有道 惟能（ありみち の これよし、生没年不詳）は、平安時代中期の官人。刑部丞・有道惟広の子。官位は従六位上、武蔵権介。藤原伊周の家令（家司）。名は維能とも記される。藤原伊周の失脚により武蔵国に下向し、児玉郡を開墾した官人であると伝えられ、子息は武蔵七党の一角を占める武士団である児玉党（児玉氏）の祖である児玉惟行。惟行の父については系図によって伝承が異なり、藤原伊周とするものや児玉遠岩とするものもあるが、研究者の間では、通し字や伝承の観点から有道惟能こそが惟行の実父であると考えられている。『庄系図略図』（上里町長浜、庄宗三郎所蔵）の記述によると、「長徳元年（995年）2月、内大臣藤原伊周公家令。長徳2年（996年）正月、従六位上、武蔵権介に任ぜられ、同年2月に解職」とある。伝承によれば、武蔵介となった惟能は児玉郡を開墾し、解職後も定住したとされる。そして、その子息である惟行も児玉郡へ住み、地方豪族化した。惟能が従六位であり、貴族ではなかった事が、「児玉氏は藤原氏が先祖である」とした創作や惟行の父は従五位の貴族であるとした創作を後世に生じさせた一因である。学術的な見地からすれば、児玉氏の先祖は藤原氏でもなければ、貴族ですらない。『武蔵七党系図』では、藤原伊周を惟行の父とし、児玉氏の先祖としたが、その創作は、西日本全体では通じにくいものであり、結果として西日本の児玉氏は児玉遠岩（従五位下）と言う架空の氏祖を創作して、改良した（威厳を高める必要性が生じたためでもある）。こうして児玉惟行の父は系図によって異なる人物になってしまった。系図が後世の子孫の都合やそれぞれの氏族の思惑から多様になってしまい、現代では誤解や混同を招く結果となってしまったと考えられている。裏を返せば、父惟能がそれなりの地位を有した人物であったのなら、こうした系図の改編は生じなかったものと考えられる。

出典:wikipedia