ミニFMとは、電波法に規定する微弱電波でFM放送の周波数帯を用いる微弱無線局である。免許を要しない無線局であるため無線局免許状や無線従事者は必要なく、放送法上の放送局でもない。コミュニティFM(cFM)との混同を避け、マイクロFMと称することもある。ワイヤレスマイク一個で簡単に開設できるため、児童館や大学生の課外活動、学園祭や運動会などの町の話題や地域のコミュニケーションの場としての実況放送、商店街や町興しやイベントの会場案内などに使われる。反面、時間的にも空間的に限定されたものであり、内容としては個人又は同人の趣味やイベント会場の構内放送の延長上にあるものがほとんどである。広範囲をカバーしようと単に出力を大きくするならば、第二級陸上無線技術士以上の無線従事者が管理する地上基幹放送局の免許を要することとなる。また、複数の場所から送信するにしても同一周波数を使う限り相互干渉は避けられないので不感地帯を設けざるを得ない。このような場合にはアンテナをLCXと呼ばれる漏洩同軸ケーブルに置き換えて敷設する。LCXを施工できるのは、JRA競馬場でのグリーンチャンネルやAM放送の再送信、富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、住之江競艇場、両国国技館、横浜スタジアム、秩父宮ラグビー場での実況放送などに見られるように一定以上の来場者が見込める施設であり、事業的な見地からもイベント開催時でないと行っていない。また、FM放送再送信や非常割込放送を行う道路トンネルや地下駐車場があるが、これもLCXによるのでミニFMの一種といえる。これは遮蔽された空間だからこそ地上基幹放送局と同一周波数で再送信できるのである。地下街のように広範囲でノイズが大きくなるとLCXでは不十分となる。放送波遮蔽対策推進協会ではFM放送再送信には実験試験局の免許を取得し対処している。この実験試験局には第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理を要し、ミニFMとはいえない。東海道・山陽新幹線、東北新幹線などの鉄道車両内でのAM放送・FM放送再送信のサービスは、車両単位のミニFMといえる。開始当初は沿線で地上基幹放送局が使用していない周波数を選定したものの、新規開局したものと周波数が一致又は近接していることがあり、受信に支障をきたすこともある。恒久的に送信しているものは、ハイウェイラジオ上三川(北関東自動車道壬生パーキングエリアで実施)などごく一部の路側放送のFM波による再送信および道路トンネルなどのFM放送再送信などの僅かな例しか見ない。「微弱電波」とは、電波法第4条第1項に規定する「発射する電波が著しく微弱な無線局」によるもので、これをうけた電波法施行規則(以下、「施行規則」と略す。)第6条第1項第1号に1986年(昭和61年)から「無線設備から3メートルの距離において、電界強度が毎メートル500マイクロボルト以下のもの」と規定されている(出力による制限ではない。)。この電界強度をダイポールアンテナを使った場合の送信電力に換算すると50nWとなる。測定法は、総務省告示に規定されている。試験場などの設備が無ければ告示の条件による試験は困難であり「微弱無線設備性能証明」を行う企業がある。電波法令上の義務ではないが違法性が無いことを証明するにはこれを利用すればよい。1996年(平成8年)までは施行規則改正の経過措置として、「100mの距離において15μV/m以下」が許容されていた。現行規定と比較すると、自由空間での電波伝搬特性を基に100mでの値を3mでの値に換算した等価なものにみえるが、実際には100mの距離があると大地反射の影響を無視できず、伝搬減衰量は自由空間でのものより大きくなる。10m以上の距離で大地反射を考慮すると15μV/mの電界強度となるのは30mと計算される。これは、実用感度が100μV/m程度(地上基幹放送局の放送区域の最低限が250μV/mの電界強度と定義されているのもこのためである。)の市販の廉価なFMラジオでの到達距離におおむね相当する。この微弱電波を超える出力で送信すれば電波法第110条第1項違反となり総合通信局(沖縄総合通信事務所を含む。