は「#あらすじ」を参照)、こうした結末について著者は、ヒロイン一人を取り戻すために大勢の敵味方が生死を賭けて争う展開は書きたくないという判断があったとしている。第5巻の残りのエピソードは後日談に充てられている。本作『とある飛空士への恋歌』で描かれる地域にはバレステロス共和国、斎ノ国、帝政ベナレスの3つの国家が存在する。半世紀前に大戦があったが現在は表面上平穏を保っている。劇中世界の創世神話には、世界を創造した聖アルディスタは世界の果てに「空の果て」を創り、世界の果てから落ちていく海水を汲み戻す「聖泉」を創り出したという記述があり、これを発見して世界の姿を解き明かすことは宗教上の命題とされている。これらは長い間空想上の存在とされていたが、劇中の時代において「聖泉」の実在が確認されたことから、最終的な目標である「空の果て」を発見しようとする気運が高まっている。しかしながら空の果てははるか遠く、過去幾度と無く行われた探索の結果は、貯蔵食料・飲料水が底を突いたことによる帰還か、行方不明かのいずれかであった。創世神話には聖泉の先を守護する敵対的な勢力「空の一族」の存在が予見されており、「聖泉」の発見に成功した冒険家ルイス・デ・アラルコンは、過去の探索における生還率の不自然な低さは空の一族の実在を示すものだと推測していた。物語の舞台となる空飛ぶ島「イスラ」は、高度2000メートルに浮揚する空飛ぶ島。東西9キロメートル、南北25キロメートル、外周70キロメートル、上層の表面積243平方キロメートル、「浮遊岩」と呼ばれる鉱物からなる。イスラは元々、流されるまま空を漂う天然の島であったが、10年前バレステロス皇国によって係留され、武装を施すことで極めて強力な移動要塞となった。強大な制空能力を持つイスラは軍事的緊張を招く恐れがあったため、平和な時代ではかえって持て余されていたが、当時の皇王グレゴリオ・ラ・イールはこれを空の果てを見つけるために利用する「イスラ計画」を立案し斎ノ国、帝政ベナレスとともに3国が共同してイスラの調査・改造作業を行う。イスラを用いた探索であれば、その巨大さ、そして標高以外は地上と変わらない環境ゆえに食料・飲料水の補給の問題は解決し、さらに基地を建設することで強大な防空戦力と共に移動することができるため、「空の一族」との戦闘にも耐えうると考えられた。風の革命により皇国がバレステロス共和国に変わった後もこの計画は引き継がれるが、空の果てを見つけるまで帰れない旅になるイスラ計画は、バレステロス共和国の革命後の政争に伴って旧時代の指導者たちを追放する方便ともされる。ロマンに飾り立てられ、イスラは文字通り「島流し」に出ることになる。バレステロス皇国の第一皇子であったカール・ラ・イールは、「風の革命」と呼ばれる革命闘争で王政が失脚したことで両親を処刑され、地位、名誉、家、そして本当の名前を奪われた。残された物は、暴風を自在に操る異能の力で革命の旗頭となった人物、ニナ・ヴィエントへの復讐心と、死を前にした母と牢獄で交わした「飛空士になる」という約束の2つのみ。そのまま獄死するところであったところをミハエル・アルバスの一家に養子として引き取られ、ノエル、マヌエル、アリエルの3姉妹に暖かく迎えられたカールは、その名をカルエル・アルバスと変え、飛空機械工場の町ベラスカスで生きることになる。「風の革命」の5年後、共和国となったバレステロスでは元老院による共和政体が機能せず恐怖政治がはびこり、元老院は共和制派、王政復古派、折衷派の3派に割れていた。共和制派の失脚によって王政復古派と折衷派の2派の対立が明白になったころ、王政復古派の台頭を恐れる折衷派はカルエルに使者を送り、「イスラ計画」に参加することを提案する。