『英国王のスピーチ』(えいこくおうのスピーチ、原題:"The King's Speech")は、2010年のイギリスの歴史ドラマ映画。吃音に悩まされたイギリス王ジョージ6世(コリン・ファース)とその治療にあたった植民地出身の平民である言語療法士(ジェフリー・ラッシュ)の友情を史実を基に描いた作品。第83回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞した。1934年、大英帝国博覧会閉会式で、ヨーク公アルバート王子はエリザベス妃に見守られ、父王ジョージ5世の代理として演説を行った。しかし、吃音症のために悲惨な結果に終わり、聴衆も落胆する。エリザベスはアルバート王子を説得して、言語療法士であるオーストラリア出身のライオネル・ローグのロンドンのオフィスをともに訪れる。独自の手法で第一次世界大戦の戦闘神経症に苦しむ元兵士たちを治療してきたローグは、王室に対する礼儀作法に反してアルバートを愛称のバーティーで呼びつけ、自身のことはローグ先生ではなくライオネルと呼ばせる。ローグの無作法に反発し帰りかけたアルバートに、ローグはシェイクスピアの『ハムレット』の台詞を朗読できるかどうか、賭けを持ちかける。ローグは音楽が流れるヘッドホンをつけさせ、アルバートには自身の声が聞こえない状態でその声をレコードに録音する。途中で腹を立てて帰ろうとするアルバート王子にローグは録音したばかりのレコードを持たせる。クリスマス恒例のラジオ中継の後、父王ジョージ5世は、新時代における放送の重要性と共に、アルバートの兄:デイヴィッド王太子は次期国王に不適格であり、アルバート王子が王族の責務をこなせるようにならねばならないと語り、厳しく接する。帰邸後、苛立ったアルバート王子はローグから受け取ったレコードを聴き、自分の滑らかな発声に驚く。王子はローグのもとを再び訪れ、口の筋肉をリラックスさせる練習や、呼吸の訓練、発音の練習などを繰り返し行う。アルバートはローグに吃音症の原因となった自身の不遇な生い立ち、吃音を揶揄されたことや、末弟ジョン王子の死去-を打ち明け、二人の間に友情が芽生えていく。1936年1月、ジョージ5世が崩御し、デイヴィッド王子が「エドワード8世」として国王に即位する。しかし、新王が結婚を望んでいた女性、ウォリス・シンプソン夫人はアメリカ人で、離婚歴があるだけでなく2番目の夫といまだ婚姻関係にあったため、王室に大きな問題が起こるのは明白であった。その年のクリスマス、ヨーク公夫妻はバルモラル城で行われたパーティで、国王とシンプソン夫人の下品な姿を目の当たりにする。見かねたアルバート王子が兄王に、英国国教会の長でもあるエドワード8世は離婚歴のある女性とは結婚できないことを指摘すると、王は吃音症治療は王位ほしさからなのかと責め、吃音をからかう。エドワード8世の醜聞を聞いたローグは、代わりに即位するべきだとアルバートを説得するが、王子はそれは反逆罪に当たるとローグの元から去ってしまう。結局、エドワード8世は、ウォリスとの結婚を諦めきれず、即位して1年も満たぬうちに退位し、アルバート王子が「ジョージ6世」として即位することになる。アルバートは国王の重責に、自分は今まで海軍士官しか務めたことがないと妻のエリザベスに吐露する。一方、ヨーロッパ大陸では、ナチ党政権下のドイツが台頭し、一触即発の機運となっており、英国は国民の統一を促す国王を必要としていた。しかし新国王の吃音症は依然として深刻なままで、王位継承評議会での宣誓は散々なものであった。ジョージ6世夫妻は再びローグを訪ね、謝罪して治療を再開する。戴冠式に備えるジョージ6世は、ローグにはなんの医療資格も持たないことを知る。カンタベリー大主教コスモ・ラングは、ローグを国王から遠ざけようと試みるが、国王はローグを臨席させると譲らない。国王となることに不安を覚えるジョージ6世の前で、ローグは戴冠式で使われる椅子に座ってみせて国王を挑発する。激怒してローグを怒鳴り散らす国王は、自らの雄弁さに驚く。戴冠式での宣誓は滞りなく進行し、ジョージ6世はその様子をニュース映画で家族とともに観る。さらに、それに引き続くニュースで、アドルフ・ヒトラーの演説の巧みさに強い印象を受ける。やがてチェンバレン首相の宥和政策は失敗し、1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻を受けて、9月3日に英国はドイツに宣戦布告、第二次世界大戦が始まる。同日、ジョージ6世は大英帝国全土に向けて国民を鼓舞する演説を、緊急ラジオ放送で行うことになる。緊迫した状況の中ジョージ6世は、ローグと二人きりの放送室で完璧な演説をこなす。放送室から出てきた国王は、報道用に堂々と原稿を読む姿を撮影すると、エリザベス妃、そしてエリザベス王女・マーガレット王女とともに宮殿のバルコニーに出て、待ち構える大衆に手を振る。その様子をローグは満足げに見守るのだった。※括弧内は日本語吹き替え自らも吃音症であった脚本家のデヴィッド・サイドラーは、30年以上この企画を温めていた。これは、ライオネル・ローグに関する記録がほとんど手に入らず、ライオネルの息子バレンタイン(Valentine)が保有していた治療記録は、ジョージ6世王妃(後の皇太后)エリザベスから存命中の公表を拒まれたからである。皇太后が2002年に101歳で死去すると、サイドラーは作業を再開する。ライオネル・ローグの孫に当たるマーク・ローグ(Mark Logue)は、整理していた父の遺品の中に祖父ライオネルとジョージ6世との往復書簡が大量にあることに気付いた。