カーボンナノチューブ(、略称CNT)は、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になった物質。炭素の同素体で、フラーレンの一種に分類されることもある。単層のものをシングルウォールナノチューブ (SWNT)、多層のものをマルチウォールナノチューブ (MWNT) という。特に二層のものはダブルウォールナノチューブ (DWNT) とも呼ばれる。カーボンナノチューブ (CNT) の直径は0.4~50nm。その名の通りナノメートル単位であるため電子顕微鏡によって観察できる極小の世界である。カーボンナノチューブは、基本的には一様な平面のグラファイト(グラフェンシート)を丸めて円筒状にしたような構造をしており、閉口状態の場合、両端はフラーレンの半球のような構造で閉じられており5員環を必ず6個ずつ持つ。5員環の数が少ないため有機溶媒等には溶けにくい。7員環が含まれる場合には内径が大きくなり得るため太さの違うCNTが形成され、8員環では枝分かれ状の構造も作り出せると考えられている。チューブは筒のような構造のためキャップを焼き切るなどにより中に様々な物質を取りこむ事ができる。ナノチューブとフラーレンが結合したカーボンナノバッドという形も理論的には予測されている。最も基本的な単層カーボンナノチューブの表面はグラフェンシートの表面図のようになっており、そのグラフェンシートの幾何学的構造の違いによって3種類のカーボンナノチューブが成立するとされる。グラフェンの六角形の向きはチューブの軸に対して任意の方向にとれるため、このような任意の螺旋構造の対称性を軸性カイラルといい、グラフェン上のある6員環の基準点からの2次元格子ベクトルの事をカイラルベクトルと呼ぶ。カイラルベクトルは以下のように表される。このベクトルを指数化した(n,m)をカイラル指数と呼び、チューブの直径や螺旋角はカイラル指数によって決まる。チューブの直径dは以下になる。以上のように、立体構造の全てはカイラル指数によって左右される。3種類のそれぞれの構造体には名称があり、ナノチューブの軸に直角な場合をアームチェアチューブ (n,n)、軸に並行な場合をジグザグチューブ (n,0)、それ以外のナノチューブはカイラルチューブと呼ぶ。また、SWNTではカイラル指数によって金属型と半導体型のナノチューブに分かれ、n-mが3の倍数では金属型であり、3の倍数でない時は半導体の特性を示す。この他の性質に関しても、さらなる利用価値を探して研究が進められている。カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーに対する最初の観察と研究は、1952年のソビエト連邦までさかのぼる。この時点で既に2人のロシア人科学者によってカーボンナノチューブと思われるTEM写真と文献が書かれていた。しかし、当時は冷戦中という事もあり、その詳細が西側諸国に紹介されることはなく研究は置き去りにされる。それから20年もの歳月が過ぎた1976年のフランスで、日本の遠藤守信(当時信州大学工学部助手、フランス国立科学研究センター(CNRS)客員研究員。現・信州大学先鋭領域融合研究群カーボン科学研究所特別特任教授)は、後のカーボンナノチューブの存在とその成長モデルを世界に初めて示した。しかし、遠藤の関心はその後、構造の追求よりも成果の実用化に移る。1982年、その生成を連続的に行う量産方法として触媒化学気相成長法を考案し、1987年に特許化する。この方法は、1988年に米国化学会のCHEMTECに発表された。しかし、上述したとおり、この時点では現在のカーボンナノチューブとしての詳細な構造は解明されておらず、構造の解明と決定は1991年の飯島による再発見まで待たねばならない。一方、米国では、1979年にペンシルベニア州立大学の会議においてジョン・エイブラハムソンによりアーク放電によって低圧の窒素雰囲気中に生成されたカーボン繊維の特殊性について述べており(文献発表は1999年)、1981年にはソビエト連邦の研究者らによって、カーボンナノチューブの表面に当たるグラフェンシートの幾何学構造についての考察文献が発表されている。1987年にはハワード・G・テネットによってカーボンナノファイバーの直径が3.5nmから70nmの間とされる事やその応用性について述べられた。