空飛ぶ巨大な島「イスラ」に乗り込んで創世神話にある空の果てを発見し、世界の姿を解き明かすというという名目で続けられていたイスラ計画の実態は、一般市民を冒険のロマンという熱狂で欺きつつ、政治的に邪魔な存在を文字通りの「島流し」にして追いやるというもので、イスラに送られる人々の中には王政復古派の貴族や、ニナ・ヴィエントを含めたかつての改革の主導者たちも含まれていた。カルエルはそれが「島流し」であること承知しつつも、飛空士になるという母との約束を叶えるため、そしてイスラに乗り込むニナに会って復讐を遂げるため、提案に乗る。カルエルとアリエルはアルバス家を出て、折衷派から学費と生活費の提供を受けて、イスラにあるカドケス高等学校の飛空科に通いながらの長い旅に発つことになる。不機嫌な思いを抱えつつもイスラに到着したカルエルは、ふとしたことから「他人には優しくせよ」という母の遺言を思い出し、偶然出会った謎の少女、クレア・クルスを助ける。カルエルは、クレアのおどおどして人慣れしていない態度から、彼女が自分と同じく何らかの不幸な訳ありでイスラに送られたことを察し、そこに自分の境遇を重ねて彼女に共感する。クレアもまた、自分が他人に求め続けていたものを察してくれたかのようなカルエルの優しさに好感を持つ。しかしクレアが秘めていた事情はカルエルの想像を超えるものであった。二人の出会が描かれた後、読者に対して、クレアこそがカルエルが憎しみを向ける母の仇、ニナ・ヴィエントと同一人物であるという真相が明かされる。イスラは「島」という特性故に安定した航空を続け、不安から来る内乱などとは無縁の平和な旅を続けていた。カドケス高校飛空科に入学したカルエルは、数日前に出会ったクレアとの再会に胸を躍らせていた。貴族中心のクラスであるヴァン・ヴィール組のクレアと、平民中心のクラスであるセンデシュアル組のカルエルが仲良くすることが気に食わないヴァン・ヴィール組のファウスト・フィデル・メルセたちによる嫌がらせなどのトラブルを抱えつつも、カルエルとクレアはペアを組んで教習をこなしていくことになる。飛空科の学生達はそれぞれ友情を育み、青春の日々が始まろうとしていた。かつて幼い頃から風を操る異能の力を恐れられ、その力を見いだされて言われるまま革命に協力させられ、ニナ・ヴィエントとして多くの人々の処刑に立ち会い心をすり減らしてきたクレアは、カルエルとの交流に心の安らぎを覚えていく。しかしクレアは「獄死したはずのカール・ラ・イールがイスラに来ていて、ニナ・ヴィエントに復讐する機会を伺っている」という噂を聞かされ、記憶の中にあるカールの姿にカルエルを重ねて一抹の不安を覚える。そんなある日、イスラを偵察する未知の国籍の戦空機が出現。イスラ空挺騎士団はこれを撃墜するが、神話上の存在であった敵対勢力「空の一族」(空族)の実在が明らかになる。また撃墜された機体から回収された海図から、進路上に存在する敵とも味方とも知れない未知の勢力「神聖レヴァーム皇国」の存在も明らかになり、旅の前途に不安が翳り始める。8月の強烈な日差しの下、「空の一族」との戦闘に備えた過酷な陸戦訓練が行われる中でも、学生達は恋と友情を育んでいく。イスラはついに、創世神話に記された途中経由地となる巨大構造物「聖泉」に到達し、人々は視界の果てまで広がる美しい海の噴水に歓喜する。しかし、聖泉は着水不能の不便な海域であった。海水から電力を得ていたイスラはいつ終わるとも知れない節電を強いられ、次第に残電力が減っていくある日、イスラは「空の一族」から一方的な宣戦を布告される。「空の一族」側による二重の陽動作戦と地の利の不利、加えての圧倒的な戦力差に騎士団だけでは手が足りず、学生たちにも任務が下される。