『十二国記』(じゅうにこくき)は、小野不由美の小説シリーズである。古代中国の山海経的な異世界ファンタジー作品で執筆継続中である。原作にしたアニメなど関連作品がある。十二国記シリーズは、中国の山海経に登場するような神仙や妖魔の存在する異世界を舞台にしたファンタジー小説で、王を麒麟が自らの世界の人だけでなく、二つの世界が接触すると大きな変異の蝕を起こすが、胎果も含め行き来できる別世界である地球を含めた両世界から選び、共に治世をすることを主軸に展開する。地球から蝕での遷移者として王として選ばれて十二国記の世界に連れ去られた中嶋陽子を本編に、他の地球人や異世界の人々の、現在と歴史を描く。新潮社で『魔性の子』を書いたときに、背景となる想定世界として作られ、地図や年表、図表なども作っていた。それをファンタジーを書くことを提案した講談社の編集者に話したところ、この想定世界をファンタジー小説化するように勧められ、結果として好評で十二国記シリーズが生まれた。2012年9月時点で本編としては、あと長編1作で完結する予定である。文庫本の売り上げは、シリーズ累計750万部以上。また、2002年にNHKでテレビアニメ化されている。2001年7月以降シリーズ新作は久しく発表されていなかったが、『yom yom vol.6』(2008年2月27日発売)にて、約6年半ぶりとなる新作短編、十二国記シリーズ番外編「丕緒(ひしょ)の鳥」が掲載された。最新作は同誌vol.12(2009年9月27日発売)に掲載された、柳国を舞台とした短編「落照の獄」である。当初ジュニア向けレーベルの講談社X文庫ホワイトハートから発刊されたが、読者層が成人層へ拡大し一般向けレーベルの文庫で発売された。2012年4月、シリーズの刊行元が講談社から新潮社に移籍され、同年7月以降、既刊の新装版及び新作を含む短編集、新作長編も順次刊行された。これまで、別作品という形だった『魔性の子』が、Episode-0巻としてシリーズの中に統合される形式となった。このシリーズは公式に「十二国記」と呼ばれて表紙・カバーなどにも明記されているが、当初このような表記はされず正式な名称は無かったが、早期の作品から読者は「十二国」または「十二国記」と呼んでいて著者自身も知るところであり、著者自身が編集者との打ち合わせなどでもこのシリーズのことを「十二国」と呼んでいることを語っている。しかし、作者自身はこの呼び名を「あくまで便宜上のもの」であるとし、シリーズには名前がないことを明言している。その理由は著者により「この作品ではこの世界の十二の国全部が描かれているわけではないし、今後も十二国全てを描く予定は無いので十二国記と呼ぶのはある意味嘘になるから。」であると説明されていた。また、正式に「十二国記」と呼ばれる以前は、「12の国の物語」と記載されることもあった。「十二国記」という名称が初めて正式に用いられたのは、1994年9月に出版された『風の万里 黎明の空(下)』の後書きにおいてである。著者は一貫して「名称はない」としていたものの、方針が変更された理由は編集部から要望があったためとのことであると明かしている。以降は重版されたものも含めて表紙や帯などに「十二国記」と表記されるようになった。また、1997年6月17日にCDブック『東の海神 西の滄海』がリリースされたときには付属のブックレットに収録された書下し小説『漂舶』に「十二国記外伝」と明記された。本シリーズは、同一の世界設定の中で作品ごとに別の国が舞台になって別の主人公がいて、執筆順と作品内での時間軸が前後する形でストーリーが展開されている。