『源氏釈』(げんじしゃく)は、『源氏物語』の注釈書である。藤原伊行によって平安時代末期に著された現存する最も古い『源氏物語』の注釈書であり、『弘安源氏論議』においても源氏物語の注釈の始まりは「宮内少輔が釈」と呼ばれている本書であるとされている。これに続く源氏物語の注釈書である藤原定家の『奥入』においても『源氏釈』は非常に重要視されており、数多く引用されている。但し常に従っているわけではなく、批判を加えている部分もある。『源氏釈』はもともとは独立した注釈書ではなく、藤原伊行が所有する源氏物語の写本に頭注、傍注、付箋などの形で書き付けていった注釈を、改めて一冊にまとめたものと考えられている。現在のような形で1冊にまとめたのが伊行自身なのか、後人の手によるものなのかについては、両説が存在する。藤原伊行の注釈は後世の注釈書に数多く引用されているが、「源氏釈」のほか「源氏物語釈」、「源氏あらはかし」、「源氏あらはし」(「あらはかし」や「あらはし」とは不明な部分を明らかにすることを意味するものであると考えられている。)などさまざまな書名で呼ばれており、「伊行釈」「伊行朝臣釈」「伊行朝臣勘」「伊行勘」「伊行」などとして書名を記さない形で引用されることも多い。これは本書が一定の書名を持っていなかったためであるとする見解と、本書が一冊の注釈書になる前の原型である写本に付記された注記から直接引用された場合があるからであるとする立場とが存在する。藤原伊行の父藤原定信が死去した1156年(保元元年)には完成していたと見られる。現存する『源氏釈』の写本ではまず巻名を挙げ、巻名に数字を書き加えている。ここに挙げられている巻名・数え方・巻序については現在の一般的なものと比べて、といった特徴がある。巻名の後に注釈の対象となる部分の本文を引用し、その後に注釈を書き記す形を取っている。『源氏釈』に引用されている本文は青表紙本や河内本が成立する以前の本文であり、紫式部の自筆本に近い可能性のある重要な本文であるとされており、引用されている本文には別本とされている陽明文庫本に近いものがあることが指摘されている。書かれている注釈の大部分は引歌や引詩の出典、史実の典拠を示したものであり、藤原伊行とほぼ同時代の歌人である藤原俊成によって「源氏見ざる歌詠みは遺恨の事なり」とされ、歌作りにおいて重視された当時の『源氏物語』の受け取られ方を反映していると考えられる。本書は「源氏物語の注釈の始まり」ともされる源氏物語の注釈史の中で重要な書物でありながら現存する写本は極めて少ない。主要な写本としては以下のようなものがある。写本の勘物の形で存在する吉川本を除いていずれも全1巻。この他に十数葉の断簡の存在が確認されている。現行の写本では、それぞれの写本ごとの異なりが非常に大きく、同じ部分に対して全く異なる注釈を加えている。伊井春樹は伊行自身による大幅な改訂が行われたためであるとしており、冷泉家本を第一次本、前田家本を第二次本であるとしている。源氏釈は奥入以降のさまざまな注釈において引用されることが多いが、「伊行釈」「伊行」などと書名を記さない形で引用されるときに現行の写本のいずれにも含まれないものも多いため、伊行自身による改訂のほかに別人が独立した注釈書にするために編纂するに当たって大幅な内容の取捨選択が行われたと考える説もある。個別の写本の翻刻本
出典:wikipedia
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