服装の乱れ(ふくそうのみだれ)とは、日本において既存社会集団の服装に関する規範に適合しない個人の服装の状態を指す言葉である。(商業施設などへの服装を理由にした入場規制や国際的なエチケットについてはドレスコード参照)社会的規範と個人の意識との葛藤が、「服装」という可視的なものに物象化して「服装の乱れ」が発生する。服装は、フォーマルなものであるほど、その着用方法について校則、就業規則などによる明示的な規制ないし暗黙の社会的規範があり、従わない場合の処罰や社会的信用の失墜というサンクションよって各個人に強制されている。それは、典型的なモダニズムの象徴といえる存在であり、服装の乱れは、おおいかぶさる規範的権威をはねのけ、学校という権威を無視した個人や小集団の主張を表明するというポストモダン的な行為として発生する。それは、権威に反抗する行為でもあり、「服装のアレンジ」や「脱画一化した服装」、「抑圧的な権威に対する抵抗」と評価されたりする。ただ、ポストモダニズムに属する他の行為と同様、その抵抗は、問題を個人や小集団のレベルで消し去ってしまうものであり、巨視的には権威や規制そのものは温存される。服装の乱れは、次のような形態をとって現れる。戦前から若者の間では「年寄りが勝手に決めた堅苦しい規範」に反する動きは当然のごとく存在した(旧制高校におけるバンカラ(蛮カラ)が典型例)。しかし、当時は限られた階層でしかかかる自由の表現ができなかったのに対し、大衆消費社会となった1960年代末期、日本においては全面的にかかる反抗が開花した。高等学校においては、学校の権威による学生服着用の強制に対し、生徒たちは「制服自由化運動」というやはりモダニズム的なやりかたで対抗し、各地で学園紛争がひろがった。だが、現代の生徒たちは、同じ強制を、服装の乱れというポストモダニズム的な行動によって個別的ないし小集団の行動として消滅させようとしている。学校における服装の乱れは、一般に、教育困難校と評される学校の生徒に多いと考えられがちであるが、むしろこれらの学校では厳しい生活指導が徹底され、服装の乱れが見られにくい場合もある。逆に進学校や難関校と評される学校で、勉強さえやっていればあとは自由などの発想から、生活面の指導が行われず、教育困難校以上に服装の乱れが広まっている場合もある。さらに、どのような学校においても、校外では教職員による指導が困難となり、服装を乱す生徒が多くなる。生徒の心理の中では、下記のようなさまざまの理由が複合して服装の乱れに結果する。単なるファッションの一形態が「服装の乱れ」になってしまう無意識的なものと、明確に反抗などの意思表示として意識的に行うものがある。ただし、これには明確な境界線はなく、要因もまた複合的である。以上とは多少異なった意味をもつものもある。性同一性障害やトランスジェンダーの傾向を持つものは、学校の制服に強い拒絶感を抱くものが多く、不登校などの原因となっている。これは、自身の生物学的性別を誇張することを強制されることに対して心の安寧を脅かされるからである。金八先生第6シリーズでは、性同一性障害のある鶴本直が肌の露出を嫌がりスカートを長くする様子が描かれた。このような視点から、ジェンダー論や人権の観点で論じられることもある。次の2つの調査から、反抗的な理由よりも、周囲からの評価意識などが、現代の制服を着崩す主要因であることがわかる。また、学校側がどこまでを「乱れ」とみなすのかは、その学校の校則の指導方針や伝統などにも左右されるため、各校で異なる。旧制高校において伝統だった弊衣破帽は、制服や制帽に対する物理的な破壊や汚損をともなうものであったが、これが「乱れ」として生活指導の対象となることはなかった。現代でも、長きにわたり装用してメッキが剥がれた・七宝やエナメルの欠けた襟章、黄ばんできたセーラー服の白線などを、学校生活の象徴として愛着と誇りを見出す心理は存在する。その場合、襟章や白線を新品に取り替えるようにという生活指導は、通常行われない。学校内においても、各教師ごとにどこまでを乱れと判断するか対応の違いもある。生徒間において不均衡な指導が行われることもある。真面目な生徒には寛容に、反抗的な生徒には厳格にという対応がある一方で、過度に逸脱的な生徒には軽微な服装の乱れを指摘していてもキリがないため、黙認されることもある。さらに、後述のように、生徒の工夫と服装の乱れとのあいだに区別が引きにくい場合もある。もっとも、そのような学校内部における「乱れ」の程度の認識が、一般性を持たない場合もある。たとえば、詰襟にプラスチック製の襟カラーを装着させることを厳しく指導する学校もあるが、逆に、カラーが苦痛になるとしてこれを強制しないと生徒や保護者に明示している学校や、カラーを装着しないことを公式の方針にした学校もある。服装が「乱れ」ていると判断するためには、基準となる服装が制定されている必要がある。その基準がない私服校や大学では、法に直接抵触しない限り服装が問題となる事はない。時代の流れとしても、かつては乱れと判断されていたものが、学校側が公認ないし黙認することで、乱れでなくなるケースもある。たとえば、今日ではほぼ全ての学校で制帽ならびに坊主刈が廃止されたので、かつてのように無帽通学や長髪が「服装の乱れ」とみなされることはなくなった。