生徒たちのうちミツオ、チハルは索敵任務、ヴァン・ヴィール組22人とカルエル、アリエル、ウォルフガング、マルコの4人は迎撃、その他のセンテジュアル組は陸戦で拠点防衛にそれぞれ参加するが、しかし「イスラを守る」という純粋な気持ちは「空の一族」側の圧倒的な戦力にへし折られ、学生たちは次々と戦死していく。カルエルは今までいがみ合っていたファウストとも共闘して互いを認め合うが、カルエルが参加した学徒隊は彼を残して全機撃墜され、アリエルも重傷を負う。カルエルは瀕死のアリエルに声をかけ続ける中、「戦闘空域を俯瞰視点から見つめ、敵機の機動が予測できてしまう」という不思議な感覚を体験する。カルエルは窮地を、未知の勢力であった神聖レヴァーム皇国の空戦機に救われ、そのエースパイロット「海猫」の操縦に憧れを持つ。先の「空の一族」との戦闘においてヴァン・ヴィール組は全滅。センデシュアル組からも2人の戦死者が出て、飛空科学生48人中24名が戦死する。さらに、重軽傷を負った学生も数多く、彼らは戦闘の恐ろしさを思い知った上、仲間を失ったことにより心に深い傷を負う。クレアは親しい友人たちの戦死に心を痛め、自分だけが要人として安全な場所に匿われたことや、その正体がカール・ラ・イールではないかという疑惑に確信を得つつあったカルエルに対し、自分の正体を隠し続けたことによる罪悪感に苛まれる。クレアはカルエルと互いの正体を明かし合ったことをきっかけに飛空科を自主退学し、自分の感情を殺してニナ・ヴィエントとしての役割を全うしようとする。カルエルも、初めて愛した人が憎み続けてきた仇であるニナ・ヴィエントであるという思いがけない事実に錯乱し、茫然自失となって塞ぎ込む。その間も容赦のない「空の一族」の攻撃は続き、彼らは傷も癒えぬ内に再び残酷な戦いの空へと飛び立つことを求められる。カルエルはアリエルや、バレステロス皇国の生き残りであるカルエルに対して密かな恨みを抱いていたイグナシオ・アクシスから奮起を促され、革命で処刑された母親は復讐を望んでいなかったことを思い起こす。出撃を決意したカルエル、イグナシオ、ノリアキ、ベンジャミンら4人の生徒たちの奮闘もあり、イスラ側の超弩級戦艦ルナ・バルコは「空の一族」との長距離砲撃戦を制するが、戦艦を失ってもなお圧倒的な「空の一族」側の戦力の前に、クレアを乗せたまま撃沈寸前に追い詰められてしまう。しかしクレアの元へ、ニナ・ヴィエントへの恨みを乗り越えたカルエルからの激励が届けられ、クレアは長い間失っていた風呼びの力を取り戻す。暴風や竜巻を自在に操る風呼びの力と、援軍として駆けつけた神聖レヴァーム皇国所属の戦艦「エル・バステル」の加勢により、形勢は一気に逆転する。戦闘後、神聖レヴァーム皇国との歓談に沸くイスラだが、「空の一族」からひとつの書簡が投下される。イスラとの休戦交渉に当たって「空の一族」が出した要求は、「空の一族」の神話でも信仰すべき対象となっていた風呼びの少女、ニナ・ヴィエント(=クレア)の身柄であった。先の戦闘を通じてクレアと心を通わせたカルエル。だが地の利がある「空の一族」を相手に全面戦争を続けてもイスラ側に勝機は薄く、イスラ側は巧みな交渉によって「空の一族」から多くの譲歩を引き出しつつも、通過権と引き替えにクレアの身柄を引き渡すことを約束させられる。出立の日の朝、イグナシオの手引きにより機会を得て、カルエルはクレアに想いを伝え、どんな手段を使ってでも、いつかクレアを奪い返しに行くことを約束する。そしてクレアもまた、カルエルへ自身の想いとお守りを残す。イグナシオはクレアの護衛として、彼女と共にイスラを去る。ようやく聖泉を通過したイスラは、途中寄港した「神聖レヴァーム皇国」での補給と護衛艦隊の合流を果たし、再び空の果てを目指して旅を続ける。