従前は地方電気通信監理局、地方電波監理局、沖縄郵政管理事務所)による取締り、刑事告発の対象となる。NHK-FMが全県に普及し民放局が東京、名古屋市、大阪市、福岡市に開局した1970年代にも類似の事例があったといわれるが、散発的で詳細は不明である。送信機の市販品も無く、工作少年、ラジオ少年といわれた年少者がラジオ雑誌を見て製作した送信機を用いた、いわば製作後の余技のようなものである。ただ、1970年代末頃には雑誌の広告にもトランスミッター(送信機)の完成品が見られるようになる。1979年(昭和54年)2月には、八王子市で最大20Wの出力で送信していた「FM西東京」(cFMの「エフエム西東京」とは無関係)が摘発された。同年7月25日号の『POPEYE』には「100m放送局の面白い使い方」という記事が掲載されている。これが一般人の耳目をひくようなカルチャー誌に取り上げられた走りであろう。1980年(昭和55年)には、大阪芸術大学の学生が「ミニコミFM放送サークル」と称して活動を始めた。1982年8月には音楽プロデューサーの上野義美が 港区青山のキラー通りに「KIDS」を立ち上げた。これがミニFMの嚆矢(1982年(昭和57年)8月5日 スポーツ報知)とされることがある。これは、ロックバンドC-C-Bがこの局の企画で生まれたからで、商業的な側面をとらえてのことである。県域民放局が開局し、評論家の粉川哲夫が自由ラジオを提唱した1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)ごろがブームであった。ラジオ雑誌のみではなく新聞、テレビ等のマスメディアに取り上げられたり、書籍『ミニFM全国マップ』(亜紀書房、1986年(昭和61年)刊)も発行され、一説には日本全国で2000局はあったといわれている。この中にはネットワークを組んでカセットテープに録音した放送素材を交換しあった者もいる。さらに、電波を通して他の局との連携を指向した者もいて、大阪市及びその周辺ではピーク時の1990年(平成2年)頃に番組を直接中継したり相互に交信を行える局が60局存在し、1981年(昭和56年)〜1999年(平成11年)までで述べ165局存在したという。後のcFM、臨時災害放送局や大規模なイベントに開局するイベント放送局はこの発展形ともいえ、ミニFMに携わった者が開局した例もある。1985年(昭和60年)9月には、東京都港区の「KYFM」が摘発された。これは電波法違反を公言したため、行政指導にも従う見込みも無いと関東電気通信監理局が警視庁に告発したからであるが、目に余るものに対し一罰百戒の効果をねらったといわれている。1980年代後半からは主要都市での民放局複数化や1992年(平成4年)のコミュニティFMの登場によるFM受信の選択肢の増加、1996年(平成8年)の施行規則の経過措置満了による規制強化などにより局数は減少した。1991年(平成3年)にはミニFMをテーマとした映画『波の数だけ抱きしめて』が公開された。この舞台は1982年の神奈川県の湘南である。ストリーミングやPodcastなどのインターネットラジオの普及により、個人的にミニFMを継続的に行う者は中高年者が主になっている。但し、微弱電波は電波法、著作権法などの取締りが皆無に等しく、設備が簡素で手軽にできるため、小中学生などの個人放送初心者が開局する例もある。送信機も、オーディオ機器用アクセサリーとしてケーブル接続に代えてごく至近の受信機まで飛ばすものや、パーツ・キットとして組立てを要するものを除けばほとんど見かけなくなるに至った。2011年(平成23年)7月には、日野市のアパートから無免許で最大42Wの出力で送信していた会社員の男を関東総合通信局が告発し、警視庁が現行犯逮捕、身柄送検している。男は「JOUT-FM百草」というコールサインを用いていた。1990年代の練馬区在住時から「JOUT-FM」と称して送信していたといわれる。なお、JOUTのコールサインはNHKに指定されるものとされ、第1放送に指定された事例はあるが、JOUT-FMとしてFM放送に対しては無い。これについては日本の放送局所の呼出符号を参照。放送受信の妨害にならないよう、既設の地上基幹放送局およびその周辺の周波数を除いて使用周波数を決定しなければならない。