ホワイトハート版の後書きで、『月の影 影の海』が、「『魔性の子』の続編であり、本編である」とされて、同一の世界設定でホラーとファンタジーという別のジャンルの小説として書かれていて当初は事情がそれ以上明らかにされず、読者から『魔性の子』は、十二国記シリーズの外伝など、様々の推定がされた。『東の海神 西の滄海』が、「今回は番外編という気分で書き始めた」(『東の海神 西の滄海』の後日譚を描いた『漂舶』は表紙に「十二国記外伝」と表記されている)、『図南の翼』は「番外編」とされている。十二国記の舞台となるのは、中国の山海経に登場するような神仙や妖魔の存在する世界である。その名のとおり、12の国が存在する。文化、政治形態は古代中国(特に周王朝)に類似しており、絶対的な王制である。しかし世襲制ではなく、12の国はそれぞれ神獣の麒麟が天意に従って選んだ王により統治されている。王は諸侯を封じ、政治をさせる。王や一部の高位の官は神仙として不老長寿(不死ではなく、胴や首を冬器という特殊な武器により断たれれば死んでしまう)の身体を得て、天意に従う形で国を治めることを求められている。麒麟が失道の病にかかりそのまま死・禅譲するか、誰かに討たれない限り王は死なない。王とそれを選ぶ麒麟、そして天意とは何なのかという問いが、作品全体の主題となっている。最初に執筆された『魔性の子』は、ホラー小説で、この異世界が我々の暮らす現実世界に干渉したときの恐怖が描かれ、甘い異世界幻想に収まらない世界観だったが、ファンタジーとして発表された『月の影 影の海』からはかなり変化している。シリーズ共通の主人公は存在しないが、各作品の登場人物は時代を超えてリンクし合っている。『魔性の子』については、魔性の子を参照。日本で生まれ育った普通の女子高生・中嶋陽子は寝る度に恐ろしい気配に追われ、日を追う毎にその距離が縮まっていくという異様で怖い夢を見ていた。そんな陽子の前に、突如「ケイキ」と名乗る異装の男が現れる。ケイキは陽子を主と呼んで跪き、一方的に謎の盟約を迫る。突然の出来事に戸惑う陽子を異形の獣が襲撃、それを辛くも退けたケイキは、強引に陽子を月の影の向こうにある地図にない世界へと連れ去った。陽子はケイキから「決して剣と鞘を離さないように」と碧の玉が付いた鞘に収まった剣を渡され、「剣を振るえない」という陽子に自らのしもべの賓満・冗祐を憑依させ、陽子の意に反して陽子に襲い掛かる獣を体が勝手に動いて撃退するようにして、他のしもべに陽子を託して彼女を異世界に送り出した。異形の獣の襲撃は月の影に入った後も続き、「敵の攻撃から目をつぶってはいけない」(賓満は憑依した者の目を借りて動くため)という警告を無視して目をつぶってしまったことがきっかけで陽子は、ケイキとそのしもべ達とはぐれ見知らぬ場所(巧州国、略称:巧国)にたどり着く。巧国では自分と同じように日本や中国からこの世界に流された人を徹底的に差別しており多くの場合は処刑されるため、陽子も役人に役所に護送される事になったが、その道中でまた異形の獣に襲われ、陽子は車の下敷きになった鞘から玉だけを切り外してその場を逃走する。全く事情が判らないまま縋る気持ちで現地の人間に助けを求めるも、“海客”として酷い仕打ちを受けたり、利用されそうになったりしたため、夢で見る元いた世界の幻で自分の周りにいた人達が自分の事を悪く言ったこと(実は剣が本当の事を見せていた)や青猿(その正体は陽子が無くした鞘に封じられていた妖魔。剣と鞘が離れたため封印が解けた)の讒言もあって陽子は徐々に人間不信に陥る。