途中で「空の一族」に遭遇しながらも通過権により戦闘を避け続け、ついに空の果てに到着する。明らかになった世界の姿は、平面世界の周りを星が回るという物。平面世界は「段差」である大瀑布によって隔てられ、空の果てで「石畳」と呼ばれる大地へと還った海水は、世界の中心にある聖泉から再び噴出している。そして、「空の果て」は水の落ちない工夫であり、物質が消滅し、石畳へと還る場所だった。イスラもまた、数々の思い出を乗せたまま空の果てで石畳へと還っていき、消失した。イスラからレヴァーム艦隊に避難し帰路についた艦隊は、レヴァームで新たな派遣艦隊に乗り換え、バレステロスに3年振りに帰還する。バレステロス共和国では「島流し」の甲斐なく更に政情が悪化し、民衆から選ばれた政治家たちが私利私欲のまま政争に明け暮れる衆愚政治に陥っていた。民衆の間では、かつて自分たちで踏み躙った王政の復古を望む声が高まっており、イスラと共に帰還したというバレステロス皇子カール・ラ・イールの噂と、その仇敵であったニナ・ヴィエントへの復讐の顛末は注目の的になっていた。共和制の存続を望む政治家たちから民衆を諫めてくれるよう懇願されたカルエルは、イスラの指導者であったアメリア、ルイスの後押しを受け、カール・ラ・イールとして凱旋式典の演説の場に立つ。その目的は、自らの名と立場を利用してクレアを奪還すること。カルエルは壇上で、自分が復讐の念や憎悪を乗り越えてニナ・ヴィエントと愛し合う立場となったことを明かし、「空の一族」に連れ去られた彼女を奪還するため、人々の助力を必用としていることを情熱的に訴える。人々はこれに熱狂、同情し、「引き裂かれた悲劇の恋人」「革命の旗頭と革命により地位を奪われた皇子の禁断の恋」という歴史的ロマンスは国境を越えて周辺国家へも広まり、彼らの恋と奪還作戦は支持される。熱狂に乗じて政策の失敗を帳消しにしたい政治家や、「空の一族」との貿易で利益を得たい実力家たちとの利害も一致し、ニナ・ヴィエント奪還のためにバレステロス、斎ノ国、帝政ベナレス、そして新しい同盟国となった神聖レヴァーム皇国が参加した多国間連合の超大規模艦隊「第二次イスラ艦隊」が編成される。カルエル自身も単座戦空機に乗り込み、必勝の準備を整えてクレアの奪還に旅立つ。その傍らで、旅には同行せず、義兄に対する恋心を悟られないよう身を引いたアリエルの想いが「歌えない恋の歌」として読者に明かされる。奪還の旅がどのようなものであったのか、どのような結果であったのかは、本作では語られない。最後にイスラの旅から28年後、カルエルらの級友であったナナコによる回顧録『空の果てのイスラ』が出版されたことや、その後も同級生の間で交流が続いていることなどが語られ、物語は締め括られる。「声」は2014年に放送されたテレビアニメ版で役を演じた声優。なお、2010年に原作小説のPVとして公開された映像の出演声優は公開されていない。第2巻からカルエル、クレア、アリエルらがらが通う、飛空士の養成学科の生徒たち。「空の一族」との戦闘が始まってからは戦闘に参加することになり、途中で戦死者を出しつつも、物語の最後までカルエルらと苦楽を共にする。なお劇中で戦死した生徒たちは死後、学生から正規兵(イスラ空挺騎士団正規一等飛空士)へと特進という扱いを受けている。イスラの指導者たち。第1巻ではカルエルの過去と旅立ちが描かれ、幼い頃のカルエルの姿と実の両親、そしてカルエルを引き取った育ての家族との交流が描かれている。カルエルを引き取って育てた家族で、アリエルにとっては血の繋がった実の家族。第1巻ではカルエルが引き取られた際の出来事や、旅立ちに際しての別れが描かれ、第5巻ではカルエルが故郷に帰還する場面で再登場する。