タイミングベルト(英語:timing belt)は、自動車やオートバイなどのエンジン部品の呼び名で、エンジンのイグニッション(点火)やバルブ開閉などのタイミングに関わる部品のこと。「カム・ベルト」とも。エンジンの動作周期の中で「点火」や「バルブの開閉」等々が適切な時期に起きるようにするために、クランクシャフトとカムシャフトの回転周期を一致させる役割を果たしているベルトを指す。タイミングベルトはクランクシャフトとカムシャフトをプーリーを介して繋いでいる。カムシャフトとクランクシャフトの回転を同期させるために、滑りのない、歯が付いたコグドベルトが使用される。エンジンによってはカムシャフトに加えてオイルポンプやウォーターポンプを駆動するためにも使用される。タイミングベルトは温度が高くなるエンジンで長期間に渡って使用されるわけなので、耐熱性・耐久性が求められる。ゴム樹脂としては耐熱性に優れた水素添加ニトリルゴム(HNBR)などが使用される。ベルト歯は表面をナイロンなどの歯布で保護されており摩擦を低減し摩耗を防ぐ役割がある。ベルトは高張力繊維(ガラス、アラミドなどの長繊維)をより合わせた芯線で補強され伸びを防いでいる。通常ベルトは引っ張り負荷が加わる側(テンションサイド)、と逆の圧縮負荷側(スラックサイド)に分かれる。テンショナープーリーはスラック側に装備さればねや油圧ダンパを用いてベルトの張力を適切に調節する。さらに共振、ノイズ低減や位置調節などのためのアイドラープーリーなどが装備される場合が多い。通常ゴミやオイルの付着を防ぐために金属や樹脂製のカバーで保護されている。エンジン動作中にベルトが破損すると、エンジンに深刻な損傷が生じる可能性がある(可能性が高い)。特にインターフェアレンスエンジンではベルトの破損時にはバルブとピストンが衝突するなど深刻な損傷(エンジン故障)に繋がる恐れがある。そのため、タイミングベルトは製品ごとに「交換時期」「交換距離」がメーカーによって指定されており、その指定の年月がたったり指定の距離数を走った場合は交換すべきものだとされている。タイミングチェーンと並びに取って代わる存在となっていたが2000年代以降チェーンの改良により、新型のエンジンでタイミングベルトを使用する例は少なくなっていた。しかしながら2010年代に入り自動車の燃費向上への要求が高まる中、摩擦損失の少ないタイミングベルトが高耐久化など性能向上も進む中で見直されており、燃費を重視した新型の小排気量ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでのタイミングベルトの採用が復活している。チェーンと同じ雰囲気下で使用されるもので、従来のベルトに比べ高い耐久性がありチェーンに比べ摩擦損失が少なく省燃費性に有利となる。チェーンからの置き換えも容易で、2008年に自動車向けで初採用となったフォードの1.8L Duratorq-TDCi (Lynx)ディーゼルエンジンは従来のタイミングチェーンをベルトとプーリーに置き換えている。耐久性ではプジョー208の1.0Lエンジンではメーカー指定の交換時期は18万キロ、10年で、部品メーカーでは寿命は24万キロをうたっている。自動車以外では1990年代より発電機などで油中式(湿式)タイミングベルトが使用されている。レシプロエンジンの主流がSVやOHVであった時代は、カムシャフトはクランクシャフトの側にあり、クランクシャフトからギアを介して直接駆動する方式が一般的であった。その後、バルブ追従性を改善する目的で、カムシャフトの位置をシリンダーヘッドに近づけ、プッシュロッドを短くした、ハイマウントカムシャフトが実用化された。その際、カムシャフトの駆動に、それまで一部のレーシングカーやスポーツカーのDOHCに使用が限られていたローラーチェーンが用いられるようになる。これにより、クランクシャフトから離れた場所に動弁系を配置することが容易となった。しかしこの頃のチェーンは、ピッチが粗く騒音が大きく、正確な制御に不向きな面もあり、また、伸び、調整を怠ると、タイミングがずれる欠点もあった。自動車向けコグドベルト(タイミングベルト)は、米国(現)のリチャード・ケースが、1945年に開発した。しかし、1950年代までの、OHVエンジンが主流の市場では普及する機会はなかった。量産車に導入されたのは遙かに下り、1962年にドイツのグラース社が発売した小型乗用車、「グラース1004S」の直列4気筒1000cc・SOHCエンジンであった。以後、時を同じくして一般車用エンジンにSOHC方式が広まり始めたことから、コスト、騒音、潤滑、精度の問題を一気に解決できるベルト駆動方式が普及し、多数のエンジンに採用された。タイミングベルトは1970年代から2000年頃まで、SOHC・DOHCのカムシャフト駆動の中心的役割を担っていた。