和歌山ラーメン(わかやまラーメン)は、主に和歌山県北部で、専門店や大衆食堂で出されるご当地ラーメンである。店では「中華そば」、略して「中華」と呼ぶのが一般的だが、一般的にはラーメンでも通じる。味は一般に豚骨醤油味と呼ばれるが、大きく分けて2つの系統がある。また、他にも食べ方、店での応対など他の地方には見られない風習が多く、1つの地域文化を形成している。和歌山、特に中心となる和歌山市では、戦前からラーメンが食されていたと言われており、井出商店の井出つや子は、昭和8年には中華そばの屋台があったと発言している。戦後は、屋台のラーメン屋が多数軒を連ねた。これは和歌山が湯浅などの醤油産地に近いため県民が醤油の味に慣れ親しんでおり、また隣県などからスープの材料となる豚骨や鶏がら、魚介類などを仕入れやすかったためであるとされる。しかし、和歌山の中華そばは時折在阪メディアに発信されることはあったが、全国に広がることはなく、あくまで地元にとどまっていた。更に、この「中華そば文化」が和歌山独特のものだとも認識されることはなく、まして、和歌山ラーメンという呼び名も用いていなかった。この「和歌山ラーメン」という呼び方が使われるようになったのは1990年代後半からで、東京に出店した「まっち棒」が初めて和歌山ラーメンという名称を用いたのが始まりである。そして1998年元日に放映されたTVチャンピオン「日本一うまいラーメン決定戦」で石神秀幸が和歌山市の井出商店を推薦、全国の並み居る強豪店を押さえて優勝した。更に新横浜ラーメン博物館に臨時出店するなどし、首都圏を中心にして人気に火が付いた。それにより、テレビや雑誌にも和歌山の中華そば屋が盛んに取材されるようになり、また大手即席麺メーカーからもカップラーメンが発売されたことなどによって和歌山ラーメンという名称が認知されるようになった。また、この和歌山ラーメンの開拓は、徳島ラーメンや旭川ラーメンなど新たな全国ご当地ラーメンブームの火付け役にもなっている。2006年10月27日、和歌山県製麺協同組合が地域団体商標制度を利用して商標権(指定商品又は指定役務:「和歌山県産のスープ付き中華そばのめん」)を取得している。麺は縮れのない(ストレートの)細麺が一般的。色は黄色い。一部手打ちの店があるが機械製麺が一般的である。麺の茹で加減は店によって様々であり、個人の好みで固さを変えることができるので、セオリーが確立されているわけではない。具は、刻んだ青ネギ、メンマ、チャーシュー(モモ肉)などのほか特徴的な具として蒲鉾、またはかまぼこ型にナルト模様が入った「千代巻」が入る。これは地元の蒲鉾会社の宣伝活動に起因する。薬味は基本的に胡椒のみであり、ニンニク、背脂などはまず置いていない。そしてテーブルに出される前からあらかじめ振り掛けられている店もある。和歌山ラーメンには大きく分けて、「醤油ベースの豚骨醤油味」と「豚骨ベースの豚骨醤油味」の2つの系統がある。ただし、正確な表現ではない。製法は豚骨を鍋一杯の醤油で炊き込み、十分に味が染みこんだ所で豚骨を取り出す。そしてこの豚骨を炊き込んでスープを作る。この際に鰹節や香味野菜、鶏ガラなどを合わせる店もある。また、チャーシューも醤油で煮込み、この煮汁をスープに合わせる店もある。味は見た目に対してすっきりしており、醤油のコクと香りが引き立つ。本家は「丸高」という店で、地元にはのれん分けの店舗も含め、大半の中華そば専門店がこのスタイルである。故に地元の者らが和歌山の中華そばといえば、この味を連想する者が多い。また、この系統には丸●(●は屋号を示す単漢字)の店舗が多い。これは、昭和46年まで和歌山市には路面電車が運行しており、拠点だった堀止周辺に出店の屋台が多く並んでいたため、その目印であったためである(詳細は南海和歌山軌道線の項を参照)。このため、分流といえる井出商店の手法(後述)の店舗が少なかったこともあり、武内伸がこの従来の和歌山ラーメンの味に対して「車庫前系」などと呼んでいた。他にも大衆食堂で中華そばを出す店が多い。製法は豚骨をゼラチン質が溶け込むぐらいまで煮込み、ドロドロに乳化したスープに醤油を合わせて味を調節していくというものである。味は前者に対して濃厚だが、決して脂臭くなく、豚骨の旨味が醤油とマッチする。