温水洗浄便座(おんすいせんじょうべんざ)とは洋風便器に設置して温水によって肛門を洗浄する機能を持った便座のことである。商標の普通名称化により「ウォシュレット」や「シャワートイレ」などの呼称で総称している場合があるがウォシュレットはTOTO、シャワートイレはINAX(LIXIL)の商標である。日本ではこの温水洗浄便座を装備した便器が増加しており、2015年3月末現在の一般家庭への普及率は77.5%に達する。海外ではビデの一種として扱われ、「combined toilets」または「bidet attachments」などと呼ばれるが、わざわざビデを便器と一体化したりせず、便器の横に併設されていることが多い。逆に日本では温水洗浄便座の一機能としてビデが存在する場合が多く、ただでさえ狭いバスルームの中で便器の隣にビデが併設されていることはまずない。普通ならバスルームで便器に併設されているビデを、ノズルの形で便器と一体化し、さらに電気制御式としたものが、アメリカで医療・福祉施設向けに開発され、痔の治療などに使われていた。日本の衛生陶器メーカーである東洋陶器(現:TOTO)がこれを日本の一般住宅向けに販売しようと考え、1964年にアメリカンビデ社(米)の「ウォシュエアシート」を輸入販売開始したのが温水洗浄便座の始まりとされる。その後、ライバルの伊奈製陶(ina)が1967年10月に国産初の温水洗浄便座付洋風便器「サニタリーナ61」を発売(1976年にはシートタイプ(便座単体タイプ)の「サニタリーナF」を発売)、TOTOも1967年にアメリカンビデ社より特許を取得し、「ウォシュエアシート」の国産化に踏み切り、1969年には便座暖房機能付きの「ウォシュエアシート」の生産を開始した。しかし初期のこれら商品は温水の温度調節が難しかったことから温水の温度が安定しないために火傷を負う利用者もいたほか、価格も高く普及には程遠かった。もっとも1970年代以前はまだ和風便器も多く採用されていた上、下水道の普及も進んでいなかったのも一因である。1980年、TOTOは独自に開発を進めてゆき「ウォシュレット」の名称で新たな温水洗浄便座を発売した。このウォシュレットでは温水の温度調節、着座センサーの採用、さらにビデ機能の搭載などが盛り込まれ改良が年々進んだ。日本人の清潔志向の高まりとウォシュレットの積極的なCM展開が普及へと繋がることになる。なお、ウォシュレットに限った歴史についてはウォシュレットの記事も参照されたい。1980年代半ばには伊奈製陶が「サニタリーナ」に代わって「シャワートイレ」の名称を前面に出すようになり、また電機メーカー各社も松下電工(現:パナソニック)を始めに参入、一部はOEM供給によってしのぎを削るようになる。1990年代には日本の新築住宅で多くが温水洗浄便座を採用することになる。さらにオフィスビルや商業施設、ホテルといったパブリック用途にも採用が広がり、2000年代には住宅/パブリック問わず採用されるのが一般的となってきている。さらに鉄道駅、鉄道車両のような不特定多数の利用がある場所でも、採用例が出てきたほか、和歌山県は2013年に県内の全公衆トイレに温水洗浄便座を設置する計画を発表した。海外ではTOTOの普及活動の割にほとんど普及していないが、中国・台湾を中心とするアジア圏では2015年頃より訪日して温水洗浄便座を初めて知った人が便利だと思って自国に帰って購入するケースが増え、普及が進んでいる。温水洗浄便座はノズルから噴出する温水によって肛門を洗浄するという基本的なものからビデ機能によって女性の局部を洗浄する、脱臭、乾燥、暖房便座の機能、室内暖房、さらには便器の自動洗浄や音楽再生まで様々な機能が盛り込まれている。また、操作もユニバーサルデザインの観点から本体ボタンからリモコン操作式に変わりつつある。こういった機能は日本が特に進んでおり、海外から来日した人が驚くこともあるという。電子部品で多く構成されサイズのコンパクト化という指向もあり、メーカーは年々改良を続けている。近年は海外での生産・販売も行われるようになった。肛門の洗浄は、一般的に「おしり」と書かれたボタンを押すことによって温水がノズルから噴出する。温水は温度や噴出量を調整できるのが一般的である。近年は噴出位置の調整も可能になっている。ノズルの角度はTOTOが43度なのに対し、INAXは70度とメーカーによって差がある。