前照灯(ぜんしょうとう)とは、輸送機械などに搭載し、操縦者の視認性と外部からの被視認性を向上させるために使われる照明装置である。ヘッドランプ ()、ヘッドライト () とも言う。大抵は機械の前面に透明(色が付いていても青や黄などで、薄い色)のレンズを持つランプ(灯体)が付けられている。用途としては自動車、鉄道車両、自転車など地上の車両の他、航空機、船舶にも付いている場合がある。機械にではなく、作業者自身の頭部や帽子などに装着する種類もある。自動車・オートバイ(自動二輪車、原動機付自転車)用の場合、前面の左右にそれぞれ1個ないしは2個が運転者の視点より低い位置に左右対称に取り付けられる。通常、ハイビーム「走行用前照灯」(上向き(正確には水平)・遠目)とロービーム「すれ違い用前照灯」(下向き・すれ違いビーム)を切り替えることができる。ハイビームは正面を遠く(最低前方100m)まで照らすため、夜間の対向車や前方の車が存在しない場合に用い、ロービームはやや下方(前方40m)を照らすため、対向車や前方の車への眩惑防止や、霧や雪などに光が反射する場合に使用する。車検の際の前照灯の照度や光軸などの検査は、2015年9月以降、従前は原則としてハイビームで行っていたものを、原則としてロービームで行うものと改められた(1998年8月31日以前の製作車はハイビームによる)。前照灯の光色は、かつて白または淡黄色とされていたが、平成18年1月以降に登録された車両にあっては白色と決められている。これ以外の色や、極端に高い、あるいは低い色温度の物を使用してはならない。また、一対もしくは二対がそれぞれ同じ色でなければならない。主に前照灯は夜間に点灯。また、薄暮時に人身事故が多発することから、早目の点灯を呼びかける運動(トワイライト運動)も盛んに行われている。また原動機付自転車および自動二輪車においては道路運送車両法により前照灯を消灯できない構造であることが定められ、1996年以降製造の車両は全て消灯できない構造となっている。常時消灯できるように改造されたものは違反となる。2020年4月以降に発売される新型車からは暗くなると自動的・強制的ににヘッドライトが点灯する「オートライト」機能の搭載が義務付けられる方針になった。(2016年10月に道路運送車両法に基づく車の保安基準改正が予定されている。)車両の場合、前方に赤色灯火を、後方に白色灯火(後退灯を除く)を使用することは各種法令で禁止されている(白は頭部を、赤は尾部を表す色である)。国際連合の欧州経済委員会 (UNECE) による自動車基準調和世界フォーラム(World Forum for Harmonization of Vehicle Regulations: 欧州諸国を中心に、日本、韓国、オーストラリアなども加盟)では、ロービームで2000ルーメン以上の光束を持つヘッドランプに対して洗浄装置を装備することを義務付けている。基本的に全てのHIDランプと、一部のハロゲンランプが該当する。自動車初期のヘッドランプは、石油やアセチレンガスを燃料として使用しており、アセチレンランプが主に使用された。1908年に発売されたフォード・モデルTでもアセチレンまたは石油ランプが採用されていた。電灯を利用したヘッドライトは1898年のElectric Vehicle Companyによるコロンビア電気自動車にオプション設定されていた。しかしながら、当初の電気式ヘッドライトはフィラメントの寿命の短さや、十分な電流を供給できる小型のダイナモの生産が困難なこともあり、すぐには普及しなかった。1912年にキャデラックが、デルコ・エレクトロニクスのバッテリー式点火装置と電気式照明装置を統合した。1915年にはロービーム機能を持つヘッドライトが登場したが、外から操作しなければならず、車の中から操作できるタイプは1917年にキャデラックが初搭載した。1924年に登場したBilux bulbにより1つのバルブでハイとローが切り替えられるようになった。1927年には足で操作するタイプのディマースイッチが登場し標準となっていった。北米では1984年まで統一規格の前照灯が採用され、デザインに制約を受けていた。