PK/PD理論(-りろん、PK/PD Theory)とは薬物の作用を薬物動態学 (Pharmacokinetics, PK) と薬力学 (Pharmacodynamics, PD) の組み合わせにより解析することである。薬物動態の解析は以前より行われており、患者の血液サンプルより血中濃度を測定し、薬効の評価及び副作用の発現回避に役立てられてきた。その一方で抗菌薬をより適切に使用することを目的として研究が続けられた。その結果抗菌薬の薬効発現予測には血中濃度だけでは不十分であり、菌側の感受性や薬物の感染組織移行性についても加味して検討する必要性が出てきた。そこで生まれたPK/PD理論は薬物動態学と薬力学を合わせた理論であり、抗菌薬のより有効かつ安全な投与方法を設計することが可能となった。抗菌薬は濃度依存性に効果を示すものと時間依存性のものとが存在する。濃度依存性タイプとは名前の通り、抗菌薬の血中濃度が高いほど殺菌作用が強くなるタイプであり、アミノグリコシド系やニューキノロン系が該当する。抗真菌薬ではトリアゾール系やポリエンマクロライド系、キャンディン系が濃度依存性の効果を持つ。濃度依存性タイプは下記に解説するPK/PDパラメータのうち、Cmax/MICあるいはAUC/MICが薬効と相関する。一方、時間依存性タイプとは血中濃度が最小発育阻止濃度 (MIC) を上回っている時間(T/MIC)が多いほど薬効が強くなるタイプであり、β-ラクタム系やグリコペプチド系、カルバペネム系、抗真菌薬のフルシトシンが当てはまる。MIC以上の濃度で抗菌作用があらわれることは前述のとおりであるが、たとえMIC以上に血中濃度を保っていたとしても生き残る菌が存在する。それらの中には突然変異により薬剤に耐性を獲得してしまうものもある(いわゆる耐性菌)。耐性菌は自然環境下においても少ないながら生まれているが、抗菌薬の不適切な使用は耐性菌出現率を上昇させる因子となる。耐性菌の出現を抑えるためには確実に殺菌を行わなければならないわけであるが、そのためにはMICよりさらに高い変異株出現阻止濃度(MPC)にまで濃度を上げる必要がある。言い換えれば、MIC以上MPC以下の領域で耐性菌が生まれる可能性がある事になる。この濃度領域を耐性菌選択濃度域(MSW)と呼ぶ。MPC/MICが小さい、つまりMSWが狭いほど耐性菌が生じにくいと言える。これまで1日複数回投与だったニューキノロン系抗菌薬であるレボフロキサシン(LVFX)が2009年より1日1回に用法が変わった。例えば今までの用法で1日3回投与を行った場合、血中濃度は1日に3回上下を繰り返すわけであり、MSWを通過する時間も長くなるため耐性菌が出現しやすくなってしまう。そこで考案された1日1回投与法はMSW通過時間(Time inside MSW)も減少する上、高いCmaxも得ることができるため、より有用な投与法であると言える。ポピュレーション解析とは患者母集団の血中濃度データからコンピュータを用いて薬物動態パラメータを解析する手法である。ポピュレーション解析により疾患ごとに薬物動態の特性が把握できる。モンテカルロシミュレーションとはコンピュータで乱数を発生させて何千回ものシミュレーションを繰り返したデータからある濃度の抗菌剤を投与した際にPK/PDパラメータが目標値を達成する確率を割り出し、抗菌薬の適切な用法・用量を設定する方法である。モンテカルロシミュレーションは原因菌が不明な場合の経験的治療(エンピリックセラピー)にも有用な手法である。
出典:wikipedia
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