噴出量は商品によって差がある。ビデ洗浄は、「ビデ」と書かれたボタンを押すことで、女性の局部へ温水が当たり洗浄する。肛門洗浄とは温水の噴出角度が異なるため、TOTOでは1本のノズルで対応する場合ではノズル内に別の配管を設けて53度の角度で噴出する。INAXやパナソニックは別のノズルを設置して噴出するタイプとなっている。このあたりはメーカーによる考え方の違いでもある。なお、ビデは欧州で使われているビデとは機能的には異なるので注意されたい。またパブリック用の男子トイレにある温水洗浄便座(TOTOの旧Pシリーズ、INAXのPシリーズ)にはビデ機能が省略されているものもある。温水洗浄便座にて重要なのは温水をどのように供給するかである。基本的には便器洗浄用の配管から分岐させて温水洗浄便座に接続、本体で温水を作り噴出させるようになっている。温水の作り方は、貯湯式(ちょとうしき)と瞬間式の2タイプに大別される。前者は温水を作った後、本体内蔵のタンクに溜めておき、使用する際にはタンクから温水をノズルに供給する方式である。本体にタンクが必要なため以前はサイズが大きくなりがちであり、温水を保温する関係で電力消費量では不利である。ただ一度に噴出する温水の量が豊富にできること、コストが安いため比較的多くの機種で採用されている。一方、瞬間式は使う瞬間に水を温めて噴出する方式である。噴出する温水の量は貯湯式よりも少ないため、少ない温水で効果的に洗浄できるように工夫がなされていることが多い。使う時の瞬間消費電力は大きくなるが、温水を溜めておく必要がないためトータルの電力消費量は抑えられる。上位機種やタンクレストイレ一体型に比較的多く使われているタイプである。ホテルのユニットバスに設置可能なタイプでは、浴槽や洗面に使う給湯配管を使って湯水を混合して適温になるようにしたタイプも作られている。この場合、電源を電池式としたり、さらには電源を必要としないものも存在している。当節の冒頭にも書いた通り、「おしり」「ビデ」の他にも様々な機能が搭載されている。温水洗浄便座の場合、便座カバーを取付けても温水で濡れる可能性があるため便座カバーは取付けないことも多い。冬場など便座がむき出しの場合、冷たさを感じるため便座を温める機能が一般的に付いている(前述したホテル用の無電源タイプには搭載していない)。節電に対応すべく使用する時に限り温める機能を持った商品も存在する(パナソニックなど)。なお、温水洗浄機能がない「暖房便座」もメーカーでは発売している。用便時の臭気を取取り除く脱臭機能が付くタイプがある。オゾン、酸素による脱臭が一般的で脱臭カートリッジに臭気を吸収する。また、INAXの製品ではシャープの開発した「除菌イオン」を使った脱臭が行われている。さらに、TOTOの一部製品には、次亜塩素酸を発生させた「きれい除菌水」で、便器内を除菌する機能が付属したものや、パナソニックの一部製品では、用便時の脱臭機能とは別に、便器内や周辺の壁の脱臭や、便器内の除菌も行う「ナノイー」が採用された機種もある。各社共、便座には抗菌素材を採用したものが多い。洗浄機能使用後に乾燥させることが可能な機種もある。ただ、乾燥の機能だけでは短時間に乾ききらないのが一般的で紙で一旦ふいてから「仕上げ」に使う人もいる。近年発売されている製品は上級機種に限られている。便器を使用後に自動洗浄する機能を持たせた機種もある。センサーで便座から人が離れたことを感知し、使用時間に応じて大洗浄もしくは小洗浄をする。リモコンによって任意に行うこともできる。便座を上げている場合は男子小洗浄としてさらに水を減らして流す機種もある。パブリック用(オフィスや商業施設、公共の場所のトイレ)では便座ではなく、フラッシュバルブにその機能が付いていることが多いが、温水洗浄便座と連動しているものも存在する。便蓋や便座を人感センサーで自動開閉する機能。便座の前に立つと自動的に蓋が開き、立ち去ると自動的に閉まる。リモコンのボタンで開閉も可能。INAXやTOTOの上位機種では音楽を再生する機能を持たせている。INAXの場合、「リラックスミュージック」と称したクラシック音楽や自然の音をSDカードにMP3形式収録して本体に搭載し使用時に再生する。TOTOではリモコンに同様の機能が取付けられており(こちらもSDカードに収録)、ケンウッドとの提携によるスピーカーを搭載している。