この製法は、醤油ベースの中華そばを作る際に豚骨を煮立てすぎたことによって偶然生まれたものであり、その派生的なものである。このスタイルが「井出商店」の製法であり、TVチャンピオンのラーメン選手権特番における優勝、新横浜ラーメン博物館への出店などによってこのスタイルが全国区となった。東京に出店し、和歌山ラーメンの知名度上昇に貢献した「のりや」や「まっち棒」もこの系統である。しかし、あくまでもこの系統は地元では少数派であり、醤油ベースに対して店舗数は格段に少ない。そのため、和歌山ラーメン、すなわち井出商店のようなスープという図式は大きな誤りであり、世間の認識と地元の認識に大きなズレを生む元にもなっている。また、井出商店の流れを汲む店はほとんど、特に県外にあるものは模倣によるものである。しかしながら、この製法が全国的に有名になってからは、県内でもこの系統の店舗数増加が際立っている。また、これらのスープの系統に対して、醤油ベースが「車庫前系」、豚骨ベースが「井出系」などと呼ばれていた時期があった。だが、これは新横浜ラーメン博物館広報の武内伸が分類を明確にするために名付けた名称であり、歴史的経緯などから鑑みても正しい表現とは言いがたい。そのため、武内が後に「勝手な名称付けて済みません」と謝っている。また、これらのいずれにも該当しない系統のラーメン店も多数存在しており、鶏ガラベース、魚介類ベース、その他他地方ご当地ラーメンのチェーン店など様々な店舗が見られる。和歌山の「中華そば」文化は非常に独特であり、以下に挙げるような特徴がある。店舗で出される中華そばの量は、ほとんどの店で大盛りの注文は可能であるものの、標準では少なめに設定されている。これは、客が中華そばと同時に「早寿司」を食べることを前提にしているからである。早寿司とは、紀州名物の腐り鮨「なれずし」を十分に発酵させていない状態の鯖寿司である「早なれ」のことである。寿司をアセの葉で巻いているのが本格的だが、近年はプラスチック製のものが主流である。早寿司は大抵、テーブルの上に置かれている。また、巻き寿司が置かれている店もあるが、ラーメンと一緒に寿司を食べる地域は全国的にも類を見ないものである。なお、このような習慣が生まれた理由は、元々関西では定着している、うどんと同時に寿司を食べる習慣が派生したものとみられる。ほとんどの中華そば屋には早寿司と同じくゆで卵が置かれている。元祖は不明だが、比較的味の濃い醤油との相性が良い。慣例はなく、食前に食べたり、砕かずにラーメンに乗せる、砕いてラーメンと一緒にスープに馴染ませる、麺を食べ終わった後で飲み干すスープに溶かす、食後の締めに食べるなど様々である。牛ホルモンに味噌ダレを付けて焼いたどて焼きや、おでんが置かれている店もある。これはお酒を飲んだ後に中華そばを食べる習慣があるためで、おでん、どて焼きが置かれている店は大概、深夜遅くまで営業している。一方で、他地方のラーメン屋などに必ずといっていいほど置かれている炒飯や餃子、唐揚げなどの中華系サイドメニューは、一部の観光客向けの店を除いては殆ど置いていない。和歌山の中華そばは、中華料理として捉えられていない部分があるからであり、また寿司を食べる習慣が根付いていることからごはん(白飯)を提供する店もほとんど見られない。ただし、大衆食堂の場合は、ごはんや丼物、定食が前提であるので、この限りではない。逆に、このような店では寿司を置いていることはまれである。井出商店が火付け役となり、地元に脈々と根付いていた中華そば文化は、在京マスコミからテレビ番組、雑誌などを媒体として情報が発信され、また大手即席めんメーカーからも商品が出されたことなどで、全国に知れ渡るようになった。それゆえ、1998年以後、和歌山ラーメンを食するために和歌山を訪れる観光客の増加が顕著であり、またビジネスなどで出張や営業のための訪問がてら和歌山ラーメンを食べて帰るということも多い。このような近年の傾向を受けて、和歌山市観光コンベンションビューローでは、和歌山ラーメンマップを発行して和歌山駅などの玄関口に置いたりして、観光客のニーズに対応している。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。