名前を「〜エル」とする先祖代々の習わしがあり、カルエルという偽名もそれに倣って、本名の名残を留める形で命名された。「風の革命」で処刑されたバルステロス皇国の支配者であり、カルエルの実父母。原作小説では、国民の貧困をよそに贅沢な宮廷生活を続けていたことから国民に恨まれていたが、死後には共和制の失敗により、王政時代の方がまだ良かったとして再評価されていることが描写されている。イグナシオにとっては血縁者でもあり、憎悪の対象でもあった。イスラの進路上に存在する、国交のない未知の国家。しかし祖を同じくして共通の神を奉り、空の果てを発見して世界の謎を解き明かすという宗教上の目標を共有しており、イスラと同様に「空の一族」と対立している。前作『とある飛空士への追憶』やシリーズ第3作『とある飛空士への夜想曲』の舞台。「空族」とも呼ばれる敵対勢力。第4巻までは人的な交流が行われず、イスラ側にとって得体の知れない、蛮族なのか洗練された文明国なのかも定かではない敵勢力として描写される。原作小説の第5巻では「空の一族」側の人物も登場し、一族側の情勢も描かれている。シリーズ第4作『とある飛空士への誓約』では更なる詳細が明かされている。テレビアニメ版では「空の一族」側との交渉や人質交換の場面が描かれず、「空の一族」側の人物は登場しなかった。他のシリーズ作品同様、劇中で「飛空艦」と呼称される空飛ぶ艦船や、「戦空機」と呼称されるプロペラ式の戦闘機が登場する。これらの艦船や航空機の動力には、前作『追憶』と同様に架空のエネルギー源である「水素電池」が用いられており、着水して海水を取り込むことで電力を補充することができる。本作の主要な舞台となるイスラや、その母国のひとつであるバレステロス共和国では、ローター式の垂直離着陸機が広く普及しているという描写になっている。飛空艦の防御力では航空機による攻撃を防ぎきれないため、飛空機の戦力を重視した空戦ドクトリンを持つ一方、バルテレロスでは騎馬による一騎討ちの風習の名残から、複座式の戦空機同士が互いの手持ちの火器で撃ち合うような戦いが騎士道精神に基づく「誇りのある」戦いとして好まれており、劇中ではそうした設定を反映した機体が複数登場している。劇中では、前作『追憶』の舞台である神聖レヴァーム皇国に属する登場人物からティルトローターを物珍しがられたり、また第4作『誓約』の主要な舞台にもなっている「空の一族」側の戦空機の機首に取り付けられたプロペラ同調装置に対して、カルエルが「手品」「卑怯な装置」と評する場面が描かれるなど、同一シリーズの他作品で描かれる地域との技術格差や様式の違いが描かれている。イスラと敵対する「空の一族」(空族)の戦力。イスラ側と「空の一族」とでは空戦のドクトリンが異なり、空母型の飛空艦を主戦力ではなく大型爆撃機の護衛として配置したり、敵戦力を分散させつつ敵本拠地に本隊を突撃させて決戦を仕掛けたりといった、イスラ側の発想を超えた戦術を用いる。第3巻では、第1の陽動である囮艦隊と第2の陽動である囮爆撃機編隊でイスラ側の主力を引き離し、その後に本隊を投入している。第4巻では飛空艦同士の砲撃戦の後、「空雷艇」と呼ばれる小型艇や爆撃機による物量戦を仕掛けている。シリーズ第4作『とある飛空士への誓約』では、これらの機体につけられた愛称も登場しているが、本作では物語終盤まで「空の一族」側との交流が描かれず、正式名称不詳の機体として登場する。以下のうち劇中での呼称が一定ではないものについては、テレビアニメ版の公式サイトの機体解説で用いられている呼称を表記する。前作『とある飛空士への追憶』や第3作『とある飛空士への夜想曲』に登場する艦船や航空機が登場し、本作の主要登場人物の窮地を救う活躍が描かれている。