人目を避けつつ、なおも襲撃を続ける異形の獣(妖魔)と戦い続ける陽子は満身創痍となり、行き倒れたところを楽俊に救われる。楽俊は陽子を介抱し、さらには海客に対する保護体制が整っている雁国(雁州国)への道案内を買って出る。道中に妖魔と遭遇しそれを退ける陽子であったが、衛士(警備兵)に見つかるという恐怖から、倒れている楽俊を見捨ててしまう。後にそれを後悔する陽子であったが、同時に「口封じに楽俊を殺す」という選択肢を選ばなかった自分に安堵する。そして、「口封じにあのネズミを殺せばよかったのに」と言った青猿を殺すと、無くした鞘が現れた。楽俊との再会はかなわず、陽子は一人で雁国を目指す旅を続けるのであった。雁国へたどり着いた陽子を待っていたのは楽俊であった。楽俊は先に雁国に渡り、港で働きながら情報を集め、陽子を待っていたのだという。再び二人旅となった陽子たちは、雁国で暮らす海客「壁落人」を訪ね、そこで陽子が胎果であることを知る。その後、陽子と楽俊の何気ない会話で楽俊が「台輔にお目通り願うか?」言った事から陽子がケイキとそのしもべのやり取りを思い出し、「台輔」(宰輔の敬称)という単語がきっかけでケイキとは慶東国(略称:慶国)の麒麟の「景麒」であり、景麒が「主」と呼ぶならば陽子は巧と雁に挟まれた国である慶国の王「景王」であると告げられる。陽子が神である王だと分かり距離を置こうとする楽俊に対し陽子は「私にとっては二歩の距離しかない」と楽俊に言い、それに楽俊は「おいらにとっては三歩だ」と返事をして今まで通りの接し方をしようとする。楽俊から慶王保護の延台輔宛ての書状を受け取り陽子らを妖魔の襲撃から助けた延王から「王は麒麟に跪かれた時点で人として死に、麒麟の霊力で神として生かされる」、「日本に戻ればお前は短い間しか生きられず、その上、慶国の民が大勢犠牲になる」と聞かされ、日本に戻るのか、景王になるのかの選択を迫られる陽子であったが、見るに見かねて「無きものとして振舞え」(陽子が体が勝手に動くのと冗祐の感触を嫌がったために下された命令)という主の命令を破った冗祐から言われた「玉座を望め。そうすれば道は開ける」という言葉に従い、延王の助力を受け、慶国に立った偽王・舒栄を討つことを決意する。蓬山の捨身木に戴極国の麒麟の卵果・泰果が実り、母親代わりとなる女怪が生まれ、蓬山は麒麟の誕生を待っていた。しかし、突如襲来した蝕に巻き込まれ、泰果が流されてしまった。それから10年後、泰麒は延麒によって蓬莱で発見され、廉麟の助けを受け、女怪の白汕子が泰麒を連れ戻すことに成功する。普通の人間として育った泰麒は、最初こそ戸惑うものの、程なく蓬山の生活に慣れ始める。だが、身の回りの世話をする女仙から「麒麟は人ではなく獣であり、獣の姿に転変する」、「麒麟は天啓を受けて自らの主である王を選定する」と知らされ、更に麒麟の能力を使えない泰麒を思い女仙の長・玉葉が招いた景麒から「麒麟は妖魔を折伏して使令にする」と知らされ、生まれたときから人間の姿で今も転変できない自分は「麒麟の出来そこない」ではないかと思い悩む。泰麒を泣かせたことで女仙から責められた景麒は、その後泰麒に麒麟の能力や役割を伝授していくが、結局この時は折伏は出来ず、自然に出来るようになる転変の仕方については教えることが出来なかった。同じ麒麟として慕った景麒が慶国に戻り、麒麟としての自覚を持てないまま戴国に麒麟旗が掲げられる。泰果の失踪により長年王不在が続いていた戴国の民は喜び、昇山者が続々と先を競って蓬山に集ってくる。