ミニFMを開設するには、送信機と、これにつなぐアンテナが必要である。送信機は、完成品は数種類を除き組立キットしかなく、電子技術の知識が無い場合は製作が難しい。「自動車用」や「携帯プレーヤー用」と称するオーディオ機器用アクセサリーの「FMトランスミッター」は「見通しで10m程度」などと書かれている製品が多いが、効率の良いアンテナを接続すると電界強度の許容値を超え違法となる可能性がある。総務省は、微弱電波の範囲を超えるおそれがある無線機を一般市場で購入し測定を行い、この範囲を超えるものについて公表する無線設備試買テストを実施し、電波利用ホームページにその結果を公表している。ミニFM用に限らず、公表された機器を使用することは電波法違反となる。販売についての法規制は無いので、公表されていないことをもって微弱電波の範囲にあるという証明にはならない。民間による任意制度であるが全国自動車用品工業会(JAAMA)は微弱無線設備を登録している。同工業会指定の試験機関で#微弱電波の定義で述べた試験を行った機器を登録し微弱無線マーク(ELPマーク)を発行する。入手の際はこのマークにあるものを選択するのがよい。自作にあたってはPLLシンセサイザーにより安定度が高く、高セパレーション(ステレオ送信時に左右の音が交わらない)の物が好ましい。PLLシンセサイザーで周波数変調すると、PLLの周波数引込特性により、変調波の低域周波数成分がカットされる。PLLシンセサイザーのVCOを安定に発振させると数μW〜数mW程度の出力となるが、筐体輻射として外部に漏れるとこれだけで許容値を超えてしまうおそれがあるため、VCOをシールド構造にするか非常に小形に作らねばならない。後段についても、許容値を超えないよう慎重に設計を要する。つまり、ミニFMの送信機の技術的な難しさは、いかに電波を安定に弱くし、法規制をクリアするかにある。送信機とアンテナとの間の接続は同軸ケーブルを利用するが、一般に送信機の出力インピーダンスは50Ωのため、同軸ケーブルは受信用の75Ω用より専用の50Ωのものを用いるのが好ましい。インピーダンス変換はマッチングトランス(インピーダンス整合器)または簡易的には25Ωまたはその近似値の無誘導抵抗の直列接続による。不整合損失を減らして許容値を超えた場合、こんどは送信出力を低下しなければならないので、インピーダンスを必要以上に気にすることは無い。サービスエリアを広げようと高利得のアンテナを使用するとしても、送信側にFM用八木アンテナなどの高指向性アンテナを用いては、微弱無線局は電界強度で規制されるため、特定方向の電界強度が許容値をオーバーしやすくなり、合法的に運用するには出力を低下せねばならないため、結果的にサービスエリアの総面積はかえって小さくなり不利なものとなる。受信設備についての法規制は無いため、高利得のアンテナを使用するのが有利である。パソコンのスピーカー出力端子に送信機を接続し、パソコンから音声を取り込むこともできるが、別途スピーカーの分配器が必要である。1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災の際に神戸市長田区の「FMわぃわぃ」(および前身の「FMヨボセヨ」「FMユーメン」)が、ミニFMのサービスエリアに合わせた支援放送を多言語で行って話題になった。1996年(平成8年)に「FMわいわい」はcFMとなって2016年(平成28年)まで放送を続けてインターネットラジオに移行した。西宮市のFMラルースも同様な事例として知られ、後にcFMのさくらFMとなった。2001年(平成13年)に特定小電力無線局の用途の一つとして視覚障害者の音声アシスト用に周波数75.8MHz、出力10mWが制定されたが、全く普及していない。情報通信研究機構は、2010年(平成22年)にこの規格を基にして災害時に小学校の校区程度をサービスエリアとすることを想定した装置を開発、技術基準適合証明を取得し、到達距離を検証すると発表した。実験用装置は未来技術研究所が製造し、同年中に技術基準適合証明を取得している。2012年(平成24年)には、この装置を用いて東日本大震災復興支援のフィールド試験を実施した。