1991年、日本の飯島澄男(当時NEC筑波研究所研究員。現・NEC特別主席研究員、産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センターセンター長、名城大学終身教授)によって、フラーレンを作っている途中にアーク放電した炭素電極の陰極側の堆積物中から初めてTEM(透過電子顕微鏡)によって発見された。この発見には幸運だけではなく、高度な電子顕微鏡技術も大きな役割を果たしていた。また、電子顕微鏡で観察・発見したというだけでなく、電子線回折像からナノチューブ構造を正確に解明した点に大きな功績が認められている。このときのCNTは多層CNT (MWNT) であった。触媒金属のナノ粒子とメタン (CH) やアセチレン (CH) などの炭化水素を500~1,000℃で熱分解してCNTを得る。大規模生産向けの手法。通常のアルコールCVD法やSG-CVD法は基盤を用いる。これに対し、DIPS法は、触媒(その前駆体を含む)及び反応促進剤を含む含炭素原料をスプレー等で霧状にして高温の加熱炉に導入することによって単層カーボンナノチューブを流動する気相中で合成する。DIPS法はCVD法の一種であり、気相流動法とも呼ばれる。DIPS法はスケールアップが容易であることと、連続的運転が可能であることが特徴である。AISTと日機装が新しく改良したDIPS法ではSWNTの直径を0.1nm単位で精密に制御でき、従来に比べ触媒利用効率3,900%、量産性100倍、紡糸や製膜化を可能とする。SWNTの純度は97.5%程度である。産業技術総合研究所ナノカーボン研究センターにおいて、畠賢治、飯島澄男らによりスーパーグロースCVD法が発表された。CVD法の一種である本法は通常の気相合成雰囲気中に極微量の水分を添加する事により触媒の活性及び寿命が大幅に改善され、高効率、高純度な単層カーボンナノチューブを得ることができる。この合成法による成長速度は以下の数式によって表される。βは成長定数で207 μm/分、formula_3は触媒特性時間。その効率は、触媒効率ではレーザーアブレーション法に比べて100倍、時間効率では2004年の公開時の実験では厚さ2.5mmのSWNT薄膜を形成するのに要した時間はわずか10分であった。純度は99.98%以上、表面積は閉口状態1,000m/g、開口状態2,000m/g、重量密度は薄膜で0.037g/cm、固体で0.55g/cmと非常に高性能である。これまではHiPco法で5~30%、通常のCVD法で3~15%の触媒金属やアモルファスカーボンなどの密度の高い不純物が含まれていた。そのため標準的な試料のSWNTの密度は1.4 g/cm程度であったが、この製造方法では高密度固体の形状でも非常に軽い。また触媒操作する事でSWNT膜だけでなくDWNT膜やMWNT膜の形成も可能である。ナノチューブの直径によりその含有率は変わり、SWNTとほぼ同程度の純度の薄膜を形成できる。純度等の問題も併せて量産が難しかったカーボンナノチューブの大量生産を実現する技術とされる。また、この技術を用いると、その配向性の高さから、花びらのような構造体を成長させることも可能である。この方法で合成されたカーボンナノチューブは、基板の上に貝割れ大根のように上向きに密集して成長する。この配向性を利用してカーボンナノチューブ黒体などがAISTにより製作されている。サンプルはAISTによって提供されている。2013年時点で、日本では取扱に関する法規制はないが、取り扱い者の健康を保全するために、「安全性試験手順書」と「作業環境計測手引き」がNEDO、技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構、産業技術総合研究所らにより作成された。カーボンナノチューブ以外にも、他の物質によって作られたナノチューブが多数発見されている。代表的な物質には、炭素と性質が似た元素であるケイ素 (Si) や、グラファイトと同様の層状構造を取るBN、BCN、MS(MはMo、W、Nbなどの金属)がある。また、合成化学的にカーボンナノチューブに類似した分子性のナノチューブを合成した例もある。
出典:wikipedia
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