天啓が何なのか判らないながらも女仙に付き添われて昇山者と対面する泰麒は、騎獣をきっかけとして承州師将軍の李斎と知り合う。また、昇山者同士の喧嘩で出会った禁軍左軍将軍の驍宗には、恐怖に似たものを感じる。その後も度々李斎の下を訪れ、驍宗とも会話を交わすようになり、彼らが蓬山を去る間際には一緒に騎獣狩りに行くほどの仲になっていた。女仙の反対を押し切って同行した騎獣狩りの最中、李斎が見つけた洞窟に入った3人は、泰麒が嫌な胸騒ぎを感じた直後、内部に潜んでいた妖魔に襲撃される。李斎が囚われ、驍宗も弾き飛ばされ、泰麒は一人で強大な妖魔・饕餮と対峙することとなる。それまで一度も妖魔を折伏できずにいた泰麒であったが、初めて折伏に成功し饕餮を使令に下すのであった。そして驍宗が蓬山を去る日が訪れる。王になれなかったら禁軍を辞め黄海に入ると驍宗から聞き、蓬山に昇山出来るのは一生に一度だけ、と女仙から聞いた泰麒は驍宗に感じる感覚に戸惑いながら、離れたくないと思う感情が抑えきれずに走り出す。泰麒の姿は、燐光を放って夜を駆け上がっていく漆黒の獣と化していた。驍宗を王に選定した泰麒だったが、「驍宗の傍に居たいがために、天啓が無いのに偽者の王を選んでしまった」と思い悩み後悔し続けた。天勅を受ける儀式で罰を受けると思っていたが何事も無く、それが余計に泰麒を不安にさせ、泰麒の様子を伺いに載国の王宮を訪ねた景麒に「偽者の王を選んでしまった」事を打ち明ける。その事を知った景麒と驍宗は、誼がある延王を載国に呼び、泰麒に延王に対し叩頭礼をするよう命じる。言われるまま叩頭しようとしても体が動かない事で泰麒は「麒麟は自らの主以外に叩頭できない」という事を身を以って知り、景麒から彼が舒覚を王に選定した時も「この人は王になるべきではないと感じた」と聞かされ自分が運命に身がすくんでいたと言われる。延王・尚隆、延麒・六太は共に胎果であり、蓬莱で生まれ育った。六太は戦乱の中で親に捨てられた経緯から国を統治する者の存在を嫌い、蓬山に帰還した後も王を選べず、蓬莱へと戻ってしまう。その蓬莱で出会ったのが、滅亡に瀕した小松水軍を率いる小松三郎尚隆であった。会った瞬間に王気を感じた六太であったが、前述の理由により誓約を交わすことはなかった。しかし、尚隆の命を懸けて民を守ろうとする姿勢に自らの理想を重ね、絶体絶命の尚隆を助け、延王として十二国へと連れ帰った。それから20年後、雁国は荒れた荒野から緑の大地へと復興を遂げていた。しかし、元州では治水の権限を王が奪ったままなのに梟王時代に破壊された漉水の堤が復旧されない事に州城の苛立ちが募り、謀反の動きがあるという情報があった。そしてある日、六太の古い親友である“駁更夜”と名乗る少年が玄英宮を訪れることから事態は進展する。妖魔の口の中に入れた赤子を見せて、この赤子の命が惜しければ言うとおりにしろ、と六太をおどした更夜は六太を元州城へと連れ去り、元州の令尹・斡由は六太に「漉水の堤」を名目として、天網で禁じられている「上帝位の新設」を奏上した。権力者の存在に否定的な六太はこれを拒否し、牧伯(国から地方に派遣される監督官)の驪媚と共に額に赤索縄(一つが切れると他の綱が絞まる呪)を巻かれて神仙の力を封じられ、首に赤索縄を巻かれた赤子と共に3人で元州城の内宮の赤索縄が張り巡らされた牢に監禁されてしまう。尚隆のもとへも同様の要求が伝えられたが彼がこれを拒否すると、成笙を元州に派遣し、道中で民を募って漉水の頑朴(元州の州都)の対岸に堤を築くよう指示する。そして尚隆本人は正体を隠して元州に行った際に元州師から勧誘を受けた事を利用して元州師に潜り込んだ。