エルカセット(ELCASET)は、文庫本大(152mm×106mm×18mm)のカセットシェルに1/4インチ幅(6.3mm / オープンリールテープと同一)のテープを収め、コンパクトカセットの2倍の走行速度9.53cm/s、A/B各面2チャンネルでアナログ磁気記録再生するための、カセットおよび録音再生装置(デッキ)の規格名である。コンパクトカセットがあくまでも会話録音用の規格であったため、ハイファイオーディオ用途においてメーカー及び消費者側が性能や音質に疑問を抱いたことから、ハイファイオーディオに適合できる各種の新しいカセットテープ規格が提唱された。結果1976年に、「オープンリールの音を、カセットに。」という開発思想の下、ソニー、松下電器産業(現・パナソニック)、ティアック(TEAC)の3社が提唱し、実用化から一般市販に至った音声記録機器用規格である。主な商品は1976年6月以降、SONY EL-7を筆頭に規格提唱各社から発売された。発売当時は大変多くの期待を集めた規格の一つであったが、商品としては短命に終わった。テープをカセットシェルから上部に引き出して、逐次テープガイド・ヘッド・キャプスタンにローディングするアウターテープガイダンス技術が、エルカセットシステムの大きな機構上の特徴である。コンパクトカセットにおけるF特性、MOL、雑音レベル、スペクトラム分析におけるハイファイ録再機録には不十分な特性を改善している。また、コンパクトカセットシェルの精度誤差による位相特性の悪化を補っている。加えてテープ面積の拡大により経年劣化による再生再現性低下や変調ノイズを抑え、低域の歪みも軽減した。これはテープ走行系の安定化による効果である。このことはノイズリダクションシステムにとっても有利な環境であり、DOLBY-B NRが各メーカーの機器に標準で装備されていた。オープンリール音楽記憶装置製造におけるノウハウを利用できることを利点として宣伝された。実際、EL-7におけるテープ走行系を見て見ると、同社のオープンリール音楽記憶装置同様の機構が見られ、大変シンプルかつ堅牢な造りとなっていた。カセットシェルには、スライド式の誤消去防止タブ、リールストッパの採用、光電センサによるテープエンド検出穴、テープ種別検出孔、ノイズリダクション検出孔が設けられるなど、コンパクトカセットの使い勝手の良さを生かしつつ、さらなるハンドリング向上を目指した。また、コントロールトラックエリアも設けられ、頭出しなどを容易にする仕様も盛り込まれ、試作品は発表されたが製品化された実例はなかった。テープローディングとカセットシェルの構造は、当時規格化されていたベータマックス・VHSビデオ用カセットに共通する技術であり、技術面での交流があったことが想像できる(SONY EL-7, EL-5の初期カタログにはビデオデッキの技術を用いたと書かれている)。テープの磁性体には、酸化鉄、コバルト系酸化鉄が使用された。磁気記録特性では、Fe-Crテープ使用時のコンパクトカセット比で、テープ速度が2倍・トラック幅が約1.6倍に広がったことによる、高域特性の改善(10kHzで約10dB以上のMOL拡大)とノイズレベル低下効果によってS/N比62dB(DOLBY-B NRオフ時)を達成していた。1970年代の中頃を過ぎた頃、小型音声録音機器の規格においてはフィリップス社提唱のコンパクトカセットが事実上の世界標準となっていた。しかしながら、そもそもコンパクトカセットは主に会話など中音域の記録を目的とした規格であった。それに対してコンパクトカセット登場以前より存在したオープンリール音声記録機器は音楽の録音再生にも適合する規格であったが、装置が大型であり、取扱において若干の熟練を必要とするものであった。メディア自体の保管性もテープをただリールに巻き取るものであったため、確実なものではなかった。この二つのメディアの相互の欠点及び利点を補い、音楽用として実用に耐えるカセットテープシステムの提唱が行われた。古くはRCAにその規格があったと言われている。また、当時の日本オーディオ協会理事長始め複数の有識者がその規格の見直しと採用を提案していたとされる。日本でもAIWAがマガジンテープ(4.75cm/sec テープ幅 6.3mm)を提唱し、試作機を発表していた。また、BASF社がバスフユニセット(19cm/sec or 9.5cm/sec テープ幅 6.3mm)なるカセットテープの規格を提唱しており、その規格を採用した試作機をAIWAがオーディオフェアに出品展示を行っていた。その流れからソニー、松下電器産業、ティアックの三社共同にてELCASET規格が提唱され、実際に1976年に録音再生装置EL-7及び記録メディア(詳細は下記参照)が商品化された。1980年代を前にして発売終了となり、現在では新製された同規格製品を購入することは不可能である。記録可能時間の標準表記はコンパクトカセットに倣って、「テープ規格-録音時間」の形式である。例えば、60分タイプは「LC-60」と表記される。なお、メーカーによっては、標準表記以外の独自の製品型番表現がある。正しくは「エルカセット」、「ELCASET」のいずれかであり、それ以外の表記は誤りである。当時、オーディオ専門雑誌でさえ、Lカセット・ELカセットなどと書かれたものが一部で見受けられた。なお、「エルカセット」および「ELCASET」はソニーの登録商標(日本第1402545号)である。その他、海外では以下の製品も発売されていた模様。各記録メディアの時代、音楽記録メディアはデータレコーダーや、コンピュータのバックアップメディアにも転用されるのが通例だが、エルカセットも同様にELCASET-DR規格として、多チャンネル化されて医療機器などのデータロガーに利用された。この製品は1978年11月にソニーマグネスケール社から「FRC3907(9Ch用)」(185万円)、 「FRC3507(5Ch用)」(115万円)として発売された。記録上限周波数を高めるため、38cm/sのテープ走行速度も可能だった。なお、ELCASET-DR規格用のエルカセットテープには TYPE III の表記があり、音楽録音用途への流用も可能と思われる。(SONY EL-7のService Manualから)1980. SONY エルカセットデッキの販売を停止し、ソニーインターナショナルでの競売を通して全ての残存製品をフィンランドのHIRVOX社に売却清算現在でも低普及率だった事が強調されるため、その生産販売台数に関する数字が語られることが非常に少ないが、以前ソニーが明らかにしたところ(日経産業新聞、1977年5月10日付)では、次のように記されている。
出典:wikipedia
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