フツの十戒(フツのじっかい、"Hutu Ten Commandments"または"Ten Commandments of the Bahutu")は、ルワンダのキガリで発行されていた反ツチ系の新聞、カングラ第6号に掲載された文章である。フツの十戒は、ルワンダ愛国戦線による1990年の侵攻から1994年のルワンダ虐殺までの期間において、フツ過激派による反ツチプロパガンダの典型例として度々言及されたことで知られる。カングラの編集長ハッサン・ンゲゼは、2003年にルワンダ国際戦犯法廷(ICTR)によりジェノサイドと人道に対する罪による告発を受け、第1審で終身刑の有罪判決を受けたが第2審で懲役35年に減刑された。「フツの十戒」はカングラ第6号(1990年12月発行)の「フツの良心に訴う」と題された記事内に掲載された文章で、記事自体は、以前のカングラで取り上げられた「ツチの植民地計画」という記事への1つの返答として書かれた。「フツの良心に訴う」は、導入部を除くと全体で5部から成っており、「フツの十戒」はその第5部に書かれている。同じ内容がミルコリンヌ自由ラジオ・テレビジョン(RTLM)でも放送された。この内容は市民にショックを与え、キガリではこのことで持ちきりだったという。ルワンダ人だけでなく外国人にもその民族差別性が問題視され、ヨーロッパにおけるユダヤ人差別と同列のものだと見なされた。「フツの十戒」はルワンダ大虐殺関連の書籍では大概触れられており、英訳やフランス語訳などを載せた文献があるただ、文献によって若干の違いが見られる。ここでは、ICTRの「メディア裁判」第1審判決文に証拠として載せられたものを用いた。多くの文献ではっきりと書かれていないために、「フツの十戒」がカングラ編集長のハッサン・ンゲゼによる創作物であるかのように勘違いされることがあるが、これは誤りである。実は、「フツの十戒」はカングラにだけ掲載されたのでもなく、また、カングラが初めて掲載したのでもない。カングラ以前にマスウェラ(Masuwera)に掲載されたほか、インテラ(Intera)、ウムラワ(Umrawa、Umuravaと記す場合もある)などのルワンダ国内の新聞も掲載している。また、親RPF系の新聞カングカですら掲載していた。一方、「フツの十戒」は以前から流通していた文章だが、「フツの良心に訴う」の記事自体はカングラが自分達で書いた文章であり、反ツチの主張に満ちている点は留意すべきである。カングラ1990年第4号には「ツチの19の戒律」と呼ばれる文章が掲載された。カングラに掲載された時は、「ツチの植民地計画」という名前で掲載された。カングラ第4号掲載の「ツチの19の戒律」の前には序文が置かれており、「権力を再び握ろうとしている者たちの古い計画は、今日でも活発である。キヴや中央アフリカのツチによる植民地化計画である。」と書かれているこれは、カングラが独自に付け加えた文章である。この文書のオリジナルは1962年以来流布されていたもので、ツチの学生が書いたものである。内容は、ツチによるフツ支配を扇動する露骨なプロパガンダ文書である。文書は「我々がどのくらいの数なのかを考えれば、その数は少ない。しかし、1960年の選挙に続いて、我々はバンツー族の愚かさに頼るという方法で権力を握るのである」というフレーズで始まる。第5の戒律には「我々は、選挙で選ばれたフツ族全部を責任ある地位から異動させることができるのだから、彼らと友人になろうではないか。彼らに何か贈り物、特にビールを贈ろうではないか。こうすれば、我らの仕事はいとも簡単に達成できるだろう」、第13の戒律には「フツ族は他人に仕えるために造られたのだということを忘れてはならない」、第16の戒律には「我々の目的達成が失敗するのならば、我々は暴力を用いるであろう」とある。ICTRの「メディア裁判」で検察側は、内容は同じではあるものの、カングラに掲載されたものはオリジナルとは表現が異なっており、一見カングラが公平であるかのように偽装しているだけで、実際は反ツチプロパガンダの一環として掲載されたものだと主張したが、判決文では証拠不十分として退けられている。ルワンダ大虐殺の研究では、ジェノサイドのイデオロギーが大虐殺開始以前からあった証拠として、古くから「フツの十戒」があげられてきた。しかし、スコット・シュトラウスの実証的な研究により、ジェノシデールのほとんどが「フツの十戒」という名すら聞いたことがなかったことが明らかにされている。カングラがキガリやエリート層で読まれていたことは疑いがなく、また、全国レベルでもカングラがルワンダ中に配布されており、集会でも読み上げられるなどしていたことは間違いないが、それらに触れた人々は、ルワンダ国民のごく一部であったと考えられる。「フツの十戒」に見られるような過激な反ツチのプロパガンダは一般大衆、特に農村部ではまったく浸透しておらず、ジェノサイドに影響力を持ったとは考えられない。
出典:wikipedia
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