これは当時バルブとレンズが一体型になっており、どの地方のガソリンスタンドに行っても交換しやすいよう規格を絞り込んだためとされる。1980年代以降、自動車用にはハロゲンランプが多く使われているが、2000年頃から、フィラメントのないHIDランプ(メタルハライドランプ)を用いたものが増えている。この時期になると徐々にポジションランプのLED化が進められていたが、2007年5月に発売されたレクサス・LS600hを皮切りにLEDを使用した前照灯も採用されるようになった。その後、LEDのハイビームライトに比べ照射距離約2倍、光度約3倍の性能を持つレーザーヘッドライトが開発され、2014年にはアウディが米国・ラスベガスのCESにコンセプトカーを出展、更にル・マン24時間レース向けのAudi R18 e-tron クワトロや市販車のBMW・i8に搭載されている。日本では自動車のヘッドライトは日没後から点灯させることが義務となっているが、それ以前のうす暗くなり始める時間帯から点灯させることが推奨される。また夜間走行時はハイビームを使用し、対向車、先行車がいるときだけロービームにするのが基本である。なお「信号待ちで停止中の間も、前照灯を消すのは違法である。」と誤解されることがあるが、夜間に幅員5.5メートル以上の道路において駐車、停車や(法令の規定もしくは警察官の命令により、または危険を防止するための)一時停止をする場合は、非常点滅表示灯、尾灯、駐車灯のいずれかを点灯すれば良く、よって信号待ち停止中の前照灯の点灯義務はない。なお、車幅灯(スモール、ポジションとも)は、前照灯ではなく、また駐車灯の保安基準を必ず満たすとは限らない。車幅灯は単に車両の幅を示すためのものとして、前照灯とは別の灯火として定義されている。鉄道車両の前照灯は、日本では法律的には前部標識という扱いであり、正式には「前灯」と称する。夜間および長大トンネル区間では点灯が義務付けられている。なお自動車と異なり車両の進行方向が一定であることから、あくまで「標識」としての位置づけてあり、光量については暗部において遠方より車両の存在が確認できる程度であれば問題ないことになっている。ただし近年は前照灯としての役割を強化するため光量を増やすだけでなく、車外からの視認性向上および自動車・歩行者への注意喚起のため、昼間であっても常時点灯することが多くなっている(昼間点灯の項を参照)。古くは油灯やカーバイドランプが使われており、電灯となってからもシングルフィラメントの時代が長かったため、光軸の切り替えが不可能であり、すれ違い時には減光で対応していた。ダブルフィラメントとなってからは、ハイビームとロービームを切り替えることが可能になった。HID式のように放電式灯の場合は輝点の切り替えができないため、電磁石などで機械的に光源か反射板を動かし、光軸を切り替えるようになっている。1960年代以前に製造された車両の多くはランプ交換式の暗い白熱灯式の前照灯(当初は150W、後に250W)であったが、1970年代以降は後にシールドビーム化が進み光量のアップと長寿命化、交換の容易化が図られた。1990年代からプロジェクター式、2000年頃からHID式、2006年からは高輝度LEDを用いたものなどが出現するなど、バリエーションが増えている。取り付け位置は車体の上部(運転者の視点より高い)にある場合と、下部(運転者の視点より低い)にある場合があり、各車種によってさまざまで、同じ鉄道事業者でも統一はされていない。運輸省令で「夜間の前部標識として前灯を上部に1個掲出する」と定められていたため、かつては上部に1個のみ取り付けられていた。私鉄では1957年10月、名古屋鉄道5200系電車が固定式前照灯三灯で登場。国鉄では東海道本線の電車特急「こだま」を運転するにあたり、新造された151系電車が前灯を腰部にも2灯増設して3個取り付けることになり、運輸大臣の特認を得た。その後前灯の2個以上の取り付けは標準的なものとなり、省令も改正された。関西の鉄道会社では上部にランプを配するスタイルが好まれる。