前作『とある飛空士への追憶』や第3作『とある飛空士への夜想曲』に登場した国。劇中では物語の終盤、聖泉を抜けて神聖レヴァーム皇国に寄港した後、再び空の果てを目指して旅立ったイスラ・レヴァームの合同艦隊を見送るため、1個編隊が姿を見せたという短い言及がされている。アニメ版では『空の一族との交渉』から『空の果て到達』までの間が描写されていないため、登場しない。物語のラストシーンで、カルエルらがニナ(クレア)を取り戻すための旅へと出発する場面に登場。艦隊の目的は「空の一族」の武力制圧ではなく、軍事力を背景に相手を交渉の席に着かせることであるとされる。「空の一族」の首都プレアデスを3日で制圧できる戦力を有するとされ、カルエルらがクレア奪還の成功を確信している描写が描かれるが、本作では戦闘の様子は描かれない。出帆式の時点での戦力は飛空艦艇300隻以上、輸送船2000隻で、主要な大型飛空艦だけでも15隻、90機以上の艦載機を搭載した正規空母が18隻、軽重合わせた巡空艦が100隻以上、無数の駆逐艦とプロペラ飛空機が随伴していると描写され、物資輸送は水上高速輸送艦艇が担い、前回のイスラの旅での経験を元にコストや必要な物資量についても万全の準備が整えられているとされる。出発後はこの戦力に加え、神聖レヴァーム皇国からの派遣艦隊が合流する予定とされる。第4作『とある飛空士への誓約』にも登場する。アニメ版では『誓約』に先駆ける形で、「空の一族」と交戦する場面も描かれた。劇中の世界においては他の天体が球形であることが観測されていることから、人々はこの世界が宇宙の中の小さな星の一つに過ぎず、世界は球体であるという世界観を抱いているという設定である。その一方、いくら高度を上げても水平線には湾曲が観測できず、どれだけ南下しても気候が変化せず、長距離砲撃戦でも自転によるコリオリの力が働かないことから、ルイスなど一部の登場人物は世界が平面である可能性を指摘しており、世界の姿を解明することがイスラによる冒険の最終目的となっている。物語の最後では、劇中の世界は次元を隔てる光の壁に囲まれた、ウェディングケーキのように階段状になった海の中に大陸が浮かぶ、自転も公転もしていない平面世界であったという結論が描かれている。劇中では世界をこのような姿にした創造神の存在についても言及されており、人工的に作られた世界であるかのようにも解釈できる描写となっている。ただし作者の犬村はこの設定について、SF的な考証に耐えるようなものとしては設定しておらず、どのような仕組みでこのような世界になっているのかは不明だが、ただそのような形で存在している現実だけがある、という答えしか用意していないと説明している。原作者によれば、主人公が暮らす物語の舞台はスペインをイメージしているとされ、主人公の故郷であるバレステロス共和国の描写などに反映されている。犬村小六(著)、小学館〈ガガガ文庫〉、全5巻。このほか、2012年10月1日には小学館eBooksより電子書籍版が全5巻同時に発売されている。電子書籍版のISBNは底本となるガガガ文庫版と同じ。2014年1月から3月にかけて、TOKYO MXほかにて放送された。全13話。テレビアニメ版では、原作小説第1巻の内容が回想として序盤のエピソードに断片的に振り分けられ、主要登場人物の過去や抱えた事情が伏せられた状態から物語が始まるなど、前半のエピソード順序が変更されている。また原作では第4巻以降まで台詞のない登場人物であったイグナシオ・アクシスの登場が早められ、主要登場人物の一人として描写された。一方、原作における前半と後半で大きく作風が変化するような作りはテレビアニメ版でも踏襲され、原作におけるドラマ要素の表現を重視したメリハリのある構成が指向された。