詰襟ホックについても、1970年代ごろまでは、多くの学校でこれを外すことが「不良の始まり」の象徴として厳しく指導対象とされていたが、窮屈な詰襟が伸び盛りの生徒に与えている苦痛についての認識が広がると、多くの学校が明示的か暗黙かは別としてホックを留めないことを容認するようになり、今日では開いた学生服の襟元を乱れと受け止められる傾向は社会的に少なくなった。さらに、名札や学年章類の着用を生徒に義務付けていた学校で、近年の個人情報保護の流れに配慮し、制服のモデルチェンジの機会などを捉えてこれらを廃止する学校、安全ピンとクリップの両用型で必要に応じて外して反転させ表面を見えなく出来るようになっているものを採用する学校が増えている。こうした場合、名札や学年章を装着しなくても「服装の乱れ」と判断されることはない。このような、指導の緩和の流れとは別に、服装の乱れに対応した制服が開発され、指導を容易にするという流れもある。たとえば、スカート丈を短くする常套手段のひとつに、ウエストを数回折り返すというものがある。原状回復出来ない改造ではないため、服装指導を回避するのに用いられる。これを防ぐため、曲げにくいようベルト芯を部分的に幅広にしたり、吊り紐付きにしたり、また曲げるとゴワつくようウエスト部分の布の量を多くしたスカートが開発された。他にも、腰穿きを防ぐために股上を浅くしたスラックスや、位置を下げられないようボタンで留めるタイプのネクタイ・リボンなどが開発され、採用されている。また、規定通りに着用しなければ外観が損なわれ、容易に発見できるようにした制服も開発されている。スカートのウエストの下にワンポイントやボタンなどの飾りをあしらい、曲げたときに飾りの位置が変わったり見えなくなる。また、スカートの裾上げを防ぐため、裾に横ボーダー柄が入ったデザインにするなどの手法もある。それと反対に、着用方法に合わせた制服も存在する。シャツをボトムの外に出す乱れに対し、はじめからボトムの外に出すようデザインされたシャツを採用し、シャツを出すことを服装の乱れとみなさなくするのはその一例である。硬いプラスチック製の襟カラーが首まわりに与える苦痛を緩和するために導入されたラウンドカラーが広まってきたのも、ノーカラー化傾向への対応の例と言える。同じ目的で、生徒自身が標準型の広幅カラーを慶應型の細幅カラーに交換する場合がある。また、私立校などで見られる数種類から組み合わせを選べる制服も、指定外の服を着るという乱れに対応しようとした工夫と考えられる。1980年代頃から、服装の乱れは心の乱れ(ふくそうのみだれは こころのみだれ)という標語を掲げた服装指導も見られるようになった。学校生活が持つモダニズム的価値観に肯定的な「真面目」な生徒は、学校側が規定したとおりの服装をしていることが多い。この標語の使用には否定的意見も多く出された。代表的な意見としては、以下のようなものがある。支持する側からは、次のような反論がある。なお岩手県花巻市立中学校の一部などに、1990年代初頭まで「放課後や休日でも、自宅から200m以上離れた場所に私服で外出してはならない。」という校則が存在し、制服か学校指定のジャージでの外出が強制されていた。また当時の同地域男子生徒は坊主頭が強制であった。1980年代、男子生徒の制服ズボン改造に対する対策として、男子生徒に登校時にズボンを脱がせ、上はワイシャツや学生服を着た状態、下は短パンで下校時まで過ごさせた学校があった。また、男子生徒の制服を半ズボンにして、「自分はまだ子供」との認識を持たせ、非行防止につなげる事を検討した学校もあったが、いずれも実現には至らなかった。過去に男子生徒の制服を半ズボンとしたのは、首都圏の数校の私立校のみであった。社会では、職業やTPOに応じ、明文の内規あるいは不文律のマナーとして、相応しい服装が求められる場面が存在する。周囲から見た印象に対する配慮、作業の安全性・衛生の確保、職種や所属団体を示す制服など、それぞれの目的は様々だが、こうした規範から逸脱した場合は服装の乱れとみなされる。場合によっては、給与や昇進の査定評価の減点、懲戒処分といったペナルティーが与えられることもある。1990年頃からは、ビジネスカジュアルが取り入れられ、カジュアルな服装で勤務する日を設ける企業も増えた。だが、多くの企業ではジーンズやトレーナーといったラフな服装は認められていない。また、大事な商談では背広・ネクタイ姿を期待される場合がまだまだ多く、企業の中にはビジネスカジュアル自体が服装の乱れとみなされる場合もある。近年はクールビズやウォームビズが推奨され、導入する企業が増加の傾向にあるものの、夏期においても冬期においても、どこまでが許容範囲であるのか、一律の基準はない。また体育教師の中には、一年中ジャージ、サンダル姿の者も見られる。その一方で、生徒の「服装の乱れ」に対しては厳しい姿勢で臨むことが、教師に対する反感につながる一面がある。なお、教育課程において学生服を定める習慣のある国は、制服#日本国外における学校の制服を参照。
出典:wikipedia
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