国府には宰輔の危機を聞き徴兵を希望する民衆が国内各地から押し寄せ、支援を申し出る郡や郷が沢山現れた上に、尚隆の計略もあって斡由があてにしていた諸侯諸官が宰輔誘拐という強攻策に反発して寝返るなど、事態は斡由に不利に動いていく。更に雨季が始まり、尚隆の計略により雨の中で対岸にのみ堤を築かれる(堤が無いこちら側が水攻め状態に陥る)事に危機を覚えた斡由は州師に対岸の堤を切るよう指示、州師と民の戦いとなり王師が民を守るという、「民のために堤を」を掲げる斡由にとっては皮肉な構図になってしまう。一方、元州城の内宮では「誰が上に立っても同じ」と言う六太に対し驪媚が「宰輔が選んだ王以外のものが国権を握ってはならない」と返す問答が繰り返されていた。驪媚が、天帝の罰が及ばない仙が国権を握る事の恐ろしさを六太に説いても彼は権力者の存在自体を拒否し続けた。ある日、いつものように押し問答をしていた二人だったが、驪媚が突然、六太を逃がそうと彼の赤索縄を切ってしまう。赤索綱が切れた事を知って駆けつけた更夜は驪媚と赤子の血を被って呆然としていた六太を目撃する。更夜は再び六太の額に赤索縄を締める際に今度は角を外して締めた。その後、六太は血に酔って具合が悪い体で元州城から脱出しようとするも地下迷宮に迷い込んでしまう。六太はそこで牢に閉じ込められた先の元州候・元魁と遭遇し、斡由の過去や人となりと、斡由の目的が自分が誉められる事と権力を手に入れることだけであることを知り、斡由は民のためにならないと確信する。その後、近辺を警邏していた尚隆によって迷宮を抜け出せた六太は斡由と対峙し自分の考えを伝えるが、斡由は非を家臣の白沢や更夜へ転嫁することを試みる。しかし、大僕(王や州候の私的な護衛)としてその場に紛れ込んでいた尚隆によって全てを断罪され、怒りから斡由は尚隆に斬りかかるが、最期は六太の使令によって瀕死の重傷を負い、尚隆に介錯され絶命する。陽子が景王となって1年、玉座にありながら冢宰の靖共ら官吏の顔色をうかがう自らの姿に苦悩を感じていた。特に皆がいつも自分に対して平伏する事については、自分が通りかかる度に相手の仕事の手が止まる不合理さに悩み、相手の顔が見えない事に少々不信と恐怖を感じていた。そんな中、太師に謀反の疑いが掛けられ、陽子は靖共の言うがまま謀反に関わったとされる人を処罰し、監督責任を怠ったとして靖共を太宰に降格、政治の実権を握らせるべきではないとされる景麒に「自分よりこの国のことが分かっているから」と次の冢宰が決まるまでの間として実権を握らせた。そして陽子は、この世界の理も、国情も知らない自分に憤りを感じ、自ら市井に降りることを決意する。景麒の勧めにより遠甫という老人のもとで理を学ぶこととなるが、和州で暴政が行われているという噂を確かめに和州に出かけた間に里家が襲われ遠甫がさらわれた事から虎嘯らと出会い、和州の乱へと繋がっていく。大木鈴はその100年ほど前に蓬莱から流されてきた海客である。長く才国の飛仙・梨耀から執拗な虐めを受け続けていたが、決死の覚悟で采王に申し立て自由の身となった。女性・海客でありながら王となった景王に興味を持ち慶国を目指す道中で清秀と出会い、妖魔から受けた怪我で衰弱していく彼を支え共に慶国にたどり着くが、彼は慶国和州止水郷で郷長・昇紘の馬車に轢殺されてしまう。自暴自棄となり、郷長・昇紘を庇う者の最上位にある景王を暗殺しようと才国の遣いを装い王宮に入る鈴であったが、景王不在の為その機会さえなく王宮を去る。