


作用素環論において、ゲルファント=マズールの定理(ゲルファント=マズールのていり、)とはバナッハ環の基本定理の一つである。単位元を持つ複素バナッハ環が可除環であれば、複素数体と同型であることを主張する。可換なバナッハ環におけるゲルファント理論において、基本的な役割を果たす。定理の名は、定理を導いたポーランドの数学者とロシアの数学者イズライル・ゲルファントに因む。1938年にマズールは実バナッハ環についての結果を証明なしで報告し、その後、1941年にゲルファントは複素バナッハ環における結果を示した。単位元"I" を持つ複素バナッハ環"A" において、"A" が体、すなわち0を除くすべての元が可逆であるとする。このとき、"A" は複素数体Cと等距離同型である。定理の証明は、作用素論の基本的な結果に基づく。任意の"a" ∈"A"に対し、スペクトル集合σ("a" )は空集合でないことから、"a" -λ "I" ∈ σ("a" )となるλ ∈Cが存在する。一方、仮定により、0を除く全ての元が可逆であることから、"a" =λ"I" となる。なお、"A" が実数体を係数体とする実バナッハ環の場合には、"A" は実数体、複素数体、または四元数体と同型になる。バナッハ環"A" から複素数体C への線形汎関数χが準同型性χ("xy" )=χ("x" )χ("y" )を満たすとき、χは指標と呼ばれる。バナッハ環のゲルファント理論における、「単位元を持つ可換な複素バナッハ環"A" の極大イデアル"M" と指標χの核kerχが一対一対応とする」という結果は、ゲルファント=マズールの定理から導くことができる。
出典:wikipedia
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