特定小電力無線局であるので免許や資格は不要、外部アンテナも接続でき、周波数がFM放送帯の直下にあるのでPLLシンセサイザーを使わない簡易なFM受信機なら受信できる。但し、30秒以上の連続送信はできず、キャリアセンス(同一周波数の電波を受信すると送信を停止する)機能を搭載することが義務付けられているので、一つの局が送信すればそのサービスエリア内では他の局は送信できない。中波で振幅変調して送信すれば、ミニAMとなる。中波をFM放送のVHFと比較すると、という特徴がある。送信機は、電子ブロック等の電子回路学習キットや自作回路で組み立てることができるため、1970年代の小学生の間では、電子ブロックのブーム時に使われる傾向があったが、トランジスタの発振回路に直接に変調をかけた高周波増幅を持たない回路であったため実用性は乏しかった。ミニFMより事例は少ないが境港市の水木しげるロードで期間限定で行われた「妖怪ラヂオ」のサービスがこれである。また、#概要に述べた道路トンネルや地下駐車場でAM放送再送信や割込放送を行うものもあり、八重洲地下街や川崎アゼリアなどの大規模地下街、札幌ドームやナゴヤドーム、都営地下鉄でもAM放送を再送信している。これらの施設内や車両内への輻射という点ではミニAMといえる。ミニAMは中波を用いるので、トンネルなどの施設では誘導線または螺旋漏洩同軸ケーブルによることができれば、出力を大きくしても高周波利用設備とすることができる。この場合、高周波利用設備許可状を要するが無線従事者は不要である。AMにおいてもこれらの施設が遮蔽されているから地上基幹放送局と同一周波数で再送信できるのであり、都営地下鉄の高架部では実施していない。なお、路側放送は、10W(1620kHz)又は5W(1629kHz)と微弱電波より大出力で送信するため、警察又はNEXCOなどの道路管理者が特別業務の局の免許を取得し、第二級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理により行うものでミニAMではない。テレビ電波を送信すればミニテレビとなるが、機材の調達が比較的難しく、サービスエリアも狭い。地上基幹放送局の送信波は6MHz幅のアナログ方式では残留側波帯であるのに対し、安価なUHFトランスミッターの送信波は9.5MHz幅の両側波帯のものがあるので、放送チャンネルの隣接チャンネルを使用すると放送受信を妨害してしまう可能性がある。場合によってはスプリアス波により隣々接チャンネル以降も妨害してしまうこともあるので、事前に放送受信に影響を与えないか確認し、問題があれば対処してから送信しなければならない。なお、VHF送信機による隣接チャンネルへの影響は、UHFのものより小さい。これは、同じ6MHz幅であっても比率としてみれば周波数が低いほど相対的に離れており、テレビ受像機内部の同調回路の減衰量のより大きい帯域を通過することになるからである。あまりにも稀有な存在でかつテレビの通常のプリセットチャンネル外で送信され、デジタル方式のテレビにとっては妨害電波となるため気がつかれない場合が多い。ワンセグ用送信機2007年(平成19年)に富士通がスポットキャストと称する微弱電波を利用したワンセグ配信システムを発表した。受信可能な距離は、送信アンテナから数cm〜2m程度である。2011年に富士通は販売を終了したが、同様の機器は他社から民生用として販売されている。ワンセグ配信の延長上にあるのがホワイトスペースを利用するエリア放送である。2012年4月に制度化され、地上一般放送局として免許される。地上一般放送局は適合表示無線設備のみを用いれば無線従事者は不要である。エリア放送は、フルセグも可能な地上一般放送で、地上基幹放送より規制は緩やかであり、個人による申請も制度上は不可能ではない。免許不要であってもミニFMは無線局の一種であり、送信機は無線設備である。次のようなことは電波法第9章の罰則の対象である。ミニFMであっても著作権法の対象となるため、著作物を無断で送信する事は違法である(同法の例外規定によるものは除く。)。
出典:wikipedia
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