本項では、田中芳樹の小説『アルスラーン戦記』に登場する人物の解説をまとめる。声の項はカセットブック版 / 劇場アニメ・OVA版 / テレビアニメ版の順。本作の主人公。作品開始時点で14歳、第2部開始時点で18歳となっている。パルスの国王(シャーオ)アンドラゴラス三世の子で、パルス国の若き王太子、後に第19代国王となる。秀麗な顔立ちで晴れ渡った夜空のような深い色の瞳を持つ。温厚で繊細な性格で、身分にこだわらず他者に対する深い仁愛の心を持ち、またいかなる苦難に対しても立ち向かえる芯の強さがある。顔立ちは両親どちらにも似ておらず、後に出生の秘密が明らかにされる。温厚だけが取り柄と評されることもあるが、臣下の士気を高揚させる行動を自覚なくとったり、捕えた敵将の処遇が的確であるなど人あしらいの上手さがあり、「他人の心をつかむ才覚」は天性の物である。結果、十六翼将をはじめ、様々な人材がアルスラーンに対し、利害や血筋を超えた忠誠を誓っている。また、名だたる戦士揃いである部下たちの武勲に隠れがちだが、武芸の腕前も人並み以上であり、第2部では獅子狩人(シールギール)の称号も得ている。初陣である第一次アトロパテネ会戦において、パルス軍は味方の将の裏切りによりルシタニア軍に大敗を喫した際、ダリューンただ1騎に護られて戦場を離脱する。その後、ダリューンの親友ナルサスを頼り、彼を軍師に迎える。その後も多士済々たる仲間が加わり、彼らとともに王都奪還を目指す。第2部ではルシタニア軍から王都エクバターナを解放し、パルスの奴隷制度を廃止したことから「解放王(サーシュヤント / 「サリューシャント」とルビが振られている箇所もある)」と称され、質素な生活、巨大な功績、温和な人柄などから国民に絶大な人気を誇る。ルシタニアによる侵攻以降、毒舌家ぞろいの臣下に囲まれていたこともあって、ギーヴをして「陛下は悪知恵がたくましくなられた」と評される。世継ぎを望む宰相ルーシャンにしきりに縁談を勧められるが、自分が子を持つと必然的に後継者として期待され、再び国が血統主義に傾いてしまうと忌避しており、困惑している。高貴な姫より素朴な町娘のような女性が好みではあるが初恋の経験すらなく、臣下たちから具体的に女性に興味を持って欲しいと心配されている。エラムただ1人を伴ってお忍びで城下を散策することを趣味としており、その途上で重大事件に遭遇することも多い。「解放王」の由来はゾロアスター教の「救済者(サオシュヤント)」より。パルス国の武将で万騎長(マルズバーン・1万の騎兵を指揮する将)の1人。初登場時27歳。大将軍(エーラーン)ヴァフリーズの甥で、12人の万騎長の中では最も若年。黒い甲冑と真紅の裏地の黒マントを身に纏い、黒毛の愛馬・黒影号(シャブラング)を駆る黒衣の騎士であり、大陸公路有数の戦士として名を馳せている。過去に大陸公路最強と謳われたトゥラーンの王弟を馬上から切り伏せたこともあり「戦士の中の戦士」(マルダーンフ・マルダーン)や「猛虎将軍」(ショラ・セーナニー/シンドゥラでの呼び名)など数々の異名を持つ。敵、味方双方から「人間相手ならまず負けない」と認識されている。第一次アトロパテネ会戦において、パルス軍が得意とする騎兵戦に有利な平原での戦を仕掛けたルシタニア軍の動向に疑問を抱き、アンドラゴラス三世に退却を諫言するが聞き入れてもらえず、さらにナルサスとの関係について「友人」と答えたことでアンドラゴラス三世の怒りを買い、万騎長を解任された(後に、アンドラゴラス三世に退却を諫言するようダリューンに促したのがカーラーンであること、そしてその目的が、ルシタニアに寝返ったカーラーンが、パルス侵攻において障害となるダリューンが万騎長の任を解かれるよう仕向けるためであることが判明する)。謹厳実直・質実剛健の武人だが頭も良く、ユーモアや人の心情を解する感性はむしろ豊かで、アルスラーンの精神的な支えとなっている。一方、ナルサスおよび彼の画業に絡むと微妙に口の悪さが滲み出る。アルスラーンとは臣下として古くから親交を持ち、伯父ヴァフリーズの頼みもあって、第一次アトロパテネ会戦の前には王太子としでてはなくアルスラーン個人への忠誠を誓う。第一次アトロパテネ会戦での敗北の際、単騎でアルスラーンを救い出し親友ナルサスを頼る。アルスラーンを守護しまたその成長を喜び、日々忠誠心を固くする。シンドゥラ王位継承戦役では、王位を賭けた「神前決闘」においてラジェンドラ王子の代理人を務め、ガーデーヴィ王子の代理人を打ち破り、シンドゥラにもその武勇を轟かせた。第2部ではルシタニア侵攻時の戦功第一と呼ばれたが、前線での戦いを望んで大将軍の地位をキシュワードに譲った。