エアバス ベルーガ()は企業連合エアバス・インダストリー(後にエアバス)が開発・製造した貨物機である。大きな航空機部品を輸送する目的でエアバスA300-600Rをベースに開発され、A300-600ST (Super Transporter) という型式名が付けられている。巨大な貨物室を備えることからシロイルカに似た独特な外見を持っており、それにちなんでシロイルカの別名である「ベルーガ」の愛称がつけられた。ベルーガは、低翼配置の主翼下に2基のターボファンエンジンを備える。尾翼は通常式だが左右の水平尾翼端に垂直安定板が追加されている。降着装置は前輪式である。ベルーガの開発・生産プロジェクトはエアバスの関連企業のSATIC (Super Airbus Transport International) 社によって行われ、1994年9月13日に1号機が初飛行した。ベルーガは計5機が生産され、エアバス関連企業のエアバス・トランスポート・インターナショナル社によって運航されている。ベルーガは欧州各地で分担して生産されたエアバス機のパーツを最終組み立て地へ輸送する任務についており、飛行機を作るための飛行機とも言われる。また、エアバス以外の顧客向けにチャーター輸送業務に用いられることもある。エアバス・インダストリーは、欧州の航空機メーカーのコンソーシアム(企業連合)として設立され、参加各国で分担してパーツやコンポーネントを生産する国際分業体制を採用した。この分業体制は、エアバスの参加各国で一定の作業量を確保できるようにするためであり、欧州各地ので生産されるパーツを最終組み立て工場へ輸送するため、エアバスは大型貨物運搬用の輸送機としてボーイング377ストラトクルーザーを改修した「スーパーグッピー」を購入し、使用してきた。スーパーグッピーは1971年から使用されたが機体の旧式化が進んだことと、エアバスの事業が急成長したことにより、新しい輸送機が求められるようになった。そこで、エアバスは自社の旅客機A300-600Rをベースにした新しい貨物機を開発することとし、1991年8月にA300-600ST (Super Transporter) の開発計画を正式に開始した。A300-600STは、主翼、エンジン、胴体下半分をA300-600Rと同じくし、胴体上半分に大きな貨物を収容できる幅広の胴体セクションが設置され、ダルマを逆さにしたような胴体断面を持つ機体が設計された。貨物室最前部には上側に開く扉が配置され、コックピットが胴体の下側に移されたことで、機体前方から貨物を積み下ろしできるようにされた。コックピットのレイアウトや装備品などは、A300-600Rのものが踏襲された。特異な形を持つことから、コンピュータ解析や模型を用いた風洞実験が繰り返され、空力面のほか空港でのハンドリング面でも最適な形状となるよう検討された。A300-600STは新造機として生産されたが、幅広の胴体を組み付ける作業などは、最終組み立て地のトゥールーズにてスーパーエアバストランスポート・インターナショナル(Super Airbus Transport International: SATIC)社によって行われることになった。SATICはエアバス参加企業であるフランスのアエロスパシアル社とドイツのDASA社が50対50で出資した合弁企業で、1991年10月20日に設立された。A300-600STの生産においても国際分業体制で行われた。A300から流用する部分はベース機と同じ分担とされたほか、A300-600ST専用のコンポーネントも各国で分担されて製造された。参加各国の主な分担は以下の通りだった。A300-600STの製造は1993年から始まり、各パーツはスーパーグッピーでトゥールーズに集められ、1984年から最終組み立てが開始された。A300-600STの1号機は1994年9月13日に初飛行し、335時間におよぶ飛行試験を経て1995年10月25日に型式証明を取得した。証明を取得した年からエアバスへの引き渡しが始まり、2号機から5号機についても、表のとおり型式証明の取得と納入が進められた。最終組み立てが始まった頃、A300-600STは非公式に「スーパーフリッパー」という愛称で呼ばれていた。これは、テレビドラマ「わんぱくフリッパー」に登場するイルカの名前に由来するという説がある。その後、1994年6月23日、A300-600STの1号機の完成発表と同時に「ベルーガ」という愛称が発表された。ベルーガはSATICによって付けられた名前で、エアバスは当初はこの愛称を気に入っていなかったが、広く浸透したことから後に認めて使用するようになった。A300-600STの生産数は5機で、そのうちの1機は当初はオプションとされたが、最終的に5機全てが生産されている。ベルーガの最初の実用飛行は、納入の翌年となる1996年1月15日に行われた。ベルーガは、欧州各地で製造されるエアバス機のパーツやコンポーネントを最終組み立て工場へ輸送する任務に従事し、全5機の導入によりスーパーグッピーは完全に退役した。また、エアバスはベルーガを用いたチャーター輸送事業へも参入することとし、ベルーガの2号機を受領した後の1996年6月30日に、輸送請負の専門会社の設立を決めた。この専門会社は「エアバス・トランスポート・インターナショナル」(Airbus Transport International、以下ATI)社と名付けられ、同年9月20日に正式に登記を行って、11月24日に最初の請負輸送業務を行った。全5機のベルーガの運航はATI社が担うようになり、2014年の時点では欧州11カ所の工場間を結び、1日あたり2から4便、1週間に60回以上飛行している。ベルーガの運航開始以降も、エアバス機の生産数は拡大の一途をたどり、2011年にエアバスは輸送量の増加に対応するため「フライ10000」と呼ばれる計画を開始した。