テレビアニメ版の最終回には原作小説シリーズ第4作『とある飛空士への誓約』の登場人物であるミオ・セイラが後ろ姿で1カット登場し、最終回の放送直前に発売された『誓約』第5巻の内容を反映した描写がなされた。制作を手掛けるトムス・エンタテインメントは、前作『とある飛空士への追憶』が2011年にアニメ映画化された際にも制作として携わっており、その際に本作のテレビアニメ化も企画が立ち上がった。トムス・エンタテインメントがライトノベルを原作としたテレビアニメ作品を手掛けるのは本作が初である。原作者の犬村は、原作の知名度が低いためにテレビアニメ版の制作条件が非常に厳しいものであったことを明かしている。監督に鈴木利正を起用したのは、本作の原作小説の挿絵を担当する森沢晴行が、鈴木の監督作品である『輪廻のラグランジェ』にも携わっていたことからの縁故であり、既に森沢と組んだ経験のある鈴木であれば、原作挿絵のキャラクターを活かせるであろうという判断による。他のスタッフも、ガガガ文庫の映像化作品に携わった人物や、本作の主要な題材である戦闘機の空戦に興味のある人材などといった人脈を通して集められた。原作者である犬村は、基本的には自身のメディアミックス作品に干渉しない立場を取りつつも、脚本や絵コンテ、設定に一通り目を通す形で本作に関わっている。軍事考証は鈴木貴昭が担当し、原作に書かれている部分以外の具体的な作戦の内容や戦況図の設定、メカニックデザインや劇中世界のテクノロジーに対する考察の加味などが行われた。各話の次回予告は登場人物の一人であるイグナシオ・アクシスが担当する形となっており、毎回、途中で予告の台詞を言い終わらないうちに中断されるという演出が用いられた。アニメ版では、イグナシオが主要登場人物という扱いを受けており、役を演じる石川界人にも熱意があったが、それにもかかわらず第1話では台詞らしい台詞がないという扱いから急遽決まったという。テレビアニメ化の発表は2013年8月10日に行われ、その際にはスタッフも発表された。地上波での放送は東京都のTOKYO MXと兵庫県のサンテレビの2局のみという限られた地域でのみ行われた一方、地上波での放送と時刻を合わせてのインターネット配信が行われた。また未放送地域では複合映画館にて本放送を後追いする形での上映会を行い、衛星放送やインターネットを見ることができない視聴者の需要に応じようとする、従来にはなかった形の公開形態も試みられた。2013年12月6日から3月21日にかけて、公式サイトおよび音泉においてWebラジオ『飛空士ラジオ!恋ジョルノ☆歌ジョルノ♪』が配信された。毎月第1・第3金曜更新。全8回。パーソナリティは南條愛乃(ナナコ・ハナサキ 役)と謎の鳥「飛んジョルノ」。なおテレビアニメ第12話では、Webラジオのオリジナルキャラクターである飛んジョルノが本編に姿を見せるという「遊び」の演出も行われた。2014年7月6日に、ニコニコ生放送『インターネットラジオステーション<音泉>10周年記念24時間生放送』内にて同番組の復活版が動画生配信された。2014年7月30日にBOX仕様で発売された。規格品番はGNXA-1640(Blu-ray)、GNBA-2200(DVD)。こじまたけし作画によるコミカライズ版が、『週刊少年サンデーS』(小学館)において、2014年4月号(2014年2月25日発売)から2015年11月号(2015年9月25日発売)まで連載された。単行本は全4巻。
出典:wikipedia
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