クバードと共に「大将軍格(エル・エーラーン)」と呼ばれる。アルスラーンへの忠誠は篤く、またその武勇はミスル、チュルクの兵らにも刻み込まれた。グラーゼ、ジムサを失ったキシュワードが責任を取り大将軍の任を解かれた後に、アルスラーンからの要請により「若い主君が国王の重責に耐えているのに自分が逃げてはいけない」と大将軍就任の決意をする。パルス国のダルバンド内海沿岸に広がるダイラム地方の旧領主。初登場時26歳。アルスラーン軍の軍師にしてアルスラーンの政治・軍事の師匠。シンドゥラ語を始めとする各国語を解し、政務・軍略双方に深く通じ、人心すらも的確に読み当てる。また、名声を得てはいないものの剣術にも秀でる。優しげな容姿に似合わない毒舌家であり、歯に衣を着せることなく発せられる言葉は常に核心を突いたものである。才知に優れるものの、地位や名誉や金銭には興味がなく、芸術を愛する「偏屈な変わり者」で、自身の絵や芸術を否定する者には手厳しい。しかし、趣味の画才は知勇とは遠くかけ離れたもので、親友のダリューンにことあるごとにけなされ、エクバターナ奪還後にはキシュワードやクバードからも論功行賞の行方を不安視された(第2部では「好きこそものの上手なれ」という教育文化をたった1人で破壊した人物としても知られている)。政戦両略に長けており、かつてチュルク・トゥラーン・シンドゥラの3国による連合軍が攻めて来た際、流言を巧みに用いて連合軍内に内紛を引き起こし、見事撃退した。その功により、アンドラゴラス3世によって宮廷書記官(ディビール)として抜擢される。しかし、度重なる諫言をアンドラゴラスに忌避され、さらには役人の不正を暴いたことから命を狙われたため、宮廷書記官の座と領地を返上し、侍童エラムと2人でバシュル山に隠棲していた。第一次アトロパテネ会戦の敗戦で落ち延びたアルスラーンとダリューンを匿った際に、アルスラーンより未来の「宮廷画家」の地位を約束されて再び世に出る。アルスラーンと行動を共にする中、パルス国の旧体制や奴隷制の誤りを説き、後のアルスラーン政権の礎を作る。シンドゥラ王位継承戦役の後は、中書令(サトライプ)に一時的に就任するが、その地位をルーシャンに譲り軍師の役職である軍機卿(フォッサート)の地位につく。第2部ではパルス国の「副宰相(フラマート)であり宮廷画家」とされるが、本人曰く「宮廷画家であり一時は副宰相」。ルーシャンがナルサスへと宰相の座を渡そうとしているが、彼自身は宮廷画家の地位に執着している。最後はアルフリードと一夜を共にしたが、北方マルヤム国境にて後方残置していたところ、銀仮面ヒルメス率いるマルヤム軍との戦いでアルフリードと共に討ち取られ戦死する。ナルサスの侍童(レータク)。初登場時13歳。アルスラーンより1歳下で十六翼将中最年少。ナルサスを師と仰ぎ知勇にも優れる。その知性(毒舌含む)は発展途上だが、鋭さはナルサス譲り。ナルサスを挟んでアルフリードとは口喧嘩が絶えない仲である。王都へ偵察に行ったり、火を放って火事を起こしたりといった裏方の仕事も務めている。侍童としても優秀で、ナルサスの下で仕事をそつなくこなしていた。ダイラム地方の領主テオスの下で働いていた奴隷を両親にもち、父テオスの急死により息子ナルサスが家督を相続した際に行った奴隷解放で自由民の身分となった。両親の遺言でナルサスに仕え、アルスラーンの請いでナルサスが山を降りた際も行動を共にする。アルスラーンとは、ペシャワールへの逃走やシンドゥラ遠征、アルスラーンの追放、王都奪還に至る道程で身分を越えた親交を深め無二の親友となる。ナルサスを介した兄弟弟子でもある。第2部ではパルス国の侍衛長(ケシュタク)。アルスラーンの側近として行動を共にし、お忍びにも同行する。ギーヴ、ジャスワントと共に使者としてチュルクへと赴く。「指図振りがナルサスに似てきた」とはダリューンの評。流浪の楽士を自称する美青年。頭髪は赤紫色。剣や弓の扱いから楽器、果ては女性の扱いにまでも優れる。特に弓の扱いに関しては神業的な腕前を誇る。剣技についても、銀仮面ヒルメスの猛攻をしのぎ切るなど、ダリューン・ヒルメスには譲るものの相当の腕の持ち主であり、万騎長と並ぶレベルである。金目の物もかなり好きで、強奪はしないものの死人の所有物に関しては「死人には必要ないものだから有り難く頂くべきだ」という考えを持っている。アルスラーンの異称である「解放王」の名を最初に称したのは、ギーヴだとされている。飄々とした性格でどこか人を食った発言も多いが、アルスラーンが王城の外で育ったことを見抜くなど、洞察力は鋭い。本人曰く、2枚の舌に加え、10以上の”色のない舌”を持つ。