なおTOTOは2012年をもってこの機能は廃止された。パブリック用に用意されており、ボタンを押すと一定時間、便器の洗浄音を流す。流しながら用便されるのを防ぎ、節水に役立つ。利用率の高い女性用温水洗浄便座に装備される。INAXでは、市販のスマートフォンに専用アプリケーションをインストールすることにより、付属リモコンと同様の操作や設定情報(水勢・洗浄位置など)の記憶、音楽再生が出来る機種を発売している。アプリ内に便の状況を記録することも可能である。INAXの製品などでは、便器部分を照らす「ほのかライト」機能を持った機種がある。便座にLED照明が組み込まれており、深夜にトイレを利用した際に室内照明の代わりに使用することで目をさましにくくする効果があるとしている。現在、温水洗浄便座による火災や感電、漏水などの事故がしばしば起きている。これは、長年使用していることによる老朽化が一因とされるものが多い。温水洗浄便座は電化製品の一つとして、メーカーおよび業界団体では10年以上使用している製品については点検や取替えを勧める告知をしている。東海大学の研究グループが一般住宅や公共施設の計108カ所の温水洗浄便座の洗浄水を検査したところ、洗浄水から厚生労働省の水道水質基準を超える一般細菌が検出された。大学の研究者は「ノズルの先端やすき間から細菌が侵入し、タンク内の温水で増殖したのではないか。タンク内は塩素が揮発され、菌に適した環境下にあったと思う」と推測している。これに対して業界団体の温水洗浄便座協議会は、「これまで約4000万台が生産されているが、感染症などの健康被害は一件も報告されていない。タンクに水が逆流することは構造上ありえず、タンク内で菌が繁殖する危険性は低い。研究ではノズルにもともと付着していた汚物から菌が検出されたのではないか」と疑問を呈した。衛生陶器業界最大手のTOTOは「ウォシュレット」の製品名で発売する。1980年6月に発売以来、2011年1月には累計販売台数が3000万台を突破した。温水洗浄便座では高いシェアを誇り、INAX(同社の名称はシャワートイレ)や他社製の同種類のものも含め「ウォシュレット」と呼ばれるほど定着しているが、ウォシュレットの名称はTOTOの登録商標(日本第1665963号など)である。ウォシュレット一体型の便器。従来は機能部の老朽化による取り替え時には便器も含めた取り替えが必要であったが、機能部のみの取り替えも可能になった。●印の機種はフチなし形状・トルネード洗浄を採用している。業界2位のINAX(LIXIL)は「シャワートイレ」の名称で発売する。便座単体(シートタイプ)と温水洗浄便座一体型便器が発売されている。同社はTOTOより先に製造を開始しており1967年に温水洗浄便座一体型便器の「サニタリーナ61」を発売、1976年にはシートタイプの「サニタリーナF1」を発売している。ウォシュレットとの相違点としてはおしり洗浄ノズルの角度が70度と真下からの洗浄に近く、このためビデ用のノズルは別個に設けられている点が大きい。同社では「レディスノズル」と称してアピールしている。リモコン付きモデルには、ペーパーホルダーに取り付けできる「インテリアリモコン」がオプション設定されている(サティスには「スマートリモコン」も用意されている)。一部は便器自動洗浄にも対応する。また、シャワートイレ一体型便器「サティス」に関しては、初代モデル(2001年4月から3年間販売)や第2世代モデル(2004年4月から5年間販売)からの交換用として、機能部(便座)を載せ替え、止水栓や給水ホースを交換するだけで現行モデルの「サティス」と同等の機能へ性能向上できる「リフレッシュサティス」が2010年4月に発売された。これは、便器前出寸法とバルブの位置・取付ボルトの位置が初代モデルから変更されていないために、交換用の設定が実現できた。旧型タンクレストイレの機能部(便座)を交換する製品としては業界初である。TOTOとINAXは、総合カタログにも掲載される一般の工事店向けと掲載されない量販店向けがラインナップされている。また、デベロッパー向けの製品もあるがここでは省略する。サティスとリフォレの上位機種は瞬間式、他は貯湯式。一部にオプションで便座のべたつきをなくした「さらっと便座」も選べる。