傷病手当金(しょうびょうてあてきん)とは、健康保険法等を根拠に、健康保険、各種共済組合などの被保険者が疾病または負傷により業務に就くことが出来ない場合に、療養中の生活保障として支給する制度である。雇用保険の傷病手当とは名称がよく似ているが、全く異なる制度である。以下では特に記さない限り、健康保険における制度について述べる。被保険者資格取得前の傷病であっても、資格取得後の療養について上記の要件を満たしたときは、傷病手当金は支給される。傷病手当金の支給を受けようとする被保険者は、申請書に医師又は歯科医師の意見書および事業主の証明書を添付して保険者に提出しなければならない(規則第84条)。一般的な医師の診断書と異なり、保険者指定の支給申請書に証明を要する。その関係から、傷病手当金支給申請書への医師証明料は健康保険が適用される。なお被扶養者に対しては傷病手当金は支給されない。なお、健康保険、船員保険においては傷病手当金は絶対的必要給付(要件を満たしたときは保険者は必ず支給しなければならない)であるが、国民健康保険、後期高齢者医療制度では任意給付(条例または規約の定めるところにより行うことができる)となっている。平成28年4月1日支給分より、1日につき、「傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)の3分の2に相当する額」(1円未満の端数を四捨五入)とされる。被扶養者の有無で額に変わりない。ただし標準報酬月額が定められている月が12月に満たない場合は次のいずれか少ない額の3分の2に相当する額とされる(第99条1項)。標準報酬月額は、被保険者が現に属する保険者等によって定められたものに限り、転職等で保険者が変わっている場合は従前の保険者等による標準報酬月額は算定の対象とならない。同一の保険者で同一の傷病に関し、一度傷病手当金の額が決定すれば、その金額で固定され、その後定時決定等で標準報酬月額が変更されても、傷病手当金の金額は変更されない。一方、傷病手当金を受給しているからといって、被保険者の保険料負担が免除されるわけではない。なお、傷病手当金自体は、健康保険法でいう「報酬」には該当しないため、傷病手当金から保険料を控除することは認められない。健康保険組合の場合、付加給付として(第53条)、規約で定めるところにより、支給額の上乗せや支給期間の延長がなされる場合がある。日雇特例被保険者の場合は、保険料納付期間において保険料が納付された日に係るその者の標準賃金日額の各月ごとの合算額のうち最大のものの45分の1に相当する額となる。同一の傷病事由についての支給期間は、現実の支給開始日から起算して最長1年6ヶ月とされている(第99条2項)。途中でいったん労務に服した後に再度同一の傷病により休業したとしても、延長はされない。一般的には先に年次有給休暇を取得して(賃金が100%保障されるため)、それでもなお休業が続く場合に傷病手当金の受給を始めることになるので、「現実の支給開始日」は年次有給休暇を取得し終わった翌日(年次有給休暇を取得しなかった場合や、取得日数が2日以下の場合は、待期満了の翌日)となる。なお、日雇特例被保険者の場合は支給期間は6ヶ月(結核性疾病の場合は1年6ヶ月)となり(第135条3項)、船員保険の場合は3年となる(船員保険法第69条3項)。事業所の公休日についても傷病手当金は支給される。支給を受けている被保険者が死亡した場合、死亡当日までは傷病手当金が支給される。傷病手当金を受給中に、別の傷病によりこれについても療養のため労務不能の状態となった場合、後発の傷病により労務不能となった日から起算して4日目から後発の傷病による傷病手当金が支給されるので、結果的には後発の傷病手当金が支給終了するまで支給期間が延長される。ただしこの場合、二重に傷病手当金が支給されるのではなく、一本の傷病手当金というかたちに統合されて支給される。退職などにより被保険者の資格を喪失した場合でも、その前日(退職の当日)まで1年以上継続して被保険者の資格を有しており、傷病手当金の給付要件を満たしていれば、引き続き傷病手当金の給付を受けることができる(第104条)。受給手続きは在職時の場合と同様であるが、事業主の証明は不要である。前記の給付要件に準じるほか、次の要件がある。傷病手当金は原則として任意継続被保険者には支給されないが、上記の要件を満たす者が任意継続被保険者となった場合には支給される。なお、同一の健保の任意継続被保険者でないと給付しないとする健保組合も一部に存在する。退職後の給付には付加給付が付かないか、または任意継続被保険者であることを要件とする組合もある。また、特例退職被保険者は上記の要件を満たしても傷病手当金は支給されない。健康保険の被保険者であった者が船員保険の被保険者となったときは、船員保険から給付が行われるので健康保険からは傷病手当金の継続給付は受けることはできず、また選択の余地もない(第107条)。他の健康保険法上の給付と同様、傷病手当金を受ける権利は、2年を経過したときは時効により消滅する(第193条)。時効の起算日は、「労務不能であった日ごとにその翌日」である。1883年、ドイツのビスマルク内閣のもとで疾病保険法が成立、最低賃金の半額を最高13週まで傷病手当金として給付するとされた。疾病や負傷による休業手当を主とするものを疾病保険、医療費保障を主とするものを健康保険というが、日本ではこの2つをまとめて健康保険として取り扱ってきた。その端緒は大正2年(1913年)に成立するも、関東大震災による混乱などで、ようやく昭和2年(1927年)になって施行された健康保険法である。当初、支給期間は最長180日とされ、労災保険制度が未整備であったため、労災による休業も対象範囲となった。平成18年(2006年)の健康保険法一部改正により、その第45条で「標準報酬月額の30分の1相当額の6割」とされていた傷病手当金の支給額が「標準報酬月額の30分の1相当額の3分の2」とされた。また、第55条の2では被保険者の資格喪失後も継続して給付を受けられるとされていたが、改正法第104条で1年以上の継続加入が必要とされるようになった。任意継続被保険者については継続して給付を受けている場合を除いては、任意継続被保険者と言う要件のみでの傷病手当金の給付は行われなくなった。但し、前述の退職後給付資格がある場合は別段となる。また生活保障のために支給する意味合いから、受給中に標準報酬月額が減額改定されても、傷病手当金の支給額を減額することはしない扱いとなっていた。平成28年4月1日より、支給額が見直され、現行の規定となる。休業直前に標準報酬月額を増額改定し不当に高額の傷病手当金を請求する事例が横行していたため、それを防ぐ狙いがある。改正日をまたいで傷病手当金を受給している場合、改正日前は従前の計算方法、改正日以降は改正後の計算方法で受給日額が決定される。
出典:wikipedia
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