ギーヴならぬ悪鬼(デーヴ)の尻尾を苦労して隠しているらしい。自らをアシ女神の僕とし、ファランギースをアシ女神の化身と呼んでいる。彼女に対して好意を持っているのは確かだが、彼女にあしらわれることも楽しんでいるそぶりも見られる。第一次アトロパテネ会戦の敗戦後、王都エクバターナがルシタニア軍に包囲された際、囚われの万騎長シャプールの「敵に穢されるより同胞パルス人の手で死にたい」との意を受けて遠矢で射殺する。その後王都を抜け出し、絶世の美女ファランギースへのつきまとい同然の形でアルスラーン陣営に加わる。他人の奉仕を当然と思っている王侯貴族という人種を軽蔑しているが、行動を共にするうち、少しも王族らしからぬアルスラーンに興味を持ち好感を抱くようになる。後にナルサスの策略で、パルス諸侯の不満を折衝する目的でアルスラーン軍から出奔し、伝説の宝剣ルクナバードが納められたデマヴァント山へ斥候(実は本人の気まぐれ)に向かう。デマヴァント山ではヒルメスが宝剣ルクナバードを掘り返さんとしているところに出くわし、蛇王の封印が解けることを防ぐ。第二次アトロパテネの戦いにおいてルシタニア軍で最も高潔な騎士と謳われたモンフェラート将軍を討ち取り、パルス王室の財宝が暴兵に奪われることを防ぐ。第2部ではパルス国の宮廷楽士にして巡検使(アムル)。飄々とした性格は相変わらずで「不逞・不遜・不敵と三拍子揃った男」「火を消す代わりに洪水を起こす」と言われる。国王直属としてパルス国内を自由に旅して得た情報をアルスラーンに報告する任務を帯びており、ナルサスの意を受けて遊軍的役割を担うこともある。アルスラーンに仕えてはいるが「パルス随一の色事師」振りは健在である。チュルクへの大使となったり、オクサスに向かったファランギースとアルフリードを助けた後、道に迷って旧バダフシャーン公領で一騒動起こすことになる。ミスラ神を信仰する女神官(カーヒーナ)。22歳。文武両道に優れる才女の上、黒絹の髪・緑玉の瞳・白珠の肌・糸杉の身体を持ち、「銀色の月のような」と称される、「自他共に認める」絶世の美女。弓の扱いに優れ、精霊(ジン)の声を聞き、水晶の横笛を奏でることで彼らを使役することもできる。その美貌からギーヴやクバード、ラジェンドラらから言い寄られるが、本人はあっさりと拒絶している。言い寄る男たちに辛辣である一方で、年下のアルスラーンやアルフリードに対しては姉のように面倒見の良い大人の女性としての優しい顔を見せる。相当な酒豪でもあり、ギーヴやラジェンドラが束になっても敵わなかった。ミスラ神殿がアルスラーン生誕時にその名で寄進されたものであることから、第一次アトロパテネ会戦の敗戦の報を受けた神殿よりアルスラーンを守護するべく派遣された(実際にはその名目で追い出された可能性が高い)。偶然から同行することとなったギーヴと共にアルスラーンたちと合流する。大戦後はフゼスターン地方の神殿に戻るが、改めてアルスラーンに呼び出されて巡検使と宮廷顧問官(ブラフマン)に任じられる。過去に恋人はいたが、それ以外に男性との噂は全くなく、ギーヴやクバードに思いを寄せられている件については「どっちが先にふられるか」というのが周囲の評である。湖上祭でかつての恋人の弟グルガーンと再会することとなる。オクサス地方の変事にアルフリードと共に調査に向かい、蛇王復活の兆候を目の当たりにする。アルスラーンの主な臣下たちを「解放王アルスラーンの十六翼将」と呼ぶ。これはパルスの軍事制度上の正式な役職ではなく、アルスラーンと共に王都を奪還し、その後もその治世を支えて活躍したとされる伝説的な英雄たちに対する、作品世界における後世の人々からの称賛を込めた呼び名である。吟遊詩人がアルスラーンの事跡を物語る時、聴衆に向かって「十六翼将の名を知るや?」と問い、聴衆は指折り数えてこれに応じるという。最後の1人であるパラフーダが加わった直後にザラーヴァントが戦死したため、16人全員がアルスラーンの前に揃ったのは1度だけである。アルスラーンが国王に即位する以前の武将を挙げる。「解放王アルスラーンの十六翼将」には含まれないが、国王アルスラーンに仕える武将を挙げる。武将や文官の中にも諸侯はいるが、そのどちらとも言えない者を挙げる。※英雄王カイ・ホスローのモデルはペルシア伝奇上の英雄フェリドゥーン。ザッハーク(アジ・ダハーカ)、ジャムシードはそれぞれ同名の人物がモデルとなっている。詳しくはザッハークの項目を参照のこと。ヒルメス、およびヒルメスを真のパルスの国王と仰ぐ者たち。
出典:wikipedia
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