その後、ベルトの寿命や耐久性を理由とした信頼性の低さと、エンジンの小型化、スリム化に対応できないベルトの幅の広さから、ベルトに見切りをつけるメーカーが現れた。ローラーチェーンの改良による「コマ」の小型化、低騒音化の実現により、1990年代末頃からは再びローラーチェーン(タイミングチェーン)を採用するエンジンが現れ、2000年代以降主流となった。ベルト側の耐久性向上は常に図られ続けている。ベルトの歯型形状は初期の台形状から、時代が進むにつれ応力が集中しないように解析して改良が進められている。また、ベルト自体の材質・構造も進化し、切れにくいように工夫されている。日本車の場合、1990年代には15万キロ程度までは交換不要であるベルトも生まれていた。芯線では素材に従来のEガラスからより高性能なガラス素材を使用するなどでの耐久性の向上が図られている。ベルト幅についても従来の16-20mmから12mm、10mmなどへのコンパクト化が試みられており、オイルポンプ用ベルトではチェーン同等の9mmでの実用例も見られる。タイミングベルトの長所は以下の通りである。一方、タイミングベルトには以下の欠点がある。一例としてホンダ:ビートは説明書に10年または10万kmと記載があるが、かなり高回転を用いるエンジンのため、5万km以内に切れるため、オーナーは4万kmまたは4年で交換する例が多い。また、軽自動車は構造上高回転が多く、尚且つベルトが細いため、店によっては6万kmで交換する例も数少なくない。ましてターボ、スーパーチャージャー車は、5万kmで交換をお勧めするこれらのメリット/デメリットがあるが、最近ではピッチが小さく静粛性の高いチェーンが開発され、既に広く実用化されているために、絶対的な耐久性に不安のあるタイミングベルトを用いることは少なくなってきている。タイミングベルトは一般にはエンジン側面のカバーに覆われており、目視による日常点検ができない。エンジンに高度なチューニングを施した場合、高い負荷の掛かるタイミングベルトの管理には非常な厳格さが要求されるため、エンジンカバーを取り外して剥き出しにしているケースも見受けられる。しかし、一般的な自動車の場合、そこまで厳格にメンテナンスする必要は全くない。日本車の場合、メーカー指定の交換時期は10年・10万kmという場合が多く、それを守っていればまず問題ない。ただし、ベルト以外の部分のメンテナンスを怠るとベルトにかかる張力が大きくなるため、結果的にベルトの劣化が早まることも十分にあり得る。そこでタイミングベルトを長持ちさせるためには、エンジンオイル、ロングライフクーラントなどのフルード類をこまめに交換することが求められる。さもないとエンジン内部の回転抵抗が増大し、タイミングベルトに余分な負担をかける。エンジンのメンテナンスを怠り続けた車の場合、10万kmを待たずしてタイミングベルトが切れてしまう事例は日常的に確認されているので注意を要する。当然、メーカー側がある程度の安全率を勘案した10年・10万kmという指定である。油脂類のメンテナンスを日常的に行っている車両でも、静止状態からいきなりアクセルを踏み込む動作(急発進)を行うと、急激なトルク変動によりベルトが引っ張られストレスが掛かり、その寿命を縮めてしまう。低回転からの急激な回転数の上昇は特にタイミングベルトのテンショナーベアリングにも負担を掛ける事となり、異音の原因となる事もある(ファンベルト類も同様)。タイミングベルトの交換作業は、整備技術レベルとしては中級に属する。このため、一般ユーザーはディーラーや修理工場に作業を依頼することが多い。作業は、タイミングベルト交換を行うための作業スペースの確保のために、その他の補機類(インテークダクト、オルタネータなど)を取り外す。そしてエンジンカバーを外し、テンショナーを取り外した後、タイミングベルトを交換する。この時、冷却水を循環させるウォーターポンプを同時に交換することが多い。ポンプはタイミングベルト交換作業工程の途中で交換できるため、整備者側は同時交換を薦めることが多いためである。また他にもベルトにエンジンオイルが付着している場合は各シャフトのシール交換も同時に行う場合も多い。高級スポーツカーの代名詞とも云える、フェラーリでは、指定交換サイクルが2年2万キロ(4年3万キロ)と短い。縦置きミッドシップのモデルでは、タイミングベルトプーリがキャビン側に配置されており、ベルト交換のためにエンジンを下ろす必要があることから作業工賃も高額である。この他スバルなど水平対向エンジンを搭載する車も構造上タイミングベルト交換にかかる工賃は他のエンジンに比べても高額になる。横置きミッドシップ車のホンダ・NSXやトヨタ・MR2はエンジン搭載状態で交換可能である。
出典:wikipedia
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