収斂進化(しゅうれんしんか、)とは、複数の異なるグループの生物が、同様の生態的地位についたときに、系統に関わらず身体的特徴が似通った姿に進化する現象。明らかに類縁関係の遠い生物間で、妙に似通った姿、あるいは似通った器官を持つ場合がある。中にはジャコウアゲハの幼虫とシカクナマコの子供のように、どう考えても関係がない場合もあるが、それぞれにその姿をしているのが生活の上で役に立っていると分かる場合もある。たとえば、モグラの前足は分厚く、爪が強く、指その物は短くなっており、明らかに穴を掘るために役立つ形である。そして、同じく穴を掘って暮らしている昆虫のケラの前足を見ると、やはり丸っこくて、周りに爪状の突起があり、動かし方も良く似ている。これらは、いずれも穴を掘るための器官としての適応の結果であると考えられ、元々は大きく形が異なっていた節足動物と脊椎動物の足がそのために外見的に似た形となったと考えられる。この様な現象の事を収斂進化、あるいは単に収斂と言う。このような例は、異なる地域で生物相が大きく違っているのに、あるいは系統的に大きく離れているのに、それらが似たような場所で似たような生活をしている生物同士の間で見られる。これは、それらの生物が、それぞれの生物群集の中で、非常によく似た生態的地位にある場合に見られる、と言われる。つまり、同じような生活をするものには、同じような形態や生理が要求され、そのため似た姿に進化する、というのである。たとえばオーストラリアの有袋類であるフクロモモンガとリスの仲間であるモモンガとは、外見が非常によく似ている。このような現象は、様々なところで見受けられるが、特に、空を飛ぶとか、穴を掘るとか、水中を高速で移動するとか、生物にとって拘束の大きい条件下でよく見られる。形態の選択肢が少ない、と言ったところであろう。生理的な面での収斂現象もある。たとえば動物は排出器を通じて窒素を含む分解産物であるアンモニアを排出するが、この物質は水に溶け、動物体には有害である。このため、水生動物はそれを水に溶けた形で排出する。しかし、陸では水分補給が限定されるから、このような排出は行えず、しかも体内に蓄積するわけにも行かない。そのため、爬虫類や鳥類ではアンモニアから尿酸を合成し、固形物の形で排出する。同様に陸上節足動物である昆虫なども尿酸を排出する。これらの分類群は全く独立に陸上進出したものであるから、この性質も独立に身につけたものであるはずである。収斂は、全身の姿にも、個々の器官にも見られる場合がある。先のモグラとケラの例では、それぞれの前足がそっくりであるだけでなく、全身の姿にもやや類似が見られる。体表が細かい毛で覆われている点も似ている。前足に関しては、モグラでは内骨格の五本指の掌からの変形であるのに対して、ケラでは外骨格の形態の変化で似た姿になっている。この例のように、本来は異なった起源をもつ器官が、類似の働きと形をもつ場合に、それらのことを相似器官と言う。なお、収斂が起きるときには、様々な系統から、同じような形へと進化して行く。つまり、同じ方向への進化が異なった場で起きているので、この現象を平行進化という。また、下で述べる有袋類の多様化のような現象は適応放散と呼ぶ。これは起源を同じにする生物が、異なった環境の要求に応じて多くの異なった姿になったというふうに解せられる。いわば収斂の逆の現象であるが、それぞれの地域での適応放散の結果が、それぞれの個々を見比べた場合に収斂を起こしているのもよくある現象である。なお、異なった生物の間によく似た形質が見いだされる例に、擬態がある。ただし、これはどちらか片方が、もう片方の種に似た姿であることで何らかの利益を得るため、それに似る方向に進化したものであり、モデル生物なしにはその存在が考えられない。その点で、収斂はモデルとは無関係に、その姿に適応的意味があるので、異なった現象と言える。しかし、比較的近縁な生物が同様な保護色を身にまとえば同じような形になりやすい、と言うようなこともあるから、両方が働く場合もあり得る。植物の場合にも、類似の例はある。微生物においても、たとえば細胞性粘菌のタマホコリカビと接合菌のケカビのように、縁の遠いものにも外見のよく似たものが見られる例はある。これを収斂ということはできなくはないが、むしろ、構造が小さいために形態に関してあまり選択肢が多くなく、どうしても似てしまう、という傾向があるようである。分生子形成菌(不完全菌)にも、単純な分生子を形成するものには、その有性世代がわかった場合、複数の系統が含まれていたという例がある。鞭毛虫は、極めて多様な系統の生物の集まりであるが、系統を異にするものにもその外形に似た形のものがよくあるのも同様に考えて良いだろう。ただし、たとえばタイヨウチュウは、はっきりした特殊な活動の型を持っていながら、多系統であることがわかっている。これは真の意味での収斂の例と見て良いかも知れない。菌類においても水生不完全菌は水中での胞子形成への適応として独特な形の分生子を作ることが知られるが、一つの属と見なされたものに複数の系統が含まれることが知られた例があり、これなども収斂進化と見ていいだろう。
出典:wikipedia
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