『かなづかい入門 歴史的仮名遣いVS現代仮名遣』(かなづかいにゅうもん れきしてきかなづかい たい げんだいかなづかい)は、白石良夫の著書。平凡社新書426。2008年6月発刊。全8章。定家かなづかい、契沖かなづかい、歴史的かなづかい、現代かなづかいの来歴を述べ、また歴史的かなづかいが現代かなづかいよりも勝ると考えている人たちをたしなめる。漢字の伝来、万葉仮名、上代特殊かなづかい、ハ行転呼音など、日本語の表記と音韻のキーワードに触れつつ、仮名づかいという問題の存在を述べる。「かなづかい」という言葉はある文章をどのようにかなで書くべきかという規則を意味する場合と、ある文章がかなでどのように書かれているかという様相を意味する場合の二つがあり、両者を混同するのは好ましくないと説く。後半で下官集について述べる。内容的には2章の後半と3章は連続する。定家の記した下官集は、和歌などの文章を書く際の私的なマニュアルのたぐいであり、嫌文字事以外の部分からは表記の利便性を重んずる考えが見てとれる。同様に下官集の一部である嫌文字事も、用いる仮名の揺れが不便であるからという理由で、その表記をとり決めたにすぎない。そしてそれが大きく異なる二つの基準(「お」と「を」の使い分けはアクセントにより、それ以外は当時から見て古い文献で多く使われている表記を採るという基準)からなることなどは、利便性という目的にとっては重要でなく、それは歴史的かなづかいや現代かなづかいとは別の合理性にのっとるものであると述べる。はじめに契沖による「和字正濫抄」以降の、江戸時代の国学者によるかなづかいの研究の流れを略説する。次に契沖かなづかいがその研究の進展によって従来の表記が誤りとなりうる可能性を有することを述べ、その例として、「いさおし」という語を契沖が「いさをし」とする一方で、魚彦は(「いさおし」を「いそし」の古形であると考えて)「いさほし」としたことを挙げる。最後に契沖かなづかいは歴史的かなづかいと異なり、国学者の一部が和歌や擬古文を書くときにのみ用いたものであり、それ以外の場合では(国学者であっても)契沖かなづかいを使うことはなかったという事実を述べる。(1)本居宣長の玉勝間の中での発言および大江戸倭歌集での字の修訂を挙げ、契沖かなづいは江戸時代からたびたび間違われていたこと、(2)和語の場合より同じ音を多数の表記で区別する字音かなづかいを必要とすること、(3)語源の不明な語については表記が確定せず、また新たな発見によって従来の表記が誤りとなる可能性を有すること、(4)「~しませう」のように平安時代にはなかった語に対しては形態上の規則によって架空の語形を作り規範としていることをあげ、歴史的仮名遣いが表記法としては不便であること、問題点があることを述べる。現代かなづかいの概要と、現代かなづかいの問題点として「じ・ぢ」および「ず・づ」のかき分けが語源意識を基準とすることによる曖昧さを述べる。昭和58年に国語審議会において同会委員に対して行ったアンケートに見られた歴史的かなづかいの信奉者の意見を挙げ批判する。歴史的かなづかいとは用いる語をどう書くかという規則であることを述べ、歴史的かなづかいについて、「「かは」を「カワ」と読む」のような説明のしかたをするのは、歴史的かなづかいが表記の規則でなく発音の規則であるかのように誤認されるので好ましくないと主張する。次に口語文には現代かなづかいを、古文には歴史的かなづかいを用いるのは戦後の慣習に過ぎず、古文は必ず歴史的かなづかいで書かれるというのは思いこみに過ぎないと説く。
出典:wikipedia
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