BBCによるマークへのインタビューによると、撮影の約9週間前に製作スタッフが彼に接近し、ヨーク公の治療に関する資料を手に入れたという。製作陣はその資料を基にして脚本の手直しにかかった。監督のトム・フーパーは、映画の重要な台詞のいくつかがローグのメモの直接的な引用であると述べている。このローグの記録は2010年秋に"The King's Speech: How One Man Saved the British Monarchy"のタイトルで出版された。2010年9月4日にアメリカのテルライド映画祭、続いて10日にカナダのトロント国際映画祭でプレミア上映された。製作国のイギリスではが、オーストラリアではTransmissionが、北アメリカ、ドイツ、フランス、ベネルクス、スカンディナビア、中国、香港、ラテンアメリカではワインスタイン・カンパニーがそれぞれ配給した。日本ではギャガが配給し、「英国史上、もっとも内気な王。」というキャッチコピーが使われた。また予告編映像にはウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンの「ロイヤルウェディング」が公開の2か月後に行なわれるため、「ウィリアム王子婚約発表に沸くイギリス、現エリザベス女王の父の真実の物語」のナレーションとともにウィリアム王子からジョージ6世までの家系図が使用された。劇中でジョージ6世がストレスを軽減するために過激な台詞を叫ぶのをローグが奨励する場面のために、イギリスではBBFCによって"R-15"に指定された。ロンドン映画祭にて監督のトム・フーパーはこの決定を批判し、「なぜ下品な言葉遣いの映画が"15"で、『ソルト』や『007 カジノ・ロワイヤル』のような写実的拷問シーンを含むものが"12A"なのか」と問いかけた。フーパーの批判の後でBBFCは"12A"までレーティングを引き下げ、大人と同伴ならば12才未満の子供でも鑑賞可能になった。アメリカではMPAAが本作をR指定にしたため、フーパーは先と同様の批判を行ったが、このレーティングは覆らなかった。このR指定審査に関して、ロジャー・エバートは「全く不可解である」と批判し、「これはティーンエイジャーのための優れた映画である」と述べた。2011年1月、プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインは、レイティングを引き下げて幅広い層の観客動員を得るために、いくつかの過激な台詞を削除した「再編集版」の公開を考えていると発言した。だが、フーパーは、問題となっている単語を「ビー」音で覆う可能性に言及しつつも、映画を編集することを否定した。また、ヘレナ・ボナム=カーターやジェフリー・ラッシュもそのような編集に反対した。各国の興行収入は、英国では£45,340,795、北米地区では$138,797,449、日本では18.2億円となり、合わせて$414,211,549となった。Rotten Tomatoesでは207のレビュー中95%が「フレッシュ」を与えており、平均点は10点満点で8.6点となった。Metacriticでは41のレビュー中39がポジティヴなもので、平均点は100点満点で88点となった。『エンパイア』誌では5つ星満点が与えられた。『シカゴ・サンタイムズ』のロジャー・イーバートは4つ星満点を与え、2010年度ベストでは第2位に選んだ。日本で2011年9月2日発売のDVDは初週5745枚を売り上げオリコンDVD週間ランキングで総合第1位となった。劇中で描かれた出来事に関しては、創作上の都合で脚色・変更が加えられた。キャシー・シュルツ(Cathy Schultz)は、映画は史実の出来事を数年間に圧縮していると指摘した。映画では1934年に初めて会ったと描かれているヨーク公アルバート王子とローグであるが、史実で二人が最初に会ったのは1920年代であり、アルバートは1927年にオーストラリア連邦議会での演説を成功させている。歴史家のアンドリュー・ロバーツ()は、ジョージ6世の吃音のひどさは実際よりも誇張されており、エドワード8世、ウォリス・シンプソン、ジョージ5世が、ドラマ的な効果のために史実よりもより敵対的に描かれていると主張した。クリストファー・ヒッチェンズ()とアイザック・チョティナー(Isaac Chotiner)は、退位危機のときのウィンストン・チャーチルの描写に疑問を呈した。映画ではチャーチルはアルバートを支える立場で、エドワード8世の退位にも反対しているようには描かれていないが、史実では逆で、チャーチルは退位させようとする圧力に抵抗するようエドワード8世に奨めたとされている。ヒッチェンズは、このような処置はチャーチルの偉業を闇雲に過大視しようとすることだと訴えた。第83回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞と主要な賞を受賞したのを手始めに、世界各地の映画賞、合わせて63個を得た。イギリスでは、2012年2月に舞台公演が行われた。日本は舞台化二ヶ国目であり、主演東山紀之、演出鈴木裕美で、2012年8月から9月にかけて東京の世田谷パブリックシアターおよび大阪の森ノ宮ピロティホールで上演された。助演は安田成美、西尾まり、有福正志、ラサール石井らで、特にローグ役を務めた近藤芳正の演技が評価された。
出典:wikipedia
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