虎嘯らと出会い宥められ、打倒昇紘の郎党に加わることとなる。祥瓊は先の芳国の公主であったが、謀反によりその地位を失い、里家での貧しい暮らしや恭国での屈辱的な仕打ちが耐えられず出奔する。自分と同じ年頃で王宮に入った景王を妬み、逆恨みし、簒奪してやろうと慶国を目指していたが、道中で楽俊と出会ったことで考えを改めた。慶国の実情を知り、桓魋たちと出会った祥瓊は、呀峰討伐、和州の乱に身を投じることとなる。陽子・虎嘯・鈴らは打倒昇紘を掲げ郷城へと乗り込む。郷城への突入は成功したが、呀峰は昇紘を庇うため州師を派遣する。州師相手では圧倒的に勢力の劣る虎嘯らであったが、桓魋・祥瓊らの加勢により戦況は一転する。しかし、続いて派遣されたのは王直属の禁軍であった。呀峰もまた靖共に庇われていたのである。王師(王が指揮権を持つ禁軍と首都州師の総称)を目の当たりにして動揺する人々の中にあって陽子は鈴と祥瓊の話を聞き、王としての責任を確信すると共に、王として行動する決意を固める。王の命令がない限り王師が動けない事をいい事に、陽子は景麒の背に乗り反乱軍が王の意思である事を知らしめ、王師に遠甫の救助と、呀峰と靖共を捕らえるよう勅命を出す。王宮に戻った陽子は遠甫を三公(王の相談役。政治の実権はない)の筆頭・太師に、鈴と祥瓊を自分の身の回りの世話をさせる役職に就け、桓魋を禁軍左将軍に、桓魋の上司であり、官吏に言われるがまま追放を命じた後失踪(護送中に靖共一派に襲われたところを桓魋らに救助され、身を隠していた)していた麦州候・浩瀚を冢宰に命じ、靖共派だろうが松塾(靖共らが敵視して焼き討ちした義塾。遠甫はそこの閭胥のような事をしていた。)出身だろうが関係なく個人だけをみる、と大規模な人事改革を宣言。そして景麒の「示しがつきません」という悲鳴のような制止を無視して初勅として「人は敬意を持つものに対しては自然に頭を下げる」と平時の伏礼を廃した。猟尸師を自称する朱氏の頑丘は金剛山の麓、恭国乾の町の宿屋で一人の少女と出会う。少女の名は珠晶、恭国首都連檣の商家の娘でわずか12歳。無謀なまでの威勢のよさを見せる珠晶は昇山すると言い、そのための道案内として黄海に慣れた頑丘を雇うと提案する。安闔日を迎え、珠晶と頑丘は令乾門から黄海に入る。珠晶が旅の途中で一度出会った青年・利広とも再会し、他の昇山者と共に蓬山を目指すことになる。旅が進むにつれ、頑丘や近迫ら黄海に慣れた者たちは、この旅が都合よすぎると気づいていた。妖魔の襲撃が少なく、かつ安全に進むために効率がよく、その被害自体も少なかったからである。彼らはこの一行の中に「鵬(王となるべき人物)」がいると噂するようになっていた。蓬山への道中に強大な妖魔が住み着いていることが分かり、頑丘らは森の中を迂回することを提案するが、室季和を筆頭に一部の昇山者はそのまま進むことを選ぶ。頑丘と喧嘩別れした珠晶は季和と行動を共にすることにするが、妖魔の襲撃に恐れをなした季和や騎乗の者達は徒歩の随従や荷物を捨て去り、一目散に逃げてしまう。季和の馬車に同乗していた珠晶は、そのまま逃げることより残された随従と合流することを選んだ。命からがら黄朱たち一行と再合流した季和と逃げてきた者から事情を聞いた頑丘・近迫・利広らは、追ってくるであろう妖魔から逃れる蓬山への旅を急ぐことと、危険を冒して珠晶や残された人々を救うことの苦しい二者択一を迫られる。結局、頑丘と利広が珠晶の救出に向かい、残りの昇山者は妖魔から逃れるために先を急ぐことになった。一方、珠晶は取り残された人々と合流を果たし、協力して妖魔を倒すことを試みるが、珠晶は妖魔の最期に巻き込まれる形で行方不明になってしまい、その直後に頑丘らが到着するのであった。