また、特急のように高速度を出す列車に用いられる車両には、照射性及び被視認性を高めるために、3個以上のランプを装備する車両も存在する。ドイツ語で (三前照灯)と称される。ドイツの列車の最前部の鉄道車両が掲出する、列車標識の一種であり、その夜間方式である。ドイツの「鉄道の建設と運行に関する省令」 (EBO) 第14章の規定に準拠している。列車の先頭車が機関車か制御車である場合には、夜間にはその最前部にアルファベットのAの形に3個の白色灯を掲出しなければならないと規定されている。これにより夜間でも道路交通の車両から、列車の接近を明瞭に判別することができる。ドイツの軌道法 (BOStrab) のもとで運行される路面電車やLRTでも同様の基準が適用される。しかしその場合はしばしば、方向幕灯が三番目の灯火として用いられることがある。イギリス鉄道規格(Railway Group Standards)では、「列車の可視性のための要件(Visibility Requirements for Trains)」として光度・設置位置など前照灯の要件を定めている。航空機に「前照灯」と呼ぶものはないが、前方を照射する灯火類としては以下の2種類があげられる。大型機では両翼の前縁部に埋め込み式あるいはリトラクタブル式で取り付けられている場合が多い。 "Landing Light" からこの名称があるが、着陸時だけでなく低空飛行時(1万フィート以下)や夜間離陸時等でも日常的に点灯する。通常灯火類のなかで最も明るく、前方からの視認性に優れるので、無線故障時や無線を持っていない相手に対して、点灯 / 点滅等を行って簡単な合図に使用されることもある。地上走行(タクシング)に際して前方を照らすために用いられる。前脚部分に取り付けられていることが多く、脚を格納しての使用はできない。電源として、リムやハブのダイナモや電池が使用される。従来使われてきたリムダイナモの場合、点灯時は消灯時に比べ肉体的負担が増す。負担を軽減するため、前輪のハブに発電機(ハブダイナモ)を組み込み、夜間走行時に自動点灯することでつけ忘れを防ぐものもタウン車を中心に増えている。また、負荷がほとんどない非接触式発電ライトも販売されている。リムダイナモは1.2 - 3W程、ハブダイナモは2.4W - 3W程の出力がある。一方乾電池や二次電池(充電式電池)及び太陽電池を使用するものもあり、スポーツ車に装備されることが多い。点灯時の肉体的負担は皆無だが、電池の消耗は経済的負担になる。白熱電球に代わり低消費電力で寿命の長い白色発光ダイオード (LED) を使用したものが普及しつつある。近年、無灯火の自転車による交通事故は重く見られる傾向があり、裁判により多額の賠償金を命ぜられるケースがある。また前照灯は白色または淡黄色でなくてはならないため、赤などを用いるのは道路交通法施行細則(都道府県条例)違反である。また、自転車において、前照灯としての要件を満たさない、点滅させたライトのみを用いることは無灯火扱いになり、処罰されるおそれがある。しかし、ダイナモ式ライトはペダルが重くなる、条例を知らないなどといった自転車使用者の意識の低さにより、無灯火自転車による危険走行は後を絶たない。人が使う前照灯は、頭部につけて使うものをヘッドランプ、手に持って使うものを懐中電灯(ハンドランプ)と呼ぶが、照らすという目的としては同じである。アウトドアの分野では、。ヘッドランプは、リング状にした平紐やゴム紐のベルトで頭部に直接巻きつけるか、固定具でヘルメットに固定して使用する。帽子のつばに装着して用いるものもある。体の一部に固定して使うことにより、両手を自由に使うことができるため、暗所での作業や、登山や釣りなどのアウトドアレジャーのほか潜水にも使用される。電源に乾電池を、光源には消費電力の少ない発光ダイオード(LED) を使用したものが一般的であり、従来の電球を光源とした製品は姿を消しつつある。雨中での使用を考慮した防滴仕様のものや、潜水用に水中で使用できるものもある。
出典:wikipedia
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