不気味の谷現象(ぶきみのたにげんしょう、)とは、ロボットや他の非人間的対象に対する人間の感情的反応に関する議論である。ロボット工学者の森政弘・東京工業大学名誉教授が1970年に提唱した。森は、人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。人間の外観や動作と見分けがつかなくなると再びより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚えるようになると考えた。外見と動作が「人間にきわめて近い」ロボットと「人間と全く同じ」ロボットは、見る者の感情的反応に差がでるだろうと予想できる。この二つの感情的反応の差をグラフ化した際に現れる強い嫌悪感を表す谷を「不気味の谷」と呼ぶ。人間とロボットが生産的に共同作業を行うためには、人間がロボットに対して親近感を持ちうることが不可欠だが、「人間に近い」ロボットは、人間にとってひどく「奇妙」に感じられ、親近感を持てないことから名付けられた。『Energy』は広報誌であり、一般的な企業広報誌と異なり広範で総合的な内容を扱っている。日本国外への紹介は "The Buddha in the Robot" などによる。こんにち定訳となっている英訳 "uncanny valley" の初出はJasia Reichardtの1978年の書"Robots: Fact, Fiction, and Prediction"である。この現象は次のように説明できる。対象が実際の人間とかけ離れている場合、人間的特徴の方が目立ち認識しやすいため、親近感を得やすい。しかし、対象がある程度「人間に近く」なってくると、非人間的特徴の方が目立ってしまい、観察者に「奇妙」な感覚をいだかせるのである。他に、ヒューマノイドが多くの不自然な外観を見せる点で、病人や死体と共通するために、ロボットに対して同じような警戒感や、嫌悪感を抱くことが考えられる。死体の場合、その気持ち悪さはわかりやすいが、ロボットの場合は、それがいったいなぜ気持ち悪いのか、明確な理由がわからないために、実際には死体よりも不気味に感じることもあるだろう。動作の不自然さもまた、病気や神経症、精神障害などを思い起こさせ、否定的な印象を与える。また森政弘は自著で、動きが加わると親近感も不気味さも大きくなると主張し、「谷」に精巧な義肢を、「谷」を越えたところに文楽人形を例に挙げている。森以外のロボット工学者のなかには、人間のようなロボットは現在においては技術の可能性に過ぎず、森のグラフに根拠がないとして、この法則を強く批判する者もいる。恋人の頭部のリアルなコピーロボットを製作したは、「(不気味の谷のアイデアは)実際には疑似科学なのだが、人々がそれを科学であるかのように扱っている」と述べた 。不気味の谷の最大の問題は、V字曲線のように本当に感情的反応の肯定が回復するのかという点である。未だ「人間と全く同じ」ロボットが作られたことはなく、本当に完全な人間に近づけば好感度が増すのか、また「人間と全く同じ」になれば好感を持つのかは誰にも分からない。たとえ「人間と全く同じ」だとしても、ロボットだと聞けば不快感を持つ可能性もあり、ロボットが完璧すぎると逆に気味が悪く感じる可能性すらあるのである。この原理はコンピュータ動画のキャラクターに適用されるようになった。アメリカの映画評論家ロジャー・エバートは、映画中の人間に類する生物のメーキャップと衣装について不気味の谷の概念を適用した。不気味の谷はコンピュータ動画のキャラクターを作るときの難しさの原因であると考えられた。コンピュータ動画を使った映画を批評するとき、ある映画に対する嫌悪感を説明するためにときどき不気味の谷が言及される。この原則によると、人間に良い感情を抱かせるためには、不気味の谷に落ちないように、登場人物には人間的な特徴をより少なくしたほうがよいという結論になる。不気味の谷現象は猿にも見られる。プリンストン大学のShawn A. SteckenfingerとAsif A. Ghazanfarが行った研究によると、5匹のカニクイザルに対し、猿の顔のデフォルメ画像、実物に近いCG画像、実物写真をそれぞれ見せたところ、実物に近いCG画像を凝視する回数が有意に少ないということが明らかになったESPNの「ページ2」では、コラムニストのパトリック・ハルビー (Patrick Hurby) が伝統的なセンスにおける不気味の谷を説明している。ここでは"マッデンNFL 06"のプレーヤーが、多くのCGI映画を脅かしている困惑するほど人間そっくりなキャラクターの特徴を示すことを指摘している。このコラムでは不気味の谷という用語を、毎年最下位のチームのファンと毎年準優勝するチームのファンのどちらがより多く経験するかについての、きちんと文書で立証された類似性の討論に拡張した。ハルビーは、レッドソックスネーションのような毎年準優勝するチームのファンの方が、チームの明白な優勝の可能性と、優勝を目前にしてわずかに達しない歴史の間に横たわる「不気味の谷」のために一層苦しむと考えた。森正弥は、E-Commerce等で広く使用されるレコメンデーションシステムにおいても同様の現象があると指摘している。ユーザーの好みに近い情報や商品を提示していくレコメンデーションも最初は興味をもってユーザーは反応してくれるが、あまりにもユーザーの好みやコンテキストを捉えすぎると、強い嫌悪感を誘発しかねない。いわゆるビッグデータの活用等によるレコメンデーションシステムもこの「不気味の谷」が提起している問題に十分に配慮する必要があるのではないかということである。
出典:wikipedia
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