この計画では、積み荷、積み降ろし方法を含めた物流インフラの最適化を目的とし、2017年までにエアバスの輸送機の年間総飛行時間を1万時間に増やすことを目指している。この計画によりベルーガの1日当たりの飛行時間も延長される見込みである。一方、SATICでは、ベルーガのコンセプトを他のエアバス機に適用することも検討しており、エアバスA330かA340がベース機の候補として取りざたされていた。2014年の前半には、A330をベースとしてA300-600SLより飛行距離が長く、より重い貨物の輸送を可能にする「ベルーガXL」の構想が報じられていたが、同年11月に、エアバスはA330をベースとした新たなベルーガを開発すると発表した。新しいベルーガは既存の機器やコンポーネントを再利用し、コックピット、貨物室、尾部などは新たに開発される予定である。エアバスでは新しいベルーガを5機製造し、1号機は2019年中盤に運用を開始する予定で、現行のベルーガは新しいベルーガと順次置き換えることで2025年に退役するとしている。ベルーガは、主翼を低翼位置に配した単葉機であり、左右の主翼下にターボファンエンジンを1基ずつ備える。ベルーガの主翼やエンジンはA300-600Rのものと同じである。水平尾翼は低翼に配置され、降着装置は前輪配置である。ベルーガは、大型貨物を搭載できるように極めて太い胴体を持ち、2014年現在において世界最大の胴体幅を持つ飛行機である。ベルーガの胴体は2階建ての構造で、断面はダルマを逆さにしたような形をしている。胴体の下半分はA300-600Rと同じだが、客室部にあたる胴体上半分に大きな円筒形を乗せたような形で、その円筒形の下側2/3から胴体下半分までは直線的に結ばれている。貨物室の最大幅と最大高はともに7.10メートルで、床面の最大幅は5.11メートルである。円筒の前方と後方は、もとの機体形状に合わせてすぼめられており、完全な円筒部となる部分の長さは21.34メートルあり、貨物室の全長は37.70メートルである。この貨物室は非与圧式である。床下貨物室にも貨物を搭載可能である。貨物室の総容量は1,400立方メートルで、積載量は47トンである。貨物の積み下ろしを行うため、貨物室の最前部に上開き式の扉が設けられている。この扉は貨物室断面が完全に開口するまで上がるため、貨物室の寸法をフルに使用できる。貨物扉を開いた時の最大の高さは、貨物を搭載しない状態で16.97メートルとなる。前方から貨物の出し入れを行えるように、ベルーガのコックピットの位置は胴体下部に移されている。乗務員の乗降扉は胴体の床面下に配置され、梯子が内蔵されている。また、操縦室の後方にあたる胴体右側面に非常口が設けられている。ベルーガに貨物の積み下ろしを行うための専用車両も用意されており、この車両は全長32メートル、最大50トンの荷物をベルーガの床面の高さまで持ち上げられ、ベルーガの機首と干渉しないような構造となっている。また、チャーター輸送時には通常の空港にある貨物取り扱い車両も使用できるような汎用性も持たされている。コックピットの設計やレイアウト、装備品はA300-600Rのものを踏襲している。ベルーガでは人工衛星や美術品といった温度管理が必要な貨物を輸送できるように、可搬式のヒーターモジュールも用意されており、コックピットからヒーターモジュールの制御が行えるようになっている。ベルーガでは、機体重量の増加に合わせてベース機よりも尾翼の構造が強化された。また、垂直尾翼の付け根を前方に延ばすように垂直安定板の面積が拡大されたほか、水平安定版の両翼端にも垂直安定板が追加されている。エンジンはターボファンエンジンで、ゼネラル・エレクトリック製のCF6-80C2を2基装備する。巡航速度は時速780キロメートル、実用上昇限度は35,000フィート(約10,700メートル)で、航続距離は貨物を26トン搭載した場合で4,632キロメートル、40トン搭載時は2,779キロメートルである。全5機のベルーガはATI社によって運航され、欧州各地で製造されるエアバスA320やエアバスA330、エアバスA350 XWBといったエアバス機のパーツやコンポーネントを最終組み立て工場へ輸送する任務に従事している。パーツの生産地であるフランスのナントやサンナゼール、ドイツのブレーメン、スペインのマドリードやセビリヤ、ヘタフェ、イギリスのリヴァプールや、イタリアのナポリなどから、最終組み立て地のトゥールーズやドイツのハンブルクを結んでいる。2014年現在、1機あたり1日2から4便運航されている。総2階建ての超大型機であるエアバスA380については、ベルーガの貨物室にも収まらないため、専用の船と車両を用いた輸送がメインとなっている。ATI社ではこの通常運航のほか、エアバス以外の顧客向けに大型貨物のチャーター輸送業務を請け負っている。ベルーガの広い貨物室を活かし、それほど重くはないがかさばる荷物の輸送として、人工衛星やヘリコプターのほか美術品の輸送にチャーターされることもある。1999年にはドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」を輸送するため日本の成田国際空港に飛来している。また、2006年5月には国際宇宙ステーションのヨーロッパ実験棟コロンバスをドイツのブレーメンから米国のケネディ宇宙センターへ運搬するためにも利用された。A300-600STは運航開始から2014年現在まで、機体損失事故は発生していない。出典:特に記載のないものは Airbus S.A.S. による
出典:wikipedia
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