一人はぐれた珠晶は何とか自力で元の場所に戻ろうとするも、自身の位置を完全に見失い、挙句に人妖と遭遇して窮地に陥る。だが珠晶を探すために留まった頑丘と利広に発見され、間一髪で救われる。しかしその際に頑丘は重傷を負い、血の匂いに妖魔が集ってくることが予想されるため、利広と珠晶に先に行くよう指示する。しかし珠晶は頑なに拒否し、利広のみが剛氏に救援を求めるためその場を離れた。乗騎の駮を犠牲にしてまで逃げようとした頑丘・珠晶は、駮共々犬狼真君に救われる。真君と別れたところで利広と再会、さらにそれを追うようにして30余騎の集団が突如として現れ、その中には蓬山にいるはずの女仙達に混じって妖魔に跨り金の髪を靡かせる男の姿があった。泰王・驍宗が登極して半年が経過した。先王の時代から驍宗は優秀な部下を有しており、国府の中央は信の厚い人物で固められていた。その中、文州で乱が勃発する。もとより内乱の多い土地柄であり、驍宗ゆかりの轍囲が包囲されたため驍宗自らが出兵することになった。驍宗の身を心配する泰麒は、ただ2つの使令を驍宗のもとに差し向けるが、そこで謀反が起こったのである。待ち伏せを受けた驍宗は行方知れずとなり、泰麒も襲われて角を失い鳴蝕を発して蓬莱へ渡ってしまった。それから7年の月日が流れた。その間に謀反の首謀者と思われる阿選が権力を握り、驍宗の臣下は次々と排除され、李斎も罪人として追われていた。追い詰められた李斎は最後の手段として、胎果で登極したばかりの景王を唆して泰王を救出させようと、慶国への脱出を決意する。和州の乱から1年、慶国は新王のもとで安定を取り戻しつつあった。そんなある午後、金波宮の禁門に天馬に乗った瀕死の武将が舞い降り、戴国瑞州師将軍の李斎と名乗り、景王に奏上したいことがあると申し出る。拒絶しようとする閽人の対応に業を煮やした李斎は強行突破を試み、たまたま出会った大僕の虎嘯に助けられ、景王に泰国への助力を願うことを伝えて意識を失う。載から脱出する際に妖魔に襲われ右腕を失い、意識不明状態から回復した李斎の懇願に動かされ、陽子は雁国主従に協力を仰ぎ、どのような助力が可能かを相談する際に「覿面の罪」を知る。そして碧霞玄君の助言を得て、各国の麒麟が協力して泰麒を捜索することになった。その捜索の為に慶に来た氾王・呉藍滌から李斎は彼が驍宗に贈り、李斎が戴を脱出したのと同じ時期に、断ち切られて血が付いた状態で送り返されてきた玉帯を見せられ、氾王は驍宗はまだ生きているかもしれないと李斎を励ます。泰麒捜索は麒麟達の素っ頓狂な捜索のおかげで難航したが、ついに廉麟が蓬莱で泰麒を見つけることに成功した。角を失った泰麒は麒麟ではなく人であるため虚海を渡れないと考えられたため、天網の条文の隙を付いた「他国の麒麟を戸籍に入れ三公に叙す」という手段を取り、延王が虚海を渡り連れ戻すことに成功したが、泰麒は角を失っていることで力が薄れ、また汕子と傲濫の蓬莱での行為により穢れていた。あまりの惨状に玄君の手には負えず、五山の主である西王母により清められるが、折れた角が再生されることはなかった。泰麒は金波宮に戻ってしばらくの後に眼を覚ますが、直後に内宰と閽人が大逆を謀る。本来は景王の身の回りの世話をする者の長である内宰が陽子が彼を自分の身辺から遠ざけ気心が知れた者だけで固めていた上に他国の者に肩入れした事に激昂したのが原因だった。延麒の使令によりことなきを得たが、自分の存在が慶国に少なからず負担となっていると悟った泰麒は、隻腕となった李斎と共に戴国へ戻ることを決意する。