ステータスレジスタは、フラグビットの集まりであり、マイクロプロセッサでの様々な演算の状態(ステータス)を示すレジスタである。これらのフラグは条件分岐に主に用いられる。マイクロプロセッサは、そのアーキテクチャによって異なる状態フラグのセットを持っている。ステータスレジスタは一般的な演算結果に関する状態を示すフラグを集めた部分と、CPUの動作を制御する部分がある。前者は一般のユーザプログラムからもアクセス可能だが、後者は一般的にはオペレーティングシステムからしかアクセスできない。ただし、初期のマイクロプロセッサには特権レベル(あるいは特権モード)を持たない場合があり、そのようなプロセッサではステータスレジスタ全体にアクセスすることができた(別の言い方をすれば、ユーザアプリケーションとオペレーティングシステムの区別がなかった)。以下にいくつかのマイクロプロセッサでのステータスレジスタ(フラグレジスタとも言う)の実装例を挙げる。なお、ビット位置はLSBを0として統一している。また、説明の中で「セット」は 1 を書き込むこと、「クリア」はゼロを書き込むことを示す。説明がないフラグは既出の同じ名前のフラグと同じ働きをする。特定のフラグの状態を調べるには、マスクを用いればよい。6502のステータスレジスタのサイズは8ビットであり、フラグバイトと呼ばれた。Z80のステータスレジスタのサイズは8ビットであり、フラグレジスタと呼ばれた。8086のステータスレジスタのサイズは16ビットであり、フラグレジスタと呼ばれた。Pentiumのステータスレジスタのサイズは32ビットであり、EFLAGSレジスタと呼ばれた。68020のステータスレジスタは16ビットで、上位8ビットをシステムバイト、下位8ビットをユーザバイトまたはコンディション・コード・レジスタ(CCR)と呼ぶ。MIPSアーキテクチャでは、ステータスレジスタが存在しない。これは、プログラムの流れを制御するにあたっては、分岐命令が条件付となっていて、レジスタ間の大小比較やゼロとの大小比較をした結果で分岐するかしないかを決めるために、ネガティブフラグやゼロフラグに相当するフラグを必要としないのである。この設計方針には以下のような思想がある。また、オーバフローやキャリーに相当する分岐条件はないが、これらは例外トラップを発生させることでオペレーティングシステムに処理を任せている。ただし、OSがこれらにたいしてうまく処理ができるわけではなく、ユーザプログラムが対応する例外処理をOS側に事前に登録しておかなければならない。そうでなければそれらの例外を発生させたプロセスを停止させることになる。また、OSが介在するため通常通る箇所で頻繁にオーバフローを起こすと性能低下を招くため、基本的にはそれらの例外が発生しないようにプログラムを組むことになる。PowerPCのステータスレジスタは、4ビットのフラグ8組から構成されており、コンディションレジスタ(CR0 - CR7)と呼ばれる。以下の一覧の左側は四則演算などの命令にupdate condition registerの指定(命令の後にピリオドを付ける。例えば符号付き16bit即値加算 addi なら addi. と指定する)でセットされる。演算命令実行時にCR0 - CR7のどのコンディションレジスタに結果を反映させるか(またはどこにも反映させないか)を指定できる。また、指定した2つのコンディションレジスタ同士でビット単位の論理演算が可能で、その結果を反映させるコンディションレジスタも自由に指定でき、複数の大小比較と論理演算を事前に行っておき、ひとつの条件分岐で済ませてしまうことができる。条件分岐時にもどのコンディションレジスタから条件を読み取るかということを指定できる。これにより、フラグ更新を伴う複数の演算を先に実施しておき、後で条件分岐を行うということが可能となる。Itaniumでは、従来のようなステータスレジスタは存在しない。というのもEPICアーキテクチャによって、複数の命令を同時に並行して実行するため、唯一のステータスレジスタでは結果を保持することができないためである。そこで、Itaniumでは64ビット幅で各ビットが汎用のフラグとして使えるプレディケートレジスタを用意している。この使用方法は次のようになる。このように、プレディケートレジスタを使うと、基本的にひとつのプロシージャ(サブルーチン)内では分岐命令を使わずに済む。これにより、分岐によるパイプラインの乱れを減らすことになり、高速化に寄与する。C言語の if文の then 部と else部を同時に実行するようなものだが、たとえばelse部が非常に短い場合や存在しない場合、then部を通る場合はよいが、通らない場合には実行しない命令をずっと実行ユニットに送り続けることになるため、分岐したほうが有効な場合もある。なお、ItaniumのIA-64モードでは前述のとおりだが、IA-32モードでは従来とおりPentium相当のステータスレジスタが存在する。キャリー()とは「繰り越す」という意味であり、その背景には当該CPUで直接処理できる以上のビット幅の数値を扱うための仕組みという考え方がある。これは筆算による計算と同じ手法である。4ビットのプロセッサを例として説明する。4ビットで表せる符号なしの数値は 0 から 15 までである。たとえば、 1001 (9) と 0111 (7) の加算は次のようになる。このように桁があふれてしまう。キャリーフラグを持つプロセッサでは、あふれた桁をキャリーフラグに格納する。また、加算命令にはキャリーフラグの内容も同時に加算するという命令を持っている。これを使うと、4ビット以上の演算が可能となる。たとえば、00101001 (41) と 00010111 (23) の加算は、次のような手順となる。 1 <- キャリーこの結果をつなげると 01000000 (64) となる。減算の場合は、繰り上がりではなく、桁借り(ボロー)が発生したか否か、となる。ボローが発生した場合はそれを次の減算でさらにボローのぶんを引くことで上の桁の計算に反映していく。アーキテクチャにより、ボローの情報を示すボローフラグがキャリーフラグと別にあるもの、キャリーフラグとボローフラグが兼用で、加算の時にはキャリーフラグがキャリーを示し減算の時にはキャリーフラグがボローを示す、といったものがある。後者にはさらに、ボローが発生した時にフラグが立つものと、逆のものがある。なぜ逆のものがあるかというと、加算器で2の補数を使って減算を行った場合(加算器#減算器も参照)その加算器のキャリー入出力をそのまま扱うとそうなるためである。逆になっているプロセッサとしては、6502・POWER・ARM・PICなどがある。逆になっていても、長桁加算が「ADD → ADD with-carry」で行えるのと同様、普通は単に「SUB → SUB with-borrow」で計算すれば辻褄が合うように設計されているのが普通である。一方オーバフローは「あふれ」という意味である。これは符号付数値の場合に意味を持つ。4ビットで表せる符号付整数は −8 から 7 までである。そこでたとえば 7 に 1 を加算すると次のようになる。このようになり、符号付整数として解釈した場合、−8 という答えになる。これはもともと 8 という答えを4ビットの符号付整数では表せないために発生するもので、このようなときにオーバフローフラグがセットされる。これを符号なし整数と解釈すれば桁あふれは起きていないので、この演算ではキャリーフラグはセットされない。最上位桁への繰り上がりや繰り下がりがあり、かつ同時に、最上位桁より上の桁への繰り上がりや繰り下がりが無い時がオーバーフローである。なお、プロセッサのビット幅以上の符号付整数の演算を行う場合は、最上位桁だけ符号付と解釈して、それ以外は符号なしと解釈する(すなわち、オーバフローフラグではなくキャリーフラグを桁上がりに使う)ことで実現できる。
出典:wikipedia
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