一部製品の便器部は2006年以降、洗浄水量を大6L・小5Lに改良した「ECO6」となり注目された。パナソニック(旧:松下電器産業)の商品名はビューティ・トワレ、パナソニック電工(旧:松下電工)の商品名はクリーンシャワレ。パナソニックブランドであるが、クリーンシャワレはビューティ・トワレに統合される形で、ナショナルブランドの時代に廃止された。また、1980年代半ば以前の旧松下電工の製品はクリーンベンザの商標を用いていた。また、系列の住宅メーカー「パナホーム」ブランドのものもあった。多くは電器量販店での販売であるがシェア的には小さいものの便器も発売しており、一体型も発売されている。ノズルはINAXと同様の2本ノズル式が主流であったが、最新機種は1本ノズル式になっている。ビューティ・トワレでは近年の機種ではノズルがステンレス製になっている。また最近では、除菌・脱臭に「ナノイー」が採用された機種も販売されている。東京ディズニーリゾート専用モデル、パブリックモード搭載及び便座蓋の撤去の改修を行っているまた、一般モデルに有るPanasonicのメーカーロゴも刻印されていない東芝はクリーンウォッシュの商品名で2014年10月現在、4機種が発売されている。ノズルは一本ノズルだが、おしり洗浄とビデ用は位置を変えた2段ノズル式となっているのが特徴。かつては松下電器産業「ビューティ・トワレ」のOEM品を細々と販売しており一時撤退していたが、近年になりサムスン電子からのOEM供給により韓国製の廉価商品を発売。価格の割に多機能であることから人気を呼びシェアを伸ばしている。しかし韓国製であることから品質、性能が若干劣るとの声もある。名称はウォッシーで、積水化学が製造している。ノズルは2本方式である。貯湯方式・リモコン付き(本体にも操作部はある)モデルで6機種が発売される。衛生陶器メーカーのアサヒ衛陶は、サンウォッシュの商標で発売されている。同社が得意とする簡易水洗便器にも装着可能である。衛生陶器メーカーのジャニス工業は、サワレットの商品名で発売している。タンクレスのスマートクリーンやタンク式のイーフィットクリーン・ココクリンなどの温水洗浄便座標準搭載型も販売している。同社の温水洗浄便座は以前より日立ファミレットのOEMであったが現在は韓国メーカーから製品供給を受け販売しており、製品には東芝クリーンウォッシュとの類似性が見られる。また、同社のOEM供給先であるタカラスタンダードも同様な製品を販売している。不動産業の東建コーポレーション傘下にある住宅設備機器メーカー・ナスラック(旧・東建ナスステンレス)はシャワレッシュの名称で韓国製品のOEM品を発売していたが、2008年より一部を除きパナソニック・ビューティトワレのOEMに切り替わった。2013年に自社生産を開始して独立したモデルになり、OEMに頼らなくなった。なお、同社では上記ジャニス工業からのOEM供給により便器も発売している。TOTOが1996年に和風便器用の機種「ウォシュレットW」を発売した。しかし、和風便器では温水が命中しないなどで使用しにくいことや洋風便器への移行が進んだことから普及せずに2003年頃に生産が終わった。こちらは2003年放送のフジテレビ系列『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』でも紹介された。旅行先など温水洗浄便座のない場所で使用できるよう携帯タイプとしたもの。本体に温水を入れて使う。以前はINAX、松下電池工業(現:パナソニック株式会社 エナジー社)なども発売していたが現在はTOTO、パナソニックのみ。海外において用便後の洗浄方法を水のみで行う文化圏では、洋式便器を取り入れているトイレには洗浄用のノズルを用意しているケースを漫画家のマミヤ狂四郎が自身の旅行記漫画で紹介している。内閣府の消費動向調査によると日本における温水洗浄便座の世帯普及率は1992年には約14%だったが2000年には約41%、2008年には約68%、2010年には71.3%に達した。温水洗浄便座における世界のシェアは大部分は日本の企業だがアメリカやヨーロッパなどではコンセントが便所に無い場合が多いこともあり、日本以外での普及率は高くない。
出典:wikipedia
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