夜明け前にこっそり出立しようとした二人だが陽子と延王、延麒に見透かされており、見送りにきた延麒に餞別の旅費と陽子の裏書がある旌券(暗いので裏書の存在に二人は気づいていない)を授かり、更に載に着くまで延王の騎獣を貸し出されて出立した。新潮文庫刊行の『魔性の子』以外は、全て講談社X文庫ホワイトハートおよび講談社文庫。ホワイトハート版のイラストは山田章博が担当。講談社文庫版の装丁は菊地信義(イラストなし)。元々『図南の翼』まではホワイトハート版のみで刊行されていたが、後に講談社文庫からも刊行されるようになり、『黄昏の岸 曉の天』以降は講談社文庫版が先に発売されている。2012年7月より新潮文庫から刊行されている新装版は、表紙および本文イラストはすべて山田章博による書き下ろし。言い回しや文字遣いなどに部分的に訂正が入ったのみで、内容に大きく影響する改訂は加えられていない。ホワイトハート版と講談社文庫版との間には、ストーリーに違いはない。両者の間にある違いは次の通りである。以上の違いがあるため、ホワイトハート版の方がページ数が若干多くなっており、『風の海 迷宮の岸』と『黄昏の岸 曉の天』ではホワイトハート版では上巻・下巻の2冊になっているが、講談社文庫版は1冊になっている。作品の刊行順とストーリーの時系列は異なっており、時系列で並べ替えると以下の順になる(回想シーンなどを除く)。なお括弧内は初出刊行年。『月の影 影の海』を基準年とする。NHKBS2の衛星アニメ劇場枠内で、2002年4月9日から2003年8月30日にかけて放送された。当初は全39話とされ、2003年3月に第2シリーズ(第40話以降)の放送が発表されたが、第45話で終了となった。NHKの公式発表では、その理由として原作が未完であるためキャラクターを生き生きと描きづらいことなどが挙げられている。なお、脚色の會川昇が執筆し後に出版されたアニメ脚本集によれば、元々第2シリーズは「東の海神 西の滄海」に続いて、「図南の翼」、「黄昏の岸 暁の天」の構成で、原作未完の『黄昏の岸 暁の天』に何らかの決着を付けることでアニメ版十二国記の結末とする構想だった。後に教育テレビや衛星ハイビジョンでも放送された。日本のみならず、韓国、台湾、中国、アメリカなどでも放送されている。BS2初回の放送期間は以下の通り。2002年7月23日から8月27日、2003年3月18日・25日は再放送、また2003年4月5日 - 6月28日まで「十二国記の世界」と題された全13回の総集編として再編集された特別番組が放送されている。また、同作品は2006年BS夏休みアニメ特選枠内にて一部放送した。2010年10月6日よりキッズステーションにて放送(CSは勿論、NHK以外の放送局で初の放送となる)。また、2012年8月2日からはNHKBSプレミアムにて全45話が再放送されている。2009年9月26日より順次発売開始されている。特典として、新作ミニドラマCDなどが封入されている。十二国記公式アニメガイド KCデラックス(2004年10月13日、講談社) ISBN 4-06-334923-3PS2版ゲーム2作が発売されている。いずれも制作コナミコンピュータエンタテインメントジャパン、発売元コナミ。PC版オンラインゲームが1作発売されていた。発売元はアスミック・エース エンタテインメント。
出典:wikipedia
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